ヤバイ秀吉

魚夢ゴールド

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永禄5年(1562年) 坪内光景(前野長康)を配下にする

2、小牧山城完成

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さて、この小牧山城が完成すると困る勢力がある。

犬山城の織田信清と美濃の斎藤だ。

なので邪魔する為に夜襲を掛けようとしたのだが。

普請奉行は切れ者の丹羽長秀である。

当然、敵の犬山城などは完全監視だ。

よって兵が動けば筒抜けとなり、

「全員起きろ、敵だ」

その声で迎撃体制を取った。

夜だ。

敵も夜襲なので松明を持っていない。

戦国時代の夜は月明かりがなければ本当に何も見えない闇夜だった。

だが、この時代に生まれた秀吉は慣れたものだ。

敵は見えなくても持ち場に付いた。

小一郎の配下には忍びが居たので、

「間もなく敵が襲撃してくるぞ、兄者」

「矢で応戦じゃ。頼んだぞ、光景」

「あいよ」

と秀吉の部隊は良くて飛び道具は弓矢である。

だが、普請奉行の丹羽長秀の部隊は違う。

ドドドドン。

複数の鉄砲の音が夜の闇の中から聞こえてきた。

「侍大将格の五郎左殿の隊は豪勢じゃな~」

「鉄砲に比べたら、こっちの矢なんて子供の遊びだな。なあ、サル、鉄砲を持てないのか?」

「足軽組頭の隊が鉄砲を持つなんて聞いた事がにゃあで」

「それでも1挺あったら違うと思うんだが」

「明日にでも五郎左殿に聞いてみるか」





そんな訳で翌日聞いてみたが、丹羽長秀の返事は当然、

「組頭が鉄砲を所持するなど駄目に決まってるであろうが、木下。鉄砲隊は殿の肝入りの部隊たぞ」

「ですよな~。五郎左殿の部隊の活躍を見て、部下が欲しがって」

「駄目だからな」

「了解です」





 ◇





普請を妨害するのは何も兵で攻めるだけではない。

人夫に混じって工作員を放ち、重要施設に放火するだけでも普請は妨害出来る。

料理に毒を混ぜて人夫を下痢ピーにするだけでも。

だが、丹羽長秀や木下秀吉は切れ者なので、そんな工作すらも許さない。

どんどんと普請は進み、遂に小牧山城は完成したのだった。

着工期間は125日だった。

まあ、城が完成しただけだ。

城下町の兵が住む長屋の方は全然完成していないのだから。

そして秀吉が賭場を開いた期間は122日。

1日3貫文として合計で366貫文もの銭を足軽達からイカサマで巻き上げた事になる。

「野盗をして小銭を稼ぐ為に斬った張ったをしていたオレは無能だった訳か」

その売上の2割を取り分として懐に入れた坪内光景は秀吉の銭の才覚に呆れ果てたのだった。

「おまえに一生付いていくぜ、サル」

「では戦働きの方は頼みましたぞ、ワシは頭の方を使うで」

「任せろ」





 ◇





完成した小牧山城に、清洲城で岡崎の松平元康と同盟を結んで尾張と三河の国境を定め、東側の脅威を無くしてきた信長が速攻で乗り込んできた。

信長が動けば、清洲城下の商人達も付いてくる。

色街の女までが。

それでようやく小牧山城では酒や女もやってきて、足軽達も楽しめるようになったのだが。

秀吉は信長に呼ばれて小牧山城に来ていた。

新品の城だ。板や畳もまだ新しい。

「サル、普請場で賭場を開いて随分と稼いだらしいな」

「いえいえ、総ては殿にとって都合の良い噂を広める為でして」

「五郎左からもそう聞いておるから罪には問わんが。そうそう、岡崎とは同盟を結んだ。これからは全力で美濃を潰すぞ」

「美濃、ですか? 犬山城はどうなされるので?」

「木曽川、それと川を挟んだ美濃側を押さえねば犬山の城は落ちぬわ」

「なるほどなるほど」

「五郎左の指示に従うようにな」

