魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ

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 邸に帰るまでにお兄様からは返事は無かった。

 自分の部屋に戻ってからは図書館で書き取った魔法に目を通し、復習をする。学院では習わない魔法だ。これから王宮魔法使いになるためには少しでも知識を増やしておきたい。

 今日の出来事を忘れるように勉強に打ち込む。

 家の図書室にも無かった魔法が沢山あり、途中で切り上げざるを得なかったのは残念で仕方がない。

 そうだ、この間のダンジョンで蒼魔石を貰ったことを思い出したわ。魔法を入れてみようかな。
 蒼魔石に入れる魔法を考える。

 原始魔法は魔石に入るのかしら?

 素朴な疑問が私の好奇心をくすぐり、挑戦してみることにした。

 ゴブリン魔石などの小さなものでは魔力を大きく消費する原始魔法は入らないと思う。そうなればやはりある程度の大きさがなければならないのよね。

 蒼魔石を手に持ち、唱詠を始める。『悪意ある者の攻撃を反射し、復讐せよ。冥府から出でし者達エリーニュス』魔石は光り始め、指先から魔力が吸い取られていくのが分かる。

 今まで使ってみた原始魔法は範囲魔法であり、この魔法は違うはずなのだけれど、ものすごい勢いで魔力を吸われている。私の魔力が半分以上蒼魔石に持っていかれた。凄いわね。

 この魔法はどの様な効果があるのかは実際の所、使うまでは分からないけれど、唱詠の文言を考えても攻撃をされると反撃にでるのよね?

 書物には詳しく書いていなかったのが残念だ。まぁ、攻撃した方が悪いわね。それと、何故かは分からないけれど、魔法を魔石に入れる前と入れた後では石の輝き方が違うのに気づいた。

 魔法を入れた後は蒼からより深い蒼に輝きを増し、魔石というより、一番グレードの高い宝石と言っても良いかもしれない。

 素敵だわ。

 サラにまたお願いしてネックレスの土台部を用意してもらう。この蒼魔石は卒業パーティーに付けていくことにしよう。

 サラに夕食の時間を告げられ、ラファルと食堂へ向かった。ラファルは成長を続けて気づけば大型犬位の大きさになった。

 ラファルの兄弟達は私より少し小さめだったからきっと今、兄弟に追いつくように著しい成長を遂げているのね。可愛過ぎる。食堂ではおじい様とおばあ様とお父様が居た。

「ソフィア、今日は図書館へ行ったんだって? 護衛とサラから全部聞いた」
「はい。図書館の本はまだ読んだ事の無い魔法書が沢山あり、楽しかったです」
「図書館でエマ・カーディー公爵令嬢と会ったらしいな」

「ええ。レオンお兄様の婚約者筆頭、第一夫人と仰っていました。お父様、本当に彼女は筆頭なのでしょうか」

 父はどこか気まずそうに話をする。その様子をみて事実なのだと分かった。

「んー。まぁ、強ち間違いではないかな」
「……そうですか。テオお兄様も同じなのですか?」
「そうだ」
「お父様、どうして私には教えていただけなかったの?」
「どうしてだい?」

「護衛から聞いたのであれば分かると思いますが、彼女と仲良く手を取り合うのは正直に言うと難しいです。婚約者筆頭と言う事は、そのまま婚姻すれば正妻です。

 それに婚約者筆頭となると、私は初婚で第二、第三夫人という位置になりますよね。望まれての結婚と思っていたら第二夫人だったのですね」

 本当なら黙って受け入れるしかないのだと思う。

 貴族令嬢として恩恵を享受するのなら政略結婚もしなければいけないのだ。でも、私の浮かれていた心に罅を入れるには十分過ぎるほどの事実だった。

 前もって知っていれば、まだ心の準備が出来ていたかもしれない。唐突に降って湧いた事実が受け止めきれなかっただけ。

「お父様、申し訳ありません。家の事情は理解しているつもりですが、あの方と一緒になるのであれば婚約を解消していただきたい、です」

「ソフィアちゃんの言う通りよ、黙っていたのは良くないわカイン。いつの世も男は奥さんがいながら愛人だのと囲って幸せだけれど、囲われた方は幸せではないのよ。ソフィアちゃんは今までもずっと伯爵家で犠牲になって生きてきたのにまた犠牲になれと言うのかしら?」
「……そうですね。母上。レオンとテオに話して今後の事を決めます」

 父はそれ以上口を開くことなく、祖母も憤りを感じているのか、これ以上空気を悪くするのを避けるためか、黙々と食事を取っている。

 はぁ。今日の食事はなんて重いの。

 衝撃の事実に塞ぎ込みたくなった。食欲も無くなり、途中で切り上げて部屋に戻る。おばあ様は心配していたけれど、顔色は悪かったのだと思う。

 やはり、この家の事情を分かっていたつもりだったけれど、私と結婚したいと望まれたけれど、第二夫人以降からのスタートだなんて……。

 それが私の価値。

 初婚で第二夫人確定ってどれだけ酷いのかしら。しかも今日会った令嬢が正妻? 上手くやっていける気がしない。

 テオお兄様にも婚約者がいるのだからレオンお兄様と婚約を解消してテオお兄様と結び直しても結局は同じ。

 頭では理解しているけれど、やはり心はついていけそうにない。嫌だと悲鳴を上げている。

「ラファル、私、消えても良いかしら……」

 ラファルはクルルと喉を鳴らし、私の膝に乗り顔をうずめてきた。

 ラファルだけは私の気持ちを理解してくれているのね。私はラファルを撫でながら涙が出てくるのを止めることができなかった。

 サラは来年か再来年の結婚に向けた準備でそろそろ忙しくなってくると言っていたけれど、この事が分かってしまった以上、どうなるかまだ分からない。

 伯爵家だった頃のように売られる可能性は低いとは思うけれど、レオンお兄様とあの令嬢が結婚すれば私の居場所はなくなるに違いないわ。

 ……最悪の事態を考えて自力で生活が出来るようにしなくてはいけない気がする。

 今、私に出来る事は……。
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