勇者のフリして異世界へ? 〜この世界は勇者インフレみたいです〜

あおいー整備兵

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第45話 平和の象徴って感じで。

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 大霊廟執務室。

 本日は俺とベイカーで1/32ティーガーⅠのプラモデルを製作中。いや、凄いよ大霊廟! 何でもあるんだよ! まさか異世界でプラモ作れるとは思いませんでしたわ! ええ、遊んでいますとも。やはり勇者が働かないって重要だと思うんですよ。それこそ平和の象徴って感じで。

「あー、今日はひよこちゃんいないんですね」
「ああ、文字の勉強でエイブルんとこにいる。次、bー6のパーツ」
「bー6……bー6っと」

 午前中ひよこはエイブルによってお勉強の時間となってしまった。四六時中遊んでいるようではろくな大人にならないというエイブルさんの指摘に俺が逆らえるわけもない。つか、一体誰のことやら。

 昼前、ひよこを連れて戻ってきたエイブルから明日の行事が伝えられた。なにやらメイド隊全員参加だそうで。

「健康診断?」
「ええ、メイドは全員参加です。この前の203高地攻略でメイド隊の隊員全員がかなりレベルが上がったようですので、ステータスの確認をします」

 あー、レベル鑑定ね。そういやあみんな行きと帰りでえらい変わってたよな、行きは二人がかりので運んでた荷物を帰りは一人で楽々積み込んでたし。

「なあベイカー、そういうのって簡単に晒していいのか? 俺の感覚だと弱みとかになりそうで秘密にしそうなもんだけど……cー4」
「能力が上がればお給金も増えますよ。称号によっては手当も付きますし、自己申告じゃダメでしょ、色々と……はいcー4」
「マジかよ!」

 なんだろ、俺の異世界ファンタジー観が一気に生活臭いものになってしまったぞ。

「今回の一件でステータスの上昇もですが新たな称号を得た子もいますので、それらを見てお仕事の配置替え等もしたいですね」
「そういえばみんなやりすぎてレベルアップ酔いしてたよな。アレ、成長痛みたいなものかな?」
「本来は私たちが倒せる相手ではありませんでした。最初にベイカーがゴーレムを攻撃をした時にほとんどダメージを与えられなかったのは覚えておいでですか?」
「うん。騎士使えねーなって思った」
「ひどいですよ義雄様! ありゃ相手が悪すぎですよ!」

 ランナーからパーツを切り取っていた手を止めて、ベイカーが抗議する。

「エイブルさん、そうなの?」
「ええ、ミスリルなど希少金属で構成されたゴーレムは高い攻撃耐性を持ちます。ゴーレムコア以外への物理攻撃や通常の魔法攻撃は無効と特殊なタイプでしたので、かなり高位の魔物扱いでした。そうでなければ、ああいう急激なレベルアップは普通ではあり得ません」
「そんなのよく倒せたなあ」
「大霊廟のMP40等、ノボリトが想定の斜め上をいく魔改造を施しましたから。アレはすでに武器としては希少級レア以上、伝説級レジェンドです。しかもゴーレムの性質を逆手に取った作戦では誰一人傷を負いませんでしたし」

「ああ、アウトレンジ攻撃でほとんど夜店の射的状態だったもんなあ」

 俺も流石になんらかのステータスは上がってたりして。実際、来た時に比べれば力も付いたと思うんだよね。確かめるように腕を曲げ、力こぶを作ってさりげなく見た……あんまり変わらん。

「あと、明日の健康診断はひよこちゃんも参加です」
「ひよこもけんこうしんだんするの!」

 手を上げて嬉しそうに報告するひよこ。

「そうなの?」
「早めの鑑定は、子供の才能を見出してあげるための親の義務です」
「そっか~ じゃあひよこ、明日は健康診断いこうか?」
「うん!」
「明日9時からでよろしいですか?」
「えっ、午後からじゃなくて?」
「……お昼食べたら体重が増えますから」

 わかってませんねぇという顔で俺を見るエイブルさん。

 あ、そうですね。メイド隊の皆さんは乙女ですから、そこんところは重要ですね。

 ☆

「……」
「何か言いました?」
「いえ、何も」

 大霊廟内に設けられた健康診断の会場。医療担当のルイスの前には、仕事の合間を縫って診断を受けに来たメイド達が並んでいる。メイド服着たままで。あー、ラッキースケベは無いのな。

