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玲の日記
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〇月〇日
日記なんて書くの、いつぶりだろう。覚えてない。
でも、誰かに見せない文章って、どんな感じで書けばいいの?
とりあえず今日のことを書く。
絢が、デビューしたらブログ書かされるんだから、日記でも書いてみたらとすすめてきた。だから、書いてみる。絢が言ってくれたから、なんかそうしたいって思った。
デビューした後のことを考えるなんて、絢は私がオーディション合格するって思ってくれてるのかな。
まあ絢はなんだかんだ私のこと褒めてくれるから、評価甘めなのかも。でも嬉しい。絢はたまに毒舌になるけど、私がマジで凹むようなことは言ってこない。だから安心できるし、信頼してる。
応募書類はほんと難しかった。特に応募理由。喋るならなんとかなるけど。絢はちゃんと書けててすごいな。お手本みたいな文章だった。
私は国語苦手だし、作文とか大嫌いなんだけど、それでも今回は頑張った。最終的には「見ている人を明るく元気にするアイドルになりたいから」みたいなことを書けた。本当のことを書けてすっきりした。
私も昔アイドルの真似をして変わった気がするけど、それは書かないでおいた。別に、昔のことまで全部書かなくてもいいよね。昔の自分の話になったらなんかちょっとイヤだし。
審査でも聞かれたくない。
絢も忘れてるっぽいし、このまま知られたくない。昔の私のことは、なんか思い出してほしくない。
今日は写真も撮った。応募用の。
絢がたくさん撮ってくれたときは、ほんとにアイドルになったみたいで楽しかった。
絢の写真は私が撮った。絢は、控え目な感じで笑うのがかわいい。微笑む、っていうのかな(ほほえむってこういう漢字なんだ!)。
絢みたいな子がアイドルになったら、絶対に応援したいって思える。
でも、私は絢が全力で笑った顔も好き。中学くらいからあんまり見なくなったから、久しぶりに変顔したらめっちゃ笑ってくれて嬉しかった。昔から、あれやると絢は絶対笑ってくれる。
なんか、絢と一緒にオーディション頑張れて嬉しい。絢もオーディション受けるって言った時は驚いたけど、絢もいろいろ考えてたのかも。もしかしたら、まだ私が知らない絢もいるのかな。
逆に、絢が知らない私もいるのかな。知らないっていうか、覚えてない?そのほうがいいな。
すごい、初めての日記なのに結構書けた。
でも、なんか絢のことばっか書いてない?!
恥ずいんだけど。絢には絶対見せられない。
~~~
〇月〇日
無事、応募完了!
書類をポストに入れた。
これで、本当にアイドルオーディションの応募をしたんだなって実感。
ちょっとドキドキする。
絢と一緒だったら、きっと大丈夫だよね。
絢と一緒に受かるといいな。
~~~
〇月〇日
今日は絢とカラオケに行った。
歌唱審査の曲選びと、その練習。
絢は、どの曲も点数がすごく高かった。やっぱ歌うまいな~。
でもなんか、本人は納得いってなさそうだった。
私だったら、あんな高得点出せたら自信満々になっちゃうけど。
点数が高いだけじゃダメってこともあるのかな。そういえば、歌が苦手でもオーディションに合格するメンバーもいるみたいだし。
どんな審査をされるのか分からないけど、絢の歌は、いつもきれいで優しくて、私を安心させてくれる。
それだけで十分だって思う。
絢が悩んでそうだったから何か言ってあげたくて、でも「気持ちを込められる曲にしたら」とか、そんなフワッとしたことしか言えなかった。
パフェ、美味しかったな。
絢にも食べてほしかったんだけど、なんか、遠慮したみたい(えんりょって漢字、スマホじゃないと絶対書けないな!)。
あ!もしかしてオーディション中だから体型とか気にしてるの?!今頃気付いたー。私一人でバクバク食べちゃったじゃん!
