最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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10章

271話 びっくりは一回限り

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 さて、対接近相手の対策……と言うか、紫髪相手にどうするか。
 手持ちのカードでどうにかしなきゃいけないのだが、がんがん前に出てくるから、すげえ厄介。
 しっかり狙って引き金を絞るまでの間に牽制で投げてくるナイフや手斧、苦無に手裏剣、ダーツを掻い潜って反撃するの難しすぎる。

「って言うか、どんだけ持ってんだよ!」
「そりゃあいっぱいよ?」

 それにしてもあんだけ装備しておいて結構素早く動けているってのが不思議でたまらん、そういったスキルや職があるって事だろうけど、それはそれで気になってくるわ。

「闘技場で使ったアイテムや装備ってどうなるん」

 また木に隠れ、接近してくるのに合わせてG4で抜き打ち2射、相手の出鼻を挫くための1発と、避けてほしくない方向へと1発。流石に狙いを付けていないので、当たるはずはないと思っていたのだが、まさか自分から当たりに行くとは思わなかったわ。

「終わったら開始前に戻るからがんがん使って大丈夫だけど……さっきの攻撃すっげーいてーんだけど!」
「そういえば対人イベの時も固定ダメージは据え置きだったわね」

 G4の固定ダメが15、純粋な攻撃力が10だから20くらいはダメージ入っているだろう。固定ダメージだけで言えば8発直撃すれば勝てるわけだが、それを許しちゃくれはしないか。
 1発当たった所で、一気に警戒したのか向こうも射線を積極的に切る動きに変えている。

「痛いなら、ポーション飲んだら、いいじゃない?」
「上手い事575になってるの腹立つわー!」

 確実に射線を木で切りつつ、しゅぱっと刃物を投げ返してくるたびに体を掠めてくるので細かくダメージを受ける。失敗したな、1対1で既に場所が互いに知れている状態だと圧倒的に向こうの方が有利だ。
 こっちはなるべく近づかせないように、向こうは確実に接近するように、互いにそういう思惑があって動いているので一気に突き放せない私が圧倒的に不利だ。

「自分に有利って知ってて私と戦いたいって言ったわけ?」
「こういう不利な時にどう動くかって気になるじゃん」

 また1本刃物が飛んでくるのをガンシールドを展開させて弾き距離を取るが、やはりそれに合わせて距離を詰めてくる。遠距離に対しての対応力がかなり高いな。闘技場の常連みたいだし、其れの対応が自分の獲物って訳か。
 それに、木々に移りながら移動しているのはこっちも変わらずだが、自分で投げた刃物を回収しながら追いかけてくるという時点で向こうにアドバンテージがある。
 
「さて、どうするかね……」

 そう言いながら葉巻に何本か火を付けて一気に吸い、煙を出したのを手に持ちながら向こうの視線が切れたタイミングで別の木の近くに投げ、置いたりしつつたまにG4で牽制射撃をしながら、直線的に逃げるのではなく、相手を中心に回るように動く。
 葉巻の煙で多少なりと攪乱出来ればいいのだが、上手い事行けばいいな。

「流石に分かりやすいと思うんだけど?」
「だと思うな」

 ぐるっと1周、15本ほど葉巻に火を付けて煙を上げさせているわけだが、案外もくもくしてくれているので悪くはない。
 それでも私自身を隠せるわけではないので、勿論真っすぐこっちに刃物は飛んでくるので、ガンシールドと木で受けて相手を見据え……やべ。

「視界防いだらダメだよねー」

 ガンシールドの展開と木の陰に隠れて投げてるのに合わせてこっちに走り込んできていて、相手の射程内。
 
「ちぃ……!」

 咄嗟にウサ銃を出し、私から見て右側から振るってくる刀の斬撃を受ける。銃器で受けると言うのをずっとやってきたわけだけど、直撃しないだけマシなレベルであってダメージが大きくカットされるわけじゃない。
 1発受けただけで30ダメージ程を貰い、堪えた所でさらに左側から長剣を挟むように此方に振り抜いてくる。
 右はウサ銃、左はガンシールドで受け、また膠着。左で受けた方がダメージカット出来ている辺り、やっぱりシールドって大事だ。

