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46時間TV 編
46時間TV 5〜さくらの答え〜
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まだ、かっきーに行ってほしくない。
その一心で裸足のまま玄関に降りた私は、かっきーを後ろから抱き締めていた。
真冬の早朝。
屋内とはいえ、コンクリートの床は氷のように冷たかった。早くも足の裏の感覚がなくなりそうなくらい。
でも、そんなことはどうでもよかった。
遥香「さくちゃんの、気持ち…?」
さくら「うん…私、まだ…かっきーに何も伝えられてない……何も返せてないから……それは、イヤなの…」
昔から、自分の気持ちを言葉にするのが苦手だった。
オーディションを受けて、アイドルとして活動を始めて、センターなんてポジションも経験させてもらって。
いろんな仕事をする中で、自分の気持ちを言葉にする機会は確実に増えた。
だから、以前より慣れてきたとは思う。
でも、こんな気持ちを誰かに伝えるのは生まれて初めてだ。
ちゃんと伝えられるか分からない。
それでも、いいと思った。
うまく言葉にできなくても、伝わらないかもしれなくても、それでも伝えたい。
この気持ちだけは、いま伝えておかないと絶対に後悔する。
そう思って、かっきーをつなぎとめている両手にぐっと力を込めた。
「だから、私の気持ちも、聞いてほしい…」
「…うん……わかった…」
ゆっくりと息を吸うと、かっきーの髪の香りがした。
いつもは、私に安らぎをくれる香り。
そして、今の私には勇気をくれる香りだった。
私は、自分より少しだけ背の高いかっきーを後ろから抱きしめながら、話し始めた。
「昨日、かっきーが私に…キス……してくれた時……最初はびっくりしたよ…?」
「…うん…やっぱり、そうだよね……」
「一瞬で、いろんなこと考えちゃって……仕事のこととか、事務所のこととか、他のメンバーのこととか、ファンの皆さんのこととか……」
「…うん…ごめん……」
「ううん…違うの……色々不安に思ったのも、ほんとなんだけど。それでも、かっきーが私にキスしてくれたって思ったら…なんか、全部、どうでもよくなっちゃったっていうか……かっきーのことしか考えられなくなって…」
そう。
これが私の、正直な気持ち。
自信を持って、そう言える。
驚いたし、戸惑ったし、不安だって押し寄せた。
それでもあの時、不安を押し流すように胸の奥から溢れてきた感情。
それは紛れもなく、かっきーへの愛おしさだった。
他の4期生とも違う。先輩メンバーとも違う。
かっきーのことを考えた時にだけ感じる、胸の奥があたたかくなる感じ。そんな愛おしさ。
「だからね…?私、すっごく嬉しかった……昨日のことも、いまかっきーが話してくれた気持ちも……」
「…さくちゃん……」
涙ぐんでいるような、かっきーの声。
今、どんな顔してるのかな。
背中からじゃ分からない。
もしかしたら、泣きそうでひどい顔してるから見られたくない、とか思ってるかな。
でも、私がこれから言うことだけは、かっきーの顔をちゃんと見て伝えたい。
私はかっきーの正面に回り込んでもう一度抱き締めると、かっきーの腰の後ろあたりで手を組んだ。
「かっきー…?」
声をかけて、うつむいているかっきーの顔を下から覗こうとしたけど、顔を見せようとしない。
「やっ…いまっ…ひどい顔してるから…絶対……」
(ふふっ…やっぱり……)
「じゃあ…そのままでもいいよ……?」
うつむいたままだったから、かっきーの表情は見えない。
それでも、かっきーが私の言葉を待ってくれているのは伝わってきた。
「私ね…?私も…かっきーが好きだよ……かっきーのことが、だーいすき……」
驚いたように顔を上げるかっきー。
その目には涙がたまっていた。
「でも…でも……!さくちゃんのは…同じメンバーだから、っていう好きでしょ……?私のは…私の好きは……!」
