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本編
カニと炎
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甲板を見下ろせば、ライトを灯したまま船員たちが腰を抜かして空を見上げていた。その表情は恐怖そのものだ。中には両耳を塞ぎ、伏せたまま動かない人もいた。
『お主は爆弾だ』
爺さんの言葉が脳裏を過ぎる。これではその言葉を完全に肯定してしまう。
は、花火が、す、少し大げさだっただけだ……うん。そう思うことにしよう。
アジュールの港に留まる船舶の光はまだ見えているけど、何が起こっているのかは分からない……これだけの大花火を打ち上げたんだ、助けは……来るよね?
「お前ら! 何をぼさっとしてやがる! すぐに船の状態を調べて報告しろ!」
細身だが長身で筋肉質の男が船員たちを怒鳴り散らす。この船の船長かもしれない。
船の状態を調べる時間がどれくらいか分からないけど、見る限りすぐには出発できないはずだ。
大柳は海へと散ったが、海の上でもまるで溶岩のように燃え煙を出している。ちょうど船の進行方向に落ちたのはラッキーだ。これなら大幅に迂回する必要がある。
とりあえず、オーレリア王女の元に戻ろう。
黒魔法のまま風魔法を使い、元来た方角に飛んで下りたいけど……暗くて怖い。船には先ほどの爆風でいろんな紐が舞っているし、帆柱の一つの先端が折れているのも見える。闇雲に飛ぶのは危ないと思う。
(デカライトを照らせば、見つかりそうだしなぁ)
見つかっても風魔法をぶっ放して海に飛んで逃げればいいけど、ラジェやオーレリア王女を船に残したまま逃げるわけにはいかない。
心を決めてゆっくり帆柱を伝い下りた。
(よし、後は走るだけ)
船の手すりまで走っている途中で何かにぶつかって黒魔法が乱れ、ヴェールが取れてしまう。
「船員なら気を付けなさ――え? ミリアナ嬢……」
相手のライトが灯される、リュヤさんだ。一番会いたくない相手と対面してしまう。
困惑顔でリュヤさんが続ける。
「なぜ起きて……いえ、ここにいては危ないから一緒に中に入りましょう」
「……嫌です」
「今はわがままを言う時間ではありませんよ」
「わがままではないです。怪しい人にはついて行くなとお父さんにきつく言われているんです。拉致犯のリュヤさんは怪しい人ですから、絶対に一緒には行きません!」
鼻をヒクヒクしながら宣言する。
「なっ! そう……分かりました。言うことを聞かない子には教育が必要ですね」
リュヤさんの手元に魔力が集中するのが分かる。大量の水が生成されると、リュヤさんが勝ち誇った顔で言う。
「ほら、痛い目に遭いたくはないでしょ? 大人しく言うことを聞きなさい」
「聞きません!」
「そう……それなら!」
大量の水魔法が私に向かってくる。リュヤさんは確かに魔力が多い。それに、コントロールだって精密だ。でも、水魔法ならラジェのほうがもっと凄い。二人で遊んでいる時、これ以上の魔力に晒されていた。こんなの全然怖くない。
風魔法を使い、横に飛びながら水を避ける。すると、水がうねりながら私を追ってきた。
水魔法に向け手を翳すと、リュヤさんが笑う。
「子供にしては動きが良いのね。でも、そんな手を出していったい何をする気なの? あなたは魔力が少ないのよ。やめて、諦めなさい」
意地悪く目を細め、リュヤさんが水魔法を重ねてじりじりと私に迫らせる。
普通の七歳児なら、恐怖でお漏らしをする状況だ。リュヤさんはこんな人だったのかと幻滅してしまう。
水が顔の前まで迫ってきたので、水魔法の先端に指先で軽く触れ、氷魔法を唱える。水は先端から徐々に凍りつき、やがて氷塊の彫刻へと変化した。
リュヤさんは手先が凍り始めると、急いで後ずさりした。
「い、いったいこれは……」
「次は私の番ですね」
口角を上げ、にっこりと笑う。そして、海の水を拝借して炎を纏わせた巨大蟹を船の上に出現させた。
リュヤさんが金切り声で叫ぶ。
「そ、それはいったいなんなの!」
「カニさんです」
盛大なドヤ顔で答える。爺さんたちと食べたカニをイメージしてできたものだ。
海水を使ったからか、魔力は最小限に抑えられた。唯一、魔力が必要だったのは炎の部分だ。海水の中でも燃え続ける炎……本当に凄い。出せるかわからなかったけど、紅蓮の大柳の小さいバージョンをイメージしたらできてしまった。
『お主は爆弾だ』
爺さんの言葉が脳裏を過ぎる。これではその言葉を完全に肯定してしまう。
は、花火が、す、少し大げさだっただけだ……うん。そう思うことにしよう。
アジュールの港に留まる船舶の光はまだ見えているけど、何が起こっているのかは分からない……これだけの大花火を打ち上げたんだ、助けは……来るよね?
