最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
338 / 625
12章

313話 新商品

しおりを挟む
 うーむ、金属素材から布や紙素材にしてみたが、大きく威力が落ちたり上がったりはないな。
 何だったら鉄パイプの時にあった、鉄片がそこら中に刺さらなくなるってのもあるから、使い勝手は向上しているような気がする。

「もうちょっと小さくして鉄片混ぜ込んだら手榴弾になるかな」

 握りこぶし大の球を手の中で転がしつつ、投げ物ポーチから一つ取り出してポンコツに投げ渡す。

「あの辺、そうだ、あの辺りに投げこめ。生活火魔法はあるだろ」
「投擲持ってないのにぃ」
「じゃあ殴るか蹴れ」
「ああいえばこういう!」

 何て言いながらしっかり蹴り飛ばして着弾、爆発が起きるのを確認してメモ帳を開いてどんなものかを記載。やはり生活火魔法と言うか一度着火しなきゃいけないってのがネックになるから、現代と同じようにピンを抜いて着火できるような機構を開発するか。
 魔力と言うかMPを使用したら着火できる機構ならあるんだけど、いちいちその機構をこの細かい物に入れなきゃいけないってなったらトカゲが多分ぶち切れる。それにレシピ開発さえできれば材料揃えてボタン一つでさくさくーっと作れるから一手間入れなくてもいいから刻印ルートは無し、消耗品に使う代物じゃないわ。

「そっちは?」
「これで、終わりっ!」

 少しぶれた2重の銃声と打撃音をさせてモンスターを倒している間に、こっちはこっちでウサ銃に弾を詰めてくるりと銃を回して肩に乗せ、葉巻を咥えて火を付ける。この辺はもう一連の流れだな。

「大体片付いたし、うちらもさくっと撤収するか」
「まだ終わってないけどいいのー?」
「そうねー……」

 とりあえず少し下がろうと言って、前線手前くらいまで戻りながら追撃してくるモンスターに火炎瓶をお見舞いしておく。あー、本当にこれ便利、直撃してもプレイヤーにダメージはないけど、足止めに使えるって言うだけでも全然使い物になる……まあ、ぶつけても確かにダメージないが炎上したらそっちのダメージは受けるんだけど。

「まだ配信してるんだっけか」
「してるよー、ボスが余計なもん出すからコメント酷い事になってる」

 って言うか対人イベントの時にも出したからそこまでやばいもんじゃない、外側が変わっただけだから知ってる人は知っているだけ。ちょこっとだけ構造って言うかレシピを改良したものだから今更驚くもんでもないと思うんだが。
 でもまあ、見た事ないって言うならしっかり宣伝しないとな。

「取り出したるは特製の焙烙玉、レシピはひ・み・つ♪」
「ええ、急になにぃ……」
「使い方はとーっても簡単、導火線に火を付けて、モンスターのいる所にぽーい」

 葉巻の火を使い点火、その後しゅぱっと手首のスナップを効かせて他のプレイヤーがいない所を狙って焙烙玉を投げ入れると、数秒後にドカン。爆風で紫煙が流れるのを目で追いながらポンコツの前で商品説明を続ける。
 
「起爆時間は導火線の長さ、威力は火薬量で調整、オーダーメイドで大量注文も自由自在」

 ころころと手の中で転がし、回転を掛けて軽く上に放り投げたりして遊びながらしっかり宣伝。ああ、そうそう火炎瓶もあるからそっちも同じように説明しつつ、放り投げて具合を見せつける。

「あー、注文先が分からないわね……じゃあ、ポンコツの所に連絡して?」
「うぇ!?いや、それはちょっと……」
「その代わり欲しい物買ってやるから」
「じゃあやる」

 やっぱり世の中金よ金。

「ほら、にこーっと笑って、買ってね☆って」

 口の端を人差し指で上げてギザ歯を見せつける。勿論後ろは爆発と炎の壁を広げて地獄の様な状況だってのは目を瞑っておこう。
 




「で、変化は」

 一転してクランハウスの2F、定位置に座って肘掛けに肘をついて体重を掛けたまま報告待ち。

「はい、火炎瓶と焙烙玉の受注が数件来ています。どちらもダース単位で結構な数になります」
「……ねえ、あんた達って生産手伝いしてるわけだし、頼んだら勝手に作っておいてくれる機能とかないの?」
「はい、あります」

