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26 謁見
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何年振りなのだろう。
シャリアが亡くなったのが二十年前だったはず。だとしたらここへ来るのも二十年ぶりだ。
王宮の入り口で門番にイェシュティア国からの許可証を提示して中に入った。少しずつ佇まいは変わっているけれど、懐かしい。
私たちは従者の案内で謁見室に案内された。
今回陛下に謁見が叶ったのはブラジェク伯爵家だったからだろう。他国の小さな商会が陛下に挨拶をすることなど滅多に叶わない。
陛下への謁見申請の理由はブラジェク伯爵家からの親書と商会を立ち上げたことの挨拶になっている。
謁見室は赤い絨毯が敷き詰められ、壁には細かな金字の装飾が施されていてとても立派な部屋だ。
……あの時とあまり変わっていないのね。
私はぎゅっと手に力が入った。
「エリオット陛下がお見えになられました」
私たちに緊張が走る。彼は向かいの扉から従者や護衛と共にやってきた。
私たちは礼を取った。
「イェシュティア国のブラジェク伯爵子息と婚約者のノール男爵令嬢様です。今回、新たに商会を立ち上げ、この国の品を取扱いたいとのことです」
「……うむ。ブラジェク伯爵、か。ゆっくり国を見て行ってくれ」
「はい。父からこの国は素晴らしい物が多いと聞きました。一つでも多くイェシュティア国でも流行る商品を見つけたいと思っています」
「……ああ」
ロイ様がそう話をしているが、エリオット様は表情を崩すことはないようだ。
謁見が終わろうとした時、『今だ!』と思い、私は声を掛けた。
「エリオット陛下、少しよろしいでしょうか?」
「君はノール男爵令嬢だったかな」
「はい」
「どうしたのだ。何か私に用かな?」
「エリオット陛下、借りを返してもらいに来ましたわ」
「はて、君とは初対面のはずだが」
エリオット陛下は不審そうな目で私を見ている。
まあ、それは仕方がないことだろう。
「エリオット陛下、『二一一一二二』という数字は覚えておられますか?」
「二一一一二二?」
すると、陛下は考えるような素振りをした後、目を見開いて私を見た。
ロイ様は理解できず口を閉じたまま私を見ている。
「まさか……」
「エリオット様と学位を競い合っていた数字ですわ。今回、私たちがここへ来た理由はあの書類を取りに来ましたの」
「……シャリア、君なのか?」
「ええ、過去を思い出したのはつい最近でしたが」
エリオット陛下は信じられないという顔をしながらも少し気になっているようだ。
「領地に植えたジャロの実はそろそろ収穫最盛期ですね。今回、私たちが交易品の一つとしてジャロの実を持って帰ろうと思っています」
「ジャロの実か。だがカークス伯爵が生産量を調整しているからイェシュティア国に回すほどの実は採れていないはずだ」
「あら、ギリンお兄様が調整しているんですね。相変わらず欲がないわ」
陛下は少しずつだが警戒を解いているようだ。
「エリオット陛下、質問には何でも答えますわ」
「……君がシャリアだと言うのなら。なぜ私を庇ったんだ?」
「今も昔も私はエリオット様がこの国の王に相応しいと思っていたからです。あの時は自然と体が動いていたんですよね。今、考えれば宰相を引っ張って盾にしておけば良かったわ!」
エリオット陛下にフッと笑顔が零れた。
「他の質問もいいか?」
「ええ、構いません。エリオット様の婚約者候補から私の名が消された話でもしますか?」
「はっ?」
「あら、ご存じではなかったのですね。十一歳の時、私たち三名、キャロライン・ウィル公爵令嬢と私、とアマデリア・フィラン公爵令嬢の三人の名前が挙がっていました。
キャロライン様はエリオット様のことが大好きだったけれど、家の事情で婚約者候補を断念せざるを得なかった。残された私とアマデリア様だった。
ある日、アマデリア様から連絡があってエリオット様とどうしても結婚したいと相談を受けたんです。私は家の事情もあるからその場で返事はしなかったんですけどね。
その後、公爵から直接呼び出されて『良い婚約者を付けるから候補を降りて欲しい』と言われたんです。もちろんその場には父も居たし、アマデリア様もいたわ。
父はそれで了承して私は婚約者候補を辞退することになったの。まあ、その婚約者は国の策略で子爵令嬢と婚約し、私はギルディッド陛下の側妃にされたんですけどね!」
「……まさか、そんなことが?」
「ええ。あとでアマデリア様に聞いてみてください。他にも私とエリオット様だけが知っている話しは……」
私は学生になった頃の話や図書館で鉢合わせした時の話。
テラスでよく食事をしていたのだが、その時の会話の内容などを話してみせた。
エリオット陛下は昔を懐かしむかのように優しい表情に変わっていく。
国王というのは孤独なものなのだろう。こうして級友と昔話をすることも少ない。
