さくらと遥香

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かっきー2回目のセンター 編

夏休み、何する?

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真夏の全国ツアー2022の期間中のこと。

福岡公演を終えて、翌週に北海道公演を控えたタイミングで新曲のミュージックビデオが公開された。

かっきーにとって2回目となる表題曲センターのMVのテーマは、

「かっきーが脳内会議で夏休みの予定を決める」

だった。

MV公開日の夜に、私は自分の部屋でかっきーと過ごしていた。

恋人のかっきーがすごく可愛く撮られている作品を、かっきーと一緒に見たかったから。

かっきーは自分の動画を見るのを恥ずかしがるクセがあって、私もその気持ちは分かる気がする。

でも、そうやって恥ずかしそうにしてるかっきーも私は大好き。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

さくら「はぁ~~かわいかったぁ~~~、かっきーの笑顔も悩んでる顔も、ほんとにかわいかった!!」

遥香「いやいや、かわいいのはさくちゃんだし!!控え目に手を挙げて発言する時の顔とか仕草とか、も~~たまらんって感じ!!」

私たちはテレビの前でソファに並んで座り、youtubeで鑑賞会を終えたところだった。

さくら「ふふふっ。かっきー、見てるところがマニアックだよ笑」

遥香「えー??さくちゃんファンなら絶対にみんな注目してるよ~」

2人が出てる映像作品を一緒に見た後は、大抵こんな流れになる。

お互いを褒め合って、お互いが照れる。

甘々な時間。

(こういうのもしかして、バカップルってやつ…?)

冷静になるとちょっと恥ずかしくなるけど、かっきーの好きなところはちゃんと好きって伝えたい。

だって、かっきーだってそうしてくれるから。

その後もお互いのことをひとしきり褒め合ったあと、MVの内容にちなんで「一ヶ月も夏休みがあったら何をしたいか?」という話題になった。

MVの中のかっきーは、8月のスケジュールをびっしりと埋めていたから。

遥香「私、さくちゃんが1人で散歩してたあの温泉街に行ってみたい!何だっけ、あの、金沢の…」

さくら「山中温泉ね、私もかっきーと2人でのんびり歩いてみたいよ」

遥香「うんうん。あとね、今は無理だけど2人でもっと遠くも行ってみたいかな~。海外とか…」

さくら「そうだね~。先輩たちが2人で海外旅行してたやつとか、ああいうマイペースな旅もちょっと憧れるなぁ」

2020年頃だったか、世界旅という名前の企画で先輩たちがペアで海外を旅行した番組が配信された。

当時出演したのは、1期生と2期生の先輩だけだったけど。

もし今あの企画が復活してくれるなら、私たち4期生のペアも行かせてもらえるだろうか。

遥香「旅行以外だと、さくちゃんは何かある?」

さくら「う~ん、私ね、別に長い休みじゃなくても出来るかもしれないけど、かっきーと一緒にやってみたいことがあって…」

遥香「なになに~?ワクワク⭐︎」

さくら「あの…コスプレ……なんだけどね…かっきーとまゆたんがYouTubeでやってたみたいなやつ…」

遥香「え~?!なんか意外!さくちゃん、アニメはけいおんしか見たことないって言ってたから…」

さくら「うん、そうなんだけどね…でも、かっきーと一緒にやるなら楽しそうだなって、あの動画見ながら思ってたの。それに、コスプレしたかっきーをいちばん近くで見てみたいし…」

遥香「さくちゃ~ん…そんなこと思っててくれたなんて、すっごい嬉しい!いつか実現させようよ!スタッフさんにも相談してみるから!もしかしたらまゆたんは嫉妬しちゃうかもだけど笑」

