【完結】どうやら時戻りをしました。

まるねこ

文字の大きさ
46 / 49

46 マティアスSide

しおりを挟む
「おい、見てみろよ。王太后様の後ろに付いている侍女。飛び切りの美少女だな!お近づきになりてぇ」

 先輩騎士の一人がそう呟くと一斉に王太后様の後ろに付いている侍女に視線が集まった。俺も彼女に視線を向けて顔をよく見てみる。

……なんて美しいんだ。

これが俺のモアに対しての最初の印象だった。

 華奢に見える体格。しっかりと結い上げられた髪。凛として佇む侍女にしてはどこか幼く見える。十歳位だろうか?よく見てみると王太后様に面影が似ている。親戚なのだろうか。

 本来王族に付く従者や侍女は粗相があってはいけないため学院を出た後、王宮でしっかりと教育された者が側に付くため二十代以上の者が多い。
やはり親戚と考えた方がいいかもしれない。それに王太后様が側に置くほどだ。よほど大切にしているのだろう。

 俺は親父が騎士団長をしている為に小さな頃から騎士として腕を磨き、伯爵家の跡取りとしても領主になって恥じないように、と勉学も励んでいた。
親父は気晴らしに、といつも王宮騎士団の訓練場に俺を連れてきては他の騎士達と一緒に剣の稽古を付けてくれていた。学院に入る頃には親父や他の騎士達からも褒められる程の腕前になった。

そのおかげか俺は王族の視察に親父と共に同行する事が何度かあった。

その時に初めてモアを見つけたんだ。

一目見るなり皆、名も知らぬ王太后の侍女に釘付けとなっていた。

 それは俺も同じ。どうにかして彼女の名前を知りたいと思い、親父に恥ずかしながら聞いてみた。だが、親父はガハハと豪快に笑いながら『残念ながら彼女は王太后の掌中の珠であり、名前を教える事は出来ない』と言われてしまった。

そしてまだまだ弱いお前には知る権利もないと。親父の言葉に苛立った。

「親父!勝負だ!俺は強いんだ」

 この時までの俺は驕り高ぶっていたのだと知らされた。剣では負けていないと思っていたのにあっさりと親父に負けてしまった。悔しくて悔しくて仕方がなかった。

俺はもっと強くなり、もっと賢くなれば親父のように王族の警護に付ける。王太后様の離宮に配属されれば彼女に近づける。

そんな単純な理由で俺は強く、賢くなろうと思った。今思うと恥ずかしい理由だが、その一途な思いが今に繋がっていると思うと自分を褒めたくなる。

そうして俺は今までよりもずっと剣の稽古も勉学にも励んだ。一目見ようと親父の視察には必ず付いていった。親父にはいつも笑われていたのだが気にしている程の余裕はなかった。


 不誠実だと言われたらそれまでなのだが、俺には二年ほど婚約者がいた。もちろん騎士団内で勝手にまとまった婚約。いつも訓練場に押しかけてくる令嬢達避けという理由で決められた。

もちろんお互いに好きな人が出来れば解消するのだと親父から聞いていたので俺は気にしていなかったが、婚約者はそう思っていなかったようだ。

婚約者はいつも訓練場に来ては街へ出よう、宝石が欲しい、ドレスが欲しいと強請られてばかりで俺は鬱陶しいとさえ思っていたんだ。

 訓練ばかりで婚約者に興味がない俺。最初は俺を追いかけていた婚約者もだんだんと俺と街に出掛けてもつまらないとぼやいていた。

婚約白紙が噂され、俺の知らぬ所で令嬢たちの諍いまで起こっていたようだ。

 俺がいつまで経っても振り向かない事に苛立った彼女は学院に入学してすぐ他の令息を捕まえた。俺は舞踏会で婚約破棄を突きつけられた。『真実の愛を見つけた』のだとか。

彼女の言葉にぼんやりと浮かんだのはモアの顔だったのは今でも忘れない。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<死のループから抜け出す為、今から貴方を攻略させて頂きます。> 全く気乗りがしないのに王子の婚約者候補として城に招かれた私。気づけば鐘の音色と共に、花畑の中で彼の『護衛騎士』に剣で胸を貫かれていた。薄れゆく意識の中・・これが12回目の死であることに気づきながら死んでいく私。けれど次の瞬間何故かベッドの中で目が覚めた。そして時間が戻っている事を知る。そこで今度は殺されない為に、私は彼を『攻略』することを心に決めた―。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

処理中です...