彼は私がシャリアだということを認めざるを得なかったようだ。
シャリアが亡くなったのが二十年前だったはず。だとしたらここへ来るのも二十年ぶりだ。
王宮の入り口で門番にイェシュティア国からの許可証を提示して中に入った。少しずつ佇まいは変わっているけれど、懐かしい。
私たちは従者の案内で謁見室に案内された。
今回陛下に謁見が叶ったのはブラジェク伯爵家だったからだろう。他国の小さな商会が陛下に挨拶をすることなど滅多に叶わない。
陛下への謁見申請の理由はブラジェク伯爵家からの親書と商会を立ち上げたことの挨拶になっている。
謁見室は赤い絨毯が敷き詰められ、壁には細かな金字の装飾が施されていてとても立派な部屋だ。
……あの時とあまり変わっていないのね。
私はぎゅっと手に力が入った。
「エリオット陛下がお見えになられました」
私たちに緊張が走る。彼は向かいの扉から従者や護衛と共にやってきた。
私たちは礼を取った。
「イェシュティア国のブラジェク伯爵子息と婚約者のノール男爵令嬢様です。今回、新たに商会を立ち上げ、この国の品を取扱いたいとのことです」
「……うむ。ブラジェク伯爵、か。ゆっくり国を見て行ってくれ」
「はい。父からこの国は素晴らしい物が多いと聞きました。一つでも多くイェシュティア国でも流行る商品を見つけたいと思っています」
「……ああ」
ロイ様がそう話をしているが、エリオット様は表情を崩すことはないようだ。
謁見が終わろうとした時、『今だ!』と思い、私は声を掛けた。
「エリオット陛下、少しよろしいでしょうか?」
「君はノール男爵令嬢だったかな」
「はい」
「どうしたのだ。何か私に用かな?」
「エリオット陛下、借りを返してもらいに来ましたわ」
「はて、君とは初対面のはずだが」
エリオット陛下は不審そうな目で私を見ている。
まあ、それは仕方がないことだろう。
「エリオット陛下、『二一一一二二』という数字は覚えておられますか?」
「二一一一二二?」
すると、陛下は考えるような素振りをした後、目を見開いて私を見た。
ロイ様は理解できず口を閉じたまま私を見ている。
「まさか……」
「エリオット様と学位を競い合っていた数字ですわ。今回、私たちがここへ来た理由はあの書類を取りに来ましたの」
「……シャリア、君なのか?」
「ええ、過去を思い出したのはつい最近でしたが」
エリオット陛下は信じられないという顔をしながらも少し気になっているようだ。
「領地に植えたジャロの実はそろそろ収穫最盛期ですね。今回、私たちが交易品の一つとしてジャロの実を持って帰ろうと思っています」
「ジャロの実か。だがカークス伯爵が生産量を調整しているからイェシュティア国に回すほどの実は採れていないはずだ」
「あら、ギリンお兄様が調整しているんですね。相変わらず欲がないわ」
陛下は少しずつだが警戒を解いているようだ。
「エリオット陛下、質問には何でも答えますわ」
「……君がシャリアだと言うのなら。なぜ私を庇ったんだ?」
「今も昔も私はエリオット様がこの国の王に相応しいと思っていたからです。あの時は自然と体が動いていたんですよね。今、考えれば宰相を引っ張って盾にしておけば良かったわ!」
エリオット陛下にフッと笑顔が零れた。
「他の質問もいいか?」
「ええ、構いません。エリオット様の婚約者候補から私の名が消された話でもしますか?」
「はっ?」
「あら、ご存じではなかったのですね。十一歳の時、私たち三名、キャロライン・ウィル公爵令嬢と私、とアマデリア・フィラン公爵令嬢の三人の名前が挙がっていました。
キャロライン様はエリオット様のことが大好きだったけれど、家の事情で婚約者候補を断念せざるを得なかった。残された私とアマデリア様だった。
ある日、アマデリア様から連絡があってエリオット様とどうしても結婚したいと相談を受けたんです。私は家の事情もあるからその場で返事はしなかったんですけどね。
その後、公爵から直接呼び出されて『良い婚約者を付けるから候補を降りて欲しい』と言われたんです。もちろんその場には父も居たし、アマデリア様もいたわ。
父はそれで了承して私は婚約者候補を辞退することになったの。まあ、その婚約者は国の策略で子爵令嬢と婚約し、私はギルディッド陛下の側妃にされたんですけどね!」
「……まさか、そんなことが?」
「ええ。あとでアマデリア様に聞いてみてください。他にも私とエリオット様だけが知っている話しは……」
私は学生になった頃の話や図書館で鉢合わせした時の話。
テラスでよく食事をしていたのだが、その時の会話の内容などを話してみせた。
エリオット陛下は昔を懐かしむかのように優しい表情に変わっていく。
国王というのは孤独なものなのだろう。こうして級友と昔話をすることも少ない。
彼は私がシャリアだということを認めざるを得なかったようだ。
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