最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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13章

344話 たまには無計画

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「それで見つかったのか?」
「さーっぱり、其れらしい形跡ってのも見当たらないし、久々に暗礁に乗り上げた感じ」
「こっちでも情報集めてるが、あんまり芳しくない」
「まあ、物凄い上級なそり遊びして帰ってきたって訳にもいかんから、もう2回登って辺りを探ったんだけど、うまい事ヒットしないんだよね」

 ちゃりんと金属が跳ねる音をさせながら南西エリアのマップを開いて見せる。

「基本的に街から出るルートで、北東から南西に向かう道をまずは真っすぐ、そこから左回り、右回りで下山って感じ」
「頂上までのルートって真っすぐじゃないのか」
「無理やり行けば真っすぐは行けるけど、一回滑ったら一気に落ちるからなあ……転落ダメージ馬鹿にならないのよ」

 マップをCHの銃口でなぞりながらこういうルートを通っていると見せつつ、新しい弾を用意しておく。

「普通の山だと基本的に露出してるから採掘はしやすいんだが、雪で見えないのか」
「一定範囲に近づけば自動でチェックしてくれるはずなんだけどねえ」

 銃口でマップをなぞり、どこか探してない所、と言った感じに操作をするのだが、何となく違和感を覚える。自分が進んできた道をもう一度なぞり、少し唸りながらもCHに装填。

「このゲームってさ、エリアオーバーになったらどうなるの?」
「あー……ループしてエリアの最初に飛ぶか、明らかにこれ以上はいけないって所に出るはず」
「そうなってくると、1つ探してない所があるな」

 どこだ?という様にトカゲの奴が覗いてくるので雪山を指し、さらに奥に。

「此処は調べてない」
「雪山の奥?」
「辿り着くまで散々きっついのに、さらにエリアの奥行って危険を犯そうなんて思わないし、登頂したタイミングで満足するだろうし?」
「確かに山自体を探そうとは思うが……」
「どういう条件や状態で情報クランがレアメタルがあるって聞いたのか知らんけど、調べる価値はあるかなーって」

 未探査エリアの辺りを銃口でくるくるとなぞり、一息入れる。

「そういえば最近闘技場の方はどうなのよ」
「ガンナー対策がっちりで暫く上位陣に行ってないな、手回しじゃもう限界だし、頑張ってレアメタル探してきてくれよ」
「私の負担大きくない?」
「まあまあ、あの残骸で玩具作っておくから」
「しょうがないなあ……」

 私って結構ちょろいな。





 って言う事を数時間前に話し、1人連れ込んだ上で南西エリア3-3の雪山で一服中。

「マップを見る限りだと断崖絶壁なのよね、この先って」
「本気でここを下るのか?」
「ビビってんの?」
「ゲームとはいえ、結構な高さだろうに」

 髭親父の奴が大きめのため息を吐き出しつつ、持ってきた酒を一飲み。まさかとは思ったけど、凍結の状態異常を酒でどうにかするって発想は無かった。中身はロシア人なのか?

「たまには一緒に遊ぼうって言うから付いてきたが、こんな所に連れまわされるとはな」
「ジャンキー組は常にいないし、生産組は自分達の作業で忙しい、酒造の仕込みが終わったら暇してるあんたが一番誘いやすいってだけよ」
「ふむ、ちがいない」

 ヘアスキン券を買ってからたまに髭の形を変えている髭親父で、今日はカイゼル髭だな。枯れ専だったらかなりグッとくる男前なんだろうって位には良いモデルしてるわ。

「それで、何かしらの目星ってのは付いてるのか」
「いや、ぜんぜん?」
「珍しく計画性のない動き方だな」
「なんでも間でも計画してゲームしてる訳じゃないんだから、当たり前じゃないの」

 懐から別の酒を取り出してくるので受け取って一杯。酒精が強いほど凍結の状態異常に対して有効なのだが、逆に酩酊するので移動に不備が出るという問題も発生する。やっぱこのゲーム、メリットデメリットがはっきりしているわ。

