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第六話 連行ですわ!
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そこまで語ると、賞金首の男は長い溜息をつきました。
瞳いっぱいに涙を浮かべ、彼は私に謝ります。
「ごめんなさい、お嬢様、ごめんなさい。奥方様は最後までお嬢様のことを心配していました。俺にも……俺にも娘がいるのに、なんてことを、俺はなんてことを……」
彼は青百足会一番の過激派だった補佐が犯罪組織を追い出されて裏の賞金首にされていることを知り、青百足会の傾向が変わったのなら、真実を明かす前に始末されずに済むかもしれないと思って王国騎士団の詰所へ出頭してきたのでした。罪を抱えて生きていくことに疲れ切っていたのでしょう。
その詰所の所長トゥリホマス様が口を開きます。
「青百足会の補佐が長に野望を見抜かれたのは、どこかの賞金稼ぎが賞金首を通報しまくったからでしょうね。木を隠すには森の中、悪事を隠すには悪党の中。属していない悪党にかき回されて全貌が見えていなかった犯罪組織の縄張りが急に見通しが良くなって部下の妙な行動が目についた、そういうことだったのでしょう」
私の賞金稼ぎ活動がお母様の事件の解決につながったのなら嬉しいことですね。
「クソがっ!」
いきなり叫んだのはアポティヒアでした。
彼女は実父を睨みつけます。
「父親だったら娘の幸せを考えて自殺でもしてろよっ! アンタがしゃしゃり出てきたせいでアタシと母さんの計画は台無しだよっ! 死ね死ね死ねっ!」
「他人から奪っても! 他人の命を奪っても幸せにはなれないんだよ、アポティヒア!」
「知るもんか! 奪い取ったらアタシのもんなんだよ! イリスィオも伯爵家も、全部アタシのものになるはずだったのにっ!」
彼女の耳に父親の声は響かないようです。
三年前、私とアポティヒアが十五歳のときに乗っ取り計画が本格的に始動したのは、この国の貴族子女が通う学園に入学するのが十五歳だからでしょう。貴族社会では仮成人という扱いを受けるようになります。
乗っ取るためにも貴族常識を学ぶ必要があると思ったのに違いありません。
それに十五歳で正式な跡取りとして認められることも多いですしね。
まあ愛人親娘はあんまり貴族常識を学んでいませんでしたが。
私さえ追い出せば父とイリスィオ様が伯爵家の実権を握れると思っていたくらいですので。
賞金首の男の告白が終わり、愛人親娘とメイド長が騎士様達に連行されていきます。
「なっ! なぜ私も連行されるんだ? 私はその女に騙された被害者だぞ?」
「お、俺もだ! 俺もアポティヒアに騙されただけなんだ!」
父とイリスィオ様もです。
「本当に奥方の殺害計画を知らなかったのかどうかは私どもにはわかりませんからね。メイド長が横領していたことを知りながら、愛人に言われたからといって雇い続けていたのが怪し過ぎます。……詰所でゆっくりお話を聞かせてください。詰所の地下で牢屋暮らしというのもなかなか乙なものですよ?」
トゥリホマス様の真面目な姿を長時間見ているのは不思議な感じですね。
メイド長が横領していたことから考えると、彼の指摘はもっともです。
お母様がお元気だったころのメイド長の態度から考えると、お父様は彼女にも手を出していたのではないかしら。下半身の緩い父親がいると最悪ですわ。
「だ、だったら俺は関係ないな。離せ!」
イリスィオ様が叫んで、トゥリホマス様が私を見ました。
「イリスィオ様はアポティヒアがウリャフト伯爵家の血筋でないと知りながら不貞関係を続け、伯爵家を乗っ取ろうとしていたのではありませんの?」
「ち、違う! 知らなかった。俺は知らなかったんだ!」
「彼女が私の母の産んだ子どもではないこと、この家の正当な跡取りは私であることくらいはご存じのはずですが?」
「す、すまない。忘れていたんだ。助けてくれ、見逃してくれ。学園の卒業まで後一ヶ月というところで王国騎士団に連行されたなんてことになったら、家族に絶縁されてしまう!」