「お前ら! 何をぼさっとしてやがる! すぐに船の状態を調べて報告しろ!」
細身だが長身で筋肉質の男が船員たちを怒鳴り散らす。この船の船長かもしれない。
船の状態を調べる時間がどれくらいか分からないけど、見る限りすぐには出発できないはずだ。
大柳は海へと散ったが、海の上でもまるで溶岩のように燃え煙を出している。ちょうど船の進行方向に落ちたのはラッキーだ。これなら大幅に迂回する必要がある。
とりあえず、オーレリア王女の元に戻ろう。
黒魔法のまま風魔法を使い、元来た方角に飛んで下りたいけど……暗くて怖い。船には先ほどの爆風でいろんな紐が舞っているし、帆柱の一つの先端が折れているのも見える。闇雲に飛ぶのは危ないと思う。
(デカライトを照らせば、見つかりそうだしなぁ)
見つかっても風魔法をぶっ放して海に飛んで逃げればいいけど、ラジェやオーレリア王女を船に残したまま逃げるわけにはいかない。
心を決めてゆっくり帆柱を伝い下りた。
(よし、後は走るだけ)
船の手すりまで走っている途中で何かにぶつかって黒魔法が乱れ、ヴェールが取れてしまう。
「船員なら気を付けなさ――え? ミリアナ嬢……」
相手のライトが灯される、リュヤさんだ。一番会いたくない相手と対面してしまう。
困惑顔でリュヤさんが続ける。
「なぜ起きて……いえ、ここにいては危ないから一緒に中に入りましょう」
「……嫌です」
「今はわがままを言う時間ではありませんよ」
「わがままではないです。怪しい人にはついて行くなとお父さんにきつく言われているんです。拉致犯のリュヤさんは怪しい人ですから、絶対に一緒には行きません!」
鼻をヒクヒクしながら宣言する。
「なっ! そう……分かりました。言うことを聞かない子には教育が必要ですね」
リュヤさんの手元に魔力が集中するのが分かる。大量の水が生成されると、リュヤさんが勝ち誇った顔で言う。
「ほら、痛い目に遭いたくはないでしょ? 大人しく言うことを聞きなさい」
「聞きません!」
「そう……それなら!」
大量の水魔法が私に向かってくる。リュヤさんは確かに魔力が多い。それに、コントロールだって精密だ。でも、水魔法ならラジェのほうがもっと凄い。二人で遊んでいる時、これ以上の魔力に晒されていた。こんなの全然怖くない。
風魔法を使い、横に飛びながら水を避ける。すると、水がうねりながら私を追ってきた。
水魔法に向け手を翳すと、リュヤさんが笑う。
「子供にしては動きが良いのね。でも、そんな手を出していったい何をする気なの? あなたは魔力が少ないのよ。やめて、諦めなさい」
意地悪く目を細め、リュヤさんが水魔法を重ねてじりじりと私に迫らせる。
普通の七歳児なら、恐怖でお漏らしをする状況だ。リュヤさんはこんな人だったのかと幻滅してしまう。
水が顔の前まで迫ってきたので、水魔法の先端に指先で軽く触れ、氷魔法を唱える。水は先端から徐々に凍りつき、やがて氷塊の彫刻へと変化した。
リュヤさんは手先が凍り始めると、急いで後ずさりした。
「い、いったいこれは……」
「次は私の番ですね」
口角を上げ、にっこりと笑う。そして、海の水を拝借して炎を纏わせた巨大蟹を船の上に出現させた。
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「そ、それはいったいなんなの!」
「カニさんです」
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