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かっきー2回目のセンター 編
センターにふさわしい人
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次のシングルの選抜発表が済むと、グループの活動は途端に慌ただしくなる。
新曲のレコーディング。
ダンスの振り入れ。
ミュージックビデオの撮影。
ジャケット写真の撮影、などなど…
中でも特に大事なイベントは、新曲の初披露だ。
今回の新曲を初めてお客さんに見てもらうのは、真夏の全国ツアー2022の初日。
選抜発表の様子がテレビで放送された2日後と決まっていた。
さらに今年のツアーがスタートする大阪は、センターを務めるかっきーが生まれた場所。
新曲の初披露を演出するためにふさわしい環境が完璧に揃っている。
それだけに、センターのかっきーには大きなプレッシャーがのしかかっているように思えて、私は不安だった。
そして、大阪公演初日が2日後に迫った7月の中旬。
かっきーは、ファンの皆さんとのビデオ通話イベントを体調不良で途中から休むことになった。
・・・・・・・・・・・・
レイ「は~、今日も一日疲れたね~。さくちゃん、今日はどうだったー?」
私は、ミート&グリートを5部まで終えた他の4期生メンバーと一緒に、帰り支度をしながら楽屋で感想を話していた。
さくら「うん、やっぱり一日中だと大変だよね…。でも、ファンの皆さんに応援してもらえて元気も出たよ。全ツ見に行きますとか、そういう話も多かったかな」
レイ「あー、やっぱりそうだよねー。あ、そういえばかっきーのこと心配するファンの人も何人かいたよ」
紗耶「あ、私んとこに来てくれたファンの人も言ってた。かっきーってほんとみんなに愛されてるよね」
2人と同じように、私のファンの中にもかっきーの話題を出してくれた人がいた。
タイミング的にかっきーが帰る時に私は見送れなかったけど、今ごろ家でゆっくり休めてるのかな。
そこまで深刻な体調不良ではないとマネージャーさんから聞いていたけど、やっぱり心配だった。
(どうしよう…かっきーに連絡してもいいのかな…?でも、もし寝てたら起こしちゃうかもしれないし…)
私も含め、ライブに出演するメンバーは明日の新幹線で大阪へ移動して前泊する予定だ。
だから、今日のうちに出来るだけ体を休めてほしい。
でも、かっきーの様子も気になる…
いつもの優柔不断癖で悩んでいると、テーブルの上に置いておいたスマホの画面が点いた。
LINEの通知だ。
さくら「あっ…」
かっきーからのメッセージだった。
私は、なんとなく他のみんなにバレないようにこっそりとスマホを確認した。
遥香LINE「さくちゃん、ミーグリおつかれさま~。そろそろ楽屋で帰る準備してたかな?」
さくらLINE「かっきー♥️さっきミーグリが終わって、いま楽屋でみんなと話してたとこだよ」
続けて私は、かっきーの体調はどんな様子か、何か必要なものはないか訊いてみた。
私もかっきーも、上京して一人暮らしをしている身だから分かる。こういう時に頼れる人は意外と少ないものだし、遠慮しがちな私たちみたいな性格ならなおさらだった。
遥香LINE「さくちゃん、ありがとー😭でも、帰る途中でいろいろ買っておいたから大丈夫だよ。それに、家に着いてからずっと横になってたらだいぶ元気になったし」
さくらLINE「そっかぁ。なら良かった!」
文面からは元気な様子が伝わってきて、ひとまず安心した。
このまま今夜もゆっくり休めば、明日の移動、そして明後日からのライブも大丈夫かもしれない。
1人でホッと胸をなでおろしていると、かっきーから続けてメッセージが来た。
遥香LINE「ほんとは、今夜もさくちゃんの温もりをもらければもっと元気になれそうだけど…( 〃▽〃)でも、今日はさくちゃんもゆっくり休んでね!」
………読んだ途端、少しだけ体温が上がる。相手から温もりをもらうということは、つまり肌と肌を……まあ、そういうことになる。
(もぅ~…こんなの、他の子に見られたら大変だよ…)
さくらLINE「もー!そういうのは、もっと元気になってから…ね?」
そういう私も、かっきーのことをとやかく言えないような恥ずかしい返事をしてしまった。
(「そういうの」って…私、一体どういうのを想像してるのよ…)
心のなかで、自分を問いただしたくなる。
かっきーの写真集発売のお祝いも兼ねて、先月行ってきた初めてのお泊まり温泉旅行。
月が綺麗だったあの夜、これまでよりも更に深いところで結ばれた私たち。
