最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
449 / 625
16章

419話 離脱

しおりを挟む
「しゃあ!倒したぞおらあ!」
「倒せない方が怖い目に合うでしょう」

 唸りを上げ、ポリゴン状に消失していくボスゴーレムを見ながらシャールが勝利の雄たけび。中指まで立てて、負けるわけねえだろ!と啖呵を切りながらぎゃーぎゃーと騒ぐので、その横。殆ど相棒の様になっているアオメがやれやれとため息を吐きだしながら自分の銃の手入れを済ます。

「とりあえずアカメさんの所に行きましょう!大丈夫とは言ってましたが、どうなってるか分かりませんし!」
「大丈夫じゃないかな、あの人、根性あるし」

 病的にまで調べていたベギーだけは信用しているが、サンダースはしっかり状況を見ていただけあってかなり心配している。そうは言っても元々有名なプレイヤーなうえに、どういう人かを全員が知っている。そのうえで短い期間ながらも付き合っているだけあってそこまでの心配をしていないというのが正直な所。

「ボス討伐の証は貰ったし、アカメを回収して、先行こうぜ?」
「そうですね、手痛くやられたみたいですし」

 さっきまでぎゃあぎゃあと騒いでいたが、急に落ち着いてアカメが設置していたタワーシールドの所へと4人揃って向かう。ちなみに他のパーティはそれぞれ固まって動いていたのもあってか、無事にボス撃破出来た余韻で騒いでいたりする。




「よぉ、煙草に火付けてくれねーか?」

 普段は見たことないくらいにはボロボロになっているアカメがタワーシールドに寄りかかって座ったまま、いつもの感じで煙草を咥えてその先を揺らす。
 客観的に見て、いつものスーツがボロボロになっていて、下に来ていたであろうキャットスーツが覗いている。特に体が欠損しているわけではないが、明らかに右半身はぐったりと動かない状態ってのが目に見え、右目に至っては伏せられたままだ。

「すっげーボロボロじゃんか!」

 シャールが指を向けてけらけら笑いながら煙草の火を付ける。そしてすぱすぱと何度か吸ってからいつものように紫煙を吐きだしてギザ歯を見せる笑みを浮かべる。
 
「もうちょっと上手く立ち回れば良かったんだけどな、コアも撃ち抜けなかったし、こんな状態よ」
「そもそも何があったんですか!」
「それは確かに、アカメさん結構防御力高いですよね」
「ビームの直撃は見たけど」

 そんな事を言われたらため息交じりに紫煙を辺りに燻らせ、どういう状況だったか、何があったのかを説明していく。最初はけらけらと笑っていたシャールも話を聞いて行くと青筋立てて明らかにイライラしていき、原因を作ったあのアホ共を探す様に辺りをぎろぎろと睨みつける。逆にアオメとベギーは冷静に、どう始末をつけるかを話し合いをし、サンダースの方はフレンドなりから情報を仕入れ始める。
 パーティ崩壊の原因を作った癖に、何一つ謝罪も無ければ、ボス討伐のうま味も貰っている、ついでに言えばアカメの事を侮辱したというのもあって、今回の件でかなりお冠だ。そんな様子を見て、やられたアカメ本人は特に気にせずに煙草を吹かして、それをなだめる。

「全部終わるまではその怒りを敵にぶつけてくれ、そんなのより大事なことを話すからよく聞け」

 それぞれあれこれ言ったり調べていたのをぴたりと止めるとアカメの方に顔を向ける。

「運営が回復手段を用意していない訳はないから、拠点にまで戻れれば回復は出来るはずだ。
 だから足手まといの私を置いて先に進むか、私をこのまま持って行って先に進むか、決めろ」

 いつもよりもペースの速い煙草の吸い方をした後に、ぷっとそれを吐き捨てて4人をじっと見つめる。幾ら片目でしか見ていないとは言え、四白眼のきつい目つきは変わらないので眼光は相変わらず鋭い。
 暫く

「俺は置いて行くに1票」
「僕は連れていくに1票」
「自分もつれていくですね!」
「私は置いて行く」

 きっちりと2対2で分かれたのを楽しそうに見てからアカメが口を開く。

「置いて行くに1票、そういう事だから気にせず先に進め」

 インベントリから帰還用のアイテムを取り出し、準備をしているアカメ。まさかの票に驚きつつもある意味では納得している4人。

「パーティはどうすんだよ、解散か?」
「任せる、新しいのを組んでも良いし、このままでもな」
「それじゃあ維持ですね」
「此処で待つことはできませんが、先で待つことはできますよ!」
「先のボスまで倒しちゃうかもね」

 そんな事を言えば、みんな揃ってひとしきり笑ってからアカメが転移を開始する。
 転移し拠点に戻ったのを4人が見守った後、大きく息を吐き出してどうするかを相談。

「さて、先に進みますか!」
「一旦戻って此処から戻ってくるまでどれくらい掛かるんでしょう」
「さあなあ、アカメなら大丈夫だろ」
「悔しがるくらい先に進んだ方が煽れて良いんじゃない?」

 それもそうかと言い合い、ボスエリアを抜けて祭壇の方へと向かう。道中ボスを倒したおかげなのか、他の大中小ゴーレムは特に出現せず、見掛けるのは同じように祭壇に向かっていく他パーティばかりだ。
 道すがら各々のパーティの話題はさっきのボスはどうだ、誰が倒したのか、消費弾薬は、残りのアイテムは……攻略勢にありがちなさっきの事とこれからの攻略の事を言っている。

「やけに溜まってる気がしますね」
「ちょっと見てきます!」

 いつも通りにサンダースが先行して情報収集。
 
「……例のクソがいたぜ」
「ゴキブリってしぶといって知ってる?」

 いつもの感じで待っている間にシャール、ベギーの危険思想コンビが例のアホを見つけてじろりと一睨み。相変わらずの鈍感と言うか、自分のことしか見えていないようで危険思想コンビががっつりとマークをしつつ、いつでも撃てるように銃に指を掛ける。散々っぱらアカメはFFしても無駄だから、弾を使うなと口を酸っぱくしていたが、そんな事は知ったこっちゃねえと、すぐにでも撃ってちょっかいを掛けれるようにしている。1発だけなら誤射って言われてるからと言うのもあるんだろう。

「アカメさんがいないからってはっちゃけ過ぎですよ」
「っせーな、分かってるよ」
「間接的……とは言えないレベルの妨害で謝りもしない奴に礼儀ってのはね」

 そんな2人を見てアオメも証拠は残さないのとアカメに迷惑をかけるなとだけ言って、サンダースに合流する。アカメの抜けたパーティは好き勝手やり過ぎている、これをアカメが知るのは合流して暫くしての話。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...