ちゅっ…
自分の唇で、かっきーの言葉を遮る。
唇が触れた瞬間、かっきーが息を止めて体を硬直させたのが分かる。
驚かせてしまった、と思う。
でも、私の気持ちをかっきーに伝えるには、これが一番の方法。
なぜだか分からないけど、そう確信していた。
やがて、かっきーの体の硬直が、少しずつ…本当に、少しずつ。
今かっきーの体に触れている私にも分かるか分からないかくらいのペースで、ゆっくりとほどけてゆく。
何故だか、それが嬉しかった。かっきーに、私の気持ちが伝わったことを実感できたからかもしれない。
(自分からキスしたくなる気持ちって、こういう感じなんだ……昨日のかっきーもこんな気持ちだったのかな…)
キスしていた時間は、たぶん昨日と同じくらい。
私はそっと唇を離すと、少し驚いたままの顔をしたかっきーに言った。
「ふふっ……昨日のお返し…」
「…さく、ちゃん……?」
かっきーは、何が起きたか分からないような顔をしている。昨日の私と同じで、キスされるなんて夢にも思っていなかったような顔。
「私の好きとかっきーの好きが同じかどうかは、分からないけど……でも、今みたいなことをかっきーにしたいって思えて…えっと…かっきーのほうからもして欲しくて……これからも…たくさんしたい…って思えるのが、私の好き……」
「…ほんと、に……?」
「うん……女の子だからとか、同じグループのメンバーだからとか、関係ないの……かっきーが、かっきーだから……好き…大好き……」
私の言葉を聞き終わる前に、かっきーの目にたまっていた涙がボロボロとこぼれ出した。
昨日とは逆に、今度はかっきーの方からおもいっきりハグされた。
(ふふっ…今日はかっきーが甘えん坊だなぁ…)
かっきーが泣き止むまで、私は頭をやさしく撫でていた。
心臓が、まだドキドキしてる。
それでも、かっきーに伝えたかった気持ちを言葉に出来た。
なんだか不思議な気分。
かっきーに自分の気持ちを伝えようと思ったのはほんの数分前なのに。
でも、ずっとずっと前から秘めていた気持ちを、やっと打ち明けられたような清々しさもあった。
~続く~
その一心で裸足のまま玄関に降りた私は、かっきーを後ろから抱き締めていた。
真冬の早朝。
屋内とはいえ、コンクリートの床は氷のように冷たかった。早くも足の裏の感覚がなくなりそうなくらい。
でも、そんなことはどうでもよかった。
遥香「さくちゃんの、気持ち…?」
さくら「うん…私、まだ…かっきーに何も伝えられてない……何も返せてないから……それは、イヤなの…」
昔から、自分の気持ちを言葉にするのが苦手だった。
オーディションを受けて、アイドルとして活動を始めて、センターなんてポジションも経験させてもらって。
いろんな仕事をする中で、自分の気持ちを言葉にする機会は確実に増えた。
だから、以前より慣れてきたとは思う。
でも、こんな気持ちを誰かに伝えるのは生まれて初めてだ。
ちゃんと伝えられるか分からない。
それでも、いいと思った。
うまく言葉にできなくても、伝わらないかもしれなくても、それでも伝えたい。
この気持ちだけは、いま伝えておかないと絶対に後悔する。
そう思って、かっきーをつなぎとめている両手にぐっと力を込めた。
「だから、私の気持ちも、聞いてほしい…」
「…うん……わかった…」
ゆっくりと息を吸うと、かっきーの髪の香りがした。
いつもは、私に安らぎをくれる香り。
そして、今の私には勇気をくれる香りだった。
私は、自分より少しだけ背の高いかっきーを後ろから抱きしめながら、話し始めた。
「昨日、かっきーが私に…キス……してくれた時……最初はびっくりしたよ…?」
「…うん…やっぱり、そうだよね……」
「一瞬で、いろんなこと考えちゃって……仕事のこととか、事務所のこととか、他のメンバーのこととか、ファンの皆さんのこととか……」
「…うん…ごめん……」
「ううん…違うの……色々不安に思ったのも、ほんとなんだけど。それでも、かっきーが私にキスしてくれたって思ったら…なんか、全部、どうでもよくなっちゃったっていうか……かっきーのことしか考えられなくなって…」
