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40歳(1回目)→15歳(2回目)
プロローグ、負け犬は25年前に戻る
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アドの冒険者ギルドの床をモップで磨いているのは利き腕のない片腕のさえない男だった。さえない男は足も右足が木の棒の義足だ。
この男の名前はカーター。
冒険者ギルドの雑用にして冒険者達に虐げられている男だった。
虐げられている原因はギルマスのマークにある。
モップ掃除をしているカーターの義足を背後から当たり前のように蹴ってカーターをバケツに入った水と共に床に転がしておきながら、
「おい、カーター。また転んでるのか? 頼むぞ。ちゃんと掃除くらいしてくれ。昔の誼でお情けで雇ってやってるんだからさ」
蔑むのがギルマスの日課だ。
元はカーターを慕っていた後輩だったが、スタンピードでカーターを見捨てている。
その結果、カーターは片腕片足を失い、先代のギルマスと結託した事で逃亡を揉み消し、更にはカーターの幼馴染までも言葉巧みに奪って妻にしていた。
カーターを冒険者ギルドで雇っているのもマークがその事を詫びる為ではなく、手元に置いて虐め抜く為だった。
もう長年これをやられてるので、カーターに怒る気概は残っていない。
卑屈な笑みを浮かべて、
「へへへ、すみやせん」
それがカーターという男の現状だった。
ギルマスがこんな男なのだから冒険者達もそれに倣って背後からロビーで蹴ったりして虐めていた。
◇
そんな負け犬人生を当たり前のように送っていたカーターの転機は、狭い住まいの間借りした一部屋で眠っていた時の事だ。
夢に妙な女が現れた。
妙だとカーターが思ったのは褐色肌で半裸だったからだ。衣裳も見慣れぬ白布だったし。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
カーターの意思を聞く事なく一方的に通達してくる。
「?」
「第1指令はアドの街の毒茸流布騒動の阻止よ」
「それって?」
「いいわね。ちゃんとやるのよ。それ以外は何をやってもいいから」
◇
朝になってカーターが目覚めると失ったはずの右腕があった。
「ほへ?」
視界にあるのだから驚くのは当然で、動かすとちゃんと思い通りに動く。
「まさか」
右足も木の棒の義足ではない。
右腕と右足に意識を奪われていたが、起きた場所は見知らぬ部屋だった。
いや、記憶には微かに残っている。
懐かしい場所だった。
子供の頃の自分の家の部屋だったのだから。
「お兄ちゃん、起きてる?」
ドアをノックもせずにガチャッと開けて入ってきたのは妹のジェニーだった。
ジェニーは娼婦になって半年で客に病気を貰い、カーターが見受けをする前に早々に死んでいたが。
このジェニーはまだ幼かった。
どう見ても14歳くらいだ。
「ジェニー」
「うわ、何よ、抱き付かないでよ、お兄ちゃん」
「うううう」
だが、カーターは気にせずに抱き締めて泣き出し、
「ちょ、どうしたの? お兄ちゃん? 何泣いてるの、気持ち悪いんだけど?」
それでもずっと妹を抱き締めて泣くカーターを変に思ったのか、ジェニーが、
「パパ、ママ、ちょっと来て~。お兄ちゃんが変なんだけど~」
その声で食中毒死した父親のディーと貧乏な所為で医者も呼べずに流行病で死んだ母親のアリッサが姿を見せた事でカーターは両親にも抱き付いて大泣きしたのだった。
この男の名前はカーター。
冒険者ギルドの雑用にして冒険者達に虐げられている男だった。
虐げられている原因はギルマスのマークにある。
モップ掃除をしているカーターの義足を背後から当たり前のように蹴ってカーターをバケツに入った水と共に床に転がしておきながら、
「おい、カーター。また転んでるのか? 頼むぞ。ちゃんと掃除くらいしてくれ。昔の誼でお情けで雇ってやってるんだからさ」
蔑むのがギルマスの日課だ。
元はカーターを慕っていた後輩だったが、スタンピードでカーターを見捨てている。
その結果、カーターは片腕片足を失い、先代のギルマスと結託した事で逃亡を揉み消し、更にはカーターの幼馴染までも言葉巧みに奪って妻にしていた。
カーターを冒険者ギルドで雇っているのもマークがその事を詫びる為ではなく、手元に置いて虐め抜く為だった。
もう長年これをやられてるので、カーターに怒る気概は残っていない。
卑屈な笑みを浮かべて、
「へへへ、すみやせん」
それがカーターという男の現状だった。
ギルマスがこんな男なのだから冒険者達もそれに倣って背後からロビーで蹴ったりして虐めていた。
◇
そんな負け犬人生を当たり前のように送っていたカーターの転機は、狭い住まいの間借りした一部屋で眠っていた時の事だ。
夢に妙な女が現れた。
妙だとカーターが思ったのは褐色肌で半裸だったからだ。衣裳も見慣れぬ白布だったし。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
カーターの意思を聞く事なく一方的に通達してくる。
「?」
「第1指令はアドの街の毒茸流布騒動の阻止よ」
「それって?」
「いいわね。ちゃんとやるのよ。それ以外は何をやってもいいから」
◇
朝になってカーターが目覚めると失ったはずの右腕があった。
「ほへ?」
視界にあるのだから驚くのは当然で、動かすとちゃんと思い通りに動く。
「まさか」
右足も木の棒の義足ではない。
右腕と右足に意識を奪われていたが、起きた場所は見知らぬ部屋だった。
いや、記憶には微かに残っている。
懐かしい場所だった。
子供の頃の自分の家の部屋だったのだから。
「お兄ちゃん、起きてる?」
ドアをノックもせずにガチャッと開けて入ってきたのは妹のジェニーだった。
ジェニーは娼婦になって半年で客に病気を貰い、カーターが見受けをする前に早々に死んでいたが。
このジェニーはまだ幼かった。
どう見ても14歳くらいだ。
「ジェニー」
「うわ、何よ、抱き付かないでよ、お兄ちゃん」
「うううう」
だが、カーターは気にせずに抱き締めて泣き出し、
「ちょ、どうしたの? お兄ちゃん? 何泣いてるの、気持ち悪いんだけど?」
それでもずっと妹を抱き締めて泣くカーターを変に思ったのか、ジェニーが、
「パパ、ママ、ちょっと来て~。お兄ちゃんが変なんだけど~」
その声で食中毒死した父親のディーと貧乏な所為で医者も呼べずに流行病で死んだ母親のアリッサが姿を見せた事でカーターは両親にも抱き付いて大泣きしたのだった。
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