旅行にコスプレ、、他にも、MVの中に出てきたようにキャンプをしたり、美術館に行ったり、おうちでのんびり過ごしたり。

普段はおうちから出ない私だけど、かっきーと一緒ならどれも楽しそう。

でも、いちばん現実的な問題は休みを取れるかどうか。今の私たちが2人揃って長い休みを取るのはほぼ不可能だ。

一ヶ月どころか、一週間だって難しい。
いや、お仕事をさせてもらえてるのはとっても嬉しいことだけど。

さくら「いつか、このMVみたいにのんびり出来るのかな…」

遥香「うん…いつか、そういう日が来るよ。いつかはわからないけど、きっと来るんだと思う」

かっきーの言う「そういう日」を迎えるには、現実的に考えて絶対に越えなければいけない一つの条件がある。

ただ、私もかっきーもあえて『卒業』の二文字は口にしなかった。

卒業のタイミングも分からないし、卒業した後で何をやっていくかなんてもっと分からない。

去年の暮れに卒業してミュージカル女優として活躍している、あの大先輩のような人もいるけど。

私もかっきーも、明確な夢を持ってこの世界に入ってきたわけじゃないから。

グループにいつまでいるか、この世界にいつまでいるか、その後は…?


未来は、分からないことだらけ。

それでも、私には未来に向けて一つの願いがあった。

さくら「私ね…いつかグループでの活動を終えて、グループ以外のお仕事も全部引退して…もしそうなっても…」

続けようと思っていた言葉は、かっきーの未来を縛り付けるかもしれない言葉だった。そう考えると口にするのが怖い。

かっきーにはかっきーの夢があるかもしれないし、これから新しい夢を持つかもしれない。

それでも。

さくら「私は、かっきーと一緒にいたい」

(言っちゃった…けど、これが私の素直な気持ちだから…)

かっきーから同じ言葉が返ってくるとは限らない。

それでも良いと思っていたけど、やっぱり反応が気になる。

ドキドキしながら待っていると、かっきーは言葉を返してくれる前に私の手をぎゅっと握ってくれた。

遥香「さくちゃん、ありがとう…すっごく嬉しいよ。ほんとに、すごく…」

かっきーの声が、段々と声にならなくなっていく。

不思議に思ってかっきーの顔を見ると、涙目になっている。

「大丈夫?」と声をかける前に、体を寄せてきたかっきーに抱きしめられた。

遥香「さくちゃん…私もおんなじだよ…?先のことなんて今考えたって分からないし、不安は絶対になくならないけど…でも、どんな未来でもさくちゃんがいてくれたらいいなって思ってた…だから、さくちゃんの言葉がすっごく嬉しいの…」

さくら「かっきー…」

私からも同じくらいの力で抱きしめ返した後、いつもより少し長いキスをした。

キスしているあいだ、かっきーと一緒に生きていく未来を想像する。

たぶんかっきーも、同じことを想像していたと思う。

唇が離れたあと、もっと甘い時間が始まるのかと思いきや、かっきーが何かに気付いたようにハッとした。

遥香「あれ…?ちょっと待って…さくちゃん、今のって、プロポーズ…?」

さくら「えっ…?!いや、そう、なのかな…?私は、これから先もこうだったらいいなってことを伝えたかっただけなんだけど…」

遥香「うん、私も…そう……えっと、じゃあ、今のはそういうのじゃないってことで…そういうのは、もっとこう、ちゃんとしたいから!あと、私からしたいし!!」

さくら「ふふっ、そういうのってどういうの?っていうか、私からしたってよくない?告白してくれたのはかっきーのほうからだったし、次は私からだっていいじゃん!」

遥香「いや!次も私が!私からがいい!」

2人とも妙に熱が入ってしまって、そしてそれがだんだんおかしくなってきて、最後は涙を浮かべながら笑い合った。

さくら「もぉ~、かっきー、途中から目が本気なんだもん…それにこういうのって普通、自分がするよりされるのを夢見るものじゃない?女の子なら」

遥香「いや、私は最初からずっと本気だし!それに、私たちの場合女の子同士だからね~…いいんじゃない?自分からしたい!って思っても」

さくら「そっか…女の子同士、だもんね…そうだね❤️」

MVの鑑賞会だったはずが、2人のこれからの人生に関わるような壮大な話になってしまった。

予想外の展開だったけど、初めて口にしたお互いの想いを確かめ合えた、すごく良い夜になった。

それから。

言葉だけでは伝え切れない想いは、肌と肌を重ねて全身で伝えて、受け止めた…

~続く~
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