でも、私がトイレから戻ってきたら絢の口元にクリームがついてたから、教えてあげた。
絢、めちゃびっくりしてたな。
やっぱり食べたくなっちゃって、こっそり食べたんだろうな。意外と食いしん坊で、うっかりしてて、かわいいって思った。
そこから、絢が何か思い出すみたいに静かになっちゃって、しばらくした後で次の曲を入れてた。
あの曲、懐かしかったなー。絢と一緒に観に行った映画の主題歌。
なんか、絢の雰囲気が違ってた。これまでより集中してるけど、点数とかは気にしてない感じ。曲の世界に入り込んでる、みたいな。
絢の歌は、いつもと全然違った。
歌詞が、すごく心に響いた。
「今までで一番良かった」って言ったら、「玲のアドバイスのおかげ」って言ってくれた。
私なんて全然大したこと言ってないのに。でも、なんか嬉しかった。
私の言葉が、絢の力になったんだって思うと、なんだか胸がじんわり熱くなった。
そういえば片想いの曲だったけど、あの曲なら絢は気持ちを込められるってこと?
じゃあもしかして、絢って好きな人とかいるの?
うちら、なぜか昔から恋バナってほとんどしないからなー。どうなんだろ。
うーん、もしかしたら聞いてみる、かも。わかんない。
~~~
〇月〇日
二次審査の合格通知が届いた。
よかったー!絢と一緒に合格できた。
絢と電話してたら、絢が、私が「好きな人がいるのか」って聞いたとき、驚いてたみたいで、なんか変だった。
なんでそんなに慌ててるんだろ。
「もし絢に好きな人がいたら、オーディションのせいで恋愛諦めさせちゃうかも」みたいなこと言ったら、絢は何も言えなくなっちゃって、やっぱり変だったな。
~~~
〇月〇日
絢の家でダンスの練習をした。
部屋、めっちゃ暑かった。
エアコンは付いてたけど、古いせいかあんまり効かなかった。
ダンスって、意外と汗かく。
あまりにも暑かったから、Tシャツを脱いでブラだけになって涼んでたら、絢に服着なよって言われた。
なんか、絢ってそういうの真面目っていうか、カタイんだよな~。
私は全然気にならないのに。
そのあと練習してたら、絢とぶつかって転ばせちゃった。
お姫様を抱きかかえるみたいに助けようと思ったけど、間に合わなかったなー。悔しい。
それでなんか、私が絢の上に覆いかぶさるみたいになっちゃって、めっちゃ恥ずかった!
漫画だったら、絶対倒れた勢いでキスしてるやつだな。
現実ではそんなことなかったけど、あんな近くから絢の顔を見たの久しぶりかも。やっぱり絢って美人だよなー。まつ毛も長いし。うらやましい。絢のきれいさに気付いてる人、絶対少ないと思う。
あと、あれなんだったんだろう。絢、最後は私のほっぺに手を当てて、目を閉じてた。なんか、変な感じになっちゃった。
絢のママが階段を上がってくる声がしたから、慌てて絢から離れてTシャツを着た。でも、いま思えば女の子同士だし、絢のママだって女の人だし、別に平気だったんだよな。なんか、焦っちゃった。女の子同士なのに。
そのあと、リビングでアイスをいただいた!美味しかった!