あれ以来、他のメンバーにはとても見せられないような…
そんな恥ずかしいやり取りをすることがたまにある。
・・・・・・・・・
それから何往復かメッセージをやり取りをしたけど、明後日の新曲披露のことは特に何も言ってこなかった。
(かっきーが一番プレッシャーに感じちゃってるはずなのに…もしかして、私に心配かけないようにしてるのかな…)
さくらLINE「かっきー、明日も明後日も、体がツラかったら無理だけはしないでね…先輩たちも、4期生のみんなもいるし、5期生の子たちだって頑張ってくれるから。ライブは絶対になんとかなるから」
もしも、新曲が初披露されるライブでセンターが不在になってしまったら。
世間やファンの皆さんには、それなりの衝撃が走るかもしれない。
でも、だからといってかっきーの健康より大事なことなんてあるはずがない。
とにかく私は、かっきーに無理だけはしてほしくなかった。
遥香LINE「うん、ありがとね。さくちゃんも、みんなも、ほんとに頼もしいよ。すごく嬉しいし、やっぱりこのグループのみんなが大好きだなって思う。だからね、この大好きって気持ちがあれば、今回のセンターも頑張れるような気がしてる。本当にツラいと思ったら無理はしないし、出来ないことだってたくさんあるけど。それでも、出来るだけのことはやってみたい」
素直で、何の曇りもない。
かっきーらしい、まっさらな言葉だった。
こういう人が、センターにふさわしいんだと思う。
自虐をするつもりはないけど、私よりもかっきーの方が、今のポジションにはずっとずっとふさわしい人だ。
かっきーのまっすぐさに、仲間として、恋人として、誇らしい気持ちすら感じる。
だからこそ、私に出来ることがあればなんでもしたい。
(そういえば、かっきーが初めてキスしてくれた時にも私はこんな気持ちだったな…頑張ってるかっきーに、なんでもしてあげたいって気持ち…)
数ヶ月前の思い出に浸りかけたけど、これ以上かっきーが休む時間を奪うのはよくない。
私は、何かあったらいつでも連絡してくれて構わないことを念押しで伝えると、かっきーとのLINEを終えた。
(かっきー…今日は一緒にいられないけど…私が付いてるから…なにがあっても、私はかっきーの味方だから…)
4期生のみんなとの会話に復帰して帰り支度を再開していたけど、頭の中ではかっきーのことでいっぱいだった。
~続く~
新曲のレコーディング。
ダンスの振り入れ。
ミュージックビデオの撮影。
ジャケット写真の撮影、などなど…
中でも特に大事なイベントは、新曲の初披露だ。
今回の新曲を初めてお客さんに見てもらうのは、真夏の全国ツアー2022の初日。
選抜発表の様子がテレビで放送された2日後と決まっていた。
さらに今年のツアーがスタートする大阪は、センターを務めるかっきーが生まれた場所。
新曲の初披露を演出するためにふさわしい環境が完璧に揃っている。
それだけに、センターのかっきーには大きなプレッシャーがのしかかっているように思えて、私は不安だった。
そして、大阪公演初日が2日後に迫った7月の中旬。
かっきーは、ファンの皆さんとのビデオ通話イベントを体調不良で途中から休むことになった。
・・・・・・・・・・・・
レイ「は~、今日も一日疲れたね~。さくちゃん、今日はどうだったー?」
私は、ミート&グリートを5部まで終えた他の4期生メンバーと一緒に、帰り支度をしながら楽屋で感想を話していた。
さくら「うん、やっぱり一日中だと大変だよね…。でも、ファンの皆さんに応援してもらえて元気も出たよ。全ツ見に行きますとか、そういう話も多かったかな」
レイ「あー、やっぱりそうだよねー。あ、そういえばかっきーのこと心配するファンの人も何人かいたよ」
紗耶「あ、私んとこに来てくれたファンの人も言ってた。かっきーってほんとみんなに愛されてるよね」
2人と同じように、私のファンの中にもかっきーの話題を出してくれた人がいた。
タイミング的にかっきーが帰る時に私は見送れなかったけど、今ごろ家でゆっくり休めてるのかな。
そこまで深刻な体調不良ではないとマネージャーさんから聞いていたけど、やっぱり心配だった。
(どうしよう…かっきーに連絡してもいいのかな…?でも、もし寝てたら起こしちゃうかもしれないし…)
私も含め、ライブに出演するメンバーは明日の新幹線で大阪へ移動して前泊する予定だ。
だから、今日のうちに出来るだけ体を休めてほしい。
でも、かっきーの様子も気になる…
いつもの優柔不断癖で悩んでいると、テーブルの上に置いておいたスマホの画面が点いた。