「私の持っていた技能称号の《上級医官》のスキル《診察》なら触診とか服を脱いでもらう事もありますけど、義雄様の仲間になって付いた神与称号の《メイド》の他に、今回のレベルアップで《解析者》が付いたのですが、これだと服を脱ぐ必要もないし、より多くの情報が診れるんです。義雄様のご期待に添えなくてごめんなさい」

 ちっ、しっかり聞こえてるじゃんか。ルイスのイケズ。

「何か言いました?」
「いえ……」

 すいません。心の声をるのは勘弁してください……

「それじゃあ、ひよこちゃんの診断始めましょうか?」
「よろしくおねがいします!」

 ルイスの前に置かれた丸イスにちょこんと座るひよこ。

「子供の診断ってどういう時にするの?」
「基本的には体力とか基本能力、称号の確認ですね。適性を調べて将来を考えるみたいですね。……その時に私たちのような子も見つかる事も多いです」
「あ……」

 魔法の使えない子ーー忌み子

「気にしなくていいですよ。魔法が使えなくても私たちは今、生きがいをここで手に入れましたし」
「そ、そうなんだ!  いや、よかったよかった!」
「責任もとってもらえますから♡」

 え、なんか言った?

「さあ、ひよこちゃん! 大きく息を吸って~! ハイ! 止めて!」
「んん~!」

 ルイスがひよこに手をかざし数秒が経つ。

「あ、あれれ?」
「どうした?」

 ひよこの203高地での経緯はエイブルメイド隊のメンバーは皆知っている。特別な素養があったとしても驚きはしないがルイスの反応は微妙だ。

「ええっと、見えないんです……いえ、見えてるものが見たことないっていうか……」

「言ってる意味がわからないんだが?」
「その……ひよこちゃんの神与称号、【ひよこ】なんです」
「はあ? なんじゃそれ?」

 それは称号じゃなくて俺がつけた名前なんですが。

「いえ、称号って増えたりするんですよ! 経験や環境で増えたりするんです! 今回ノボリトちゃんは【発明家】イノベンターとか文献でしか見たことのない称号が発現してます。私も【解析者】アナライザーが出ました。他にも文献でも見たことのない称号が出た方もいます」
「えっ! 誰?」
「その……ナカノ様が【貴腐人】です。貴族でしょうか? 詳細は本人しかわからないみたいで、聞いても『うふふふふ』って教えてくれないんですよ」
「……」

 あ~、ついに出ちゃったか、この世界最初の、しかも上位の称号かよ。

「だ……だったらさ、【ひよこ】もアリじゃね?」
「そ、そうですね! ひよこちゃんはひよこちゃんですものね!」
「おおう! そうそう!」
「まあ、そういうことでしたらひよこちゃんの他のステータスが『解析不能』なのもアリですよね♪」
「え?」

 いやいや、それは無いだろう……いや、今はあまり事を荒立て無い方がいいか。

『ひよこ』
 ひよこレベル1
 HP解析不能
 MP解析不能

《ひよこ魔法》
《神与称号》「ひよこ」《恩恵》解析不能
《技能称号》

 ツッコんだら負けだ。

「お、俺の娘だし、それぐらいアリだよね」
「ですよね~」
「……」
「……」

 試しに俺もステータスオープンしてみた。

『高槻義雄』
 勇者レベル1 経験値3523812
 HP0
 MP0

《勇者魔法》レベル1『μαγεία βέλος』
《神与称号》「勇者」《恩恵》勇者補正  「おとうさん」《恩恵》子育て上手
《技能称号》

 俺も大概だよね。うん。

 ☆

 ~♪

 健康診断から戻って以来、軽い足取り、いやスキップしながら執務をこなすエイブル。

「エイブル様、なんかすごいご機嫌ね」
「ほんとに、何か良いことがあったのでしょうか?」

 んふふ~ 【おかあさん】ゲットです! 【おとうさん】はきっと……ふにゃにゃにゃ!

 後にエイブルの称号を知った時、俺は自分の未来が一部決まった事を肌身で感じたんだが、だからと言ってすぐに俺の新たな称号を伝える踏ん切りはつかなかった。
 ええ、ヘタレですともさ。前の世界の男女観ーー何か行動を起こせばセクハラやらストーカーだと打ちのめされる環境に毒されている元社会人に自爆する勇気など無いわ!
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