KAGUYA―月と時の交錯-

霧子ノア

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第7話:時空の影と使命― カナタ章 ―

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朝の光が差し始めた街は、一見静けさに包まれていた。
だが、その空は異常なほど赤く染まり、不吉な兆しを示していた。

カナタは瓦礫の隙間から翼竜の群れが広がるのを確認する。
「また来る……」

翼竜の数は、既に地球全土を覆す勢いだった——

深く息を吸い、力を呼び覚ます。
普段の華奢な姿からは想像できない力が、静かに手のひらへ集まっていく。

現場では服部が部隊を配置し、カナタの指示に迷いなく応える。
二人の連携は、初めて出会った頃とは比べものにならないほどだった。

そのとき、視界の端に異変が生じた。
ほんの一瞬、光が揺らいだように見えた。

「……次元の裂け目……?」

強烈な光が体をかすめ、ざわめきが胸の奥に広がる。
なぜか自分だけが反応する。

その瞬間、幼い日の記憶がふと揺れた。

『あなたは生まれた時から力が強いから』

霧子の言葉がよみがえる。
月神子の中でも突出した力。
“特別”と呼ばれるほどの何か。
けれど、今は考えている余裕はなかった。

――
「君はさっき…」

カナタは笑って訂正した。
「君でもお前でもなく、カナタ、ですよ」

服部は、無意識にカナタを「お前」と呼んでいたことに初めて気づいた。

そして今度は少し硬い口調でカナタは言葉を続ける。
「服部……これからも、共に戦うことになります」

「……ああ。お前の力は、心強い…」

先程の遮るような言葉、今度は少し硬い口調。
違和感を覚えながらも服部はそう答える。

二人は再び翼竜の群れへと向き直る。

目の前にいる民間人は守られた。だが、街の被害は各地で広がり続ける。
地球全土を脅かす現実。それが、二人の胸に重くのしかかる。

夜が明け、街が再び朝の光に包まれる中、カナタは一人、遠くの空を見つめた。

「……さっきの裂け目は、一体…。」

月神子としての存在。
新たな種類の裂け目の出現。
そして、それに自分だけ反応した、“何か”。
胸の奥の揺らぎは言葉にできず、静かに沈んでいった。

翼竜の脅威はひとまず退いたが、物語はまだ終わらない。
次に訪れるのは、より大きな“試練”だった。
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