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馬車から降りた私を見て侍女が驚き、走ってサラを呼んだ。サラはパニックであたふたと駆け回り、その様子を見た侍女たちも慌ただしく動き始めた。
「おかえりなさい、おじょうさ、まっ!?」
侍女たちの動き回る姿を見て執事が玄関に出てきたが、私の髪を見て絶句してしまった。
「お父様に報告することがあるの。今、執務室にいるかしら?」
「はい。旦那様は執務室にいらっしゃいます」
「わかったわ。このまま執務室へ行くわ」
「大旦那様もすぐにお呼びします」
馬車に乗り込んだ時に事前に知らせを出しておけばよかった。そこまで考えが至らなかったことを自省する。
執事はお父様やおじい様に伝言魔法を飛ばし、私はサラを連れてそのまま執務室へと向かった。
「学院からただいま戻りました」
「右側の髪が肩までしかないのはどうしたんだ!?」
執務の手を止めてしまうほどお父様は驚いている。
私が理由を話す前におじい様もおばあ様も執務室へと入ってきた。そして私の髪を見て二人とも固まってしまった。
「お父様、申し訳ありません。グリーン伯爵令嬢に髪を切られてしまいました」
私は先ほどの出来事をお父様たちに伝えた。
「辛い思いをしたのね。ソフィアちゃんが傷つくのは許せないわ。カイン、しっかりと伯爵家へ抗議を出しなさい」
「母さん、言われなくてもしっかり抗議しておくよ。ソフィアの大事な髪を切るなんてとんでもない話だ! 然るべき対応をする」
お父様やおじい様、おばあ様もみんな私を心配して怒っている。
あの場では冷静になっていたつもりだったけれど、やはりどこか興奮していた事もあり、何も感じなかったが、時間が経つうちに自分の髪の軽さにショックを受けている。
落ち込んでばかりはいられないわ……ね。
髪はそのうちまた元の長さに戻るし、大丈夫。
自分にそう言い聞かせながら自室に戻った。
「お嬢様、ううっ。大事な髪がっ。あの女、絶対許さないです。お嬢様は何にも悪くありません」
サラが泣きながら髪を切り揃えてくれた。
「サラ。ミリアのせいとはいえ、髪は軽くなって楽になったわ。私は大丈夫よ。すぐ髪なんて伸びるわ」
そうは言ったものの髪を切られたことが心の中でジワリと波紋のように広がっていくのを感じる。
髪の毛の短い貴族令嬢など私だけよね。
クラスの人達からは教会に行くの? と笑われてしまわないかしら。
学院へ行ったらすれ違う人達はきっと奇異な目で私を見るに違いない。
そう考えるだけで億劫になってくる。
流石に気が重くて翌日は学院を休んでしまった。
……はぁ。
次の日、また学院を休もうかと考えだけれど、何とか気力を振り絞り、気は重いが学院へ登校する。
「ごきげんよう。ソフィア様、大丈夫でしたか?」
食堂で私が髪を切られた事は沢山の生徒が目撃しており、学院中で噂となりあっという間に広まっていたみたい。登校直後から様々な人に声を掛けられた。
普段から素行の悪いミリアが起こした事で私に同情を寄せられたようだ。
「皆さまには心配を掛けてしまいました」
クラスのみんなからも心配されて、我が事のように泣きながら励まされたわ。リナ様もモニカ様もとてつもなく心配してくれた。
……上級生で授業が少なくてよかった。
やはり授業中、軽くなった髪が気になり、気分も乗らず、授業が終わると直ぐ帰宅をする。
思っていた以上にショックを受けていた自分にもやりきれない。短くなってしまったのはもうどうしようもないし、前を向かないといけないのも分かっているの。
そんな後ろ向きな日が数日続いたが、短くなった髪にも慣れて、ようやく気分も上向きになってきた。
何日も討伐に参加しなかったし、ノア様とルイ様に会ったら謝らないと。
ようやくノア様とルイ様に会う決心がつき、登校したその足で騎士科へと向かった。
騎士科はやはり男子生徒が殆どだが、みんな騎士を目指しているだけあり、騒ぎ立てる事はしないみたい。クラスメイトの一人がルイ様を呼んでくれる。
「ソフィアちゃん。わざわざ騎士科まで来てくれたの? 俺は嬉しいよ! 髪も肩の長さに揃えたんだね。短い髪も似合っていて可愛い」
「ルイ様、ありがとうございます。それと、この間はごめんなさい。数日は流石に落ち込みましたが、ようやく私も前向きになれました。明日からまた討伐を再開したいです」
「なんだ、てっきり俺に愛の告白をしに来たのかと思ったよ。明日からまたいつもの所で落ち合おう。ノアは今、手が離せなくて教室に居ないけど、明日は必ず行くから」
教室の入口でルイ様は屈託のない笑顔で話をする。その様子を見たルイ様のクラスメイトはルイ様をはやし立てるように揶揄いはじめる。
ルイ様のクラスはみんないい人達なのね。
