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スルトの結婚
【43話】とうとうこの日が
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勢いよくカーテンが開く音がする。眩しい光が差し込んできて、僕は顔をしかめた。
「う~ん…」
「おはようケイゴ!朝食を持ってきたぞ」
「ううう…眠い…」
「ケイゴはよく寝るなあ。なのに全然育ってないな!なんでだ?」
「あのバカ二人に毎晩毎晩体力持ってかれるからだよ…。っていうかしれっと失礼なこと言わないでくれる?!」
「ははは!ごめんごめん」
ピーターと一緒に朝食を食べていると、スルトが部屋に入ってきた。いつものような元気はなく、黙って僕の傍で立つ。
「どうしたの?」
「なにがだ?」
「いや、元気ないから」
「…なんでもない」
スルトはそう言って、僕にキスをしてぎゅっと抱きついてから部屋を出ていった。あんな思いつめた表情のスルト、初めて見た。
「スルト、どうしたんだろう?」
「さあ…」
ピーターも不思議そうにドアを眺めていた。
朝食をとったあと、服を着替えてぼうっと一日を過ごした。最近はエドガーに勧められた本を読んでいる。ピーターに教えてもらっているので、少しずつこの世界の文字も読めるようになってきた。
夜、また沈んだ表情のスルトがそろりと部屋に入ってきた。なんなの今日のスルト。別人みたいじゃないか。
椅子に腰かけて、じっとしている。なんだか調子が狂う。
「ねえ」
「なんだ」
「どうしたんですか。今日一日ずっとそんな感じなんですか?」
「……」
ええ~。なにこのスルト扱いづらいんだけど。めっちゃ黙るじゃん…。僕自分から話題振るのとか得意じゃないんだけど。どうしよう。
「なあ、ケーゴ」
わ、やっと喋った。よかった~。
「なんですか?」
「…俺はお前のことを愛している」
「……」
え。喋り始めたと思ったらこれ?こわ。重。もしかしてずっとこれを言おうとしてたの?童貞かよぉ…。
僕がじとっとした目で見ても、いつものようなツッコミが来ない。真剣な思いつめた目でじっと僕を見返した。
「だが、俺は貴族だ。務めは果たさないといけない」
「…話が見えてこないんですが」
「隣国の貴族の娘が、俺に結婚の申し出をしてきた」
あー…そういうこと…。
「俺は、受けなければならない」
「受けるべきだと思います」
僕がそう言うと、スルトが泣きそうな顔をした。…僕だって、気を緩めたら泣きそうだ。でも震えそうになる声を抑えて言葉を続けた。
「もしかして、僕に気をつかってるんですか?」
「気をつかっているとはまた違うが…。やはり、お前のことを考えるとどうも前向きになれん」
「スルト。僕は何年も前からこの時を覚悟していました。その時がきたら、背中を押すって決めていました」
「ケーゴ…」
僕は精一杯笑顔を見せた。
「僕は貴族じゃありません。その上男です。僕じゃだめなんです。貴族としての判断をきちんとしてください」
「……」
「結婚をしても、気が向いて、奥さんが許してくれたときは、時たま僕の部屋に遊びに来てください。飽きるまででいいので」
スルトの瞳からぽろりと涙がこぼれた。はじめて見るスルトの涙。とても綺麗だった。
彼は何も言わずに僕を抱きしめた。僕もスルトの胸に顔を押し付けて、見えないように、聞こえないようにこっそり泣いた。
僕は抱きかかえられベッドへおろされた。自然と唇が重なり合う。キスをしながらお互いの服を脱がせた。言葉を交わさず、ただただ体を求め合った。
「あっ…んっ…ふ…」
「はっ…ん…」
僕の喘ぎ声と、スルトの息遣いだけが部屋に響く。いつもより優しく、しっかり記憶に刻みつくように、スルトはゆっくりと腰を動かした。僕の首輪をカリッと噛む。そのあと小さな嗚咽が聞こえてきた。僕はスルトの肩を掴み、きゅっと顔をしかめた。我慢しようとしても溢れてくる涙で彼の肩を濡らした。
流れ込むスルトのものが、ずっと僕の中に残ればいいのにと思った。
