59 / 120
お母さん
しおりを挟む
サーシャを守る為に、デイジーFS505は全力を傾けた。自らの不具合も把握し、失われてしまう記憶を補足する為に外部端末にバックアップを取るようにした。
幸い、ここにはタブレット等の情報端末も豊富にある。簡易なものなら文具売り場にもあるし、有名家電専門店も入っていてそこならそれこそAI搭載型のサポートPCも手に入った。メイトギアほど多機能ではないが人間のサポートをしてくれる、要するにPC型の簡易なロボットである。
それらを駆使し、デイジーFS505はサーシャを育て上げた。その姿は、生身の体ではないというだけで、人間の母親と何ら変わるところがなかっただろう。娘を温かく見守り、穏やかな笑顔を向ける母親と。
しかし、彼女の不具合は日を追うごとに深刻さを増していき、サーシャが九歳を迎える頃には一日の大半を寝て過ごすようになってしまった。だから彼女は、いずれ自分がいなくなってもサーシャが一人で生きていけるように、日常の行動を学ばせていた。少女が成長と共に抱く好奇心を上手く利用して。
掃除、洗濯、炊事はもちろん、もし、人間社会に戻ることがあった時にも困らないようにと、年齢相応の基礎的な知識をつけさせた。さらには、CLS患者の危険性と、どうやってそれから身を守るかということについても。
それらはすべて、少女にとっては<母親>と一緒に行う遊びだった。遊びの一環としてそれらを行った。だからどれも、サーシャにとっては決して苦痛ではなかった。CLS患者のことは怖かったけれど、それを怖くて危険なものであるということは学んでおいてもらわないといけなかったので、むしろ上手くいったと言っていいだろう。
そんな二人、いや、一体と一人の前に、ある日、一体のメイトギアが現れた。そのメイトギアは表情筋モジュールが故障して冷たい仏頂面しかできなかったが、それでもデイジーFS505に比べればはるかに問題の少ないロボットであり、デイジーFS505にとっては願ってもない救援だった。
そのメイトギアの名はコゼット2CV。CLS患者を安楽死させ、人間としての尊厳を取り戻させる為にリヴィアターネに遣わされたロボットだった。
コゼット2CVからもたらされた情報により、デイジーFS505はようやく事態の概要を把握した。そして、サーシャがもう、人間社会には戻れない可能性が高いということも知った。
それがショックだったのだろうか。デイジーFS505の具合は急激に悪化し、そしてついに機能を停止してしまったのだった。
「お母さん…」
起動スイッチを押しても全く反応しなくなったデイジーFS505を前に涙を流すサーシャの姿を、コゼット2CVが静かに見守っていた。
幸い、ここにはタブレット等の情報端末も豊富にある。簡易なものなら文具売り場にもあるし、有名家電専門店も入っていてそこならそれこそAI搭載型のサポートPCも手に入った。メイトギアほど多機能ではないが人間のサポートをしてくれる、要するにPC型の簡易なロボットである。
それらを駆使し、デイジーFS505はサーシャを育て上げた。その姿は、生身の体ではないというだけで、人間の母親と何ら変わるところがなかっただろう。娘を温かく見守り、穏やかな笑顔を向ける母親と。
しかし、彼女の不具合は日を追うごとに深刻さを増していき、サーシャが九歳を迎える頃には一日の大半を寝て過ごすようになってしまった。だから彼女は、いずれ自分がいなくなってもサーシャが一人で生きていけるように、日常の行動を学ばせていた。少女が成長と共に抱く好奇心を上手く利用して。
掃除、洗濯、炊事はもちろん、もし、人間社会に戻ることがあった時にも困らないようにと、年齢相応の基礎的な知識をつけさせた。さらには、CLS患者の危険性と、どうやってそれから身を守るかということについても。
それらはすべて、少女にとっては<母親>と一緒に行う遊びだった。遊びの一環としてそれらを行った。だからどれも、サーシャにとっては決して苦痛ではなかった。CLS患者のことは怖かったけれど、それを怖くて危険なものであるということは学んでおいてもらわないといけなかったので、むしろ上手くいったと言っていいだろう。
そんな二人、いや、一体と一人の前に、ある日、一体のメイトギアが現れた。そのメイトギアは表情筋モジュールが故障して冷たい仏頂面しかできなかったが、それでもデイジーFS505に比べればはるかに問題の少ないロボットであり、デイジーFS505にとっては願ってもない救援だった。
そのメイトギアの名はコゼット2CV。CLS患者を安楽死させ、人間としての尊厳を取り戻させる為にリヴィアターネに遣わされたロボットだった。
コゼット2CVからもたらされた情報により、デイジーFS505はようやく事態の概要を把握した。そして、サーシャがもう、人間社会には戻れない可能性が高いということも知った。
それがショックだったのだろうか。デイジーFS505の具合は急激に悪化し、そしてついに機能を停止してしまったのだった。
「お母さん…」
起動スイッチを押しても全く反応しなくなったデイジーFS505を前に涙を流すサーシャの姿を、コゼット2CVが静かに見守っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる