異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売

文字の大きさ
71 / 90

事件の結末

しおりを挟む
 結局私が目覚めたのは翌日だった。
 そして私が呑気に眠りこけている間に事件は驚くほどのスピードで解決をみる。

「え? もう証拠がそろったんですか?」
「そろった、というのは正しくはないですね。罪に問えるだけの証拠がすでにたくさん発見されているから裁判の事前手続きに入るというだけです。ただ、まだ余罪が出てきそうですから実際に裁判に至るのはもう少し先になるでしょう」

 どうやら私が気を失ってから行われた屋敷の捜索でこれでもかというほどの罪の証拠が押収されたらしい。
 
 ええ……どれほどの悪事を重ねてたのよ。
 私を拉致したのだって相当な事件なのにそれだけじゃないなんて。
 やっていることは抜けているところも多かったし、どちらかというと小物な悪党という感じだったのに、実際はそうではなかったのだろうか?

「それにしても、あの時私たちが屋敷の周りまで来ていたことによく気づきましたね」

 そうなのだ。
 ヴァニタス卿が来る直前までべラルド卿からのコンタクトが無かったから、いよいよ自分でどうにかするしかないと覚悟を決めた私の視界に彼らの姿が飛び込んできたのは偶然だった。

 どうやってここから抜け出そうか、そう思い攫われた日にも窓やドアをくまなく調べていたけれどもう一度と思って窓辺に立った時だった。
 あの屋敷は高台にあり、そして私の監禁されていた部屋は二階。
 比較的見晴らしが良い窓から遠くを見渡した時に視界の端に映ったのだ。
 近衛騎士団の身につける制服が。

 その瞬間、ウィラー青年がちゃんとべラルド卿に会えたことを私は確信した。

 助けが来ているというのなら話は早い。
 あとはべラルド卿たちが来るまでどうやって時間を稼ぐかと、ヴァニタス卿が犯した罪をはっきりとさせることを考えた。

「ウィラー卿はヴァニタス家の騎士でありながらも現状に対して憂いを抱いていたようですし、騎士道精神を尊ぶ気持ちの持ち主のようでしたから信用しておりました。ただ、間に合うかどうかは心配していましたが……」
「信用していた、と。ウィラー卿を?」
「……? はい」

 信じなければベラルド卿への伝言を頼むことはできなかっただろう。
 もし彼が正しき行いよりもヴァニタス家を重じていたのなら、私が言った言葉をヴァニタス卿へ伝えて私はより酷い目に遭っていたはずだ。

「私よりも、ウィラー卿を?」

 ……はい!?
 
「私が助けに来るとは思いませんでしたか?」

 いやいや。
 きっと探してくれているだろう、とは思っていましたとも。
 何と言っても私は名目上とはいえ聖女と同等の存在。
 もし所在が確認できなかったらいろいろな意味で必ず捜索は行われたはずだ。

「もちろん、べラルド卿も助けるために動いてくださっているだろうと思っていました」
「……そうですか」

 何となくべラルド卿の歯切れが悪い。
 いつもなら明瞭に話すタイプなのに。

「ああ、目覚めたばかりなのに長々と話してしまい申し訳ありません。医師を呼んできますので一度診察を受けてください。何かあるといけませんから」

 どこも問題はないと思うんだけど……と思ったものの、一応気を失っていたことだしべラルド卿もそう言ってくれているので了承した。

「何かありましたらリリアへ申しつけください。そうそう、ここはべラルド公爵家の屋敷ですので私に用がある時もリリアに伝えていただければ駆けつけます」

「では……」と言ってべラルド卿が部屋を出て行った。

「……え?」

 今ベラルド卿は何と言った?
 べラルド公爵家の屋敷!?
 
「なんで!?」

 私の住まいは王宮の中だ。
 なのになぜべラルド公爵家にいるというのか。

 その理由がまったくわからず、私は少しの間呆然としてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

恋愛は見ているだけで十分です

みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。 そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。 色んな意味で、“じゃない方”なお話です。 “恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?” 今世のナディアは、一体どうなる?? 第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。 ❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。 ❋主人公以外の視点もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。 ❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

処理中です...