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「リナ、エステル嬢はどんな方なの?」
「はい。エステル・メロード・セイン侯爵令嬢は現在二十二歳。アレン様と同じ歳でございます。エステル様の家は鉱山の採掘を主な収入源としております」
「鉱山、ねえ。何が採れているの?」
「銀です」
「銀が採れるということは他は織物などの産業なのかしら?」
「ほんの一部ではありますが織物も出荷しています」
鉱山をメインにしている場合、有毒な物質も川に流れ出している可能性もあり、ケルノッティでは農産物は植えないようにしていた。きっとシューンエイゼット国も同じなのだろう。
「エステル嬢の婚約者はいないの?」
「はい。アレン様との婚約を昔から望まれており、婚約者はいません」
「他の令嬢との仲はどうなの?」
「エステル様はティポーが聞いていた話と変わりませんが、可愛い容姿を生かし、媚を売るため他のご令嬢からは嫌われております。
ただ、年齢的に婚約者がいない彼女はそろそろ厳しいものがあるようです。あと、令嬢たちが集まるお茶会には参加せず舞踏会のみの参加している状況です」
なかなかに辛辣な評価ね。ロジーナのような令嬢なのかしら。
「彼女はどういった目的で私に会おうとしているのかしら?やはり牽制かそれとも私を貶めたいのかしら」
「両方だと思われます」
「私は露払いをすればいいのかしら?」
「王妃様はそこまでは望まれておられませんが、アレン様の隣に立つにはそれ相応の実力は求められるかと思われます」
「……そう」
まあ、どんな令嬢かは会えば分かるわよね。
面会ギリギリの時間まで私は侍女たちに貴族の情報と派閥など、シューンエイゼットの情報を聞けるだけ聞いて頭に入れておく。
時間になり、侍女たちを連れてサロンに入ると、先に来ていたセイン侯爵令嬢が笑顔で座っている。
「はじめましてっ。ケルノッティの王女リヴィア様。私、アレン様の婚約者候補筆頭のエステル・メロード・セインと言いますっ。よろしくお願いしますね!」
「シューンエイゼットは大国だと思っておりましたが、礼儀の一つも分からぬ田舎貴族がいるのですね。我が国では礼儀の乱れは内戦の始まりと言います。これは一大事です。リナ、すぐに王妃様にご報告を」
「畏まりました」
そんな言葉はないけれど、ここまで礼儀もわきまえない令嬢は厳しくしても問題ないわ。
私の言葉に顔を引きつらせたセイン侯爵令嬢。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ。報告なんてしなくていいわっ。そこの侍女、待ちなさいよっ。謝りますっ」
セイン侯爵令嬢は立ち上がり、礼を執った。
「先ほどは失礼致しましたっ。ケルノッティの輝ける星であらせられるリヴィア王女殿下に会えたことを恐悦至極に存じます」
「リナ、私は礼儀って大切だと思っていたわ。この国には王族に無礼な行いができる人がいるなんてびっくりしたわ。シューンエイゼットだからなのかしら?」
リナは止まって振り返り、私に言葉を返す。
「リヴィア様、この国でも礼儀を重んじます」
「そうなの? 私の感覚が普通で良かったわ」
大袈裟に安心したように微笑むとセイン侯爵令嬢は何か言いたそうにしているが、我慢している様子。
「まあ、お座りになって? で、セイン侯爵令嬢は私に会いたいと要望があったようですが、どういったご用件でしょうか?」
「えっと、その、つまり、先ほども言いましたが、私はアレン様の婚約者候補の筆頭なのでっ。私の許可なくアレン様に近づかないで欲しいのですわっ」
私は扇を口元を隠す様にして話す。
「クスクス。何を仰っているのか全く分かりませんわ? なぜ貴女に言われなくてはいけないのかしら? 王女の私に命令出来るのは陛下や王妃様くらいだけれど、リナ、私、よく分からないのだけれど、この国では王子の婚約者候補が王女よりも偉いのかしら?」
「全くそのような事実はございません。そもそもアレン王子殿下には婚約者も婚約者候補もおりません」
「あら、自称だったの?」
ここは彼女に乗ってあげるべきなのかしら?
