最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
164 / 625
5章

154話 強者の余裕

しおりを挟む
 正直なところ好戦的じゃなければバトロワってのは漁夫メインなわけ。
 散々撃ち合いして疲弊した辺りで横っ面をぶん殴る、で、いいとこどりして終わり。勿論、この間も言った通り、最後の最後に立っていれば勝ちだ。
 なので私としても余計な所で消耗したくない、だからこそ傍観し、やられないように潜伏し、余裕を持って葉巻を堪能する。

「本日も晴天なり」

 葉巻に火を付けて吹かしながら廃墟の一つに陣取り、屋根の上で葉巻を咥えながら双眼鏡で辺りを見回す。
 あれから何回か強襲と不意打ちを掛けて十人程を片付けながら合流地点でもある廃墟にやってきたわけだが、特に追手らしい追手もなく、倒して回収して、倒して回収してを繰り返して此処までやってこれた。
 それにしても倒した相手がそんなにポーションも持っていなかったのが問題だった。
 やはり不意打ちを掛けて倒すとしても、狼狽えずに反撃してくるのもいるので、細かくダメージを貰ってポーションをちょいちょい使うのあったせいで大変よ。

「結構100ポが使われてるのよねえ……」

 インベントリを確認しながらも、辺りを偵察。たまに爆発と言うか土煙が大きく上がり、戦っている状況を眺める。
 
 やっぱり魔法職がいるとエフェクトと言うか、戦闘が派手になるのが良いな。
 爆発と炎上が派手じゃないと言う訳ではないが、やはりバリエーション的に変わり映えしないと言うのがモチベーション的にも変わるよな。

「25ポで5本の方がトータル回復量は多いけど、やっぱり一気に回復できるから100ポの方を使うって事で、殆ど拾えないんだろうなあ」

 ここから狙撃なりちょっかい掛けて戦力を削るって言うのもありだが、余計な事して消耗する必要もないな。せっかくこの廃墟の周りに罠も仕掛けたし、通用するかどうかを確認したい。
 首元7足元3の割合で、上に来るまでの間に針金張って、階段周りに油もまいて、松明落とせばすぐに燃やせれる位置に構えてあるし、色々作ったってのに披露できるタイミングが無いと面白くないな。

『着いたぞ』
『どの辺にいる?』
『アカメのいる所から南側だな、結構この近くまで来るのに戦闘が激化してたぞ』
『だろうね、私の近くでもかなりがんがん戦ってるし、瓦礫が飛んでくるくらいだし』

 土埃と共に振ってくる細かい瓦礫を払い落として、ふいーっと葉巻の煙を吐き出して一息。いいなあ、ああいう地形変わるような攻撃してみたいわ。

『マイカは?』
『まだだな、さっき連絡した時は向かってるとは言ったが、ぱったりと連絡が取れん』
『どうせどっかで戦ってんでしょ、勝負事に関しちゃ私より強いわよ』
『経験と立ち回りでも、か』
『そもそもあんただって強いほうでしょ、何やってるか知らんけど』
『まあのう?』
『いーえい!ついたー!』
『よし、それじゃあ私の位置で集合だけど、上がってる家は罠塗れだから隣の家の屋根まで上って飛び移って来い』

 ほんと、あのマイカの奴ががんがんと前に出てきて罠全部踏みつぶして「あー、楽しかった!」とか言いながら上に来る可能性バリバリだからしょうがないな。
 ちゃんとこう言う所で制御しないといけないのだけはマジで大変だわ。
 
『結構な激戦区だけど、ちょっかいだしていいのぉー?』
『死ななきゃいいわよ?』
『いえーい、アカメちゃん愛してるぅー!』
『儂は先に合流するぞ』
『良くも悪くもこの廃墟周辺が最終安置になるだろうし……放し飼いの虎でもヤバいなら帰ってくるでしょ』

 放し飼いの虎って結構やばいと思うけど良い例えじゃない?

『もう手綱引くの諦めただけじゃろ』
『まあねー』

 まあ、色々めんどくさくなったのは事実。生粋のソロプレイヤーでバトルジャンキーなのにここまで手綱を引いてきただけでも私は偉いと思うよ。
 マフィアとかヤクザ物の映画見てたらたまにあるけど、ああいう手の付けられない奴のせいで組織が崩壊するんだよなあ。
 一部の奴の暴走でどうにもならなくなって雪崩式に組織崩壊に繋がっていくっていう役の奴。危ない二つ名が付いてるような奴が無駄な抗争や手を出しちゃいけない所に手を出すとかね。

『よし、着いたぞ』
『隣の家から上がって、飛び移れ』
『無茶な事を言うやつじゃな』

 屋根で周辺観察している間に、下の階でどかどかと音が響く、上手く飛び移れたみたいだな。
 おっと……バトルジャンキーがまたクラン1つ潰してる。新しい種類の人類に自動発動するシステムみたいなやつだな。
 よくあんな風に飛び掛かってマウント取って殴り下ろせるな。あいつ蹴り技が得意だったんじゃないのか。

