KAGUYA―月と時の交錯-

霧子ノア

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第25話:託された光(前編)

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夜の資料室は、端末の青白い光だけが空間を満たしていた。
裂け目の揺らぎが、微かに壁や床に影を落とす。

カナタは霧子から渡された資料に目を通していた。

2036年以降、能力者の出現が顕著になり、次元の裂け目との因果関係が指摘され始めた――
資料には、その分析結果が記されていた。

――
元々のKAGUYA計画は、一般人と能力者の子供が強い力をもって生まれるのではないかという研究だった。
そして、その過程で、力の強さが、月の光と引力によるものに比例していることが分かってきていた。

しかし、2041年に次元の裂け目が現れたことにより、目的は変わることとなる。

次元の裂け目は日々増え続け、科学者たちは起こるであろう滅亡の時を計算した。その結果、人類は2078年には死に絶える――時間はそう告げていた。

カウントダウンは進み続け、月神殿と月研究所との協議の結果、霞子たち月の科学者たちは、試行錯誤の末、一刻も早く時間に干渉できる力を持つ実験体を生み出すことを目的とした。

そして、今のKAGUYA計画が始動した。


――
カナタは資料を読み終わり、静かに目を閉じた。霧子は少し離れた場所から、目に浮かぶ迷いと葛藤を押し殺すようにして立っていた。
服部もまた資料を読み終えたカナタを静かに見つめていた。

霧子は端末の記録を映し出す。
双子の姉・霞子の記録が付け加えられていた。彼女はカナタの存在を未来の希望として霧子に託し、最後にこう残していた。

「この子には、はるか彼方までも、どこまでも羽ばたける力を持ってほしい――それが、”カナタ”と名付けた私の願いです」

霧子はひとつ呼吸を置き、静かに口を開く。
「カナタ……これがKAGUYA計画の全て。タイムパラドックスによる、あなたの体の異変の原因。そしてあなたが生まれた経緯・・・。」
カナタは静かに目を開くと霧子を見つめた。
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