転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫

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本編

ドアップ

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 思考は鮮明だ。足元からは炸裂する寸前の魔砲弾と同じ魔力を大量に感じる。この船に積んであった大量の魔砲弾を思い出す。

(これ、危ない!)

 レオさんの真似をして船全体を何十層もの黒魔法でコーティングすると、全員を黒魔法で包み小船の近くの海へと投げた。
 飛んでいく困惑したオーレリア王女とばあやさん、月光さんは……ああ、相当お怒りの表情だ。怒っている貌も綺麗だなんてずるいなぁ。
 一人船の上に佇むと、魔砲弾が爆発したのを黒魔法越しに感じた。一気に何層もの黒魔法のコーティングが割れたのを感じた。

(だめだ。何層で包んでも割れる)

 爆発が漏れてしまう、どこか遠くに船を持っていかないと、レオ号にまで爆発が届いてしまう。
 魔力の乱れで船が沈んでいくのが分かる。

(だめ。海中で爆発したらより被害が酷くなる)

 船にさらに重力魔法を注ぎ、船を完全に浮かす。全身から冷や汗がでる。

(……ここまで魔力を使ったのは初めてかもしれない)

 息荒く、叫ぶ。

「遠くに行けー!」

 浮遊させた船に力いっぱいの風魔法を吹きかけた。
 船が遠くへと飛んで行くと、黒魔法も重力魔法も維持できずに解除される。途端、大爆発が起こり衝撃波に飛ばされる。
 浮遊を保とうとしたけど、もう魔力がない。浮遊も解け、頭から海へと落ちて行く。
 月光さんに無理をするなって言われていたのに……また怒られちゃう……
 落下の途中、ふわりと暖かい感じに包まれる。

「無理をするなといっただろ……」

 枯渇気絶寸前に聞こえた月光さんの声に返事をする。

「少し眠るだけ……」


◇◇


  ◆

 お腹すいたなぁ……最後にチョコレートは美味しかったけど、ひとかけらだけじゃ全然足りないよ。
 ふと、頭の中に声が流れてくる。

「私の……生まれて来てくれてありがとう」

 なんだか親しみのある声だけど、誰だろう。思い出せない。とにかく眠い……けど、お腹も空いた。目を開きたいけど瞼が重たい。
 もうこのまま寝てしまおう。

「ミリー、もう起きる時間だぞ」

 どれくらい寝ていただろうか、ジョーの声がする。重たい瞳を頑張って開けると、霧の奥で厨房に立つジョーのシルエットが見えた。

「お父さん……?」
「ミリー、腹が空いただろ? 今日の賄いはオークカツだぞ」

 ん? オークカツ? それは食べたい。
 エコーしていたジョーの声が段々と遠くなる。

「お父さん、待って!」

 手を伸ばすとジョーのシルエットが消え、霧が煙のように舞い上がる。
 真っ暗な場所に一人佇むと、なんだか急に不安になって膝を抱えうずくまる。
 しばらく俯いていたけど、鼻がヒクヒクと動き出す。
 何かいい匂いがする……これはオークカツではなくて――

「カニ……?」

 オークカツも食べたいけど、カニのこの香り……香ばしく焼かれていて食べ頃だ。

「カニ、どこ?」

 匂いが導く方へと駆けだすと、いつの間にかまた目を閉じていた。

(温かい……)

 なんだかすごく肌触りのいい質のシーツに包まれているような気がする。これ、最高に気持ちいい。もう少し、寝よう。

「ミ、ミリアナ!」

 二度寝しようとしたのに急に揺らされる。めちゃめちゃ揺らされる。いったい誰が邪魔しているの?

「ん。ん……」

 目をゆっくりと開ける。すると、豪華な天幕が目に飛び込んできた。見たことのない天井ならぬ天幕だ。
 天幕を眺めていると、ニュッと爺さんの顔が目の前に現れた。

「ぎゃああ」
「お主! 何がぎゃああじゃ! こちらがどれほど心配したと思っている! 丸二日も寝よって!」
「ごめんなさい?」
「ミリーちゃん!」

 ラジェが抱き着いてくる。

「ラジェ……よかった。無事だったんだね。怪我は大丈夫?」
「僕なんかより、ミリーちゃんの心配だよ」

 ラジェが複雑な表情で微笑む。

「ラジェ、心配かけてごめんね……ギルド長も……」
「ふん。まったくだ。お主、私を驚かせて心臓を止めるつもりか?」

 爺さんがこれほどかってくらい目を見開きながら怒鳴り散らす。

「ご心配をおかけしてごめんなさい」

 心配をかけたのは事実なので、素直に謝る。
 長いため息をついた後に、爺さんが私の頭を撫でる。

「別にお主のせいではない……無事でよかった」

 爺さんの顔ってこんなに小皺があったんだ……それは、初めて見る表情の爺さんだった。
 どうやら私は二日も眠っていたらしい。枯渇気絶以外にも拉致された緊張もあったのかもしれない、微熱もありうなされていたという。

「今回は本当にひどいとばっちりでした。船も沈んでしまいましたし……」

 爺さんが呆れた顔をしながら言う。

「本当にお主は恐ろしい爆弾だ。大体あの爆発はなんだったのだ! あんな魔法など聞いていないぞ!」

 爺さんがブツブツと文句を言う間、辺りを見渡す。この部屋、一流の中でも上等な部屋だ。爺さんの家もいい物が揃っているけど、ここは何か別のレベルを感じる。ソファには枕とブランケットがあった。どうやら爺さんとラジェは、私が意識のない間、この部屋で寝泊まりしていたようだ。とても心配をかけてしまったことにしょんぼりする。

「お主は子供のくせに考えすぎだ。子供は泣くものだ。ほら、泣け」
「泣けって……そんなこと言われても泣けませんよ。今更泣いても、何かわざとらしいじゃないですか」
「お主はまたどこぞの熟年の老女のようなことを言いよって。たまには子供になれ」

 子供になれって……爺さんなりの励ましだと思うことにする。

「ありがとうございます。次回、私も怖いことがあったら全力で蝉活動をしますね」
「お主……」

 蝉がこの世界にいるか分からないので、蝉活動を披露していたらいつもの爺さんの表情で怒られた。

「そういえば、月光さんは?」
「月光は、今、王太子殿下に貸し出している」

 どんな用途で月光さんを……? と尋ねたかったけど、どうやらこの質問はNGのようだ。爺さんが苦い顔をしている。
 ふと、爺さんの後ろの机の上のボウルから見えるものに気づき、凝視する。

「あれはカニですか!」










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