絢は、ダンスの振りは私よりちゃんと覚えてるから、あとは身体で覚えちゃえばもっと楽しんで踊れるようになるかな。
絢と一緒に踊るの、懐かしい。あの頃みたいに、絢も楽しく踊れるはず。
私は、あの頃みたいじゃダメだ。もう変わったから。弱い自分には戻りたくない。
次の審査も2人で通過できるといいな。
~~~
〇月〇日
今日は、ダンス審査だった。
会場にたくさんの人がいて、緊張した。
私、部活でダンスやってたから、ちょっとは自信があったんだけど。
私なんかより、ずっと上手い子もいた。まだ中学生くらいの子もいたな。やっぱり、子供の頃からそういうスクールで習ってたりするのかな。部活でやったくらいじゃ、全然ダメなのかも。
審査のあと、他の子たちが話してるのが聞こえた。レベル高すぎとか、あの子たちヤバいとか。
そんな声を聞いて、私も、自信がなくなっちゃった。
私、本当にアイドルになれるのかな。
今回の審査で、ダメかもしれない。
絢とは、別の組だった。どんな感じだったんだろ。帰りに落ち込んでる感じはなかったから、大丈夫そうな雰囲気だった。
私は今日の審査の話をするのが怖くなっちゃって、帰りは全然関係ない話をしながら帰ってきた。不自然だったかな。絢には、バレたくない。
今日の審査は、絢だけ受かって私だけ落ちるかも。そしたら、絢には頑張ってほしいな。絢がアイドルになったら、めっちゃ応援する。あ、でも、合格したら東京に行っちゃうのか。あんまり会えなくなるのかな。東京で芸能人になったら、私のことなんか忘れちゃうかな。
やっぱり、2人で合格したい。
~~~
〇月〇日
明後日、東京で最終審査がある。
だから明日、絢と一緒に東京へ行って、ホテルに泊まる。
絢と一緒の部屋が良いかなと思って誘ってみたけど、お互いにゆっくり休めるようにってことで別々になった。
私、絢に慰めてもらいたかったのかな。すごいわがまま言っちゃった。
別々の部屋にしたのに、明日「一緒にいたい」なんて言ったら、重いかな。
ダンス審査、私はなんで合格できたんだろ。運が良かっただけ?それとも、絢のおまけとか?
絢には絶対言えない。絢はきっと、そんなことないよって言ってくれるから。それがなんかツラい。
東京行くの、怖い。
オーディションの途中で辞退する子がいるって、聞いたことある。めっちゃもったいないって思ってたけど、今なら分かる。
今の私みたいに、この不安から解放されたいって思っちゃうんだろうな。
絢と一緒だったら、行けるかな。
一人だったら、私たぶんここで終わってた。めっちゃ怖いもん。
でも、せっかくここまで来たんだ。絢のおまけでも、ただの運でも良い。行けるところまで行ってみたい。怖いけど。
~~~
〇月〇日
さっきホテルに着いた。豪華ってわけじゃないけど、きれいなホテル。東京って感じがした。
絢はいまお風呂に入ってるかな。
私も入らないと。
でも、なんかそわそわして、落ち着かない。
あー、明日、大丈夫かな。
怖くて、どうしたらいいか分からない。
ママに電話してみようかな。でも、心配かけたくない。
絢に、話してみようかな。絢がお風呂から出た頃に部屋に行ってみようかな。
~~~
絢の部屋から戻ってきて、とりあえずお風呂に入った。
絢にも、言えなかった。
絢なら、絶対に聞いてくれる。でも、だから言えない。私のことで、心配かけたくない。
本当はこんなに怖いのに、絢の前では元気でいたい。
弱い自分を見せたくない。昔の自分に戻りたくない。
どうしたらいいかわかんない。
あー、泣きそう、泣く
絢
私、どうしたらいいかな
たすけて
~~~
絢が来てくれた。
救世主みたいだった。
絢はすごい。
全部、聞いてくれた。
私の不安、怖かったこと、全部。
めっちゃ泣いた。
ひどい顔してたと思う。でも、絢になら見られてもいいやって思った。
絢は、私の足りないところも、全部「好き」って言ってくれた。
本心のまま行動すればいいって。
絢と一緒だから、頑張れる。
絢の言葉に、勇気をもらえる。
おやすみ、絢。
ありがとう。
~~~
〇月〇日
家に帰ってきた。
オーディション、これで終わったんだ。
最終審査は、あっという間だった。
ステージに立った時、怖かった。
ライトが眩しかったし、たくさんの大人の視線を向けられてる感じがした。
