備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第2章 矢作、村を出る?!

作戦変更…ギルドへ向かう***村長視点***

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可愛い女性に驚くべき変身を遂げたお2人は、足早にこの場所から去っていった。
(恐らくお2人には影の護衛が既についていて心配はないのだと察するが…)


途端…ピリピリとした空気が満ちる。

『我々への取り調べ。相応の覚悟を持って臨まれるがよいかと。』ジルさんから伝わる覇気が痛みを伴う程に膨れ上がる。

しかし、相手はこの事態になっても後ろ盾を信じているのか強気を崩さない。
愚かな。

『ふん。どうせ五大家の遠戚などとホラ吹くつもりだろ。まぁ、例え五大家といえど法規に従うのは当然だな。』

やっぱり、あまり状況判断が出来ないようだな。これは荒れるな。
しかも、ラッセルさんも帰って来ない所をみるとジーラン商会辺りの圧力だろう。

敵も本気だ。しかし我々とて無策の訳では無い。

『では、我々をどうしようと言うのです?まさか尋問でもするおつもりか?』
ジルさんの乾いた笑みは、相手の怒髪天をついたようで顔を真っ赤にして怒りを顕にした。

『このぉぉぉ。お前のような輩がいるから我々のように真面目な騎士が不遇な目に合うのだ!!
我々は五大家の中でも、武力に秀でた義の大家で騎士職をする者だ。そんな尊大な態度で愚弄するなど言語道断だ!!』
大声で怒鳴るも、己の身分をここで明かす事がどれほど愚かな事か分からないとは。信じられない馬鹿さ加減だ。

『ほお、義の大家様のお騎士様ですか。ならば何故門番のような真似をなさるので?このような雑事をするには、お偉い方々は似合わないですよ。』

煽っている。

そうか。。

相手に手を出させるつもりなのだな。
では、我々も覚悟して望まねば。

『おっと、そうそう。こちらの方々への手出しはかなりリスクを伴いますよ。
何せ、東の辺境の村出身ですから。』
ジルさんの言葉に辺りが一瞬静まり返ったかに見えた。しかし男の強気は止まらない。

『ククク。辺境の村だと。世迷いごとを言って時間を稼ぐつもりだな。東と言えば、今や滅亡の危機寸前というではないか。
そんな危機的村から逃げ出した村人など構う者はおるまい。寧ろ、村長に感謝されるのではないか。
裏切り者の処罰をして。いや、もうその村自体がなかったりしてな。ははは。』
ふぅ。ここまで愚かな男が騎士なのだとしたら義の大家も大した事はないのではと、危ぶんでしまう。
おっ?流し目で笑ってるジルさんは、愚かな事を承知の上で煽ったのか。
なるほど、相当ご立腹の様子だ。

『なるほど、騎士様とは賭け事をなさるのか。もし万が一、本当に東の辺境の村人だったら貴方の首1つでは足りませんよ。』

いくら何でもそれは言い過ぎでは。相手を煽りたいからと嘘を混ぜてはダメです。
ほら、かえって冷静になって静かになったではないですか。

『ふ、ふ、ふざけるな。ま、まあ良いだろう。お前さえ掴まえれば命令遂行は完了だ。さあ、来い!!お前にはじっくり聞きたい事があるんだからな。』
ま、まさか信じたとは驚いた。
この流れに乗らない訳にはいかない。

『では、我々は失礼する。』
ルフ殿と2人で素早く馬車を降りる。早急に矢作様方を探さなくては。

ジル殿は何か考えがあるのだろう。それには我々は足手まといだ。そう考えて後ろは全く振り向かず離れた。
少し不安そうなルフ殿を急がせて馬車から早急に離れた。

この王都は東西南北に区分されている。
東は商業地区
西は住宅街
北は歓楽街(スラム付きだが…)
南は五大家と王城への道がある

『ルフ殿は東地区へ行って何か情報を調べて欲しい。些細な事柄でもいい。
たぶん、矢作様はそんな無理はしないは。。ず。。。

いや、多少の事はしても無茶はしないはずだと…まあとにかくどんな事でも情報が欲しいのだ。宜しく頼む。』

黙り込んでいたルフ殿から、くすくすと笑い声が聞こえてきた。
『ありがとうございます。おかげ様でようやく少し肩の力が抜けてきました。私にとって、大恩人であるお2人の危機に頭に血が上りそうになっておりました。
そうですよね。あのお2人です。情報は我々が心配する必要も無い程、沢山あると思います。では後でどこで落ち合いますか?』