「流石に儂の馬じゃ下れないが」
「私の機体ならいけるかな、若い子と二人乗り何ていいじゃない?」
「これが赤目の悪魔でなかったらもっと良かったんだがな」
「何かいった?」
「いや、何にも」

 そう、と一言返事をしてから雪山の山頂で機体を召喚、相変わらずのフォルムをした4脚戦車の状態を見てから、髭親父の奴を本体に乗るように指示してから操縦席に乗り込む。

『本当に大丈夫なのか?』
『吹っ飛ばない様に気を付けるけど、ヤバかったら自分で降りてくんない?』
『飛び降りたら結局一番下までいった死ぬくらいの角度だろうに』
『知ってた?』
『見りゃ分かるだろう』

 違いないと言いつつ、操縦桿をぐっと握ってから一言「いくぞ」と声を掛けて、山頂から一気に下り始める。これに関しては前回と一緒で4脚をブレーキとバランサー代わりに、胴体の底は雪面に当ててざあーっと音をさせながら下り始める。
 
 しかしこれがまあ大変、4脚の操作をしつつ、胴体のバランスが崩れない様にしてなおかつモンスター也障害物を避けないといけないわけ。なんか別ゲーしてるみたいな感覚で楽しいと思っていたのは最初だけでずっと神経張って操縦しなきゃならんってのは結構難しいわ。

『ちなみに落下したらどうするんだ』
『乗り捨てかな、緑色の恐竜よろしく』
『無計画な時ほど無茶が過ぎる』

 いつもの事じゃないと、軽口を叩きつつ、乗っている髭親父を落とさない様にも注意しつつ一気に下まで下っていく。




「最後の最後で油断するのはどうなんだ」
「いいじゃん、無傷なんだし」

 ついていた雪を2人で払ってから揃って一息、下ってきた道を見るわけだが、殆ど直滑降。何だったら最後の数mは落下している……よくよく考えてみたらマジで良く死ななかったな。雪のおかげである程度クッションになったって事か。
 結構ヤバそうな感じはあったけど、とりあえずマップを開いて場所を確認、あれだけ下ってきた割に横の距離としては全然進んでいなく、本当に下ったってだけだな。それにしてもエリア跨いできたってのにここで一気に下ってエリアを跨いで無いとは。
 ちなみに私の4脚戦車は足がひしゃげて、操縦席が半分くらい取れかけているので完全にスクラップ状態だ。とりあえず機体を仕舞うと、暫くは召喚不可になっているので召喚スキルに赤字でバツ印が付いている。うん、今度うちのクランハウスに車庫作ろう。

「それで、此処からは?」
「何個か怪しいポイントがあるからそこを巡って、かな」
「ならさっさと見つけて一杯やりたい所だ」
「いつも飲んでるじゃないの」

 何のことやらとはぐらかしながら槍を出して、杖の変わりにして私よりも先に歩き始めるのでその後をついていく。これも此処に来る前に決めておいた事というよりも、前衛として呼んできているので、自分から進んで前に出てくれる。

「何を見てるんだ、行かないのか」
「頼もしいなって思っただけ」

 ちなみに此処まで来る間の戦闘も前は任せて、後ろから援護をしていただけなので、対人の時と変わらず。って言うかマップ攻略に人を誘うなんてかなり珍しいって思われていそうだ。
 これで少しくらい進展があればいいんだが、なんとなーく、上手くいくとは思っている。こういう時は大体直感が大事。

「ほらほら、最初のポイント行くわよ」
「そこに何があるのかは知らんが、やる気を出しているのは良いことだ」
「ちなみに怪しいってだけで場所的にはなーんにもないわよ」

 申し訳程度の森というか林があるところなので視界は開けていないので全部が怪しいと言えば怪しいのだが。

「無計画な時のアカメ程恐ろしい物はないな」
「言いすぎだって」
「今までの事を知っているからな」

 ああ、もう、ぐうの音も出ねえよ。
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