その夜、スルトと僕は抱きしめ合って眠った。離したくないとお互い思っていたと思う。でも、僕が朝目覚めたころには、隣にスルトはいなかった。
「う~ん…」
「おはようケイゴ!朝食を持ってきたぞ」
「ううう…眠い…」
「ケイゴはよく寝るなあ。なのに全然育ってないな!なんでだ?」
「あのバカ二人に毎晩毎晩体力持ってかれるからだよ…。っていうかしれっと失礼なこと言わないでくれる?!」
「ははは!ごめんごめん」
ピーターと一緒に朝食を食べていると、スルトが部屋に入ってきた。いつものような元気はなく、黙って僕の傍で立つ。
「どうしたの?」
「なにがだ?」
「いや、元気ないから」
「…なんでもない」
スルトはそう言って、僕にキスをしてぎゅっと抱きついてから部屋を出ていった。あんな思いつめた表情のスルト、初めて見た。
「スルト、どうしたんだろう?」
「さあ…」
ピーターも不思議そうにドアを眺めていた。
朝食をとったあと、服を着替えてぼうっと一日を過ごした。最近はエドガーに勧められた本を読んでいる。ピーターに教えてもらっているので、少しずつこの世界の文字も読めるようになってきた。
夜、また沈んだ表情のスルトがそろりと部屋に入ってきた。なんなの今日のスルト。別人みたいじゃないか。
椅子に腰かけて、じっとしている。なんだか調子が狂う。
「ねえ」
「なんだ」
「どうしたんですか。今日一日ずっとそんな感じなんですか?」
「……」
ええ~。なにこのスルト扱いづらいんだけど。めっちゃ黙るじゃん…。僕自分から話題振るのとか得意じゃないんだけど。どうしよう。
「なあ、ケーゴ」
わ、やっと喋った。よかった~。
「なんですか?」
「…俺はお前のことを愛している」
「……」
え。喋り始めたと思ったらこれ?こわ。重。もしかしてずっとこれを言おうとしてたの?童貞かよぉ…。
僕がじとっとした目で見ても、いつものようなツッコミが来ない。真剣な思いつめた目でじっと僕を見返した。
「だが、俺は貴族だ。務めは果たさないといけない」
「…話が見えてこないんですが」
「隣国の貴族の娘が、俺に結婚の申し出をしてきた」
あー…そういうこと…。
「俺は、受けなければならない」
「受けるべきだと思います」
僕がそう言うと、スルトが泣きそうな顔をした。…僕だって、気を緩めたら泣きそうだ。でも震えそうになる声を抑えて言葉を続けた。
「もしかして、僕に気をつかってるんですか?」
「気をつかっているとはまた違うが…。やはり、お前のことを考えるとどうも前向きになれん」
「スルト。僕は何年も前からこの時を覚悟していました。その時がきたら、背中を押すって決めていました」
「ケーゴ…」
僕は精一杯笑顔を見せた。
「僕は貴族じゃありません。その上男です。僕じゃだめなんです。貴族としての判断をきちんとしてください」
「……」
「結婚をしても、気が向いて、奥さんが許してくれたときは、時たま僕の部屋に遊びに来てください。飽きるまででいいので」
スルトの瞳からぽろりと涙がこぼれた。はじめて見るスルトの涙。とても綺麗だった。
彼は何も言わずに僕を抱きしめた。僕もスルトの胸に顔を押し付けて、見えないように、聞こえないようにこっそり泣いた。
僕は抱きかかえられベッドへおろされた。自然と唇が重なり合う。キスをしながらお互いの服を脱がせた。言葉を交わさず、ただただ体を求め合った。
「あっ…んっ…ふ…」
「はっ…ん…」
僕の喘ぎ声と、スルトの息遣いだけが部屋に響く。いつもより優しく、しっかり記憶に刻みつくように、スルトはゆっくりと腰を動かした。僕の首輪をカリッと噛む。そのあと小さな嗚咽が聞こえてきた。僕はスルトの肩を掴み、きゅっと顔をしかめた。我慢しようとしても溢れてくる涙で彼の肩を濡らした。
流れ込むスルトのものが、ずっと僕の中に残ればいいのにと思った。
その夜、スルトと僕は抱きしめ合って眠った。離したくないとお互い思っていたと思う。でも、僕が朝目覚めたころには、隣にスルトはいなかった。
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