「ルイ様、ありがとうございます。ノア様にも宜しくお伝えください。では」
ルイ様は私をクラスまで送ると言ってくれたけれど、私は丁寧に断りを入れてクラスに戻り、授業を受けてから帰宅した。
「おかえりなさい、おじょうさ、まっ!?」
侍女たちの動き回る姿を見て執事が玄関に出てきたが、私の髪を見て絶句してしまった。
「お父様に報告することがあるの。今、執務室にいるかしら?」
「はい。旦那様は執務室にいらっしゃいます」
「わかったわ。このまま執務室へ行くわ」
「大旦那様もすぐにお呼びします」
馬車に乗り込んだ時に事前に知らせを出しておけばよかった。そこまで考えが至らなかったことを自省する。
執事はお父様やおじい様に伝言魔法を飛ばし、私はサラを連れてそのまま執務室へと向かった。
「学院からただいま戻りました」
「右側の髪が肩までしかないのはどうしたんだ!?」
執務の手を止めてしまうほどお父様は驚いている。
私が理由を話す前におじい様もおばあ様も執務室へと入ってきた。そして私の髪を見て二人とも固まってしまった。
「お父様、申し訳ありません。グリーン伯爵令嬢に髪を切られてしまいました」
私は先ほどの出来事をお父様たちに伝えた。
「辛い思いをしたのね。ソフィアちゃんが傷つくのは許せないわ。カイン、しっかりと伯爵家へ抗議を出しなさい」
「母さん、言われなくてもしっかり抗議しておくよ。ソフィアの大事な髪を切るなんてとんでもない話だ! 然るべき対応をする」
お父様やおじい様、おばあ様もみんな私を心配して怒っている。
あの場では冷静になっていたつもりだったけれど、やはりどこか興奮していた事もあり、何も感じなかったが、時間が経つうちに自分の髪の軽さにショックを受けている。
落ち込んでばかりはいられないわ……ね。
髪はそのうちまた元の長さに戻るし、大丈夫。
自分にそう言い聞かせながら自室に戻った。
「お嬢様、ううっ。大事な髪がっ。あの女、絶対許さないです。お嬢様は何にも悪くありません」
サラが泣きながら髪を切り揃えてくれた。
「サラ。ミリアのせいとはいえ、髪は軽くなって楽になったわ。私は大丈夫よ。すぐ髪なんて伸びるわ」
そうは言ったものの髪を切られたことが心の中でジワリと波紋のように広がっていくのを感じる。
髪の毛の短い貴族令嬢など私だけよね。
クラスの人達からは教会に行くの? と笑われてしまわないかしら。
学院へ行ったらすれ違う人達はきっと奇異な目で私を見るに違いない。
そう考えるだけで億劫になってくる。
流石に気が重くて翌日は学院を休んでしまった。
……はぁ。
次の日、また学院を休もうかと考えだけれど、何とか気力を振り絞り、気は重いが学院へ登校する。
「ごきげんよう。ソフィア様、大丈夫でしたか?」
食堂で私が髪を切られた事は沢山の生徒が目撃しており、学院中で噂となりあっという間に広まっていたみたい。登校直後から様々な人に声を掛けられた。
普段から素行の悪いミリアが起こした事で私に同情を寄せられたようだ。
「皆さまには心配を掛けてしまいました」
クラスのみんなからも心配されて、我が事のように泣きながら励まされたわ。リナ様もモニカ様もとてつもなく心配してくれた。
……上級生で授業が少なくてよかった。
やはり授業中、軽くなった髪が気になり、気分も乗らず、授業が終わると直ぐ帰宅をする。
思っていた以上にショックを受けていた自分にもやりきれない。短くなってしまったのはもうどうしようもないし、前を向かないといけないのも分かっているの。
そんな後ろ向きな日が数日続いたが、短くなった髪にも慣れて、ようやく気分も上向きになってきた。
何日も討伐に参加しなかったし、ノア様とルイ様に会ったら謝らないと。
ようやくノア様とルイ様に会う決心がつき、登校したその足で騎士科へと向かった。
騎士科はやはり男子生徒が殆どだが、みんな騎士を目指しているだけあり、騒ぎ立てる事はしないみたい。クラスメイトの一人がルイ様を呼んでくれる。
「ソフィアちゃん。わざわざ騎士科まで来てくれたの? 俺は嬉しいよ! 髪も肩の長さに揃えたんだね。短い髪も似合っていて可愛い」
「ルイ様、ありがとうございます。それと、この間はごめんなさい。数日は流石に落ち込みましたが、ようやく私も前向きになれました。明日からまた討伐を再開したいです」
「なんだ、てっきり俺に愛の告白をしに来たのかと思ったよ。明日からまたいつもの所で落ち合おう。ノアは今、手が離せなくて教室に居ないけど、明日は必ず行くから」
教室の入口でルイ様は屈託のない笑顔で話をする。その様子を見たルイ様のクラスメイトはルイ様をはやし立てるように揶揄いはじめる。
ルイ様のクラスはみんないい人達なのね。
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