***


ルフ殿の別れて、久しぶりに北地区に足を踏み入れる。まだ若気の至りで親元から離れて力試しをした日々。
そんな赤面の思いが懐かしい風景から過ぎるも、この際は関係ない。

まずはココで情報収集だ。
見上げる看板はあの日のままだ。

重い木戸を開ければ相変わらず、おかしな臭いに満ちていた。油と生臭さ、酒臭さ様々な臭いが入り交じった懐かしい臭いだ。

『おい、おっさんが来るところじゃねえぞ。冷やかしなら帰れ帰れ!!』

『おいおい、そんなに邪険にするなよ。もしかして依頼かもしれねぇだろ?
ま、小銭くらいしか持ってないだろうけどな、ハハハハ。』

あちこちから掛かるヤジを無視して受付へと向かう。こんなのを相手にしてる暇は無いのだ。

『受付を頼む』

まずは己の身分証を出さねば話も出来ない場所だ。

『まあ、、随分と古い。。。えっ!!』

固まらないで欲しい。急いでいるのだ。
そんな珍しいモノではないだろう。

『おいおい、カデン穣。おっさんのFランクなんて珍しいからって無視してやるなよ。ほら、困った顔してるじゃねぇか。
寄越せよ、ほら………えっ!!』
風体の悪い男が絡んできて、固まっていた受付嬢から私の身分証を横取りして、またも固まった。余計な事を…もうやるか?

『何だよ。お前まで固まるなよ。そんなにドン引きする身分証か?』
ワイワイと有象無象が近づいてきた。

めんどくさい。こうなったら若き日を思い出して一掃するか。じわりと刀に手をかけて覇気を込めた所で昔馴染みが現れた。

『ベン殿、お久しぶりです。どうか私の顔に免じてこのままお納め下さい。
2階までご案内致します。昔の部屋もそのままですからいつでもお使い頂けます。』
顔見知りの登場に、短気を起こした自分を恥ながら2階へと向かう。

ライ。変わってないな。
しかし、あの部屋もそのままとは。
律儀な昔馴染みに少し心が解れても、矢作様方の事は急がねばならない。

足早に2階へ駆け上がる。


***Cランク冒険者  視点 ***

おかしな奴が入ってきた。
草臥れたおっさんだ。

ここは荒くれ者の集まる場所。余所者など近づく事すら嫌がる場所なのに平然とした顔が気に食わない。

からかった我々に知らん顔に更に苛立ちが募る。仲間も同じようだ。

ハハハハ。馬鹿だな。
よりによってカデン嬢の所に行くなんて。
冒険者に手厳しい事で有名な彼女は、本人もCランク冒険者上がりだ。
Cランクと言っても俺とは違う。彼女のは単独でのランクだ。

ギルドランクには2種類ある。
グループでのランクとソロランク。
もちろん格が違う。

グループランクAでもソロランクならDくらいた。それほどソロ活動は難しいのだ。

ほらほら、やっぱり厳しい顔でカデン嬢が身分証を見ている。ん?
固まった??

その様子にイラついた奴が身分証を奪ってイチャモンを付けるつもりらしい。

おかしい。
誰にでも噛み付く駄犬で有名な奴なのに、固まってるぞ。

何だ?
ざわめきが大きくなった途端、ぞわりとする嫌な空気がおっさんの身体から流れ出す。


い、息が出来ない!!
覇気だ。ソロのBランク以上が纏える覇気が我々を圧倒しようとしたその時。


ギルマスのライさんが現れた。
普段は滅多にココに降りては来ない。副ギルマスの2人が大抵の事は片付けるからだ。

ふぅ。
ギルマスのおかげで、おっさんから覇気が止まった。


ええっ!!

あのギルマスが低姿勢?!
見たことの無い風景にこの場にいる全員が固まった。


2人が消えたフロアは、怒涛の嵐だ。

アイツは誰だ?!
何が起こった?!

騒ぐ我々にカデン嬢の声が響いた。

『煩い!!これ以上騒ぐならば叩き出す。
あの方についての詮索をした者の保証
はしないから肝に銘じなさい!!』


その時、カデン嬢がおっさんの身分証を持って2階へと向かうのにチラッとスキルを使った。

【遠目】


見なきゃ良かった。
心の底から後悔しながら、ギルドを飛び出す。仲間たちの制止も振り切って。


ソロプレーヤー  ランクS   ベン

【剛腕】のベンだ。


そして宿屋にこもって震えてた俺は、王都が更に大騒ぎになっていた事を後から知ることになる。










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