「ははっ」

「とは言っても、まずは城下の普請だ。さっさと済ませよ。兵が入れれぬのでな」

「畏まりました」

小牧山城が出来ても、まだ城下の街は完成していなかったので、秀吉は調子良く答えながらも、

「つきましては街を早く完成させる為に人夫をもっと増やして欲しいのですが」

「甘えるな、おまえらだけでやれ」

信長に突っ放されてガッカリしたのだった。





とはいえ、材料の材木はあるのだ。

街くらい簡単に作れた。

長屋をどんどんと建てていく。

建ててる大工が兵士ながら大工仕事もやらされてる足軽なだけで。

木をカンナで削るくらいは当たり前のように足軽達も出来るようになったのだが。

まさか、この小牧山城の普請で得た大工の技能が墨俣の一夜城に役立つとはこの時の秀吉も思ってはいなかった。





 ◇





小牧山城の城下町を作ってると妙な噂が広がり始めた。

「兄者、聞いたか?」

「五郎左殿が犬山城に内通してるという噂か? 敵もやるのう。というか、ワシは下っ端じゃから全然相手にされておらんのが泣けてくるのう。ワシにも噂が立てばよいのに」

「笑い事か。こっちは丹羽様の家来なんだから巻き添えを喰らうぞ」

「そんな訳あるかい」

と秀吉は笑ったが、





信長に小牧山城の広間に呼び出された。

殺気立った近習が多数居る厳戒体制の中、信長が、

「サル、五郎左の噂を知っておるか?」

「犬山城に内通しているとかいう? よっぽど邪魔なのですな、使える五郎左殿が殿の隣にいると」

「・・・裏切ってると思うか?」

信長には「これ」がある。

猜疑心だ。

何せ、実弟の信行や姉婿の従兄弟の織田信清ですら裏切ったのだから。

身内でさえ裏切るのが戦国時代だ。

他人なんて信用出来る訳がない。

若い頃から知ってる側近の丹羽長秀でさえ疑い始めた。

信長のこの性格は秀吉からすれば好感が持てるところだ。

こちらの思い通りに上手く踊ってくれそうなので。

とはいえ、丹羽長秀は百姓出の秀吉にも甘い上官だ。

今居なくなられては秀吉も困る。

次の秀吉の上官が百姓出を露骨に差別する奴だったら困るのは秀吉なのだから。

よって丹羽長秀を擁護するべく、

「その時はこのサルめが五郎左殿を斬って手柄にしてご覧に入れまするよ。そして見事討ち果たしたその時にはこのサルめを足軽大将に、いや城持ちの侍大将にして下さりますようお願い申しあげます」

大言を吐く秀吉を見て、丹羽長秀が裏切るか真面目に考えていた自分が馬鹿らしいと思った信長が、

「もうよい。やめい」

「はっ」

秀吉が口を閉じる中、信長の仕草1つで広間に居た厳戒体制の近習達が外に出ていった。

信長と秀吉、それにごく少数となった普段通りの広間の風景に戻ったところで、

「今、美濃が一番嫌がる事はなんだ、サル?」

「そうですな。犬山城がまた殿に寝返ったりしたら嫌がるでしょうな」

「それはないな。他に・・・」

「他ですか? う~ん」

秀吉は少し考えてから、

「マムシの三代目が女色に溺れて譜代の家臣達を遠ざける事でしょうか」

ピクリ。

信長が興味を覚えて、

「・・・どうやってやる?」

「マムシの三代目の寵臣に銭を握らして――いや、偽の書状の方が確実でしょうかな。美濃の譜代が織田と内通してるという。殿からの美濃の譜代の家臣に宛てた知行安堵の返書がその家臣を嫌う者の手に渡ったら一騒動起こるでしょうな」

他人事のように秀吉が笑う中、信長は、

(このサルの悪知恵は使えるのう)

「そんなに上手くいくのか?」

「殿が五郎左殿を疑ったくらいの騒ぎにはなるかと」

「ふむ、やる価値はあるか」

信長はそんな事を考えたのだった。
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