KAGUYA―月と時の交錯-

霧子ノア

文字の大きさ
31 / 36

第25話:託された光(後編)

しおりを挟む
霧子の声は震え、目の奥に霞子の残像がちらつく。
彼女は自分の双子の姉が、カナタに全てを託したこと、その意思を守るために自ら背負った責任の重さと育ての親としての思いに締め付けられていた。

「KAGUYA計画……それは、人類の未来を守るため、そして地球の危機に対処するために、カナタ、あなたを含む特別な者たち、月神子の力を活用した計画なの・・・」
霧子は言葉を選びながら続ける。

「あなたの体の異変は偶然ではありません。あなた自身が、この計画の中心に立つ存在だから」

カナタは手元の資料を握りしめた。知らず知らずのうちに、自分は人類の運命に巻き込まれていたのだ。
「霧子さん……僕は…どうして…」
声にならない問いが漏れる。

「あなたは選ばれたのではなく、運命に導かれた。そして、あなたを送り出したのは……姉、霞子の意志です。霞子は、あなたを自分の子供として思っていたと共に希望を見出していました。あなたが世界を照らす光になることを信じて」

服部は言葉を失う。自分には守ることもできないもどかしさにグッと拳を握る。

カナタは資料端末の光を見つめる。胸の奥のざわめきが、真実の重みを体感させる。
しかし、それと同時に、胸のざわめきが、静かに和らいでいく。

霧子の言葉を通して、霞子の願い、そして自分の使命を理解し、徐々に受け入れ始めていた。
裂け目の光が微かに揺れ、夜の資料室が静かに震える。

「……母さん……僕は……」
悲しさと覚悟が入り混じった小さな声が、静かな室内に溶けていく。

「霧子さん、僕は、自分の体も、過去も、未来も……全てを受け入れるしかないんだね。もう……進むしかないんだね」

しかし、そこに悲しみの色はなく、カナタの目にはただ決意と覚悟が宿っていた。

「…くそっ……カナタ…」
何もできず、服部は拳をさらに強く握った。

微かに光の波動で震える夜の資料室。
カナタの体調異変は、決して終わったわけではない。
だが彼の心は、全てを受け入れていた。

霧子は少し目を落とし、カナタをそっと見つめる。
その眼差しには、霞子の遺志を託された者としての責任と、育ててきた親としての思いが入り混じっていた。

三人の間には、静かな思いが交錯する。
裂け目の光と夜の静寂が、これから訪れる運命の時をゆっくりと告げていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...