「何が見える」
「うちの暴走列車がクランを潰してる所」

 隣に座ってきたので双眼鏡と火を付けてない葉巻を渡す。
 代わりに酒瓶を受け取ってそれをぐいっと一口。

「大分時間経ったと思うんだけど、まだぜんぜんね」
「参加人数とクラン数が分からんからのう……マップの縮小は続いてるから戦闘頻度は高まってるが……お、また囲まれているな」
「あいつが戻ってくるまでに何人倒すか賭けない?」
「乗った、地下室の増設と酒樽量産と、新しい趣味の投資でどうだ」
「私が勝ったら、生産スキル全部覚えてくんのよ」

 酒瓶を回し飲みしつつ、賭けの人数をそれぞれ言いながら葉巻を吹かす。
 これぞまさに高みの見物。
 賭けの犠牲になったクランには、高笑いして雑魚と言ってやろう。





「よし、儂の勝ちだな」
「ああ、もう……クランハウスの資金貯めてたってのに」
「それはそれじゃろ」
「戦闘音が響いてるから漁夫ばっか狙って撃破数増えるとは思ってたけど、予想以上に来るとはなぁ……ウサ銃使ってちょっかい掛けてやりゃ良かった」
「ポーションいっぱい……でもないかなあ、結構疲弊してる連中ばっかだったよ?」
「大分絞られてきたんだろうな、何人かこっちを狙ってたのは居たけど、様子見ばっかりだったし」

 視界が通る場所なら全部索敵出来るトラッカー、マジ優秀。
 他の戦闘スキルとか今の所、全くといっていいほど使えてないが、使う場所も無ければタイミングも無いのでしょうがない。
 そろそろ細かい所は潰されているし、大手クランのかち合いが始まるとは思うんだが、あまり大きい所同士のぶつかり合いってのは見ないな。
 ああ、でも最初の方に100人位での三つ巴殴り合いしてたわ。

「私の確認したところでヤバそうなのは、チェルんところ、鍛冶クランかな、他にも大きい所何個か見つけたけど、接近して観察できんかったし、そっちで見つけたのはいないわけ?」

 葉巻の灰を落とし、ぷかっと輪を作りながら下界の喧騒を肴に酒と煙草を嗜む。
 酒と煙草と賭けって、リアルでもやったことねえよ、こんなん。

「言われた通り大規模相手はしてないけど、4組くらい見たかなぁ……」
「こっちも3組くらいはいたな」
「10組くらいは50人以上のでかい所があるって感じかしらねぇ」

 それだけでもざっと500人か、やっぱり潰し合いして数減らして貰わないと太刀打ちできないな。で、その潰し合いをしてもらうのに今ここで酒と煙草と賭けで時間と言うか疲弊するのを待っているわけだが。
 せめてせっかく作ったこの家の中に入ってほしいって気持ちはある訳だが、クリスマスに一人ボッチになる子供映画みたいな感じにばたばたやってくれんかな。

「せっかく罠作ったのになあ……有刺鉄線とか自作したんよ?偉くない?」

 構造が簡単なので、ちょっと知っていればすぐに作れる物なのだが、切る物ないからウサ銃の銃剣で工作する羽目になったが。
 カスタマイズ持ってないから、ばらしてナイフにすることも出来ないので滅茶苦茶大変だったってのに、大変だったってのに、誰も中に入ってこないんだから腹立つわ。

「要所要所でしか戦ってないから目立ててるのかわかんないわね」
「あたしに喧嘩売ってくる奴は結構いるけどぉ?」
「そら見掛けたら倒しに来るだけじゃろ」

 まあ、削っておかないと後で痛い目見るんだから、倒せそうならさっさと倒しに来るわな。減らせれる時、削れる時に攻めないのは悪手になる場合が多い。
 ただ、相手の力量を見極められないってのはアウトなんだが。

「後は、まったり削れるまで待てば……よく無さそう」

 双眼鏡を辺りを見回し、何かと視線が合った瞬間に閃光。
 音を立てて乗っていた屋根の部分を破壊されて3人もろとも……ではなく私だけ落ちる。
 これだけで10ダメージ、そういえば落下だったり衝撃ダメージって存在あったわ。

「死んだか?」
「あー、死んだわ」
「どっちから撃たれたか分かるか」
「えーっとねぇ、西からだわ、多分当てれるぞって言う警告射撃だと思う」

 屋根の残骸に軽く埋もれながらマップを確認して、どこから撃たれたかを計算。
 一瞬だけ目があったからか?それとも双眼鏡の光でも反射して、反射的に撃ったのか、どっちにしろ攻撃意思はあるみたいだ。

「とりあえず中に入って、作戦会議な」
「マイカが飛び降りて行っちまったが」
「……だと思ったよ」

 残っていた葉巻を大きく吸い味わってからこれまた大きい煙を吐き出して、葉巻を吐き捨てる。

「そろそろ大詰めっぽいなあ」

 ポーション飲んで回復しつつ、瓦礫の中から立ち上がる。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...