「そ、そんなことはないんですからっ! アレン様はいつも私を気に掛けてくれていてっ、好きだと言ってくれているのですっ」
「好きだと言われる割りに婚約者にならないのはなぜなのかしら?」
「そ、それはっ。どれだけアレン様が私を望まれても、他の貴族たちが待ったをかけるのですわっ」
顔を真っ赤にして早口になるセイン侯爵令嬢。
もっと賢い方かと思っていたけれど、中身はアンバー妃と変わらないような気がする。
折角の予備知識も無駄になりそうだわ。
「他の貴族から反対されるほどの危うい知能しかないのですね。それなら婚約者として相応しくありませんわね」
「そっ、そんなことはないですっ。アレン様は私を望んでくれているのですっ。彼は周囲を黙らせるために今回のカインディールに赴き、勝利を収めたのですっ!」
一生懸命に肩を震わせて目に涙を浮かべて反論する姿は、小動物のようだ。
きっと令息たちはこの可愛い姿を見て、庇護欲を掻き立てられるのでしょうね。反対に、私の気分はすこぶる悪くなったわ。
四つも上で格下の令嬢に子供のような言葉で反論されても、可愛くも何ともない。
呆れて溜息を吐きたくなってしまう。
侍女たちに視線を向けるが、冷たい表情のままだ。
「はい。エステル・メロード・セイン侯爵令嬢は現在二十二歳。アレン様と同じ歳でございます。エステル様の家は鉱山の採掘を主な収入源としております」
「鉱山、ねえ。何が採れているの?」
「銀です」
「銀が採れるということは他は織物などの産業なのかしら?」
「ほんの一部ではありますが織物も出荷しています」
鉱山をメインにしている場合、有毒な物質も川に流れ出している可能性もあり、ケルノッティでは農産物は植えないようにしていた。きっとシューンエイゼット国も同じなのだろう。
「エステル嬢の婚約者はいないの?」
「はい。アレン様との婚約を昔から望まれており、婚約者はいません」
「他の令嬢との仲はどうなの?」
「エステル様はティポーが聞いていた話と変わりませんが、可愛い容姿を生かし、媚を売るため他のご令嬢からは嫌われております。
ただ、年齢的に婚約者がいない彼女はそろそろ厳しいものがあるようです。あと、令嬢たちが集まるお茶会には参加せず舞踏会のみの参加している状況です」
なかなかに辛辣な評価ね。ロジーナのような令嬢なのかしら。
「彼女はどういった目的で私に会おうとしているのかしら?やはり牽制かそれとも私を貶めたいのかしら」
「両方だと思われます」
「私は露払いをすればいいのかしら?」
「王妃様はそこまでは望まれておられませんが、アレン様の隣に立つにはそれ相応の実力は求められるかと思われます」
「……そう」
まあ、どんな令嬢かは会えば分かるわよね。
面会ギリギリの時間まで私は侍女たちに貴族の情報と派閥など、シューンエイゼットの情報を聞けるだけ聞いて頭に入れておく。
時間になり、侍女たちを連れてサロンに入ると、先に来ていたセイン侯爵令嬢が笑顔で座っている。
「はじめましてっ。ケルノッティの王女リヴィア様。私、アレン様の婚約者候補筆頭のエステル・メロード・セインと言いますっ。よろしくお願いしますね!」
「シューンエイゼットは大国だと思っておりましたが、礼儀の一つも分からぬ田舎貴族がいるのですね。我が国では礼儀の乱れは内戦の始まりと言います。これは一大事です。リナ、すぐに王妃様にご報告を」
「畏まりました」
そんな言葉はないけれど、ここまで礼儀もわきまえない令嬢は厳しくしても問題ないわ。
私の言葉に顔を引きつらせたセイン侯爵令嬢。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ。報告なんてしなくていいわっ。そこの侍女、待ちなさいよっ。謝りますっ」
セイン侯爵令嬢は立ち上がり、礼を執った。
「先ほどは失礼致しましたっ。ケルノッティの輝ける星であらせられるリヴィア王女殿下に会えたことを恐悦至極に存じます」
「リナ、私は礼儀って大切だと思っていたわ。この国には王族に無礼な行いができる人がいるなんてびっくりしたわ。シューンエイゼットだからなのかしら?」
リナは止まって振り返り、私に言葉を返す。
「リヴィア様、この国でも礼儀を重んじます」
「そうなの? 私の感覚が普通で良かったわ」
大袈裟に安心したように微笑むとセイン侯爵令嬢は何か言いたそうにしているが、我慢している様子。
「まあ、お座りになって? で、セイン侯爵令嬢は私に会いたいと要望があったようですが、どういったご用件でしょうか?」
「えっと、その、つまり、先ほども言いましたが、私はアレン様の婚約者候補の筆頭なのでっ。私の許可なくアレン様に近づかないで欲しいのですわっ」
私は扇を口元を隠す様にして話す。
「クスクス。何を仰っているのか全く分かりませんわ? なぜ貴女に言われなくてはいけないのかしら? 王女の私に命令出来るのは陛下や王妃様くらいだけれど、リナ、私、よく分からないのだけれど、この国では王子の婚約者候補が王女よりも偉いのかしら?」
「全くそのような事実はございません。そもそもアレン王子殿下には婚約者も婚約者候補もおりません」
「あら、自称だったの?」
ここは彼女に乗ってあげるべきなのかしら?
「そ、そんなことはないんですからっ! アレン様はいつも私を気に掛けてくれていてっ、好きだと言ってくれているのですっ」
「好きだと言われる割りに婚約者にならないのはなぜなのかしら?」
「そ、それはっ。どれだけアレン様が私を望まれても、他の貴族たちが待ったをかけるのですわっ」
顔を真っ赤にして早口になるセイン侯爵令嬢。
もっと賢い方かと思っていたけれど、中身はアンバー妃と変わらないような気がする。
折角の予備知識も無駄になりそうだわ。
「他の貴族から反対されるほどの危うい知能しかないのですね。それなら婚約者として相応しくありませんわね」
「そっ、そんなことはないですっ。アレン様は私を望んでくれているのですっ。彼は周囲を黙らせるために今回のカインディールに赴き、勝利を収めたのですっ!」
一生懸命に肩を震わせて目に涙を浮かべて反論する姿は、小動物のようだ。
きっと令息たちはこの可愛い姿を見て、庇護欲を掻き立てられるのでしょうね。反対に、私の気分はすこぶる悪くなったわ。
四つも上で格下の令嬢に子供のような言葉で反論されても、可愛くも何ともない。
呆れて溜息を吐きたくなってしまう。
侍女たちに視線を向けるが、冷たい表情のままだ。
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