でも、絢も同じステージに立ってるって思ったら、なんか大丈夫って思えた。
審査員の人には、どうしてアイドルになりたいのかって聞かれた。
喋り始めるとき、緊張で声が詰まりかけたけど、昨日絢がかけてくれた言葉を思い出した。
本心のままに答えれば、後悔なんかしないって。
絢は、応募書類に書いた内容とは全然違うことを答えてた。私も書類に書いてなかったことを喋ったけど、絢はもっとすごかった。あれが、絢の本心なんだと思った。
オーディションを受けたのは、私が理由だって言ってくれた。びっくりした。でも、嬉しかった。
審査が終わって、絢に呼ばれて、話をした。
絢の声が震えてて、苦しそうだった。
絢は、私に、特別な気持ちがあるって言ってくれた。
「親友としてだけじゃない」って。
絢は、泣きそうな顔で、話してくれた。
絢の言葉、嬉しかった。
私は、絢のことが大好きだ。
親友として、いちばん大切な人。
でも、絢が言ってくれた好きは、私の好きとは違うんだって。
絢は、私に、キスしてくれた。
頭が真っ白になった。
ファーストキスの相手が女の子なんて、考えたこともなかった。しかも、相手が絢だったなんて。
でも、
嫌ではなかった、気がする。
絢だから、なのかな。
あと単純に、絢の唇は柔らかくって、それも、嫌ではなかった。
嫌ではなかったけど、びっくりして何も言えなくなってたら、絢がごめんって言ってきた。
だから私は「本心に従って行動したなら、間違いなんてないんでしょ?」みたいなことを言った気がする。なんか、考える前に口から出た。絢が謝るのは絶対に違くて、謝る必要なんてないって思ったから。
絢が泣いてるのを見て、私も泣いた。
なんか、嬉しかったから。
絢が、私のこと、好きだって言ってくれて。
絢と、これから、どんな関係になっていくのかな。
まだ、よく分からないけど。
でも、一つだけ確かなことがある。
私は、これからも、絢と、ずっと一緒にいたい。
絢に会いたい。
日記なんて書くの、いつぶりだろう。覚えてない。
でも、誰かに見せない文章って、どんな感じで書けばいいの?
とりあえず今日のことを書く。
絢が、デビューしたらブログ書かされるんだから、日記でも書いてみたらとすすめてきた。だから、書いてみる。絢が言ってくれたから、なんかそうしたいって思った。
デビューした後のことを考えるなんて、絢は私がオーディション合格するって思ってくれてるのかな。
まあ絢はなんだかんだ私のこと褒めてくれるから、評価甘めなのかも。でも嬉しい。絢はたまに毒舌になるけど、私がマジで凹むようなことは言ってこない。だから安心できるし、信頼してる。
応募書類はほんと難しかった。特に応募理由。喋るならなんとかなるけど。絢はちゃんと書けててすごいな。お手本みたいな文章だった。
私は国語苦手だし、作文とか大嫌いなんだけど、それでも今回は頑張った。最終的には「見ている人を明るく元気にするアイドルになりたいから」みたいなことを書けた。本当のことを書けてすっきりした。
私も昔アイドルの真似をして変わった気がするけど、それは書かないでおいた。別に、昔のことまで全部書かなくてもいいよね。昔の自分の話になったらなんかちょっとイヤだし。
審査でも聞かれたくない。
絢も忘れてるっぽいし、このまま知られたくない。昔の私のことは、なんか思い出してほしくない。
今日は写真も撮った。応募用の。
絢がたくさん撮ってくれたときは、ほんとにアイドルになったみたいで楽しかった。
絢の写真は私が撮った。絢は、控え目な感じで笑うのがかわいい。微笑む、っていうのかな(ほほえむってこういう漢字なんだ!)。
絢みたいな子がアイドルになったら、絶対に応援したいって思える。
でも、私は絢が全力で笑った顔も好き。中学くらいからあんまり見なくなったから、久しぶりに変顔したらめっちゃ笑ってくれて嬉しかった。昔から、あれやると絢は絶対笑ってくれる。
なんか、絢と一緒にオーディション頑張れて嬉しい。絢もオーディション受けるって言った時は驚いたけど、絢もいろいろ考えてたのかも。もしかしたら、まだ私が知らない絢もいるのかな。
逆に、絢が知らない私もいるのかな。知らないっていうか、覚えてない?そのほうがいいな。
すごい、初めての日記なのに結構書けた。
でも、なんか絢のことばっか書いてない?!
