魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ

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「お待たせしました」
「あぁ、早かったね。君はこの街にきた久々の旅人だ。ゆっくり過ごすと良いよ。そういえば名前を聞いていなかったね。僕はヴィシュヌ。この街の長老で今は多分千歳を超えた所かな?」

 えっ!? 千歳?

 ヴィシュヌ様はそう言うと茶器が宙を浮き、お茶を淹れてくれる。

「私、ソフィア・オリヴェタンと言います。あの、ヴィシュヌ様は魔法使いなのですか? 街の人達も不思議な乗り物に乗っていましたし、服装も見たことがないです」
「ソフィア、この街に入る時に何か感じなかったかい?」
「結界の中に入るような、不思議な感覚はありました。あれは一体何なのでしょうか?」

「知りたいと思う事は山程あるだろうから少しずつ慣れていけば良いよ。街に入るのに感じた違和感はね、結界のようなものである意味正解かな。

 ある一定以上の魔力がある者しかこの街に入れないようになっているんだ。そしてこの街の空間は他よりも時間がゆっくり流れている。街の人達は皆、魔法使いであり、魔力を持っているんだよ。私と同様に寿命も恐ろしく長いと思うよ」

 ヴィシュヌ様の話によると、この街は世界に魔法使いを無くさないために存続している。

 たまに住民の希望で街へ行き来し、魔力の確認や、魔法使いが減少すると数人が街に降り、数を増やすように促しているらしい。

「ソフィア、君の魔力を調べさせておくれ?」

 ヴィシュヌ様は私の手を取り、魔力を流し始める。ヴィシュヌ様は魔力を確認した後、微笑みながら今度は私の額に手を当て、唱詠をしたの。

 すると、ヴィシュヌ様の目の色が蒼から緑へと変化し、手が仄かに光ったのは分かった。でもそれだけ。一瞬の事で何も理解が出来なかったわ。

「ソフィア、君の魔力についてだが、私達に近い魔力の質であり、今の世界にはあまりないようだね。先祖返りなんだろうな、やっぱり。それに今の世界を生きている者の中で原始魔法を使えるとは驚いたよ」

 ヴィシュヌ様は私の記憶を一瞬にして理解されたのかしら。凄いわ。

「すぐだとは思うが、君の迎えが来るまでこの街で、私の邸で好きなだけ過ごしなさい。魔法使いになりたいんだったね。街の者に聞いて学ぶといい。この邸には使用人は居ないから、後で街の者で手伝いが出来る者を呼んでおくよ」

「ヴィシュヌ様ありがとうございます」

 ん? 私の迎え? よく分からないけれど、誰か来るのかしら?

 まぁいいわ。

 ラファルと一緒に部屋に戻り、念願のお風呂タイム。サラがいた時はきっと自分でお風呂も入れなかったと思うわ。

 今は何でも一人で出来る気がする。

 ラファルの身体もしっかりと洗い上げる。お風呂から上がると女の人が部屋にいた。

「もうお風呂から上がったの? これと、これを着るといいわ。あぁ、それと、私の名前はシェナ。宜しくね」

 絹のような服とズボン。凄く軽いのに手触りも柔らかくて丈夫。何で作られているのかしら。とりあえず、裸は不味いので急いで着替えた。

「シェナさん。私、ソフィアといいます。宜しくお願いします」
「ソフィア、宜しくね。ヴィシュヌ様から聞いているわ。外から来たんだって? 凄く珍しい事なのよ? ソフィアは魔法使いになりたいのよね? 何でも聞いてちょうだい。

 この街は楽しい街よ。私は普段、魔法繊維を使って織る職人なの。出来た生地の裁断から洋服の仕上げまで何でもするわ」

「シェナさん。魔法繊維って何ですか?」
「魔法繊維って言うのはね、植物に作用する魔法があるでしょう? その魔法を応用させたものでイメージを乗せ、こんな感じで糸を指先から出していくの。魔力の出力や硬度で色を変えていくのよ」

 凄いわ!

 無唱詠で魔法を使っている。それに指先から糸が出ている。刺繍糸より細い糸なのに引っ張っても切れないのに程よい弾力。

「シェナさん! これを私も作れますか!?」
「出来なくはないわね。だけど、魔法の基礎からまず勉強する方が良いと思うわ。そうそう! この街の子供達が学ぶ魔法の基礎本を持ってきたの。あげるわ。でも、これを読んでも今の人達は使えないかも知れないけどね」
「シェナさん、ありがとうございます!」

 本を開くと、……古い文字だ。

 勉強していて良かったと初めて思う瞬間ね。私で辛うじて読めるくらい。お兄様達なら難なく読めてしまうのでしょうね。

 でも子供達が使う本で簡単に書いてあるから助かった。シェナさんに紙とペンを貰い、なるべくメモを取る。シェナさんの話は見た事も聞いた事もない話ばかりで私は夢中になった。

 なんて素晴らしいの。

 この日はシェナさんに街の話や基礎の魔法について話を聞いたわ。この街の住人はいつの間にか出来た街で遥か昔から存在していて、誰がどの様な目的で作られたのかは定かではないみたい。

 ヴィシュヌ様も幼い頃から教えられた通り、この街を『魔法使いを絶やさない為の街』として長老になってからもずっと守っているのだという。

 ヴィシュヌ様が分からない程の遥か昔から存在していた街って凄いわ。シェナさんの話を聞いているうちに時間はさらりと過ぎていたようだ。
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