最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
448 / 625
16章

418話 ただでは転ばない

しおりを挟む
「やべ、動けねえ……」

 仰向けに倒れたまま、起きている状況を見える範囲で見つつ、音で判断していく。動けないからこそ標的にされないので戦況を良く把握できる。私が吹っ飛ばしてやった左腕の方……だと思うのだが、音が集中している方があるので、そっちに回り込んで集中砲火でもかましているか?
 
「あー、つまらん」

 HPはからっから、右半身は頭から足の先まで動かせないし、撃った反動でMPも無いし、久々にこんな感じになっている。ボロボロになりながらも動けていた時は多かったし、何だったらやられるときは一発で死んでいたから半殺しにされてほったらかしは何気に初めての経験だ。

「左半身は動かせるけど」

 ゆっくりずりずりと動けばタワーシールドまでは行けるだろうけど、それでやられたら元も子も無い。MPポーションでも飲めれば銃操作を使って自分の体を引っ張る何て事も出来そうだが、自分でポーション出すのすらきつい。こうなったら黙って後はボスを倒されるのを待つだけか。

 それにしても毎回毎回いつも良い所で上手くいかない事が多すぎる。今回だって余計なイレギュラーで被弾してこんな状態になってるし、詰めが甘い。そういえばあのアホ連中は左側で見なかったから必死こいて右に回ったっぽいな。これある意味でMPKになるから通報してやろうか。

「……いや、まだ終わってないわ」

 こっちには見向きもしてこないので、辛うじて動く左腕でインベントリを開く。それにしても動くだけで目の前で警告表示と警告音がずーっと表示され鳴り響くの鬱陶しいな。とにかくインベントリを開いてどうにかこうにかポーションを取り出して回復を入れる。
 が、右半身に関しては特に治るわけではなく、ただただHPを回復するだけで状態異常扱いになっている、不能の右腕右足右目は相変わらずぴくりとも反応しない。前にこういう戦い方をした時は、犬野郎の弟がいたから回復出来ていたが、回復役のいない職だと状態異常に弱い、こういう右半身が不能になる状態異常ってのも珍しいとは思うが。

 とりあえずHPポーションとMPポーションを狙われない程度のゆっくりした動きで使い回復。吹っ飛んでいるだけあって、最大HPが半分ほど減少するおまけつき。動かせない上にHPも減らされてるし、これイベント中に治す事難しいだろう。
 
「さて、と……これでいいか」

 そのまま這いずってどうにかタワーシールドに隠れてから持たれるように体勢を戻す。

『戦況は』
『大分装甲は削ってる、ちらちらコアが見えるな』
『アカメさんの方に援護はいりますか!』
『他のパーティも結構やられていますし、僕らが生き残ってるのもぎりぎりですよ』
『私もタワーシールド作るかな』
『なるほど、まあ頑張ろうって事か……サンダースはこっちに来なくていいぞ』

 視界の悪い中、戦況を聞いてどう立ち回るかを考える。
 装甲が剥がれてるって事は、私がやって、こうして起き上がるまでに他のパーティやうちの連中が頑張って小型ゴーレムを剥がしていったって事だな。
 
「左だけ使って立ったりなんだりするのきついな、こりゃ」

 片手でインベントリからPウサ銃を取り出し、足で固定したうえでナイフを取り外し、少しでも扱いやすくしたうえで、タワーシールドの上部にPウサ銃を置いて一息。この動作をするだけでやたらと苦労する。前にリアルで右手を怪我して動かせなくなった時があったが、その時を思い出す。
 
「こうしたら、行けるか」

 Pウサ銃のストックを右肩に押し付けつつ左手を引き金に掛ける。
 他のプレイヤーが頑張ってるおかげで、序盤の時よりも小型ゴーレムが減っているのでビーム攻撃の弾幕が薄くなっているのと、私よりも前にいるプレイヤーのおかげでこっちにあまり攻撃が向かなくなているのは僥倖、体勢を決めてから一旦狙ってしゃがんでまた一息。

「確か新スキルの派生があったから……ああ、これこれ」

 今まであまり使わないから取っていないからほったらかしにしていた物が1つ。
 三度撃ちのレベルは最大で、さらにそこから進化出来たのだが特にやっていなかった四度撃ち、五度撃ちまでSPをつぎ込んでやる。2個分スキルを上げるだけでSP消費22だよ、折角レベルを上げて37まで貯めてたってのに。


スキル名:五度撃ち レベル:5(MAX)
詳細:【アクティブ】【MP消費10】
  :発動すると即時に最大5連射する。任意で4発までの連射も可
備考:レベル上昇により連射間隔の短縮
  :フルオート、前装銃の場合使用不可、進化終了


 これでPウサ銃の装填数を一度で叩き込める。
 まあ、その代わりにMPかなり消費するから燃費は相変わらず悪い。銃操作を活用するためにInt上げておいて良かった。何ていうかぱっと思いついた時にSPなりアイテムや装備を使う癖はそのうち直さないと駄目そうだ。
 
「ふー……そろそろケリ付けよう」

 さっきと同じ狙い方をし、ゆっくりと息を吐き出してから、銃操作で右半身が動かない分をカバーし、細かい調整は左手で行う。
 それにしてもまったく、ビームは飛ばすわ、右半身は使えなくするわ、ずっと面倒なボスだわ。

「昔も言ったなあ、こんな事」

 ビーム攻撃が強かろうが、右半身が使えなかろうが、ろくに動けもしないが。

「この程度で私が諦める理由には何一つならん」

 ゆっくりと息を吐き出した後、深く静かになおかつ大きく息を吸って止める。
 そして引き金を絞りながらスキルを発動。
 Pウサ銃に装填されていた5発の弾が連続して銃声を響かせたうえ、ボスゴーレムへと飛んでいき。胴体部分、ちらちらと見えていたコアゴーレムの横、小型の更に奥にいる中型ゴーレムを消し飛ばす。
 勿論反撃の一手でビームが飛んでくるので慌てて後ろに倒れ込み、シールドの裏に隠れようにするがろくに体を動けない状況じゃ動作が遅れるので被弾、ビーム攻撃の余波でそのまま仰向けに倒れる。

「……諦める理由にはならんが、諦めなきゃならない原因にはなりそうだ」

 仰向けのまま、吹っ飛ばされたPウサ銃を銃操作で手元に引き寄せ、杖の様にして体を起こす。
 なに、簡単な事だ、あいつが倒れるまで、回復して撃って反撃すればいいだけの事。半分になったHPでも1発で全部吹っ飛ばないのはしっかり防具が機能しているわけだし、死ななきゃ安い。

「倒した後のことは……ま、大丈夫だろ」

 ありったけ、ではないが結構気張らんとダメだな。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...