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そこからの数日は変わらず学院の森へ行き、訓練を行った後、反省会をすることを繰り返していた。
今日も三人で森へ訓練に行った後、食堂のテラス席で反省会をしようと席に着いた。
お茶を飲みながら三人で話をしていると、向いに座っていた二人は顔色を変えたように見えた。
その瞬間。
「ソフィア!!」
ノア様が突然大きな声を出し、テーブルを挟んだ向い側から手を伸ばしてきた。私はその声に何が起こったのか理解できずに固まってしまう。
「ソフィアちゃんっ」
ルイ様も立ち上がった。二人の行動を見てゆっくりと後ろを振り返ろうとしたその時、ジャキリと音がなった。
……え?
振り返ると、そこにいたのはハサミを持ったミリアだった。
はらりと落ち、床に散らばった髪。
全てがゆっくりと見えた。
……まさか。
なんで、ミリアは私の髪を切ったの?
貴族令嬢が髪を短く切るのは修道女になるときだけ。それほど髪は大事なものなのに。
大事な髪が……。
なぜ?
それほどまで私を憎んでいた?
いつも、いつも迷惑を掛けられているのは私なのに。
私は怒りと切られたショックやミリアがここまでするなんて、と様々な思いが綯交ぜになり、言葉が出なかった。
たった一瞬のことだったと思う。けれど、私の中では言葉が出てくるまでの時間はとても長く感じた。
「……これはどういうことかしら? 説明してもらえる?」
「お姉様が悪いのよ!!! ノア様は私の婚約者なのにいつも一緒にお茶しているからよ」
「あははっ、すっきりして素敵よ? いつもいつも、いーっつもノア様はお姉様ばっかり。私に会ってさえくれない。全部、お姉様が悪いのよ? 私とノア様の邪魔をしないで」
ミリアはことの重大さを分かっていないようで笑顔で話をしている。
とうとう実力行使に出てしまったのね。
大勢の生徒が見ている前でやってしまった。
もう、ミリアを庇う事は出来ない。
悲しいかな、自分のことよりも伯爵家やミリアのことを先に考えてしまっている。
「何度言えば理解できるの? これは正式にオリヴェタン侯爵家から抗議させてもらうわ」
「……ミリア。なんて事をしたんだ。これは俺でも庇いきれない。我が侯爵家からも抗議し、婚約破棄させてもらう」
ノア様の言葉に反応するようにミリアはヒステリックに声を荒らげる。
「そんなっ。ノア様、酷いわ!! 酷い! 酷い! ノア様は私の物なの! ソフィアと一緒にいるなんて許さない!」
大声で叫びながらハサミを両手で持ち直し、そのまま私を刺そうとしたが、ルイ様はさっと、ミリアの横に回り込み、彼女を取り押さえた。
ノア様は私の手を引き、抱きしめる形でミリアから私を庇った。
「許さない! 許さないんだからっ!! 私のノア様なのよ!!!」
世界が自分中心で回っているミリアにはついていけない。
「……ノア様は物では無いわ」
「うるさいっ! うるさいっ!!! 今まで可哀想だったから私がわざわざ声をかけてあげていたのが分からないの? 私の方が可愛くて、お父様もノア様もみんな私の事を愛してくれているの。
だから養女になって、貴族になった。私は選ぶ側なのっ。婚約者もクラスメイトもみんな、私のことが好きなのっ!! ソフィアより私が偉いのよ! 可愛い私が全て選ばれて当然なのよ!」
ミリアはルイ様に取り押さえられたせいか興奮し、早口でまくし立てる。
その様子に食堂は静まり返り、私たちの方に視線が集まっている。
ミリアが興奮するのとは反対に私は冷静さを取り戻していく。
「何言ってんの? 不細工。ソフィアちゃんと比べるとお前はゴミカスだよ? 侯爵令嬢の髪を切るだなんてお前、死んだ方がいいんじゃないの?」
ルイ様は普段とは違い、低く冷たい声で話をしながらミリアを押さえつける。女の子だからといって手加減はしないようだ。
ミリアは痛い、放してと何度も訴えているが、周りにいた誰もがルイ様を止めることはしない。
食堂は物々しい雰囲気で騒然としていたが、誰かが守衛を呼んだらしく、駆けつけた守衛に直ぐさまミリアは連れていかれた。
「ソフィア、怪我は無いか?」
「ええ。髪の毛は無くなりましたが。怪我は無いので大丈夫です」
私は戯けてみせたが、ノア様は青い顔をしている。
「もう、大丈夫です。放していただいて」
「あっ、ああ。ごめん」
ノア様は私の言葉で思い出したようにパッと手を放した。
「……今から邸に帰ります。お父様たちにさきほどの出来事を話なくてはいけませんし。ルイ様もミリアを取り押さえていただき、ありがとうございました。おかけで私はこの通り、怪我はせずにすみました」
「ソフィアちゃん。怪我をしなくて本当に良かった。でも、髪を切られてしまったのは辛いよね。落ち着いたら魔法郵便でもちょうだい。待ってるから」
ルイ様はパンパンと埃を払い、短くなった髪に触れ眉を下げている。
「ソフィア嬢、ここから出ようか」
「……そうですね」
「ルイ、あとのことは頼んだ」
「はあ、そうだね。俺は先生たちや色々と報告があるから。ノア、頼んだよ」
「食堂にいる皆様。お騒がせして申し訳ありませんでした」
私は食堂にいた人たちに向け礼をした後、ノア様のエスコートでその場から立ち去る。
ノア様は口を開くことはなかったけれど、その手はいつになくぎゅっと私を掴み、守ろうとしてくれていた。
「ノア様、ありがとうございました。私はこのまま家に戻ります」
そうして私はノア様にお礼を言って急いで馬車に乗り込み、邸へと帰った。
今日も三人で森へ訓練に行った後、食堂のテラス席で反省会をしようと席に着いた。
お茶を飲みながら三人で話をしていると、向いに座っていた二人は顔色を変えたように見えた。
その瞬間。
「ソフィア!!」
ノア様が突然大きな声を出し、テーブルを挟んだ向い側から手を伸ばしてきた。私はその声に何が起こったのか理解できずに固まってしまう。
「ソフィアちゃんっ」
ルイ様も立ち上がった。二人の行動を見てゆっくりと後ろを振り返ろうとしたその時、ジャキリと音がなった。
……え?