恥ずいんだけど。絢には絶対見せられない。
~~~
〇月〇日
無事、応募完了!
書類をポストに入れた。
これで、本当にアイドルオーディションの応募をしたんだなって実感。
ちょっとドキドキする。
絢と一緒だったら、きっと大丈夫だよね。
絢と一緒に受かるといいな。
~~~
〇月〇日
今日は絢とカラオケに行った。
歌唱審査の曲選びと、その練習。
絢は、どの曲も点数がすごく高かった。やっぱ歌うまいな~。
でもなんか、本人は納得いってなさそうだった。
私だったら、あんな高得点出せたら自信満々になっちゃうけど。
点数が高いだけじゃダメってこともあるのかな。そういえば、歌が苦手でもオーディションに合格するメンバーもいるみたいだし。
どんな審査をされるのか分からないけど、絢の歌は、いつもきれいで優しくて、私を安心させてくれる。
それだけで十分だって思う。
絢が悩んでそうだったから何か言ってあげたくて、でも「気持ちを込められる曲にしたら」とか、そんなフワッとしたことしか言えなかった。
パフェ、美味しかったな。
絢にも食べてほしかったんだけど、なんか、遠慮したみたい(えんりょって漢字、スマホじゃないと絶対書けないな!)。
あ!もしかしてオーディション中だから体型とか気にしてるの?!今頃気付いたー。私一人でバクバク食べちゃったじゃん!
でも、私がトイレから戻ってきたら絢の口元にクリームがついてたから、教えてあげた。
絢、めちゃびっくりしてたな。
やっぱり食べたくなっちゃって、こっそり食べたんだろうな。意外と食いしん坊で、うっかりしてて、かわいいって思った。
そこから、絢が何か思い出すみたいに静かになっちゃって、しばらくした後で次の曲を入れてた。
あの曲、懐かしかったなー。絢と一緒に観に行った映画の主題歌。
なんか、絢の雰囲気が違ってた。これまでより集中してるけど、点数とかは気にしてない感じ。曲の世界に入り込んでる、みたいな。
絢の歌は、いつもと全然違った。
歌詞が、すごく心に響いた。
「今までで一番良かった」って言ったら、「玲のアドバイスのおかげ」って言ってくれた。
私なんて全然大したこと言ってないのに。でも、なんか嬉しかった。
私の言葉が、絢の力になったんだって思うと、なんだか胸がじんわり熱くなった。
そういえば片想いの曲だったけど、あの曲なら絢は気持ちを込められるってこと?
じゃあもしかして、絢って好きな人とかいるの?
うちら、なぜか昔から恋バナってほとんどしないからなー。どうなんだろ。
うーん、もしかしたら聞いてみる、かも。わかんない。
~~~
〇月〇日
二次審査の合格通知が届いた。
よかったー!絢と一緒に合格できた。
絢と電話してたら、絢が、私が「好きな人がいるのか」って聞いたとき、驚いてたみたいで、なんか変だった。
なんでそんなに慌ててるんだろ。
「もし絢に好きな人がいたら、オーディションのせいで恋愛諦めさせちゃうかも」みたいなこと言ったら、絢は何も言えなくなっちゃって、やっぱり変だったな。
~~~
〇月〇日
絢の家でダンスの練習をした。
部屋、めっちゃ暑かった。
エアコンは付いてたけど、古いせいかあんまり効かなかった。
ダンスって、意外と汗かく。
あまりにも暑かったから、Tシャツを脱いでブラだけになって涼んでたら、絢に服着なよって言われた。
なんか、絢ってそういうの真面目っていうか、カタイんだよな~。
私は全然気にならないのに。
そのあと練習してたら、絢とぶつかって転ばせちゃった。
お姫様を抱きかかえるみたいに助けようと思ったけど、間に合わなかったなー。悔しい。
それでなんか、私が絢の上に覆いかぶさるみたいになっちゃって、めっちゃ恥ずかった!
