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本編
ちょちょチョコレート!
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次の日、元気に起床して干している天草の確認に行く。
「思ったよりも早く乾燥している」
これなら、あと二日くらいで回収できそうだ。即席で作ったメモ帳……もとい、ところてん日記に自然乾燥の経過を書き込むと朝食に向かった。
「今日の朝食はトマト卵とパンです」
サリさんが笑顔で朝食を出すが、私とラジェはやや緊張をしている。ファンシーな陶器のカップに紅茶が全員分注がれると、、爺さんの手が軽く上がる。
よし。紅茶をエレガントに人差し指と親指で摘まむと、爺さんの口角が上がった。
(ふっ、これくらい朝飯前だ)
鼻をヒクヒクさせながら爺さんを見ていると、すぐにキースな月光さんに注意される。
「ミリー嬢、その得意顔はやめましょう」
「……気を付けます」
「では、次に食事の作法ですね」
キースな月光さんが食事の作法を実演してくれる。貴族の食事のルールは結構多くて大変だ。
そう……今、私とラジェは明日のオーレリア王女とのお茶会に向け、最低限のマナーを指導してもらっている。席の付き方から、食器の持ち方まで――前世の知識はある程度あるものの、こちらにはこちらの独自のルールがある。今は、王国のマナーをやっつけで覚えている。
ラジェはどこで覚えたのだろうか、大体のテーブルマナーをすでに習得していた。
隣ですました顔で座るラジェに視線をやると、上品に微笑まれる。
爺さんもキースな月光さんも、違和感を口にしないあたり……私が認識していないラジェの情報を知っているようだ。
キースな月光さんのマナー講座が続く中、いつまでも食べられない朝食を眺める。すると、グーッとお腹が鳴った。すぐに爺さんが鼻で笑いながら言う。
「作法は中断してひとまず食事にせねば、腹の虫が暴れそうな奴が一人いるな」
「ま、まだ大丈夫です」
たしかにお腹は空いたけれど、腹が一度鳴っただけだ。
「そんなひもじい顔で言われても説得力はないな。残りの作法は昼食時にやろう。ほれ、我慢せずにさっさと食え」
「それなら――いただきまーす!」
遠慮せずにトマト卵を頬張る。
(美味しい~)
トマト卵は、トマトソースに卵を落として煮込んだ料理だ。パンに付けると美味しさが増す。
朝食が終わると、ウキウキしながらキッチンへと向かう。ラジェとキースな月光さんは裏庭で魔法の特訓をするという。爺さんは何か商談があるらしく、エルさんを連れて出かけた。
私はサリさんと一緒に念願のチョコレート作りだ!
カカオニブは少量しかないので、一回きりのチャレンジになる。成功しても、ここにいるみんなとシェアをする予定だなので、一人一かけらを食べる感じになると思う。
オーレリア王女からもらったカカオニブをすり鉢に入れ潰す。
カカオニブをある程度粉砕したら、サリさんに準備してもらった湯煎の上にすり鉢を載せ、さらに細かく磨り潰していく。
サリさんがすり鉢を覗き込みながら首を傾げる。
「なんだか粘土のようですね」
「まだまだ練ります」
その後、練ること二十分…… ヨシヨシ、思惑通りにペースト状になってきた。
少し止まり、小さなため息をつく。うーん……この作業結構時間がかかる。
途中、子供パワーの限界でサリさんに作業を交代してもらう。魔法を使えば楽かもしれない。でも、人力でどれほど時間が掛かるかを知るのも重要だ。それに、サリさんの手前、複数の魔法は使えない。
五十分ほど経過すると、油分が溶け出して艶が付き始める。
サリさんも疲れたところで、交代をする。
合計で一時間ネリネリすると、思い描いていたペースト状に近くなる。
練り上げた物をちょっと舐めてみると、すこしザラザラ感が残る。あと、砂糖を入れていないのでカカオの風味と交じって少しビターだ。
「フードプロセッサーが欲しい……」
「え? なんでしょうか?」
「ううん。なんでもない」
この作業は、フードプロセッサー一つで時間と労力を削減できるはずだ。
艶の出たペーストに砂糖を加え、さらに艶が出るまで練っていく。
少し味見する。
(おおお、覚えているチョコレートの味だ)
ザラザラ感はやはり気になる……練れるところまで練るか。このザラザラ感を滑らかにできるかは今後の課題かな。やっぱりフードプロセッサーがほしい……でも、その前にどうやってカカオニブを定期的に手に入れられるかだよね……課題が多すぎる。
今日はとりあえず、チョコレートを完成させよう!