振り返ると、そこにいたのはハサミを持ったミリアだった。
はらりと落ち、床に散らばった髪。
全てがゆっくりと見えた。
……まさか。
なんで、ミリアは私の髪を切ったの?
貴族令嬢が髪を短く切るのは修道女になるときだけ。それほど髪は大事なものなのに。
大事な髪が……。
なぜ?
それほどまで私を憎んでいた?
いつも、いつも迷惑を掛けられているのは私なのに。
私は怒りと切られたショックやミリアがここまでするなんて、と様々な思いが綯交ぜになり、言葉が出なかった。
たった一瞬のことだったと思う。けれど、私の中では言葉が出てくるまでの時間はとても長く感じた。
「……これはどういうことかしら? 説明してもらえる?」
「お姉様が悪いのよ!!! ノア様は私の婚約者なのにいつも一緒にお茶しているからよ」
「あははっ、すっきりして素敵よ? いつもいつも、いーっつもノア様はお姉様ばっかり。私に会ってさえくれない。全部、お姉様が悪いのよ? 私とノア様の邪魔をしないで」
ミリアはことの重大さを分かっていないようで笑顔で話をしている。
とうとう実力行使に出てしまったのね。
大勢の生徒が見ている前でやってしまった。
もう、ミリアを庇う事は出来ない。
悲しいかな、自分のことよりも伯爵家やミリアのことを先に考えてしまっている。
「何度言えば理解できるの? これは正式にオリヴェタン侯爵家から抗議させてもらうわ」
「……ミリア。なんて事をしたんだ。これは俺でも庇いきれない。我が侯爵家からも抗議し、婚約破棄させてもらう」
ノア様の言葉に反応するようにミリアはヒステリックに声を荒らげる。
「そんなっ。ノア様、酷いわ!! 酷い! 酷い! ノア様は私の物なの! ソフィアと一緒にいるなんて許さない!」
大声で叫びながらハサミを両手で持ち直し、そのまま私を刺そうとしたが、ルイ様はさっと、ミリアの横に回り込み、彼女を取り押さえた。
ノア様は私の手を引き、抱きしめる形でミリアから私を庇った。
「許さない! 許さないんだからっ!! 私のノア様なのよ!!!」
世界が自分中心で回っているミリアにはついていけない。
「……ノア様は物では無いわ」
「うるさいっ! うるさいっ!!! 今まで可哀想だったから私がわざわざ声をかけてあげていたのが分からないの? 私の方が可愛くて、お父様もノア様もみんな私の事を愛してくれているの。
だから養女になって、貴族になった。私は選ぶ側なのっ。婚約者もクラスメイトもみんな、私のことが好きなのっ!! ソフィアより私が偉いのよ! 可愛い私が全て選ばれて当然なのよ!」
ミリアはルイ様に取り押さえられたせいか興奮し、早口でまくし立てる。
その様子に食堂は静まり返り、私たちの方に視線が集まっている。
ミリアが興奮するのとは反対に私は冷静さを取り戻していく。
「何言ってんの? 不細工。ソフィアちゃんと比べるとお前はゴミカスだよ? 侯爵令嬢の髪を切るだなんてお前、死んだ方がいいんじゃないの?」
ルイ様は普段とは違い、低く冷たい声で話をしながらミリアを押さえつける。女の子だからといって手加減はしないようだ。
ミリアは痛い、放してと何度も訴えているが、周りにいた誰もがルイ様を止めることはしない。
食堂は物々しい雰囲気で騒然としていたが、誰かが守衛を呼んだらしく、駆けつけた守衛に直ぐさまミリアは連れていかれた。
「ソフィア、怪我は無いか?」
「ええ。髪の毛は無くなりましたが。怪我は無いので大丈夫です」
私は戯けてみせたが、ノア様は青い顔をしている。
「もう、大丈夫です。放していただいて」
「あっ、ああ。ごめん」
ノア様は私の言葉で思い出したようにパッと手を放した。
「……今から邸に帰ります。お父様たちにさきほどの出来事を話なくてはいけませんし。ルイ様もミリアを取り押さえていただき、ありがとうございました。おかけで私はこの通り、怪我はせずにすみました」
「ソフィアちゃん。怪我をしなくて本当に良かった。でも、髪を切られてしまったのは辛いよね。落ち着いたら魔法郵便でもちょうだい。待ってるから」
ルイ様はパンパンと埃を払い、短くなった髪に触れ眉を下げている。
「ソフィア嬢、ここから出ようか」
「……そうですね」
「ルイ、あとのことは頼んだ」
「はあ、そうだね。俺は先生たちや色々と報告があるから。ノア、頼んだよ」
「食堂にいる皆様。お騒がせして申し訳ありませんでした」
私は食堂にいた人たちに向け礼をした後、ノア様のエスコートでその場から立ち去る。
ノア様は口を開くことはなかったけれど、その手はいつになくぎゅっと私を掴み、守ろうとしてくれていた。
「ノア様、ありがとうございました。私はこのまま家に戻ります」
そうして私はノア様にお礼を言って急いで馬車に乗り込み、邸へと帰った。
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