「両手が使えないと、こっちが有利!」

 両手同士で押し合いへし合いをしている所、紫髪がブーツの先から仕込みナイフを出して、そのまま蹴り上げてくるのを、盾を構えたまま体を後ろに反らし後ろに飛ぶ。
 切れない物をハサミで切ろうとした時の様に2刀の刃から滑りぬけ、後ろに転がりつつG4を抜いて3射。
 1発命中、1発弾かれ、1発ミス。
 
「振り抜いている状態から引き戻すの速くないか」
「ポイントは、すぐに次の武器を持つ事かなぁ」

 私が飛びのいた時点で自分から刀と長剣を落として右逆手で短剣を抜いてガードしていたわけか、それにしても判断と動作が速過ぎる。

 向こうの攻撃が先に飛んでくる前、次の武器を抜くのを封じるため、立ち上がりながらG4を適当撃ち。とにかく連射して防御の手を緩めさせない状態にさせているとG4を撃ち切る。
 
「リロード、持ち替え、そのタイミングはしっかり見てるよ!」

 逆手で持っていた短剣を此方に雑を投げてくるので、ガンシールドで受けるが、衝撃は結構来る。こんな軽い攻防ってだけで50ダメージくらい貰うのは……想定外でもないな。

「じゃあ、こういうのはどうだ?」

 こっちも弾切れのG4をぱっと手から離し、相手に向けて手を向けて一言。

『ファイア』

 習熟度もスキルレベルも低いのだが目くらまし程度にはなるだろうし、不意打ちとしては十分のはずよ。

「あちちち!」

 流石に魔法攻撃をしてくるってのは想定外だったのだろう、結構まともに当たったのもあるので防御体勢を取り堪えているので、コートを脱ぎ、魔法が切れるタイミングで相手に投げ付ける。
 バサッと音を立てて、相手の顔のコートが掛かり、狼狽えている所でさらに葉巻に火を付けて辺りに撒きつつ、木の裏に隠れる。

「うっわ、けっむ……」

 コートを剥ぎ地面に投げ捨ててから、両腰に差した武器を握ってすぐに辺りを確認しながら、少し腰を落として構える。ああ、やだやだ、気配を察知できるような、こっちが動いたら位置バレするような感じの奴。
 でもまあ、こういう時の為でもあるんだけどさ。

「やだやだ、強い相手って色々やんなきゃいけないのは」

 スーツの上だけ脱ぎ、手に掛けた状態で呪文を一つ。

『ウィンド』

 スーツの上着が木々の間を飛ぶ。
 それに合わせて紫髪が動き、腰に入れてあった一番長い刀を上段から一気に振り抜き、ドンっと地面を踏む音をさせる。

「手応え……無し?」
「だろうよ」

 振り抜いた状態の紫髪のこめかみ辺りにCHの銃口を合わせ、引き金を絞る。
 ついでにヘッドショットスキルもONにしておいたし、これで終わりよ。
 引き金を絞ると共にドンと鈍い音を響かせ、頭を撃ち抜かれ吹っ飛んでいく紫髪を見ながら葉巻を拾い一服。

 あー、疲れる。読み合いと初見の相手ならまだどうにかなるけど、二度とこの手は使えないわ。
 ふいーっと一服していると、試合終了のアナウンスと共に、待機部屋へと戻される。

「あー、くやしいー!」
「お前とは二度とやらんから、雪辱は晴らせないけどな」

 インベントリを確認してアイテムが消費されていないのを見てから感想戦。

「えー、いいじゃん、もう一回、もう一回!」
「このまま勝ち逃げするってのが私の戦い方なのよ」

 とりあえず暫くは対人したくないわ。
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