チョコレート完成の一歩手前に上機嫌になり、無意識に鼻歌を口ずさむ。
「練って練って練って、もっと練ってチョコレート~」
「お嬢様、その歌はなんでしょうか?」
「チョコレートの歌!」
ニカッと笑いながら言うと、サリさんが目を細めながらハンカチで私の頬を拭く。
「つまみ食いが付いていますよ」
「えへへ」
型がないので薬包紙に丸形になるように落とし、皿に載せて氷室に入れる。カカオニブはたぶん三十グラムくらいしかなかったので、実際に完成したのは小さいかけら八個くらいだ。
キッチンの後片付けと称してすり鉢に残ったものをペロペロしていたら、チョコレートは無事に固まっていた。
「これがお嬢様の考えたちょこれーとですか?」
「うん! ラジェたちも呼んで早速食べよう!」
「では、紅茶を淹れますね」
魔法の練習を中断してラジェとキースな月光さんにもテーブルに座ってもらい、チョコレートの試食会をする。爺さんはまだ帰っていないので、爺さんのかけらは別に取っておく。
それでは、いただきます。
口に入れ噛めば、パキッと音が鳴る。なかなかしっかりとした硬さだけど、その後に口の中で感じるダークチョコに肩の力が抜ける。カカオの芳醇な風味と全身に染み渡るチョコレートの快感、それに前世に近いチョコレートの形ができたことに感動して涙が目に溜まる。
すごく……ただすごく……嬉しい。
(ようやくチョコレートまで辿り着いたぁ……)
「ミリーちゃん、大丈夫?」
顔を上げると、ラジェが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。サリさんやキースな月光さんも困惑した表情でこちらを見ていた。
「あ! 大丈夫! 美味しくて泣きそうになっただけだよ!」
「そうなの? じゃあ、僕も食べてみるね」
ラジェがチョコレートをカリッと噛み、目を見開く。
「凄く甘い……」
甘いのか……私はもっと甘くてもいいと感じたけど、それは私が毎日のように砂糖を摂取しているからかもしれない。
嬉しそうにチョコレートを頬張るラジェを少し眺めた後に、振り向きながら尋ねた。
「キースさんとサリさんは――あれ……」
二人ともチョコレートを口にしたまま止まっていた。
「思ったよりも早く乾燥している」
これなら、あと二日くらいで回収できそうだ。即席で作ったメモ帳……もとい、ところてん日記に自然乾燥の経過を書き込むと朝食に向かった。
「今日の朝食はトマト卵とパンです」
サリさんが笑顔で朝食を出すが、私とラジェはやや緊張をしている。ファンシーな陶器のカップに紅茶が全員分注がれると、、爺さんの手が軽く上がる。
よし。紅茶をエレガントに人差し指と親指で摘まむと、爺さんの口角が上がった。
(ふっ、これくらい朝飯前だ)
鼻をヒクヒクさせながら爺さんを見ていると、すぐにキースな月光さんに注意される。
「ミリー嬢、その得意顔はやめましょう」
「……気を付けます」
「では、次に食事の作法ですね」
キースな月光さんが食事の作法を実演してくれる。貴族の食事のルールは結構多くて大変だ。
そう……今、私とラジェは明日のオーレリア王女とのお茶会に向け、最低限のマナーを指導してもらっている。席の付き方から、食器の持ち方まで――前世の知識はある程度あるものの、こちらにはこちらの独自のルールがある。今は、王国のマナーをやっつけで覚えている。
ラジェはどこで覚えたのだろうか、大体のテーブルマナーをすでに習得していた。
隣ですました顔で座るラジェに視線をやると、上品に微笑まれる。
爺さんもキースな月光さんも、違和感を口にしないあたり……私が認識していないラジェの情報を知っているようだ。
キースな月光さんのマナー講座が続く中、いつまでも食べられない朝食を眺める。すると、グーッとお腹が鳴った。すぐに爺さんが鼻で笑いながら言う。
「作法は中断してひとまず食事にせねば、腹の虫が暴れそうな奴が一人いるな」
「ま、まだ大丈夫です」
たしかにお腹は空いたけれど、腹が一度鳴っただけだ。
「そんなひもじい顔で言われても説得力はないな。残りの作法は昼食時にやろう。ほれ、我慢せずにさっさと食え」
「それなら――いただきまーす!」
遠慮せずにトマト卵を頬張る。
(美味しい~)
トマト卵は、トマトソースに卵を落として煮込んだ料理だ。パンに付けると美味しさが増す。
朝食が終わると、ウキウキしながらキッチンへと向かう。ラジェとキースな月光さんは裏庭で魔法の特訓をするという。爺さんは何か商談があるらしく、エルさんを連れて出かけた。
私はサリさんと一緒に念願のチョコレート作りだ!
