最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
440 / 625
16章

410話 雑魚を任せろ

しおりを挟む
(パーティ会話使えないってのも不便だけど……やるしかないわな)

 ボスの出現までに少し時間があるのでそれぞれの自己紹介。
 パーティを作った時と一緒で、それぞれの獲物を……把握する必要あるのか?別に急造なら急造で立ち回りの仕方はあるし、そこまで気を使う必要あるんか?煙草の煙を燻らせながらそんな事を考える。

「こんな急造パーティでどうするんだ、ボス」
「……『元』な、倒せれば何でも良いんじゃないか?」
「そんな雑に作戦で良いのか?」

 少しだけ離れた位置にいるトカゲが少し心配そうな顔をしてこっちを見ている。私が居なくなって1週間は経っているから、今更私にあれこれ言われなくても良いと思うんだが。

「まあ、そうだなあ……他3人がどういう奴か分からんから、カバーメインで良いんじゃないか?」
「ざっくりだな」
「野良の急造パーティでなおかつ1回だけの組み合わせなのに頭使いたくないんだわ」

 そもそもトカゲと私以外の3人は勝手に動いて、ボスの出現位置辺りで待機している。それにしても5人であの装甲がっちりのボスに対して倒せるって計算をされているんだろうけど、職によって難度がかなり変わるからあんまり良い計算じゃないよな。

「だからあんたも好きにやる、私も好きにやる、但しボスには勝つ……分かった?」
「……やっぱりボスはボスだな」
「だから『元』だっての」

 そういうと共に払う様に手を動かすと、軽く肩をすくめてからトカゲの奴もボスの出現位置、少し手前辺りに陣取り、がちゃがちゃとインベントリから色々と装備を出し始める。これで前3中1、私が後で援護してやったらいい具合になるか。

 出現までもう少しだけ時間があるっぽいのでこっちもタワーシールドを出してボス正面に対して斜めに配置してPウサ銃、手回しガトリング、各種グレネードを用意して、ガンベルトに銃弾が入ってるのをチェックしてどう立ち回るかを考える。
 前の4人がバカスカとボスに攻撃して前線を張るってのを考えれば、今までと打て代わって雑魚に集中して、他の連中がボスに専念できるようにしたほうがスムーズに行けるか。

『これからボス戦だから、先に祭壇の場所を特定しに行ってくれ』
『了解です!』
『大体同じマップってのを考えたらあまり意味はないのでは?』
『どうせ見てても暇なんだし、行っても問題ねえだろ、行くぞ』

 エリアの外で相変わらずの言い合いをしている2人を引っ張っていくサンダースをちらっと見ていると、ボスが出現し、上空から着地。土煙を盛大に上げ、自分で上げた土煙を持っている得物、やたらと大きい無骨な大剣で振るって晴らす。やはりでかい上に強いってのをひしひしと感じる。ついでに雑魚も完全武装でボスの横からわらわらと湧いてくるが、足並みはしっかりと揃っており、なんだったらすぐにボスの前に整列して装備を構える。
 狼の時、虫の時もそうだったが、ここのボスって命令系統がかなりしっかりしている。その代わりに雑魚に攻撃を集中すればターゲットはしっかり攻撃回数の多い所に向かってくるし、ちゃんと攻略方法は考えられているのか?

「ま、あれこれ考えてても仕方ないわ」

 まあやる事1つだし、前にいる連中はひたすらにボスを殴るだろうから、こっちはこっちで雑魚狩りと行こう。






「あっさり倒してくれると思ったけど、エリア3のボスなだけあるな」

 Pウサ銃のクリップを弾き飛ばしてから軽く一息。すぐさま装填して前衛に向かっている雑魚に攻撃を当てて注意を引いて、こっちに進行を向けさせる。
 しっかり武装している雑魚、タンクタイプの剣士系としてしっかりした立ち回りをしているから、厄介このうえないし、耐久もあるから普通に手ごわい。それを分かってなのかトカゲの奴も近づいてきた雑魚相手に攻撃を与えて注意を引いてくれるので、纏めて接近されてボコられるってことは今の所ない。

「しっかり固定ダメージ入らないとガンナーは弱いわ」

 レバーを引いてチャンバー内に銃弾を入れてからどうするかを考える。
 前で戦っている連中はこっちで雑魚を引き受けているのを理解しているのかしていないのか分からないが、もうちょっと離れて戦ってほしい。
 ガンナーを長い事やっているならちゃんと射線を意識して立ち回ってほしいのだが、あいつら後ろで援護しているのを気にしていないのか?野良で戦っているから、連携を気にしろって言うのも酷だとは思うが……此処までごり押しだけで戦ってきた訳じゃないだろうに。

「雑魚とボスの距離もそこまで開いてないし、グレネードも使えないか……全く」

 相変わらず前の方ではそれぞれの罵声、怒声を上げて撃ちまくっているが連携もへったくれも無いので、結構な頻度で盾に弾かれたりしている。野良でいきなり指示を飛ばして軍師様みたいな事すると、もっと面倒な事にもなるし、どうしたものか。

 軽くそんな事を考えていれば、接近してきた雑魚がタワーシールドを抜け、攻撃1つ。
 目の前に振ってくる攻撃をバックステップと尻尾を使ってぎりぎり避け、Pウサ銃の銃剣を構えると共に銃操作。アデレラを1丁勢いよく上に飛ばしてから、銃剣での斬り合いを始める。こういう時は忍者刀の方が良いんだろうけど、準備しておくの普通に忘れてたわ。
 キィンと金属のぶつかる音、火花を散らして雑魚と打ち合い、強くぶつけ合い、軽く距離を取った所で自由落下してきたアデレラを最後に銃操作で手元に引き寄せて抜き打ち。そこまで良い体勢でもなく、盾と剣を構える前に雑魚の頭を撃ち抜いてまた1匹撃破。やっぱり直撃してくれれば威力は高いし、HSスキルのおかげもあってあっさりと倒れてくれる。

 が、そうだとしても手間取ると、普通に攻められて捌きにくくなる。
 気が付けば更に2体接近、アデレラをもう1丁抜いて、2体を常に正面に捉えたまま、射撃で注意をひかせる。この強力な雑魚が同時に5体以上出てこないのは運営のちょっとした優しさなんだろう。完全武装で耐久がごりごりに高いってのを目を瞑ればだけどな!

「ん-、引き付けて時間稼ぎした方がいいか?」

 無限沸きでひたすらに雑魚の数が増えるわけではなく、上限数が決まっているってのを考えれば、1対4で時間稼ぎの方がボスに集中しやすい?あとはひたすら自分の立ち回りでどうにかこうにかやれば行けるか。ヤバくなったら倒しちまえばいいわけだし。

「バイパー!残り2匹の雑魚こっち引っ張れ!」
「ああ、仰せのままに!」

 私が何をしたいかすぐに察して行動を移してくれるのは長い付き合いだからだな。
 トカゲの奴が2体更に引いている間にも、こっちに攻撃してくるのを必死こいて避け続ける。

「そういえばAGI下げた所で複数戦はあんまりしたことなかったかな」

 完全に尻尾依存症。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...