KAGUYA―月と時の交錯-

霧子ノア

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第6話:光のざわめき

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夜明け前、翼竜たちが徐々に活動を始め、こちらへ向かってくる。

民間人の避難時間は刻一刻と迫っていた。
カナタは月神子として、冷静に現場を見渡す。
普段は抑えている力をさらに強め、瓦礫を動かし、怪我人を瞬時に癒していく。

「服部、ここに集中して!」

隊員たちに指示を飛ばす服部。その声に合わせ、息を合わせて動く。

「お前は、あの民間人をこっちに」
カナタはいつしか、自分への、その呼び方に温かさを感じていた。

その直後、空間がわずかに歪み、次元の裂け目が現れた。

淀んだ裂け目とは異なり、そこには静かな呼吸のような光が揺れていた。
不定期に開き、何故か月神殿へと繋がる、不思議な裂け目。
だが、裂け目は長くは持たない。

気づいたカナタは瞬時に動く。
「裂け目が閉じるまで10分……いや、正確には7分しかない」
月神殿へ通じる裂け目。
翼竜出現の裂け目と次元移動との、もろ刃の刃――。

焦りつつも、カナタは静かに告げ、服部へ目配せする。
神殿の教えを受けていた服部は、迷いなく指示を受け入れた。
裂け目は、ほんのつかの間のもの。

民間人全員を通す時間を稼ぐには、膨大な力が必要だ。今のカナタの残り全てが必要だった。
胸の奥で、月神子としての覚悟を確かめる。

「ここで全力を使う……誰も傷つけさせない」

その瞬間、カナタの体から強烈な光が溢れ出し、光の裂け目が安定する。
周囲の空間が歪み、こちらへ向かってきていた翼竜たちは異変に気づき混乱する。

避難の最中、カナタは決意を新たにする。

「僕は月神子として、みなを護る」

全力を出した瞬間、かすかに自分の存在が揺らぐ気がした。

「これは……なに……?」

違和感を伴いながらも、民間人全員を安全地帯へ送り届ける。

裂け目が閉じ、街に一時の静けさが戻る。だが、翼竜の脅威は消えたわけではない。

カナタは一人、先程の感覚に戸惑っていた。

ふと、月島研究所が目に入る。
そして、幼い日の記憶の断片——霧子、もしくは母の霞子かもしれない穏やかな笑顔が、胸の奥で静かに揺れる。

「母さん……」

——さっきの感覚は……一体なんだったのか?
答えはまだ、夜明けの空の向こうにある。

その答えを今は見いだすことができないまま、朝陽に照らされる街を静かに見つめていた。
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