カカオニブは少量しかないので、一回きりのチャレンジになる。成功しても、ここにいるみんなとシェアをする予定だなので、一人一かけらを食べる感じになると思う。
オーレリア王女からもらったカカオニブをすり鉢に入れ潰す。
カカオニブをある程度粉砕したら、サリさんに準備してもらった湯煎の上にすり鉢を載せ、さらに細かく磨り潰していく。
サリさんがすり鉢を覗き込みながら首を傾げる。
「なんだか粘土のようですね」
「まだまだ練ります」
その後、練ること二十分…… ヨシヨシ、思惑通りにペースト状になってきた。
少し止まり、小さなため息をつく。うーん……この作業結構時間がかかる。
途中、子供パワーの限界でサリさんに作業を交代してもらう。魔法を使えば楽かもしれない。でも、人力でどれほど時間が掛かるかを知るのも重要だ。それに、サリさんの手前、複数の魔法は使えない。
五十分ほど経過すると、油分が溶け出して艶が付き始める。
サリさんも疲れたところで、交代をする。
合計で一時間ネリネリすると、思い描いていたペースト状に近くなる。
練り上げた物をちょっと舐めてみると、すこしザラザラ感が残る。あと、砂糖を入れていないのでカカオの風味と交じって少しビターだ。
「フードプロセッサーが欲しい……」
「え? なんでしょうか?」
「ううん。なんでもない」
この作業は、フードプロセッサー一つで時間と労力を削減できるはずだ。
艶の出たペーストに砂糖を加え、さらに艶が出るまで練っていく。
少し味見する。
(おおお、覚えているチョコレートの味だ)
ザラザラ感はやはり気になる……練れるところまで練るか。このザラザラ感を滑らかにできるかは今後の課題かな。やっぱりフードプロセッサーがほしい……でも、その前にどうやってカカオニブを定期的に手に入れられるかだよね……課題が多すぎる。
今日はとりあえず、チョコレートを完成させよう!
チョコレート完成の一歩手前に上機嫌になり、無意識に鼻歌を口ずさむ。
「練って練って練って、もっと練ってチョコレート~」
「お嬢様、その歌はなんでしょうか?」
「チョコレートの歌!」
ニカッと笑いながら言うと、サリさんが目を細めながらハンカチで私の頬を拭く。
「つまみ食いが付いていますよ」
「えへへ」
型がないので薬包紙に丸形になるように落とし、皿に載せて氷室に入れる。カカオニブはたぶん三十グラムくらいしかなかったので、実際に完成したのは小さいかけら八個くらいだ。
キッチンの後片付けと称してすり鉢に残ったものをペロペロしていたら、チョコレートは無事に固まっていた。
「これがお嬢様の考えたちょこれーとですか?」
「うん! ラジェたちも呼んで早速食べよう!」
「では、紅茶を淹れますね」
魔法の練習を中断してラジェとキースな月光さんにもテーブルに座ってもらい、チョコレートの試食会をする。爺さんはまだ帰っていないので、爺さんのかけらは別に取っておく。
それでは、いただきます。
口に入れ噛めば、パキッと音が鳴る。なかなかしっかりとした硬さだけど、その後に口の中で感じるダークチョコに肩の力が抜ける。カカオの芳醇な風味と全身に染み渡るチョコレートの快感、それに前世に近いチョコレートの形ができたことに感動して涙が目に溜まる。
すごく……ただすごく……嬉しい。
(ようやくチョコレートまで辿り着いたぁ……)
「ミリーちゃん、大丈夫?」
顔を上げると、ラジェが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。サリさんやキースな月光さんも困惑した表情でこちらを見ていた。
「あ! 大丈夫! 美味しくて泣きそうになっただけだよ!」
「そうなの? じゃあ、僕も食べてみるね」
ラジェがチョコレートをカリッと噛み、目を見開く。
「凄く甘い……」
甘いのか……私はもっと甘くてもいいと感じたけど、それは私が毎日のように砂糖を摂取しているからかもしれない。
嬉しそうにチョコレートを頬張るラジェを少し眺めた後に、振り向きながら尋ねた。
「キースさんとサリさんは――あれ……」
二人ともチョコレートを口にしたまま止まっていた。
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