そう。
これが私の、正直な気持ち。
自信を持って、そう言える。
驚いたし、戸惑ったし、不安だって押し寄せた。
それでもあの時、不安を押し流すように胸の奥から溢れてきた感情。
それは紛れもなく、かっきーへの愛おしさだった。
他の4期生とも違う。先輩メンバーとも違う。
かっきーのことを考えた時にだけ感じる、胸の奥があたたかくなる感じ。そんな愛おしさ。
「だからね…?私、すっごく嬉しかった……昨日のことも、いまかっきーが話してくれた気持ちも……」
「…さくちゃん……」
涙ぐんでいるような、かっきーの声。
今、どんな顔してるのかな。
背中からじゃ分からない。
もしかしたら、泣きそうでひどい顔してるから見られたくない、とか思ってるかな。
でも、私がこれから言うことだけは、かっきーの顔をちゃんと見て伝えたい。
私はかっきーの正面に回り込んでもう一度抱き締めると、かっきーの腰の後ろあたりで手を組んだ。
「かっきー…?」
声をかけて、うつむいているかっきーの顔を下から覗こうとしたけど、顔を見せようとしない。
「やっ…いまっ…ひどい顔してるから…絶対……」
(ふふっ…やっぱり……)
「じゃあ…そのままでもいいよ……?」
うつむいたままだったから、かっきーの表情は見えない。
それでも、かっきーが私の言葉を待ってくれているのは伝わってきた。
「私ね…?私も…かっきーが好きだよ……かっきーのことが、だーいすき……」
驚いたように顔を上げるかっきー。
その目には涙がたまっていた。
「でも…でも……!さくちゃんのは…同じメンバーだから、っていう好きでしょ……?私のは…私の好きは……!」
ちゅっ…
自分の唇で、かっきーの言葉を遮る。
唇が触れた瞬間、かっきーが息を止めて体を硬直させたのが分かる。
驚かせてしまった、と思う。
でも、私の気持ちをかっきーに伝えるには、これが一番の方法。
なぜだか分からないけど、そう確信していた。
やがて、かっきーの体の硬直が、少しずつ…本当に、少しずつ。
今かっきーの体に触れている私にも分かるか分からないかくらいのペースで、ゆっくりとほどけてゆく。
何故だか、それが嬉しかった。かっきーに、私の気持ちが伝わったことを実感できたからかもしれない。
(自分からキスしたくなる気持ちって、こういう感じなんだ……昨日のかっきーもこんな気持ちだったのかな…)
キスしていた時間は、たぶん昨日と同じくらい。
私はそっと唇を離すと、少し驚いたままの顔をしたかっきーに言った。
「ふふっ……昨日のお返し…」
「…さく、ちゃん……?」
かっきーは、何が起きたか分からないような顔をしている。昨日の私と同じで、キスされるなんて夢にも思っていなかったような顔。
「私の好きとかっきーの好きが同じかどうかは、分からないけど……でも、今みたいなことをかっきーにしたいって思えて…えっと…かっきーのほうからもして欲しくて……これからも…たくさんしたい…って思えるのが、私の好き……」
「…ほんと、に……?」
「うん……女の子だからとか、同じグループのメンバーだからとか、関係ないの……かっきーが、かっきーだから……好き…大好き……」
私の言葉を聞き終わる前に、かっきーの目にたまっていた涙がボロボロとこぼれ出した。
昨日とは逆に、今度はかっきーの方からおもいっきりハグされた。
(ふふっ…今日はかっきーが甘えん坊だなぁ…)
かっきーが泣き止むまで、私は頭をやさしく撫でていた。
心臓が、まだドキドキしてる。
それでも、かっきーに伝えたかった気持ちを言葉に出来た。
なんだか不思議な気分。
かっきーに自分の気持ちを伝えようと思ったのはほんの数分前なのに。
でも、ずっとずっと前から秘めていた気持ちを、やっと打ち明けられたような清々しさもあった。
~続く~
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