「でしょうねえ」
瞳いっぱいに涙を浮かべ、彼は私に謝ります。
「ごめんなさい、お嬢様、ごめんなさい。奥方様は最後までお嬢様のことを心配していました。俺にも……俺にも娘がいるのに、なんてことを、俺はなんてことを……」
彼は青百足会一番の過激派だった補佐が犯罪組織を追い出されて裏の賞金首にされていることを知り、青百足会の傾向が変わったのなら、真実を明かす前に始末されずに済むかもしれないと思って王国騎士団の詰所へ出頭してきたのでした。罪を抱えて生きていくことに疲れ切っていたのでしょう。
その詰所の所長トゥリホマス様が口を開きます。
「青百足会の補佐が長に野望を見抜かれたのは、どこかの賞金稼ぎが賞金首を通報しまくったからでしょうね。木を隠すには森の中、悪事を隠すには悪党の中。属していない悪党にかき回されて全貌が見えていなかった犯罪組織の縄張りが急に見通しが良くなって部下の妙な行動が目についた、そういうことだったのでしょう」
私の賞金稼ぎ活動がお母様の事件の解決につながったのなら嬉しいことですね。
「クソがっ!」
いきなり叫んだのはアポティヒアでした。
彼女は実父を睨みつけます。
「父親だったら娘の幸せを考えて自殺でもしてろよっ! アンタがしゃしゃり出てきたせいでアタシと母さんの計画は台無しだよっ! 死ね死ね死ねっ!」
「他人から奪っても! 他人の命を奪っても幸せにはなれないんだよ、アポティヒア!」
「知るもんか! 奪い取ったらアタシのもんなんだよ! イリスィオも伯爵家も、全部アタシのものになるはずだったのにっ!」
彼女の耳に父親の声は響かないようです。
三年前、私とアポティヒアが十五歳のときに乗っ取り計画が本格的に始動したのは、この国の貴族子女が通う学園に入学するのが十五歳だからでしょう。貴族社会では仮成人という扱いを受けるようになります。
乗っ取るためにも貴族常識を学ぶ必要があると思ったのに違いありません。
それに十五歳で正式な跡取りとして認められることも多いですしね。
まあ愛人親娘はあんまり貴族常識を学んでいませんでしたが。
私さえ追い出せば父とイリスィオ様が伯爵家の実権を握れると思っていたくらいですので。
賞金首の男の告白が終わり、愛人親娘とメイド長が騎士様達に連行されていきます。
「なっ! なぜ私も連行されるんだ? 私はその女に騙された被害者だぞ?」
「お、俺もだ! 俺もアポティヒアに騙されただけなんだ!」
父とイリスィオ様もです。
「本当に奥方の殺害計画を知らなかったのかどうかは私どもにはわかりませんからね。メイド長が横領していたことを知りながら、愛人に言われたからといって雇い続けていたのが怪し過ぎます。……詰所でゆっくりお話を聞かせてください。詰所の地下で牢屋暮らしというのもなかなか乙なものですよ?」
トゥリホマス様の真面目な姿を長時間見ているのは不思議な感じですね。
メイド長が横領していたことから考えると、彼の指摘はもっともです。
お母様がお元気だったころのメイド長の態度から考えると、お父様は彼女にも手を出していたのではないかしら。下半身の緩い父親がいると最悪ですわ。
「だ、だったら俺は関係ないな。離せ!」
イリスィオ様が叫んで、トゥリホマス様が私を見ました。
「イリスィオ様はアポティヒアがウリャフト伯爵家の血筋でないと知りながら不貞関係を続け、伯爵家を乗っ取ろうとしていたのではありませんの?」
「ち、違う! 知らなかった。俺は知らなかったんだ!」
「彼女が私の母の産んだ子どもではないこと、この家の正当な跡取りは私であることくらいはご存じのはずですが?」
「す、すまない。忘れていたんだ。助けてくれ、見逃してくれ。学園の卒業まで後一ヶ月というところで王国騎士団に連行されたなんてことになったら、家族に絶縁されてしまう!」
「でしょうねえ」
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