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細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルにつけられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。
「はあ…………」
鏡の中の自分を覗き込んで、リュシエルは大きくため息をつく。
「なんで私だけ、こんな顔なのかしら……」
言いながら頬を触ると、必要以上に「ぷにっ」とした感触がして、リュシエルはさらにため息をついた。
「頑張ってお手入れしているのに、やっぱり下ぶくれだわ……」
毎日小顔に効くと噂の天然石のプレート使ってせっせとマッサージをしても、これまた小顔に効くと噂の顔面体操をしても、リュシエルの下ぶくれには全く効果がない。さらにお肌も、魔法が込められているという謳い文句の高価な香油を取り寄せて磨いているにも関わらず、若い令嬢らしいハリはなく、どこかくすんでさえいた。
「おねえさま、またためいきついてるの?」
鈴を転がしたような可愛らしい声の持ち主は、リュシエルの年の離れた妹アンジェラだ。お日様の光を集めたような金髪に、緑色の瞳はこぼれそうなほど大きく、それでいて鼻や唇はこじんまりと小さく愛らしい。卵型の小さな顔はうっとりするほど綺麗なラインを描いており、その肌は輝くように艶やかで……つまり一言で表すなら、ものすごい美少女だ。六歳の今ですらこれなら、将来は間違いなく、匂い立つような美女に育つだろう。
「そうね……。ため息は幸せが逃げるって言うし、よくないわね。気をつけるわ」
対するリュシエルは、“スナギツネ“とあだ名をつけられてしまうほどの細い目と三百眼だけでなく、ギリギリ金色と言えなくもないくすんだ黄と所々灰とが混じった髪色。さらには下ぶくれの顔に、肌までお粗末という、残念極まりない容姿をしていた。努力の甲斐あって体だけは引き締まっていたが、膨らむべきところが膨らまなかったせいで、そちらもやはりなんとも残念な感じになっている。
「お嬢様方の準備はできたのかな?」
部屋に顔を覗かせたのは、兄のエドガーだ。こちらもまた、説明するがめんどくさくなるほどの美男子だった。
(というより、我が家は私以外が全員美形なのよ……)
リュシエルの生まれたベクレル侯爵家は、その家柄や財力もさることながら、恐ろしいほどの美形揃いと評判の一族だった。だがその一族の中で、唯一美形どころか、人並みの外見にすら恵まれなかったのがリュシエルというわけである。赤ん坊の頃は可愛かったらしいのだが、成長するにつれ家族との差は歴然となった。彼女は華麗なる一族の汚点と笑われ、挙げ句の果てに「スナギツネ令嬢」なんてあだ名さえつけられてしまう。
「本物のスナギツネは愛嬌があって可愛いじゃないか!」
と、兄は言ってくれたが、リュシエルにとっては何の慰めにもならなかった。そのあだ名をつけたのが、この国の王太子であり、リュシエルの婚約者でもあるハージェス王子だった事も大きい。
「わたしはじゅんびできました! おねえさまは?」
「私も大丈夫よ」
「なら、行こうか。王太子殿下もお待ちだ」
にっこりと麗しく微笑んだ兄とは対照的に、リュシエルは赤ら様に嫌な顔をした。今日はベクレル家主催のティーパーティーなのだが、そこにはハージェスも招待されている。婚約者なので当然と言えば当然なのだが、リュシエルにとっては、かなりありがたくない時間となるのが目に見えていた。
「はあ…………」
鏡の中の自分を覗き込んで、リュシエルは大きくため息をつく。
「なんで私だけ、こんな顔なのかしら……」
言いながら頬を触ると、必要以上に「ぷにっ」とした感触がして、リュシエルはさらにため息をついた。
「頑張ってお手入れしているのに、やっぱり下ぶくれだわ……」
毎日小顔に効くと噂の天然石のプレート使ってせっせとマッサージをしても、これまた小顔に効くと噂の顔面体操をしても、リュシエルの下ぶくれには全く効果がない。さらにお肌も、魔法が込められているという謳い文句の高価な香油を取り寄せて磨いているにも関わらず、若い令嬢らしいハリはなく、どこかくすんでさえいた。
「おねえさま、またためいきついてるの?」
鈴を転がしたような可愛らしい声の持ち主は、リュシエルの年の離れた妹アンジェラだ。お日様の光を集めたような金髪に、緑色の瞳はこぼれそうなほど大きく、それでいて鼻や唇はこじんまりと小さく愛らしい。卵型の小さな顔はうっとりするほど綺麗なラインを描いており、その肌は輝くように艶やかで……つまり一言で表すなら、ものすごい美少女だ。六歳の今ですらこれなら、将来は間違いなく、匂い立つような美女に育つだろう。
「そうね……。ため息は幸せが逃げるって言うし、よくないわね。気をつけるわ」
対するリュシエルは、“スナギツネ“とあだ名をつけられてしまうほどの細い目と三百眼だけでなく、ギリギリ金色と言えなくもないくすんだ黄と所々灰とが混じった髪色。さらには下ぶくれの顔に、肌までお粗末という、残念極まりない容姿をしていた。努力の甲斐あって体だけは引き締まっていたが、膨らむべきところが膨らまなかったせいで、そちらもやはりなんとも残念な感じになっている。
「お嬢様方の準備はできたのかな?」
部屋に顔を覗かせたのは、兄のエドガーだ。こちらもまた、説明するがめんどくさくなるほどの美男子だった。
(というより、我が家は私以外が全員美形なのよ……)
リュシエルの生まれたベクレル侯爵家は、その家柄や財力もさることながら、恐ろしいほどの美形揃いと評判の一族だった。だがその一族の中で、唯一美形どころか、人並みの外見にすら恵まれなかったのがリュシエルというわけである。赤ん坊の頃は可愛かったらしいのだが、成長するにつれ家族との差は歴然となった。彼女は華麗なる一族の汚点と笑われ、挙げ句の果てに「スナギツネ令嬢」なんてあだ名さえつけられてしまう。
「本物のスナギツネは愛嬌があって可愛いじゃないか!」
と、兄は言ってくれたが、リュシエルにとっては何の慰めにもならなかった。そのあだ名をつけたのが、この国の王太子であり、リュシエルの婚約者でもあるハージェス王子だった事も大きい。
「わたしはじゅんびできました! おねえさまは?」
「私も大丈夫よ」
「なら、行こうか。王太子殿下もお待ちだ」
にっこりと麗しく微笑んだ兄とは対照的に、リュシエルは赤ら様に嫌な顔をした。今日はベクレル家主催のティーパーティーなのだが、そこにはハージェスも招待されている。婚約者なので当然と言えば当然なのだが、リュシエルにとっては、かなりありがたくない時間となるのが目に見えていた。
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