さくらと遥香

youmery

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かっきー2回目のセンター 編

一緒のほうが落ち着くから

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真夏の全国ツアー2022が始まる前日。

ライブに出演するほとんどのメンバーは、今日のうちに大阪への移動を済ませる。

大阪公演の会場で前日リハを終えた私たちは、夜になってホテルに到着したところだった。

グループのみんなでホテルに泊まる場合、大抵は期別で50音順ペアの2人部屋になる。

私とかっきーは同期で名字も「え」と「か」で近いので、2人部屋だった。

これまでもライブで遠征する時は同じ部屋になることが多かったけど、恋人同士になってからは今回が初めてかもしれない。

(かっきーは何回も泊まりに来てくれてるし、お泊まり旅行にも行ったけど…お仕事の泊まりで一緒の部屋になるって新鮮な感じがするな…)

・・・・・・・・・・・・

ホテルのロビーで受付を済ませたメンバーが、次々とエレベーターへ向かっていく。

部屋の鍵を受け取った私とかっきーも、その流れに続いた。

(そういえば、来る途中で飲み物買い忘れちゃったな…)

さくら「あ、かっきー。私、ロビーの自販機で何か買っていくね」

遥香「うん、じゃあ先に部屋行って待ってるよ~」

1人でロビーに戻って、自販機の前で飲み物を選ぶ。

すると、女性のマネージャーさんに声をかけられたので、少し立ち話をする流れになった。

さくら「おつかれさまです」

マネ「おつかれさまー。さくちゃん、今夜はかっきーと同じ部屋だったよね?」

さくら「はい、一緒ですけど」

マネ「かっきーね、さくちゃんのこと本当に頼りにしてるみたいよ」

さくら「えっ…?どうしてですか?」

なんだろう…?

私の知らないところで何か話があったのかな…?

マネ「今回の部屋割りを決める時にマネージャー陣で話に出たんだけどね。かっきーを1人部屋にしてゆっくり休ませたほうがいいかなと思って、本人の希望を聞いてみたのよ」

(そうだったんだ…たしかに、昨日は体調不良で早退してたから、マネージャーさんも心配してるよね…)

マネ「そしたら、かっきーがね…『1人部屋もありがたいですけど、さくちゃんと同じ部屋のほうが落ち着けます』だって」

(………どうしよう…すごく、嬉しい…)

嬉しさで顔がにやけてしまいそうになるのをこらえる。

さくら「そ、そうだったんですね…あの、ありがとうございます。かっきーの希望通りにしてくれて」

マネ「ううん、気にしないで。かっきー本人が希望するならきっとそのほうがいいんだから。それにしても、私もこれまで何組か仲良しペアを見てきたけど、2人もすごく良い関係よね」

マネージャーさんが言ってる良い関係は、あくまで同じグループのメンバー同士としての意味だと思うけど。

私はそれでも嬉しかった。

秘密にしている私たちの関係を誰かに褒められることなんてなかったから。

さくら「ありがとうございます。私も、かっきーの力になりたいと思ってます」

・・・・・・・・・

マネージャーさんと別れて、エレベーターで私たちの部屋の階まで上がる。

部屋をノックすると、かっきーが鍵を開けて出迎えてくれた。

遥香「さくちゃーん!」

さくら「ふふふ、どうしたの?」

荷物を下ろす間もなく、いきなり抱きつかれた。

遥香「だって、やっとさくちゃんと2人きりになれるんだもん…」

今日は、東京からの移動も大阪に着いてからのリハも、グループのみんなで一緒に行動してきた。

同じ空間にいても2人きりになれないのは、たしかに少し寂しい。

私にもその気持ちは分かる。

だから、かっきーを優しく抱きしめ返した。

さくら「そうだね…今日は2人でゆっくり休もうね…?」

遥香「うん…!」

それから私たちは、交代でお風呂に入った。

温泉旅行では一緒に客室露天風呂に入った私たちだけど。

ホテルのユニットバスでは2人で入るにはさすがに狭かったし。

それに、他のメンバーが部屋を訪ねてきた時に2人とも出れないと変に思われてしまうから。

寝る前の時間で、明日が初披露となる新曲の振り付けや立ち位置を最終確認する。

遥香「…よしっ……これで明日は大丈夫かな…」

さくら「うん。きっと大丈夫だよ。かっきーにはみんなが付いてるから…」

遥香「うん…ありがとう。ブログにも書いたけど、大好きなみんなのこと考えると頑張れるような気がするんだ」

そういえば、選抜発表がテレビで放送されたのは昨日の夜だった。

そのタイミングに合わせて、かっきーは公式ブログを更新していた。

2回目のセンターを迎える不安と決意を素直に言葉にした、すごく良いブログだったと思う。

あれを読んだ人はみんな、きっとかっきーを応援したくなる。

私は、明日センターに立つかっきーを安心させるように抱き締めた。

さくら「かっきーは誰よりも頑張ってるよ…私はずっと見てきたから分かるもん…だから、今日はもう休も?」

遥香「ありがとう、さくちゃん…」

かっきーの熱い視線を受け止めると、私はかっきーにキスをした。

・・・・・・・・・・・・

電気を消して、それぞれのベッドに入っておやすみをする。

移動とリハで体は疲れていたはずだった。

それでも、明日から真夏の全国ツアーが始まると思うとさすがにドキドキしてくる。

(寝るまでは少し時間がかかりそうだな…かっきーはよく寝れるといいけど…)

それから、ベッドの上でごろごろして10分ほど経った頃だろうか。

遥香「………………さくちゃん…」

さくら「……ん…かっきー…?眠れないの…?」

話を聞くと、かっきーも私と同じような状態だったらしい。

遥香「さくちゃん……そっち、行ってもいい…?」

さくら「うん…いいよ…」

かっきーが、自分の枕を持って私のベッドへ潜り込んできた。

1人用のベッドとはいえ、セミダブルくらいの広さはある。

2人でも十分寝れる広さだったけど、私たちは体を寄せ合った。

私は、目の前に置かれたかっきーの手を自然と握る。

(……?…かっきーの手…もしかして……)

わずかだけど、かっきーの手は震えているようだった。

無理もない、と思った。

翌日にセンター曲を初めて披露するというのに、何も感じない子はいないだろう。

これまでの先輩メンバーだってきっとそうだったはずだし、私の時だって不安でいっぱいだったと思う。

私は、グーの形で握られていたかっきーの指をゆっくりとほどくと、自分の指をからめてやさしく握り直した。

(かっきー…大丈夫……大丈夫だよ…私の前では、いくらでも不安を吐き出していいから…かっきーが落ち着くまで、いくらでもこうしてるから…)

かっきーがよく眠れるようにと頭をやさしく撫でていたら、不思議と私の気持ちも落ち着いていったらしい。

そのまま私たちは、ほぼ同時に寝てしまった…
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