16 / 18
16
しおりを挟む
「モルガナ・フラヴィニー嬢よ。そなたがクロードからハージェスに乗り換えた件も遺憾ではあるが、まずはなぜハージェスの子を妊娠したなどと嘘をついたのか教えて欲しい」
(えっ……!?)
リュシエルは思わず口を抑えた。そうしなければ声が漏れてしまいそうだった。
「妊娠が嘘……? モルガナ、どういうことなんだい……?」
ハージェスが、信じられないと言う顔でモルガナを見る。モルガナは、父親の助けを乞うた時よりもさらに青ざめていた。
「う、嘘ではありませんわ……。私、確かに月のものが止まって……。ちょ、ちょっとした勘違いだったんです……」
「ならなぜ、そのことを今まで黙っていたのだ?」
「それは……」
そこまで言って、モルガナはわっと泣き出した。王はため息をつくと、今度はハージェスを見た。
「それから、我が息子、ハージェスよ」
「は、はい……」
「お前は昔から、不出来な子だった。弟のクロードの優秀さに勝てないとわかるや否や、努力することを放棄して、放蕩の限りを尽くして……。それでもいつかは成長するのではないかと思い辛抱強く見守ってきたが……結局お前は、最後の砦すらも、自ら壊してしまったな」
「最後の砦……?」
「リュシエル・ベクレル侯爵令嬢との婚約だ。放蕩者なお前を、それでも支えてくれるであろう真面目なあの子との婚約は、お前に与えられた最後の砦であり、救いの手だったのだ。……考えたことはなかったのか? 私が、なぜお前たち二人の婚約にそれほどまでこだわっていたのは」
「そ、それは……」
「見た目でとやかく言う者もいるようだが、リュシエル嬢の勤勉さ、真面目さ、謙虚さ、全てにおいてこれほど国母となるにふさわしい女性はいない。それなのにお前ときたら何をした? リュシエル嬢を大事にしないどころか、ひどいあだ名をつけて嘲笑い、さらには不実まで働きおって。おまけに選んだ女も女だ。クロードがどれだけ彼女を大切にしていたのか、私が知らないとでも思ったのか? それを地位に目が眩んであっさりと乗り換えたと思えば、妊娠したという嘘までついて……。全く、本当に救いようがない」
王の顔には、深い失望が刻まれていた。流石にまずいと察したハージェスが慌てて身を乗り出す。
「ち、父上! 身を入れ替えます。これからは精一杯次期国王として勤勉にーー」
「もう遅い」
王は冷たい瞳でハージェスを見ながら、切り捨てるように言った。
(えっ……!?)
リュシエルは思わず口を抑えた。そうしなければ声が漏れてしまいそうだった。
「妊娠が嘘……? モルガナ、どういうことなんだい……?」
ハージェスが、信じられないと言う顔でモルガナを見る。モルガナは、父親の助けを乞うた時よりもさらに青ざめていた。
「う、嘘ではありませんわ……。私、確かに月のものが止まって……。ちょ、ちょっとした勘違いだったんです……」
「ならなぜ、そのことを今まで黙っていたのだ?」
「それは……」
そこまで言って、モルガナはわっと泣き出した。王はため息をつくと、今度はハージェスを見た。
「それから、我が息子、ハージェスよ」
「は、はい……」
「お前は昔から、不出来な子だった。弟のクロードの優秀さに勝てないとわかるや否や、努力することを放棄して、放蕩の限りを尽くして……。それでもいつかは成長するのではないかと思い辛抱強く見守ってきたが……結局お前は、最後の砦すらも、自ら壊してしまったな」
「最後の砦……?」
「リュシエル・ベクレル侯爵令嬢との婚約だ。放蕩者なお前を、それでも支えてくれるであろう真面目なあの子との婚約は、お前に与えられた最後の砦であり、救いの手だったのだ。……考えたことはなかったのか? 私が、なぜお前たち二人の婚約にそれほどまでこだわっていたのは」
「そ、それは……」
「見た目でとやかく言う者もいるようだが、リュシエル嬢の勤勉さ、真面目さ、謙虚さ、全てにおいてこれほど国母となるにふさわしい女性はいない。それなのにお前ときたら何をした? リュシエル嬢を大事にしないどころか、ひどいあだ名をつけて嘲笑い、さらには不実まで働きおって。おまけに選んだ女も女だ。クロードがどれだけ彼女を大切にしていたのか、私が知らないとでも思ったのか? それを地位に目が眩んであっさりと乗り換えたと思えば、妊娠したという嘘までついて……。全く、本当に救いようがない」
王の顔には、深い失望が刻まれていた。流石にまずいと察したハージェスが慌てて身を乗り出す。
「ち、父上! 身を入れ替えます。これからは精一杯次期国王として勤勉にーー」
「もう遅い」
王は冷たい瞳でハージェスを見ながら、切り捨てるように言った。
23
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて追放寸前だったのに、なぜか冷徹なはずの氷の公爵様から世界で一番甘く愛されています。
黒崎隼人
ファンタジー
「リゼット・フォン・ヴァインベルク! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!」
卒業パーティーの夜、公爵令嬢リゼットは婚約者の王太子から冤罪を突きつけられ、全てを失った。
絶望の淵に沈む彼女に手を差し伸べたのは、『氷の公爵』と噂される冷徹な美青年、キリアン・アシュフォード。
「ならば、俺が君を娶ろう」
彼の屋敷で始まったのは、戸惑うほどに甘い溺愛の日々。
不器用な優しさに触れるうち、凍てついた心は少しずつ溶かされていく。
一方、リゼットを陥れた偽りの聖女は王宮で増長し、国に災いを招き寄せていた。
やがて真実が暴かれる時、元婚約者は後悔の涙を流すけれど――もう、遅い。
これは、不遇の令嬢が本当の愛を見つけ、世界で一番幸せになるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるような溺愛があなたを待っています。
【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~
深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。
灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。
悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~
女譜香あいす
ファンタジー
数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。
聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。
だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。
そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。
これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。
ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。
辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。
ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。
その後、王都から助けを求める使者が現れる。
追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。
エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。
全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。
◇
命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。
◇
※他サイトにも投稿しております。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる