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46時間TV 編
46時間TV 6~両想い~
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かっきーが泣き止むのを待ってから、私たちは玄関から一段上がった床に座っていた。
2人で肩を寄せ合って、手を繋ぎながら。
まるで外の世界では時間が止まったみたいに、静かで穏やかな時間が流れていた。
さっきまで大泣きしていたからだろうか、少し鼻声のかっきーがゆっくりと話し始める。
遥香「私ね…好きってどういう気持ちなのか、ずっと分からなかったんだ…私たちの曲の歌詞にはあんなにたくさん出てくる言葉なのにね。男の人と付き合ったこともないし、誰かを特別に好きだって思ったこともない。もしかして私、女の子が好きなのかなって考えたこともあるけど、ハッキリとは分からなくて…」
さくら「うん…なんか、ちょっと分かるかも…」
遥香「私の周りの女子には、女の子が好きっていう子はいなかったから…それで、自分は周りの子とは違うって誰かに知られるのが怖くて…だから、友達の恋愛話とか、男子の誰がカッコいいとか、そういう話に盛り上がるフリをしてたこともあったなぁ…」
その話を聞いて、私は新メンバーオーディションのCMに出ていたかっきーのセリフを思い出した。
『周りと違う色を好きって言うのが怖くて、無理して周りに合わせてたことがあった。そんな自分が嫌いだった』
そんなセリフだったと思う。
(あのセリフって、かっきーの実体験から生まれたんだね…)
遥香「でもね…今のグループに入って、さくちゃんと一緒に選抜に選んでもらって、一緒にいる時間が増えて、いつからかさくちゃんのことどんどん考えるようになっていって……もしかしたら、これが好きなのかなって思ってて、昨日キスしてハッキリ分かった」
さくら「うん…ありがとう。すごくうれしい…」
私は、繋いでいた手をもう一度強く握り直した。
遥香「私たち、これからどうなるのかな?アイドルグループで、グループ内恋愛って、聞いたことないけど…」
さくら「う~ん…事務所には、言わないほうがいいかな…」
遥香「うん……そう、だよね…」
事務所の大人たちやスタッフさんたちには、理解してもらえるような気がする。
でも、もしもグループの中にそういうメンバーがいるってことが世間にバレてしまったら。
私たちには想像できないくらいの影響を与えるかもしれなくて、たくさんの人に迷惑をかけるかもしれない。
遥香「メンバーは、どうかな…?みんなびっくりするだろうけど、引かれたり、反対されたり、そういうのはないと思うんだ」
さくら「うん、みんな優しいからね」
遥香「でも、どこから広まるか分からないから、やっぱり秘密にしておいたほうがいいのかな…」
さくら「そうだね…そうかもしれない」
メンバーに打ち明けるまでは良くても、問題はその先だ。
秘密を守ってもらうということは、それで負担をかけてしまう。
遥香「じゃあ、誰にも言わずに、二人だけの秘密にしておこうか……私たちが…その…」
さくら「ん…?」
遥香「特別な関係で…両想いってこと…」
さくら「うん…そうだね…」
両想い。
それだけで十分だった。
付き合ってるとか、恋人同士とか、私たちの関係を周りがどう呼ぶのかは分からない。
なんでもいい。
かっきーが私のことを好きでいてくれて、私もかっきーのことが大好き。
そういう関係。それでいい。
~続く~
2人で肩を寄せ合って、手を繋ぎながら。
まるで外の世界では時間が止まったみたいに、静かで穏やかな時間が流れていた。
さっきまで大泣きしていたからだろうか、少し鼻声のかっきーがゆっくりと話し始める。
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さくら「うん…なんか、ちょっと分かるかも…」
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その話を聞いて、私は新メンバーオーディションのCMに出ていたかっきーのセリフを思い出した。
『周りと違う色を好きって言うのが怖くて、無理して周りに合わせてたことがあった。そんな自分が嫌いだった』
そんなセリフだったと思う。
(あのセリフって、かっきーの実体験から生まれたんだね…)
遥香「でもね…今のグループに入って、さくちゃんと一緒に選抜に選んでもらって、一緒にいる時間が増えて、いつからかさくちゃんのことどんどん考えるようになっていって……もしかしたら、これが好きなのかなって思ってて、昨日キスしてハッキリ分かった」
さくら「うん…ありがとう。すごくうれしい…」
私は、繋いでいた手をもう一度強く握り直した。
遥香「私たち、これからどうなるのかな?アイドルグループで、グループ内恋愛って、聞いたことないけど…」
さくら「う~ん…事務所には、言わないほうがいいかな…」
遥香「うん……そう、だよね…」
事務所の大人たちやスタッフさんたちには、理解してもらえるような気がする。
でも、もしもグループの中にそういうメンバーがいるってことが世間にバレてしまったら。
私たちには想像できないくらいの影響を与えるかもしれなくて、たくさんの人に迷惑をかけるかもしれない。
遥香「メンバーは、どうかな…?みんなびっくりするだろうけど、引かれたり、反対されたり、そういうのはないと思うんだ」
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遥香「でも、どこから広まるか分からないから、やっぱり秘密にしておいたほうがいいのかな…」
さくら「そうだね…そうかもしれない」
メンバーに打ち明けるまでは良くても、問題はその先だ。
秘密を守ってもらうということは、それで負担をかけてしまう。
遥香「じゃあ、誰にも言わずに、二人だけの秘密にしておこうか……私たちが…その…」
さくら「ん…?」
遥香「特別な関係で…両想いってこと…」
さくら「うん…そうだね…」
両想い。
それだけで十分だった。
付き合ってるとか、恋人同士とか、私たちの関係を周りがどう呼ぶのかは分からない。
なんでもいい。
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~続く~
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