備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第1章 ココどこですか?

会議は、呆気なく終わった*** ジル視点 ***

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 王よりの絶対命令。

【帰還せよ。】

 
久しぶりの城は相変わらず陰気な空気で
息苦しい。
急ぎ足で歩いているせいか、【仁】の位を表す青いマントが翻る。

五大会議に父の名代として出席する為だ。

仁義礼智信

各代表の会議を経て、王への具申となる。

最奥に位置する会議室の前には、近衛が扉の前に立っていた。

珍しい事だ。

王が、オブザーバーとして出席をするのは特例のみとなっている。

今夜の議題は国を揺るがすものだ…という認識か。

部屋へ入ると五角形の机の正面のみ空席だった。

ちっ。ワザと遅刻する招集時間を連絡したな。まぁ、かなり早く来たから間に合ったようだが。
だが、【礼】の代表であるダナ殿が苦虫をかみ潰したような顔だ。分かりやすくて助かる。

『これは遠くからご苦労だな。【仁】のセツ殿は余程お身体の具合が悪いとみえる。遠方からわざわざ諜報部隊のご子息を呼び戻すのだからな。』
【信】の代表の嫌味を遮りつつ、王の前へと進み出る。

『王よ。ご挨拶が遅れ申し訳ごさいません。【仁】が子、ジルただ今戻りました。ご報告はまた、後ほどに。』
頭を下げた私に向かって、更なる嫌味が飛ぶ。

『我々、五大会議の長たちには挨拶も無しか?』

『これはこれは、【義】のカル殿。謹んでご挨拶申し上げます。』

ふう。今更嫌味など何の意味も為さない。
この国の現状が理解出来ない脳みそなら、市井のもの達にその位を譲ったら良いのに。

頭の中で悪態をつきながらも、笑顔での挨拶は続いた。

『さあ、そろそろ本題に入ろう。』
【智】の代表であるヤナ殿の言葉で、会議がいよいよ始まった。

『あれほどの能力を持った者を首都に召喚せよと、何度も申したのに何故言う通りにしないのだ!!』

『その者に、適当な地位をやって今、問題になっている事を解決させれば良いだろう。』

『いや、いっその事野獣退治の最前線で活躍させて他国への圧力とするのも良いな。』


馬鹿がいる。
本物のバカだ。

報告書の文字が読めないか、読んでも理解する知能がないか。
どちらにしても、この国最高位の五大会議に出席するべきでない。

黙っていると、バカが更に丸出しになる。

『ダナ殿、中々に良い意見ですな。確かに野獣退治ならば、二つの問題を一挙に解決ですな。』
『いやいや、カル殿こそ。』

『おぉ、そうだ。農地開発をしているとか。それらに納税を課して我々の領地に配布するのも良いな。』

はぁぁ。
誰かつける薬をくれ。
そうか…今こそ矢作様のあの驚異的な【特万能薬】なるモノが活躍するか。

脳内の悪態も、あまりのバカ丸出しに混乱し始めた頃思いもよらぬ方向から声が掛かる。

『ジルよ。何故に我の元に連れてくる努力を怠る?』
一切の発言をしないはずの五大会議での異例な王からの質問に会議場は静まりかえった。

『彼に神狼様が憑いていたというのが、理由かね?』重ねてヤナ殿からの質問だ。

『はい。それもあります。』

『神狼様などと、嘘であれば不敬罪だぞ!』
『まさか…神代の時代でもあるまいし。』

『皆様にお見せしたいモノがあります。彼の者から、出来れば使用して感想をお聞かせ頂きたい、と預かってきたものです。』

そうだ。
私が取り出したのは、出掛ける前偶然廊下で会った矢作様から『マーチャンダイジングしたい』という意味不明な言葉と一緒に託されたモノだ。


1つ目は【特毒消し】

もちろん、矢作様の作ったものだ。単なる毒消しでは無い。

なんと身体の毒🟰毒気が抜ける
らしい。詳しくは

『とにかく、真面目になる感じかな。でも、使う人を選ぶかもしれない。
真面目な人が飲むと、疲労困憊で倒れるまで働くからな。』との事。


2つ目は【心月の鏡】

こちらは更にド肝を抜く。

『鏡の裏側に珍しい薬草塗ってたら、偶然出来たんだ。綺麗な心の人が見たらそのままで、悪巧みしてたら、靄が掛かって顔が写らない。そんな感じなんだけど、実用性がな。諜報部隊なら使えるかなと。どうだ、買ってくれるかな?』との事。


諜報部隊すら手に余る。

実はこの話を昨夜父に話したら頭を抱えて『明日の会議は欠席する。お前が行くが良い。』と丸投げされたのだ。

父の気持ちは痛い程分かる。
出来れば私も…。

暫く、誰1人動く者すらいなかったが。

脂汗をかく各代表と裏腹に王は突然大笑いを始めた。


『会議はこれで終わりじゃな。
彼には余から、【特任大使】の称号を与える。神狼様にお仕えする彼に対するモノだ。
これより、特任大使への余計な手出しは一切無用。よいな!!』

全員がその場で跪いて、会議はお開きとなった。

賢王を主に持つ幸運を胸に、そのままとんぼ帰りした。試作品は王に献上して。


天馬から見る辺境の村は、またもや姿を変えていた。その全貌が目の端にも捉えれれぬ程広く広く。

村長の家の近くに降り立った私の傍らには、既にキセの姿があった。心配を、かけていた様だ。

『五大会議に出席したと聞いた。またもや、無理難題を持ちかけられたのでは?』

情報が早いな。

『いや、大丈夫。矢作様のおかげでこんなに早く帰って来れたのだから。』

『矢作様の…』『俺のおかげ?』

矢作様!?

『いやさ、天馬が飛んでるのが見えたから。こうせ…ジルがいなかったから何処か出かけてたのかなと思って。』

こういう感の良さも、矢作様の凄さだ。

『王城に行っておりました。』

意外にも、矢作様は驚かず頷いた。

『ま、そうかなと思った。近々呼び出しがあるだろうからあの試作品が役に立つと思ってさ。』

!!!!

まさか…そんな。

『そうだよ。施政者というのは、無理難題が酷く得意だからね。用意周到が1番。ま、何にせよ役に立ったみたいで良かったよ。』

あれは偶然じゃなかったのか。
そんな深読みを。諜報部隊の隊長などと奢っている場合じゃない。
もっと、己を鍛えねば。

キセ共々、その場で暫く立ち尽くした。



だから、矢作様があの呪いの笑みを浮かべて懐かしそうに呟いたのを聞いた者は誰もいなかった。


『用意周到は何でも無敵だな。
でも、あの鏡も毒消しも俺は絶対に試さないど、青木課長と草薙には試してみたい気がするな。』
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