最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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10章

270話 目的が変わるのはいつもの事

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「さっきまでボスって話だったと思うんだけど、どうしてここに来てるのかね」
「だって狙ってたやつ倒されちゃったし、やっぱおねーさんの強さって気になるしぃ」

 闘技場の受付に紫髪に引っ張られてと言うか連れ込まれ、ため息を大きく吐き出しつつも参加申請や規約やらルールやらのウィンドウを確認し、それを記入していく。そういえば結局参加するする言って置いて、してなかったのを考えればいい機会って事になるのか。

「まー、いいけど……本当にやるの?」
「そりゃねー?おねーさんのPvEの実力は知ってるけど、PvPの実力も知りたいしねー」

 その辺は良いとしてべたべたとくっついてくるので書きにくくてしょうがないっちゅうねん。おしゃべり忍者の奴、このべたべたしてくるのがめんどくさくなって、こいつを放出したのかもしれんな。
 
 それにしたってPvPか……確かに対戦物は好きだけど、やっぱ昔ほど上手ではなくなったし、立ち回りでどうにかこうにか誤魔化してきた所もあるので久々にやるような気がする。

「これどうやったらあんたと出来るん?」
「あ、ちょっとまってね、えーっと……」

 受付で手慣れた操作をしながら対戦の形式を選択していくのを横で眺める。流石に有利不利も出てくるのでマップはランダム、HPとMPは100/50で固定……何か設定多いな。
 流石に実力が知りたいと言っているから自分に有利な設定だったり状況にはしないと思うので、その間に闘技場のヘルプを確認するか。

「大体は、対人イベントの時と変わんないわねえ……」

 細かく戦闘できる場所を決めたり、ルールの設定も自由自在、ハンデも付けたり出来るし、とにかく細かい所まで色々と自由に出来る。ってのが所謂カスタム部屋と言われる奴らしい。
 逆に公式で出している固定ルールは個人、複数のルールでかつレートやランクと言われるような階級制度もある。対人用のビルドってのも今後流行ったりするのか……と、思ったら闘技場用のステータスやスキル振りが出来る制度もあるって言うんだから、とってもユーザーフレンドリー。
 いちいち対人用のステータスやスキルを構成して別キャラ育成ってなかなかやってらんないからなあ……それにT2Wって2キャラ目以降は課金枠だったはずだし、1キャラで立ち回り出来るのは楽。

「ボス、こんな所で何やってんだ?」
「あー、そういえば闘技場ガチ勢だったわね、あんた」
「それにしてもボスは良い鼻してるな、ほら出来た奴丁度あるから使ってくれ」

 インベントリからアイテム1つこっちに投げ渡してくるのでそれを受理して確認。


名称:展開式ガンシールド 防具種:片手盾
必要ステータス:STR12
受防御力:+20
効果:受防御時の際にのみ効果を発揮
詳細:ガントレットベース、手首を捻る事により盾が展開する
製作者:バイパー


「相変わらずいいもの作ってくれるわ、あんた」
「前に作った奴よりは強くなったけど、ギミック使わないとカバー範囲は狭いから注意な」
「ふむー?」

 詳細に書いてある通り手首を捻りこむとガシャっと音を立てながら円形の盾が出てくる。どういうギミックなのかどうとかは……ゲームだから細かい事は気にしない。もう一度捻ると盾が元に戻ってガントレットに沿って畳まれた状態で装着されている。やっぱりギミックは分からんけど、自動で開閉してくれる扇子って感じだ。

「よく作れたわね、こんなの」
「もっと褒めても良いんだぞ?それにボスがここでそれを宣伝してくれりゃ改良点も見つかるし、良い事尽くめよ」
「おねーさん、設定できたから早速やろーぜ?」
「こいつ相手に通じればいいんだけどねー」

 褒めて褒めてと遠慮なしに言ってくるので適当に返事をしつつ、対応をして待機部屋に向かう。

「あ、ついでに観戦許可くれよ、俺もボスの戦いっぷりを見てみたい」
「はいはいー、それじゃあたっぷり見るといいよー」
「大した事しないと思うんだがなあ……」

 待機部屋に入り、一息ついて葉巻でも……と思っていたら転移が始まって、対人用のマップに飛ばされる。


「んー、結構だだっ広い林だな」

 転移した所で辺りを確認して、自分の武器を確認。
 そういえばこの中にいる間は銃弾の消費も無いし、撃ち放題って言ってたっけか。

「弾切れるまでガン待ちして、その後ゆっくり倒すって事が出来るなら遠距離職は完全に罠だしなあ」

 とりあえず背中に木を当てた状態で自分の手持ち銃器を確認する。
 銃剣ウサ銃、CHとG4、インベントリに入れてあるマガジンの中にもしっかり装填済みになっている親切設計。とりあえずまだマップ上では紫髪を見つけられていないので……トラッカー使っておくか。
 
「さーて、暫くぶりの対人イベントだな……楽しんで行きたいところだが、相手が相手だし油断するとすぐやられそうだ」

 思いっきり近接系の相手だから、近づいてくると思うので、いつも通り必死避けをしながら斬り返すってのが基本的な動きに。

「みーっけ!」

 その声と共に真正面から紫髪がやってくると、私の横に手斧が突き刺さる。……やばいな、なんだあの投擲スピード、殆ど見ることが出来なかったぞ。
 あと、改めて紫髪の装備を見るわけだが、剣や刀を提げているのは勿論なのだが、服の裏にもびっちり刃物を揃えている、こいつもジャンキーの部類だったの忘れたわ。

 そう思い出していると紫髪はそのまま何本もナイフを投げ来るので慌てて木の裏側に回るとシュコンと小気味の良い音を何度かさせるので、木を背にしたまま別の木に走る。
 こういう遠距離攻撃をしてくる場合の基本だが、とにかく射線を切るって事と、相手の事を見失わないって事だ。
 トラッカーを使いつつ、後ろから迫ってくる 紫髪を確認しながら後ろに向けて大体の位置であろう位置に向けて何度か発砲。しっかり確認したわけじゃないのだが、キィンと金属同士の響く音が後方から聞こえてくる。
 あいつ、多分弾を弾いたか、受けたかしたな、ありゃ。

「そういえばガチ近接相手をどうにかしきゃならんのは今後の課題だったな……」

 すっかり忘れていたが、こんな風にいつまでも逃げまどいながら立ちまわるのもモンスター相手には通じないか。あー、全く、私は私で修羅の道を進んでいる気がするわ。

「ガチってやるから、有難く思え」 

 ある程度の距離を取った後に後ろを振り返ると、刀を持ち、手斧を手元でクルクルと回している紫髪がこっちにやってくる。

「そこらのホラーゲームよりこえーよ」
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