漫画だったら、絶対倒れた勢いでキスしてるやつだな。
現実ではそんなことなかったけど、あんな近くから絢の顔を見たの久しぶりかも。やっぱり絢って美人だよなー。まつ毛も長いし。うらやましい。絢のきれいさに気付いてる人、絶対少ないと思う。
あと、あれなんだったんだろう。絢、最後は私のほっぺに手を当てて、目を閉じてた。なんか、変な感じになっちゃった。
絢のママが階段を上がってくる声がしたから、慌てて絢から離れてTシャツを着た。でも、いま思えば女の子同士だし、絢のママだって女の人だし、別に平気だったんだよな。なんか、焦っちゃった。女の子同士なのに。
そのあと、リビングでアイスをいただいた!美味しかった!
絢は、ダンスの振りは私よりちゃんと覚えてるから、あとは身体で覚えちゃえばもっと楽しんで踊れるようになるかな。
絢と一緒に踊るの、懐かしい。あの頃みたいに、絢も楽しく踊れるはず。
私は、あの頃みたいじゃダメだ。もう変わったから。弱い自分には戻りたくない。
次の審査も2人で通過できるといいな。
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〇月〇日
今日は、ダンス審査だった。
会場にたくさんの人がいて、緊張した。
私、部活でダンスやってたから、ちょっとは自信があったんだけど。
私なんかより、ずっと上手い子もいた。まだ中学生くらいの子もいたな。やっぱり、子供の頃からそういうスクールで習ってたりするのかな。部活でやったくらいじゃ、全然ダメなのかも。
審査のあと、他の子たちが話してるのが聞こえた。レベル高すぎとか、あの子たちヤバいとか。
そんな声を聞いて、私も、自信がなくなっちゃった。
私、本当にアイドルになれるのかな。
今回の審査で、ダメかもしれない。
絢とは、別の組だった。どんな感じだったんだろ。帰りに落ち込んでる感じはなかったから、大丈夫そうな雰囲気だった。
私は今日の審査の話をするのが怖くなっちゃって、帰りは全然関係ない話をしながら帰ってきた。不自然だったかな。絢には、バレたくない。
今日の審査は、絢だけ受かって私だけ落ちるかも。そしたら、絢には頑張ってほしいな。絢がアイドルになったら、めっちゃ応援する。あ、でも、合格したら東京に行っちゃうのか。あんまり会えなくなるのかな。東京で芸能人になったら、私のことなんか忘れちゃうかな。
やっぱり、2人で合格したい。
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〇月〇日
明後日、東京で最終審査がある。
だから明日、絢と一緒に東京へ行って、ホテルに泊まる。
絢と一緒の部屋が良いかなと思って誘ってみたけど、お互いにゆっくり休めるようにってことで別々になった。
私、絢に慰めてもらいたかったのかな。すごいわがまま言っちゃった。
別々の部屋にしたのに、明日「一緒にいたい」なんて言ったら、重いかな。
ダンス審査、私はなんで合格できたんだろ。運が良かっただけ?それとも、絢のおまけとか?
