【完】隣国に売られるように渡った王女

まるねこ

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 リヴィアが四歳になった頃から本格的な勉強が始まった。
 朝早くから夜遅くまで礼儀作法や楽器、学業の勉強に取り組み、彼女が持てる自分の時間など一つもなかった。

 一切の自由がない生活の中でも自我の無い人形のようにならなかったのは乳母のダリアや侍女、従者達の深い愛情のおかげだ。


 王妃オリーディが産んだのはリヴィアただ一人。

 アンバー側妃はラジーノを産んだ二年後に第二王子であるゼノを産んだ。
 エーゼットは三人の子供を平等に愛していたつもりだ。
 ただ、この国は王女が女王になることはないため、婚姻して王族から離れるリヴィアには特に愛情を掛けていた、つもりではあった。


 勉強に取り組む日々。

 ある日、リヴィアは夕方の勉強を終え、夕食後に教師が来るのを待っている間に一冊の本を読んでいた。

「……王子様は魔女を退治し、王女様を呪いの塔から救い出しました。めでたしめでたし。素敵な話よね。でも、物語は物語。これが現実なら誰も王女様なんて助け出そうなんて思わないわ」
「リヴィア王女様、そんな事はありませんよ?きっと、現実であっても王女様を連れ出してくれる殿方が現れると思います」
「ふうん。それが本当ならいいわね」
「私もこの本に書かれている囚われの王女と同じだけど、そんな都合よく王子様は迎えになんて一生来ないわ」
「信じていればきっと来ますよ」

 私は乳母のダリアと本の話をしていた。こうして投げやりな言葉を言えるのもダリアの前だけ。

 突然ノックせずにガチャリと扉が開かれた。母である王妃がずかずかと部屋に入ってきたのだ。彼女は不機嫌な様子を隠すことなく話し始めた。

「リヴィア、食事は終わったのね。絵本を読んで遊んでいるなんて時間の無駄だわ。そんな子供じみた本なんて捨ててしまいなさい。これからシューンエイゼット語の教師が来るわ。先生から合格が出るまで寝てはなりませんよ」
「……はい、お母様」
「何度言わせるの? 王妃様と呼びなさい」
「はい、王妃様」

 王妃はイライラしている様子でリヴィアの手を扇で一打ちした後、あからさまに大きな音を立てながら踵を返して執務に戻っていった。

 王妃はいつもリヴィアの部屋へ行き、八つ当たりをして去っていくことが多かった。

 リヴィアは叩かれた手を見つめた後、溜息を吐いて絵本を棚にしまうと教科書をテーブルの上に出し、教師が来るのを待った。

 毎日毎日朝から晩まで勉強漬け。

 リヴィアは八歳になる頃には淑女教育を終え、九歳には王太子に教育される内容を母オリーディの命令で勉強することになった。

 リヴィアは物心つく前から勉強漬けだったこともあり、覚えもよく優秀の一言に尽きる。

 男であれば歴代一の賢王になると教師からの評価を受けていた。

 反対に側妃アンバーの息子で第一王子のラジーノは七歳で勉強を始めたのはいいが、嫌いでいつも教師達から逃げ回っているらしい。

「おい、リヴィア! お前、また教師から褒められたんだってな!」

 ノックせずに部屋に入ってきたラジーノに溜息が出る。

「ノックくらいしなさい。それに今はお勉強の最中であることが見えないのかしら」
「なんだと! ただの王女の分際で! 王太子の俺が来てやったんだ。敬えよ!」
「ラジーノ、貴方も今は勉強の時間ではなくて?また逃げてきたの?」
「うるさい!! お前も口うるさい奴だな! キャンキャンうるさいぞ!」
「……ダリア、ラジーノの従者を呼んでちょうだい」
「かしこまりました」

 ダリアが従者を呼んでいる間、ラジーノは私の部屋でどこで覚えたのか分からない汚い言葉で悪態を吐き続けた。

 以前、教師がラジーノを諭そうとしたけれど、物を投げつけ癇癪を起こして、護衛騎士に連れられてようやく部屋に戻ったが、その後も暴れ続けたようだ。

 アンバー側妃がラジーノを諫めるのが一番なのだが、『ラジーノは悪くないわ。リヴィアが勉強しろと言ったのが悪いのよ』と諫めるどころか庇う始末。

 陛下は激しい姉弟喧嘩としか捉えていなかったようで『リヴィアはお姉さんなんだからラジーノが我儘を言ったからといって意地悪をしないように』と的外れななだめ方をしていた。

 アンバー側妃は難癖をつけては私の教師を首にしようとしていたが、私が謝罪することで教師はクビにならずに済んだ。

 そう言う事が何度かあって以降、教師にはラジーノに構わないように言ってある。
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