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かっきー2回目のセンター 編
さくちゃんの手料理 前編
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始まりは7月の末だった。
全国ツアー福岡公演の夜、いつも通りの部屋割りでかっきーとツインの部屋に泊まっていた時のこと。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遥香「え?欲しいもの?」
さくら「うん…かっきー、もうすぐ誕生日だから何か欲しいものとかあるかな~って…」
私もかっきーもシャワーを浴び終えて、お互いのベッドでのんびりくつろいでいたタイミングで訊いてみた。
グループのみんなには内緒で付き合っているかっきーに何をプレゼントするか、実は2週間ほど前から悩んでいたのだ。
でも優柔不断の私には結局決められず、もう本人に聞いてみるしかないと思い立った結果。
それが今の状況というわけ。
遥香「そんな~、全然良いのに…それに、3ヶ月の記念日でもすっごく可愛いリップもらっちゃったし…」
さくら「うぅ~…でも、何かかっきーに贈りたいんだよ~…だって、かっきーと付き合ってから初めての誕生日だし…」
遥香「さくちゃん、ありがとね❤️じゃあ、うーん…そうだなぁ…………あっ、そしたら、欲しいものってわけじゃないけど、、私、さくちゃんの手料理が食べてみたいな~なんて…」
さくら「え?!手料理って…そんなのでいいの?」
付き合い始めてからはかっきーが私の部屋に泊まりに来てくれるようになったので、部屋で一緒にご飯を食べることもある。
でもこれまでは、買ってきたものを食べたりデリバリーで何か頼んだり、というパターンばかりで。そういえば、手料理を振る舞ったことはなかった。
遥香「うん。さくちゃんの手料理が食べれたら、私すっごく幸せ。もう、世界一幸せ❤️」
そう言って、目を少し細めたいつもの笑顔を向けてくれる。
(世界一かぁ…かっきーのその笑顔を独り占めできる私のほうが、絶対に幸せなんだけどなぁ…❤️)
だからかっきーは世界で二番目だよ、なんてことを口に出すのは恥ずかしいので心の中で留めておく。
さくら「わかった、じゃあ、何か作ってみるね!」
遥香「やったー!!」
部屋着姿のかっきーがベッドに座ったままバンザイして喜ぶ。
(か、かわいい…私なんかの手料理を食べれるってだけでこんなに喜んでくれるなんて…)
なんだかもうそのまま抱き付いて押し倒したくなるけど、明日のライブもあることだしぐっと堪える。
それから、かっきーの食べ物の好き嫌いを改めて確認してみたり、私の部屋にある調理道具を思い出したりしながらメニューを考え始めた。
ただ、ありがたいことにかっきーはなんでも美味しいと食べてくれる気がしていた。
だから、かえってメニューを決めるのは苦戦しそうだなと思い始めた時…
遥香「……あ、じゃあ私、豚カツが食べたい!!ほら、前に番組で作ってたやつ!」
さくら「豚カツかぁー…うん、わかった!」
グループの冠番組で作った時は、材料や道具の準備はスタッフさんが全部やってくれたんだった。
だけど今回はそうもいかない。
東京に来てから自分の家で揚げ物なんて作った記憶はないし、あの時みたいにうまく作れるかは分からない。
でも、かっきーがせっかくリクエストしてくれたんだ。
私はその期待に応えたいと思った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして迎えた、かっきーの誕生日当日。
今回のシングルのヒット祈願で、かっきーは横須賀でロケをしているらしい。
ヒット祈願を無事に終えたら私の部屋へ来てくれることになっている。
私は夕方前にお仕事を終えて帰ってきたので、前日に買ってあった材料を冷蔵庫から取り出して準備を始めていた。
(ふふっ…ご飯を作りながらかっきーの帰りを待ってるのって良いかも…なんか、同棲してるみたい…)
世間の主婦や主夫の皆さんは毎日メニューを考えるで大変そうだけど、こうやってたまに作るくらいなら楽しそう。
それに、今回はメニューが決まってるから悩まなくていいし。
そこまで考えて、私はハッとした。
(かっきー…もしかして…優柔不断な私を気遣って豚カツに決めてくれたの…?)