絢には絶対言えない。絢はきっと、そんなことないよって言ってくれるから。それがなんかツラい。
東京行くの、怖い。
オーディションの途中で辞退する子がいるって、聞いたことある。めっちゃもったいないって思ってたけど、今なら分かる。
今の私みたいに、この不安から解放されたいって思っちゃうんだろうな。
絢と一緒だったら、行けるかな。
一人だったら、私たぶんここで終わってた。めっちゃ怖いもん。
でも、せっかくここまで来たんだ。絢のおまけでも、ただの運でも良い。行けるところまで行ってみたい。怖いけど。
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〇月〇日
さっきホテルに着いた。豪華ってわけじゃないけど、きれいなホテル。東京って感じがした。
絢はいまお風呂に入ってるかな。
私も入らないと。
でも、なんかそわそわして、落ち着かない。
あー、明日、大丈夫かな。
怖くて、どうしたらいいか分からない。
ママに電話してみようかな。でも、心配かけたくない。
絢に、話してみようかな。絢がお風呂から出た頃に部屋に行ってみようかな。
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絢の部屋から戻ってきて、とりあえずお風呂に入った。
絢にも、言えなかった。
絢なら、絶対に聞いてくれる。でも、だから言えない。私のことで、心配かけたくない。
本当はこんなに怖いのに、絢の前では元気でいたい。
弱い自分を見せたくない。昔の自分に戻りたくない。
どうしたらいいかわかんない。
あー、泣きそう、泣く
絢
私、どうしたらいいかな
たすけて
~~~
絢が来てくれた。
救世主みたいだった。
絢はすごい。
全部、聞いてくれた。
私の不安、怖かったこと、全部。
めっちゃ泣いた。
ひどい顔してたと思う。でも、絢になら見られてもいいやって思った。
絢は、私の足りないところも、全部「好き」って言ってくれた。
本心のまま行動すればいいって。
絢と一緒だから、頑張れる。
絢の言葉に、勇気をもらえる。
おやすみ、絢。
ありがとう。
~~~
〇月〇日
家に帰ってきた。
オーディション、これで終わったんだ。
最終審査は、あっという間だった。
ステージに立った時、怖かった。
ライトが眩しかったし、たくさんの大人の視線を向けられてる感じがした。
でも、絢も同じステージに立ってるって思ったら、なんか大丈夫って思えた。
審査員の人には、どうしてアイドルになりたいのかって聞かれた。
喋り始めるとき、緊張で声が詰まりかけたけど、昨日絢がかけてくれた言葉を思い出した。
本心のままに答えれば、後悔なんかしないって。
絢は、応募書類に書いた内容とは全然違うことを答えてた。私も書類に書いてなかったことを喋ったけど、絢はもっとすごかった。あれが、絢の本心なんだと思った。
オーディションを受けたのは、私が理由だって言ってくれた。びっくりした。でも、嬉しかった。
審査が終わって、絢に呼ばれて、話をした。
絢の声が震えてて、苦しそうだった。
絢は、私に、特別な気持ちがあるって言ってくれた。
「親友としてだけじゃない」って。
絢は、泣きそうな顔で、話してくれた。
絢の言葉、嬉しかった。
私は、絢のことが大好きだ。
親友として、いちばん大切な人。
でも、絢が言ってくれた好きは、私の好きとは違うんだって。
絢は、私に、キスしてくれた。
頭が真っ白になった。
ファーストキスの相手が女の子なんて、考えたこともなかった。しかも、相手が絢だったなんて。
でも、
嫌ではなかった、気がする。
絢だから、なのかな。
あと単純に、絢の唇は柔らかくって、それも、嫌ではなかった。
嫌ではなかったけど、びっくりして何も言えなくなってたら、絢がごめんって言ってきた。
だから私は「本心に従って行動したなら、間違いなんてないんでしょ?」みたいなことを言った気がする。なんか、考える前に口から出た。絢が謝るのは絶対に違くて、謝る必要なんてないって思ったから。
絢が泣いてるのを見て、私も泣いた。
なんか、嬉しかったから。
絢が、私のこと、好きだって言ってくれて。
絢と、これから、どんな関係になっていくのかな。
まだ、よく分からないけど。
でも、一つだけ確かなことがある。
私は、これからも、絢と、ずっと一緒にいたい。
絢に会いたい。
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