LINEの通知だ。
さくら「あっ…」
かっきーからのメッセージだった。
私は、なんとなく他のみんなにバレないようにこっそりとスマホを確認した。
遥香LINE「さくちゃん、ミーグリおつかれさま~。そろそろ楽屋で帰る準備してたかな?」
さくらLINE「かっきー♥️さっきミーグリが終わって、いま楽屋でみんなと話してたとこだよ」
続けて私は、かっきーの体調はどんな様子か、何か必要なものはないか訊いてみた。
私もかっきーも、上京して一人暮らしをしている身だから分かる。こういう時に頼れる人は意外と少ないものだし、遠慮しがちな私たちみたいな性格ならなおさらだった。
遥香LINE「さくちゃん、ありがとー😭でも、帰る途中でいろいろ買っておいたから大丈夫だよ。それに、家に着いてからずっと横になってたらだいぶ元気になったし」
さくらLINE「そっかぁ。なら良かった!」
文面からは元気な様子が伝わってきて、ひとまず安心した。
このまま今夜もゆっくり休めば、明日の移動、そして明後日からのライブも大丈夫かもしれない。
1人でホッと胸をなでおろしていると、かっきーから続けてメッセージが来た。
遥香LINE「ほんとは、今夜もさくちゃんの温もりをもらければもっと元気になれそうだけど…( 〃▽〃)でも、今日はさくちゃんもゆっくり休んでね!」
………読んだ途端、少しだけ体温が上がる。相手から温もりをもらうということは、つまり肌と肌を……まあ、そういうことになる。
(もぅ~…こんなの、他の子に見られたら大変だよ…)
さくらLINE「もー!そういうのは、もっと元気になってから…ね?」
そういう私も、かっきーのことをとやかく言えないような恥ずかしい返事をしてしまった。
(「そういうの」って…私、一体どういうのを想像してるのよ…)
心のなかで、自分を問いただしたくなる。
かっきーの写真集発売のお祝いも兼ねて、先月行ってきた初めてのお泊まり温泉旅行。
月が綺麗だったあの夜、これまでよりも更に深いところで結ばれた私たち。
あれ以来、他のメンバーにはとても見せられないような…
そんな恥ずかしいやり取りをすることがたまにある。
・・・・・・・・・
それから何往復かメッセージをやり取りをしたけど、明後日の新曲披露のことは特に何も言ってこなかった。
(かっきーが一番プレッシャーに感じちゃってるはずなのに…もしかして、私に心配かけないようにしてるのかな…)
さくらLINE「かっきー、明日も明後日も、体がツラかったら無理だけはしないでね…先輩たちも、4期生のみんなもいるし、5期生の子たちだって頑張ってくれるから。ライブは絶対になんとかなるから」
もしも、新曲が初披露されるライブでセンターが不在になってしまったら。
世間やファンの皆さんには、それなりの衝撃が走るかもしれない。
でも、だからといってかっきーの健康より大事なことなんてあるはずがない。
とにかく私は、かっきーに無理だけはしてほしくなかった。
遥香LINE「うん、ありがとね。さくちゃんも、みんなも、ほんとに頼もしいよ。すごく嬉しいし、やっぱりこのグループのみんなが大好きだなって思う。だからね、この大好きって気持ちがあれば、今回のセンターも頑張れるような気がしてる。本当にツラいと思ったら無理はしないし、出来ないことだってたくさんあるけど。それでも、出来るだけのことはやってみたい」
素直で、何の曇りもない。
かっきーらしい、まっさらな言葉だった。
こういう人が、センターにふさわしいんだと思う。
自虐をするつもりはないけど、私よりもかっきーの方が、今のポジションにはずっとずっとふさわしい人だ。
かっきーのまっすぐさに、仲間として、恋人として、誇らしい気持ちすら感じる。
だからこそ、私に出来ることがあればなんでもしたい。
(そういえば、かっきーが初めてキスしてくれた時にも私はこんな気持ちだったな…頑張ってるかっきーに、なんでもしてあげたいって気持ち…)
数ヶ月前の思い出に浸りかけたけど、これ以上かっきーが休む時間を奪うのはよくない。
私は、何かあったらいつでも連絡してくれて構わないことを念押しで伝えると、かっきーとのLINEを終えた。
(かっきー…今日は一緒にいられないけど…私が付いてるから…なにがあっても、私はかっきーの味方だから…)
4期生のみんなとの会話に復帰して帰り支度を再開していたけど、頭の中ではかっきーのことでいっぱいだった。
~続く~
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