聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした・完結

まほりろ

文字の大きさ
30 / 37
二章

30話「パーティージャック」ざまぁ開始

しおりを挟む


私はケットシーの一族を引き連れパーティー会場に乗り込み、パーティーをジャックした。

「このパーティーは我々がジャックしました。
 死にたくなかったら動かない方がいいですよ」

突如現れた我々に会場は騒然となる。

客たちの反応は様々だ。泣き叫ぶ者、怒り出す者、何が起こったかわからずパニックになる者、ただ呆然と立ち尽くす者……などなど。

二足歩行の猫など大したことないと思ったのか、一部の人間が襲いかかってきた。

みぞおちに一発入れて、す巻きにして窓から吊るしておいた。

ここは三階だ。人間がこの高さから落ちたらひとたまりもない。

人間を外に放り投げられるように、ケルベロスに頼んで宮殿に張った結界を一時的に解いて貰っている。(城壁に張った結界はそのままなので場外に出ることは出来ない)

神話に登場する生き物を馬鹿にしないほうがいい。

人間一万人が同時に襲いかかってきても、ケットシー一匹で余裕で返り討ちに出来るのだから。  

結界の変わりにケットシーの一族と、一族に従う猫たちが会場の出入り口を固めている。

見た目が普通の猫だからといって侮らない方がいい。

ケットシーの眷属になった猫は、そのへんにいるライオンや虎より強いのだか。

「抵抗する人間は全員、彼らと同じ目に合わせます。
 うっかりして地面までの距離よりロープを長くしてしまうかもしれません。
 それでも構わない方はかかってきてください」

そう言って脅すと、人間たちはようやく大人しくなった。

「ケットシーの一族は会場の料理を運び出してください。
 猫たちはそのまま待機。
 人間はその場から動かないでください」

会場に配置されていた料理を、親族に運び出させる。

鴨のコンフィ、舌平目のムニエル、ガレット、キッシュロレーヌ、オニオングラタンスープ、ムール貝の白ワイン蒸し、ラタトゥイユ、パテドカンパーニュ、ローストチキン、タルタルステーキ、ブイヤベース、クロックムッシュ……良い匂いです。

ご主人様とコルト様にも食べさせてあげたかった。

「待て! 料理をどうする気だ!」

会場の中でひときわ派手な服を着た若い男が、運び出される料理を恨めしそうに眺め喚いている。

事前に調べてある。こいつはこの国の王太子で、王子時代にリコ様を馬車馬のように働かせ、用が済んだらリコ様を借金のかたに辺境伯に売ろうとしたゲス野郎だ。

そして王太子の隣りにいる派手なドレスを着た小柄な娘が王太子妃だ。

リコ様の婚約者だった王子を寝取り、リコ様に暴言を吐いた阿婆擦れだ。

こいつらにはリコ様がとりわけお世話になったようだから、特別な罰を与えなくては。

「貧民街にいる民に分け与えます」

スイーツだけはケルベロスへのご褒美としてこちらで頂きますけど。 

カヌレ、クリームブリュレ、チョコレートタルト、チョコレートムース、洋ナシの砂糖漬けとアイスクリームのチョコレートソース、アップルパイとパンプキンパイ、桃のタルトと木苺のタルトといちじくのタルト、プディング、紅茶のシフォンケーキ……ケルベロスの好物ばかりです。

「なんてもったいないことをするの!」
「貧民なんか飢えさせておけばいいんだ!」

王太子妃と王太子が揃って吠えている。

こいつらは人間のクズだな。

「言い忘れてましたが、城の大金庫のお金と食料庫の食べ物も我々が頂きました。
 王族の借金を返済するために税金を五倍にし、不作に苦しむ民から巻き上げたお金と食料ですから、彼らに返しても問題ありませんよね」

王族の借金の原因は王太子と王太子妃の浪費。

この二人には他の人間より重い罰が必要だと思う。

「勝手な事をするな!
 民が王族を支えるのは当然だろ!
 俺が異世界から聖女を召喚してやったから、国中の瘴気が浄化されたんだ!
 瘴気の浄化代だと思えば安いもんだろう!」
「そうよ! そうよ!」

王太子と王太子妃が吠えている。

瘴気の浄化をしたのはお前らじゃない、リコ様だ。

瘴気を浄化した功績を自分のものにし、偉そうにふんぞり返っている王太子と王太子妃に吐き気がした。

「王太子、並びに王太子妃、発言には気をつけてください。
 私はあなた方を殺したいほど嫌いなので」

私は爪を鋭く伸ばし、ネズミを狩るときの目で王太子をにらみつける。

「ひっ……!」

王太子はその場にへたり込み、おしっこをもらした。

「な、なななな……情けないわね!
 に、二足歩行の猫相手に……お、おおおお……おもらしなんかして……!」

王太子妃はがだがだと全身を震わせながらも、なんとか耐えている。

コルト様から聞いた話だと王太子妃はリコ様に、
「殿下がリコ様と結婚する前に瘴気の浄化が終わって良かったですわ。
 だって瘴気を浄化するしか能がない、品性もない、教養もない、身分も低い、年増のおばさんと結婚するなんて殿下が可哀想ですもの」
と言ったらしいな。

リコ様がお許しになるなら、この女に一瞬で老婆になる呪いをかけてやりたい。


しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

処理中です...