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「ラジーノ様! またリヴィア様の所で油を売っていたのですか。リヴィア様などどうでもよいではないですか。部屋に戻りますよ」
「ジョルスっ、だってこいつが悪いんだ! 王太子になれない、なりそこないの王女が悪い」
「ええ、そうでしょうとも。リヴィア様はラジーノ様より軽い存在です。気にしなければよいのです。さあ、行きますよ」
ラジーノの従者も大概だ。
だが、周囲は陛下が溺愛しているアンバー側妃の息子ということで誰も彼を諫めることをしないわ。
ラジーノを諫めた日にはアンバー側妃が陛下に泣きついて即刻クビを言われるのが決まっているもの。誰だって自分が可愛いからね。
「チッ」
ラジーノは舌打ちをしてテーブルにあった花瓶を壁に投げつけて部屋を出て行った。
「……アルバン先生、ラジーノが申し訳ございません」
「お気になさらないでください。それよりリヴィア様が心配です」
「私は、いつものことですから」
ダリアは割れた花瓶を片づけ始め、先生は授業を再開した。
ラジーノが部屋にやってきてリヴィアに侮蔑の言葉を吐いて暴れるのはいつものこと。
第二王子のゼノはラジーノに比べれば多少勉強はできたが、アンバーに似てリヴィアを小馬鹿にしたような話し方をしている。
アンバー側妃と直接関わることは少ないが、陛下が居ない時は嫌味を言われる。
つまり、『家族の仲は最悪』と言えよう。残念ながら王にだけは違って見えているようだが。
そんな忙しい毎日を過ごし、十歳の誕生日を迎えた日に父であるエーゼット王から話があると執務室に呼ばれた。
父の執務室へ来たのはいつぶりだろう?
これまで一度か二度しか訪れたことがない。私は億劫に思いながらも勉強の手を止めて乳母兼侍女となったダリアと一緒に執務室に向かった。
「陛下、お呼びでしょうか」
「リヴィア、待っていた。少し見ない間にまた大きくなったな。まぁ、そこへ座っておくれ」
父の指示通り、私はソファに座った。父は執務をキリがいいところで止め、向かいのソファに座った。
「リヴィア、お前は長年王女として過ごしているが未だ婚約者がいなかったな。良い嫁ぎ先を選んでおいた」
「お相手は誰なのでしょうか?」
「フェルディナンド・ペニーシェイク公爵子息だ。同じ歳だから話も合うだろう」
「婚約者の件、承りました」
私は了承することだけを伝えて執務室を後にする。
陛下は気にしていないが、以前から私と陛下の会話はこのように簡素なのだ。リヴィアは呆れたように一つ息を吐き、歩き始めた。
……婚約者、ね。
たしかペニーシェイク公爵はワインを始めとして酪農を主産業にしている領だったわ。
息子が三人。公爵家は豊かで家族仲も良い。同じ歳の子息はフェルディナンド様で、彼は金髪で容姿も良く、優しくて紳士で年頃の令嬢達から人気があると教師から聞いたことがある。
「リヴィア様、おめでとうございます。ようやく婚約者が決定しましたね」
「……ダリア、ありがとう」
私は部屋に戻るとすぐにダリアは笑顔で口を開いた。だが、私の返事にダリアはすぐに気づく。
「リヴィア様、何か憂い事でも?」
「ええ、婚約者が公爵家なのだから王妃様は口を出してこないと思うけれど、どうかしら? 私にまともな縁談が来るとは思えなくて……」
「そんなことはありませんよきっと。陛下はリヴィア様の事を思って良い嫁ぎ先を見つけてくれたのだと思います。べニーシェイク公爵家の悪い噂は聞いたことがありませんし、大丈夫でしょう」
「……そうね。そう思う事にしておくわ」
ダリアは一生懸命フォローしてくれているけれど、私は窓の外を眺めながらそう答えるしかなかった。
「ジョルスっ、だってこいつが悪いんだ! 王太子になれない、なりそこないの王女が悪い」
「ええ、そうでしょうとも。リヴィア様はラジーノ様より軽い存在です。気にしなければよいのです。さあ、行きますよ」
ラジーノの従者も大概だ。
だが、周囲は陛下が溺愛しているアンバー側妃の息子ということで誰も彼を諫めることをしないわ。
ラジーノを諫めた日にはアンバー側妃が陛下に泣きついて即刻クビを言われるのが決まっているもの。誰だって自分が可愛いからね。
「チッ」
ラジーノは舌打ちをしてテーブルにあった花瓶を壁に投げつけて部屋を出て行った。
「……アルバン先生、ラジーノが申し訳ございません」
「お気になさらないでください。それよりリヴィア様が心配です」
「私は、いつものことですから」
ダリアは割れた花瓶を片づけ始め、先生は授業を再開した。
ラジーノが部屋にやってきてリヴィアに侮蔑の言葉を吐いて暴れるのはいつものこと。
第二王子のゼノはラジーノに比べれば多少勉強はできたが、アンバーに似てリヴィアを小馬鹿にしたような話し方をしている。
アンバー側妃と直接関わることは少ないが、陛下が居ない時は嫌味を言われる。
つまり、『家族の仲は最悪』と言えよう。残念ながら王にだけは違って見えているようだが。
そんな忙しい毎日を過ごし、十歳の誕生日を迎えた日に父であるエーゼット王から話があると執務室に呼ばれた。
父の執務室へ来たのはいつぶりだろう?
これまで一度か二度しか訪れたことがない。私は億劫に思いながらも勉強の手を止めて乳母兼侍女となったダリアと一緒に執務室に向かった。
「陛下、お呼びでしょうか」
「リヴィア、待っていた。少し見ない間にまた大きくなったな。まぁ、そこへ座っておくれ」
父の指示通り、私はソファに座った。父は執務をキリがいいところで止め、向かいのソファに座った。
「リヴィア、お前は長年王女として過ごしているが未だ婚約者がいなかったな。良い嫁ぎ先を選んでおいた」
「お相手は誰なのでしょうか?」
「フェルディナンド・ペニーシェイク公爵子息だ。同じ歳だから話も合うだろう」
「婚約者の件、承りました」
私は了承することだけを伝えて執務室を後にする。
陛下は気にしていないが、以前から私と陛下の会話はこのように簡素なのだ。リヴィアは呆れたように一つ息を吐き、歩き始めた。
……婚約者、ね。
たしかペニーシェイク公爵はワインを始めとして酪農を主産業にしている領だったわ。
息子が三人。公爵家は豊かで家族仲も良い。同じ歳の子息はフェルディナンド様で、彼は金髪で容姿も良く、優しくて紳士で年頃の令嬢達から人気があると教師から聞いたことがある。
「リヴィア様、おめでとうございます。ようやく婚約者が決定しましたね」
「……ダリア、ありがとう」
私は部屋に戻るとすぐにダリアは笑顔で口を開いた。だが、私の返事にダリアはすぐに気づく。
「リヴィア様、何か憂い事でも?」
「ええ、婚約者が公爵家なのだから王妃様は口を出してこないと思うけれど、どうかしら? 私にまともな縁談が来るとは思えなくて……」
「そんなことはありませんよきっと。陛下はリヴィア様の事を思って良い嫁ぎ先を見つけてくれたのだと思います。べニーシェイク公爵家の悪い噂は聞いたことがありませんし、大丈夫でしょう」
「……そうね。そう思う事にしておくわ」
ダリアは一生懸命フォローしてくれているけれど、私は窓の外を眺めながらそう答えるしかなかった。
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