 あるのか、いや、手伝いだって言うし、設定したらできるのか?って言うかよくよく考えたら生産手伝いってどういう事をしてたんだって話になるし出来る要素はあったのか。

「……ちょっと画面だしてみ?」
「はい、こちらです」

 両手を出すと共にウインドウ1つ。
 あー、凄いわ、ちゃんと色々設定できる。そもそも私がNPCの配置とやる事設定したんだからこれくらいはできるのか。クランハウスのメニューから弄るのかなーって思ったけど、あっちはあっちでまた別か。

「よくよく考えれば報告したり売買系の手伝いが出来るんだから不思議でもないのか……自動生産みたいな事設定したらいけるか?」
「何個かルールがあるのでそちらに乗っ取っていただければ」

 ついでにマニュアルもそのウインドウで確認できるので軽く目を通す。一応複雑な命令系統を組めることは組めるのだが、ぽちぽちっとボタン押して出来るもんじゃない。条件と行動を一つ一つしっかりとくみ上げるタイプの時間かけてじっくりやるやつ。こういうのはそっ閉。
 
「予想以上にガチだったわ、こんなんNPCの標準装備かと思うとすげえわ」
「いいえ、種族の関係です、私達はオートマトンなので」
「デフォ選択じゃそんなんなかったな」
「はい、プレイヤーの皆様には使用できないものになります」

 この辺の回答は予め運営が用意してましたって感じ。そのうち実装されそうな気もするけど、先発組が容姿やモデル変更できないのにクレームつけそうだ。ただこういう複雑なシステムが組み込んでいるって話ならNPC専用でも良いわ。

「あー、やめやめ、自分でレシピ作成しよ」

 やらないんですかって顔しつつ、いつも通りにシオンが椅子の隣で待機し続けている。わしゃわしゃしたら多分嬉しがるんだろうけど、最近ちょっと甘やかしすぎた気がするのでしないでおく。
 とりあえず今やるべき事は注文を貰った個数を仕上げて納品する事だ、幸いな事に余計な調整は無いからいつも作ってる分量でいつも売っている値段なので特にレシピを弄る必要も無いのでちゃちゃっと作成開始。
 で、どう手伝いをしていたのかって話が此処で分かるんだけど、クランの共有ボックスにうちの秘書は直接アクセスできる。なのでいちいち材料を取りに行かないで、作るたびに目の前で材料を出してくれるって点を発見できたので良し。

「アカメ、ちょっと良いか」
「作業しながらならな」

 2Fのリビングでぽこぽこと火炎瓶やら焙烙玉を量産しつつ、酒造クランに行った割には基本的にうちにいる髭親父が話しかけてくる。なんだよ結局うちに入り浸りかよ。

「例の件、調べてきたぞ」
「案外早かったわね」
「これでも信頼は厚いんでな」

 考えていた数倍は早く分かったけど、今の所は軽く覚えておく程度で十分か。まだ激化してないし、これからどう出てくるかが問題だし、もう殴り合いは開始しているわけだから何をやろうが文句は言わせねえぞ。

「それにしても知ってどうするんだ」
「価格と量から向こうの在庫を計算して、物量と質で殴り返そうって思ってさあ」
「らしい戦い方だ」
「今日は新商品も宣伝したし、そっちでも動いてくると思うんだよねえ」

 配信と前線でちょろっと使っただけだが、新商品も良い感じに売れ行きが出ているし、もう一つくらい目新しい物を作ってやったらいいかな。後はどういう物をって話だけど、やるならやるでガンナーらしいものを使っていきたい所。

「あくどい事は得意だな」
「ぐうの音も出ない様に叩かないとめんどくさいじゃん?」

 頼まれていた火炎瓶と焙烙玉を作り終わって、ふいーっと葉巻で一服。
 火気厳禁だってのにがんがん火の元あるな、ここ。

「爆発したらアフロ頭になるものとかつくろっか」
「古典的すぎだろうに」

しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...