メニューを決めた時、ずいぶんハッキリと豚カツを推してくるかっきーにほんの少しの違和感を覚えたのを思い出す。
かっきーは多分、自分の誕生日だからって食べたいものを強く主張してくるような性格じゃない。
お肉は普通に好きだと思うけど、豚カツが特別好きってわけでもないと思う。
きっと、私がメニューを決められなくて困ると予想して具体的なメニューをリクエストしてくれたんだ。
(そういうさりげない気遣いが出来るところ、すごいなぁ…大好きだし、昔から変わらず尊敬しちゃう…)
かっきーへの想いで胸がいっぱいになると、私は張り切って準備を始めた。
腕まくりをして、髪も後ろで束ねる。
(あ、そういえば……)
いつもは野菜を焼いて食べるくらいの料理しかしないので忘れていたけど。
オーディションに合格して私が上京してくる時に、実家のお母さんが持たせてくれた“あるもの”をどこかにしまっていたのを思い出す。
キッチンの棚をいくつか開けてみると、それは見つかった。
(揚げ物で油が跳ねるかもしれないし、今日くらいちゃんとしてみよっかな……それに、もしかしたら、かっきーが喜んでくれるかもだし…)
そうして完全に料理をする格好になった私は、大好きなかっきーの帰りを待ちながら豚肉の筋切りを始めた…
~後編へ続く~
全国ツアー福岡公演の夜、いつも通りの部屋割りでかっきーとツインの部屋に泊まっていた時のこと。
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遥香「え?欲しいもの?」
さくら「うん…かっきー、もうすぐ誕生日だから何か欲しいものとかあるかな~って…」
私もかっきーもシャワーを浴び終えて、お互いのベッドでのんびりくつろいでいたタイミングで訊いてみた。
グループのみんなには内緒で付き合っているかっきーに何をプレゼントするか、実は2週間ほど前から悩んでいたのだ。
でも優柔不断の私には結局決められず、もう本人に聞いてみるしかないと思い立った結果。
それが今の状況というわけ。
遥香「そんな~、全然良いのに…それに、3ヶ月の記念日でもすっごく可愛いリップもらっちゃったし…」
さくら「うぅ~…でも、何かかっきーに贈りたいんだよ~…だって、かっきーと付き合ってから初めての誕生日だし…」
遥香「さくちゃん、ありがとね❤️じゃあ、うーん…そうだなぁ…………あっ、そしたら、欲しいものってわけじゃないけど、、私、さくちゃんの手料理が食べてみたいな~なんて…」
さくら「え?!手料理って…そんなのでいいの?」
付き合い始めてからはかっきーが私の部屋に泊まりに来てくれるようになったので、部屋で一緒にご飯を食べることもある。
でもこれまでは、買ってきたものを食べたりデリバリーで何か頼んだり、というパターンばかりで。そういえば、手料理を振る舞ったことはなかった。
遥香「うん。さくちゃんの手料理が食べれたら、私すっごく幸せ。もう、世界一幸せ❤️」
そう言って、目を少し細めたいつもの笑顔を向けてくれる。
(世界一かぁ…かっきーのその笑顔を独り占めできる私のほうが、絶対に幸せなんだけどなぁ…❤️)
だからかっきーは世界で二番目だよ、なんてことを口に出すのは恥ずかしいので心の中で留めておく。
さくら「わかった、じゃあ、何か作ってみるね!」
遥香「やったー!!」
部屋着姿のかっきーがベッドに座ったままバンザイして喜ぶ。
(か、かわいい…私なんかの手料理を食べれるってだけでこんなに喜んでくれるなんて…)
なんだかもうそのまま抱き付いて押し倒したくなるけど、明日のライブもあることだしぐっと堪える。
それから、かっきーの食べ物の好き嫌いを改めて確認してみたり、私の部屋にある調理道具を思い出したりしながらメニューを考え始めた。
ただ、ありがたいことにかっきーはなんでも美味しいと食べてくれる気がしていた。
だから、かえってメニューを決めるのは苦戦しそうだなと思い始めた時…
遥香「……あ、じゃあ私、豚カツが食べたい!!ほら、前に番組で作ってたやつ!」
さくら「豚カツかぁー…うん、わかった!」
グループの冠番組で作った時は、材料や道具の準備はスタッフさんが全部やってくれたんだった。
だけど今回はそうもいかない。
東京に来てから自分の家で揚げ物なんて作った記憶はないし、あの時みたいにうまく作れるかは分からない。
でも、かっきーがせっかくリクエストしてくれたんだ。
私はその期待に応えたいと思った。
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そして迎えた、かっきーの誕生日当日。
今回のシングルのヒット祈願で、かっきーは横須賀でロケをしているらしい。
ヒット祈願を無事に終えたら私の部屋へ来てくれることになっている。
私は夕方前にお仕事を終えて帰ってきたので、前日に買ってあった材料を冷蔵庫から取り出して準備を始めていた。
(ふふっ…ご飯を作りながらかっきーの帰りを待ってるのって良いかも…なんか、同棲してるみたい…)
世間の主婦や主夫の皆さんは毎日メニューを考えるで大変そうだけど、こうやってたまに作るくらいなら楽しそう。
それに、今回はメニューが決まってるから悩まなくていいし。
そこまで考えて、私はハッとした。
(かっきー…もしかして…優柔不断な私を気遣って豚カツに決めてくれたの…?)
メニューを決めた時、ずいぶんハッキリと豚カツを推してくるかっきーにほんの少しの違和感を覚えたのを思い出す。
かっきーは多分、自分の誕生日だからって食べたいものを強く主張してくるような性格じゃない。
お肉は普通に好きだと思うけど、豚カツが特別好きってわけでもないと思う。
きっと、私がメニューを決められなくて困ると予想して具体的なメニューをリクエストしてくれたんだ。
(そういうさりげない気遣いが出来るところ、すごいなぁ…大好きだし、昔から変わらず尊敬しちゃう…)
かっきーへの想いで胸がいっぱいになると、私は張り切って準備を始めた。
腕まくりをして、髪も後ろで束ねる。
(あ、そういえば……)
いつもは野菜を焼いて食べるくらいの料理しかしないので忘れていたけど。
オーディションに合格して私が上京してくる時に、実家のお母さんが持たせてくれた“あるもの”をどこかにしまっていたのを思い出す。
キッチンの棚をいくつか開けてみると、それは見つかった。
(揚げ物で油が跳ねるかもしれないし、今日くらいちゃんとしてみよっかな……それに、もしかしたら、かっきーが喜んでくれるかもだし…)
そうして完全に料理をする格好になった私は、大好きなかっきーの帰りを待ちながら豚肉の筋切りを始めた…
~後編へ続く~
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