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おまいう
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新学期になり、新しく一年生が吉泉小学校へと入学してきた。
すると、その新一年生と思しき生徒の一人が、<にこやか学級>の生徒を指差し、
「あ、チショウだ!! キチガイがいる!!」
と声を上げた。
だいたい毎年、一人や二人はそう言う生徒が入学してくる。実は、琴羽も似たようなことを口走った一人だった。
当時の彼女の家庭環境はかなり荒んでおり、そして何より、両親や二人の姉も汚い言葉で他人を罵るということをする人間だったこともあり、琴羽はそれを口にすることを当然だと思っていた。
「キチガイをキチガイといってなにがわるいの!? そういうのいっちゃいけないとか、それって<ことばがり>ってやつじゃないの!?」
とても小学校一年生とは思えない口ぶりで、教師達を翻弄した。
だが、六年生に進級して最上級生となった琴羽は、新一年生に対し、
「分かってないなあ。あんたそれ、ダッサいよ。そんなこと言ってるとまともな友達とか、できないから」
と諭した。
「……え…っ!?」
それを耳にした、かつて彼女の担任だったこともある教師が、呆気に取られた顔をする。
『あなたがそれを言う!?』
内心ではそう思ってしまっていた。なにしろ、以前の彼女の言動に振り回されて神経をすり減らし、一時は休職寸前にまで追い込まれたほどであったからだ。
まさに、
『おまいう』
というやつであろう。
だが、人間というのは経験によって変化し、成長するものである。ましてや幼いうちはそれこそ目を見張るような変化を見せることもある。今の琴羽がそれだった。
彼女は、玲那という理解者を得たことで、手本となる<師>を得たことで、人生の指針も得たのだった。
玲那が、恩師となる教師と出逢ったことで、両親の殺害計画を練るような子供から、今の玲那へと変われたように。
人は、人によって成長し、悪辣にもなれば誠実にもなるということの表れなのだろろう。
実際、この後、琴羽は、母の琴乃の後を継ぎ、笹蒲池家のハウスキーパーとして、生涯、真猫を支えていくことになるのだが、それはまた、機会があれば語ることにもなるかもしれないが、今はまだ先のことである。
彼女は知ったのだ。心穏やかに生きることの幸福感を。自分の憂さを晴らす為に些細なことで他人と諍いを起こしながら生きることがいかに苦しいことだったかを。
彼女の姉二人がそれを知るにはまだ早く、今も時折、琴羽に対してきつく当たることもあるが、当の琴羽が姉二人の言動を受け流すようになったので、それ以上拗れることもなくなっていたのだった。
すると、その新一年生と思しき生徒の一人が、<にこやか学級>の生徒を指差し、
「あ、チショウだ!! キチガイがいる!!」
と声を上げた。
だいたい毎年、一人や二人はそう言う生徒が入学してくる。実は、琴羽も似たようなことを口走った一人だった。
当時の彼女の家庭環境はかなり荒んでおり、そして何より、両親や二人の姉も汚い言葉で他人を罵るということをする人間だったこともあり、琴羽はそれを口にすることを当然だと思っていた。
「キチガイをキチガイといってなにがわるいの!? そういうのいっちゃいけないとか、それって<ことばがり>ってやつじゃないの!?」
とても小学校一年生とは思えない口ぶりで、教師達を翻弄した。
だが、六年生に進級して最上級生となった琴羽は、新一年生に対し、
「分かってないなあ。あんたそれ、ダッサいよ。そんなこと言ってるとまともな友達とか、できないから」
と諭した。
「……え…っ!?」
それを耳にした、かつて彼女の担任だったこともある教師が、呆気に取られた顔をする。
『あなたがそれを言う!?』
内心ではそう思ってしまっていた。なにしろ、以前の彼女の言動に振り回されて神経をすり減らし、一時は休職寸前にまで追い込まれたほどであったからだ。
まさに、
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というやつであろう。
だが、人間というのは経験によって変化し、成長するものである。ましてや幼いうちはそれこそ目を見張るような変化を見せることもある。今の琴羽がそれだった。
彼女は、玲那という理解者を得たことで、手本となる<師>を得たことで、人生の指針も得たのだった。
玲那が、恩師となる教師と出逢ったことで、両親の殺害計画を練るような子供から、今の玲那へと変われたように。
人は、人によって成長し、悪辣にもなれば誠実にもなるということの表れなのだろろう。
実際、この後、琴羽は、母の琴乃の後を継ぎ、笹蒲池家のハウスキーパーとして、生涯、真猫を支えていくことになるのだが、それはまた、機会があれば語ることにもなるかもしれないが、今はまだ先のことである。
彼女は知ったのだ。心穏やかに生きることの幸福感を。自分の憂さを晴らす為に些細なことで他人と諍いを起こしながら生きることがいかに苦しいことだったかを。
彼女の姉二人がそれを知るにはまだ早く、今も時折、琴羽に対してきつく当たることもあるが、当の琴羽が姉二人の言動を受け流すようになったので、それ以上拗れることもなくなっていたのだった。
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