たとえ番でないとしても

豆狸

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13・たとえ役目を大切に思うが故の心配であっても

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「これだけあれば精霊王様にも十分お食べいただけますね」
『うむ。鶏肉だけでなく、ほかのものも良い匂いがするな』
「香草茶もお飲みになりますか?」
『よくわからんが、いただこう』
「ソティリオス様もお茶をお飲みになりますよね? 朝と同じ麝香草タイムのお茶になりますが……ソティリオス様?」
「兄上?」

 ソティリオス様はその場にひれ伏しました。

「も、申し訳ございません、精霊王様! ご来訪に気づかずにおりました」
『久しいの、ソティリオス。ニコラオスの即位以来だな。吾に気づかなんだのも無理はない。そなたはこの娘の顔ばかり見ておったからな。弟を叱っているときも目を離さなかったから、いっそ感心したぞ』
「まあ。そんなに心配してくださっていたのですね、ソティリオス様。ごめんなさい。少し疲れてはいますが、私は元気ですよ」

 戻ったときに迎えてくれたこと、長い散歩を心配してくださったこと、どれも前とは違います。そして、どちらもとても嬉しいことでした。

「精霊王様の分の取り皿はありますか?」
「はい」
「ひと揃いあるね。兄上、妃殿下と夕食をご一緒する気満々だったんだ」
「オレステス!」
「いいのですよ、ソティリオス様。私も一緒に食べていただいたほうが楽しいです。……母が亡くなってからはずっとひとりの食事でしたし……護衛をしてくださっている近衛騎士隊の皆様は、あまりご自分の時間を取れないのではないですか? オレステス様もよろしければ……まだ任務中でしょうか」
「兄上と交代するまでは任務中ですが……いいよね? 兄上!」
「……ああ」

 はしゃいだ声で言うオレステス様に、ソティリオス様は苦虫を噛み潰したようなお顔で答えました。
 前のときはいつもそのお顔で私を見ていましたっけ。
 今となると懐かしいような気もしてきます。自分が竜王陛下のつがいだと言わないだけで、こんな穏やかな時間が訪れるだなんて──にもかかわらず、心は今もあの方は私のつがいだと叫び続けているだなんて──

「外の部下の方々もお呼びしましょうか。だったら談話室では狭いですね」

 心に渦巻く想いを振り切るために浮かれた言葉を口にした私に、精霊王様が首を横に振って見せました。

『そこまでの量はなかろう』
「そうですね……」

 オレステス様がおっしゃっていた通り、鶏肉のシチューは絶品でした。
 精霊王様とオレステス様は麝香草タイムのお茶の刺激が気になるようでしたが、蜂蜜を入れてまろやかにすると喜んで飲んでくださいました。
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