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支度金を稼ぐには
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「貴族婦人が稼ぐには、それはずばり夫を支えること」
公爵夫人は人差し指を立てて言った。
ジュリエッタはそれを聞いて、「はぁ?」と訊き返した。思わず淑女の仮面がはがれかける。さっと取り繕って、優雅な笑みを浮かべる。
「まあ、素敵なアドバイスをありがとうございます」
夫人は、娘が母の言うことを真に受けていないのを感じているはずだったが、ゆったりとほほ笑んでいた。
***
公爵邸から侯爵邸へと帰る馬車の中、ジュリエッタは脱力していた。
簡単に離婚できるつもりだったがそうはいかないらしい。
(こうなったら本当に大金持ってバックレるしかないかも……)
ジュリエッタは自分に自由にできる金目の物を思い浮かべた。
(何てこと、公爵家から持参した宝石類くらいしかないわ)
全部売り払っても、千ゴールドにも満たない。
呆然としているジュリエッタの横で、ハンナはのん気な声を上げていた。
「公爵家のお紅茶、素晴らしくおいしゅうございましたわね。わたしも頂きましたが、たいそう奥深い味わいでしたわ」
ジュリエッタは適当に相槌を打つ。
「ええ、そうね」
「それにカーテンも変わっておりましたわね。相変わらず奥さまはセンスがよくいらしてますわね」
(それに、お母さま、新しい指輪をしてたわ)
そこでジュリエッタは、はたと考えた。
(お父さまが船につぎ込んだっていうのに、お母さまは随分余裕の生活に見えたわね。さすが、お母さまが公爵家の領地経営を握っているだけあるわね)
ジュリエッタはやっと母親の本意がわかった。
(領地経営で稼げばいいのよ!)
母親は公爵家に嫁いで2年で収入を3倍に増やしたと聞いたことがあった。公爵家の予算の4倍かかる侯爵家。収入もそれを上回るに違いない。
(ちょっと頑張れば、支度金をすぐに稼げそうね!)
***
侯爵邸に戻り、侯爵の居場所を尋ねれば、裏庭にいるとのことだった。行ってみれば、兵士らが剣の稽古に励んでいる。
(戦争を終えたばかりだというのに、少しは休めばいいのに。そういえば、あれだけの軍列はどうしたのかしら?)
侯爵家の庭に野営がないということは軍列は王都にはいない。いつまでも侯爵軍を王都に留めていれば翻意を疑われかねないと思ったのか。
(侯爵は随分と気が回る人なのね。もしかしたら戦場での功績だけではなく、立ち回りのうまさでも今の地位に着いたのかもしれないわね)
黒髪の背中を見つけて、駆け寄った。呼びかけようとして、ジュリエッタの足が止まった。
侯爵の背中にはしなやかな筋肉がついている。上腕はジュリエッタの胴囲よりも太いに違いなく、分厚い体つきをしている。
(まあ、侯爵の体って傷だらけなのね。とても強そう。こんな人に守ってもらえたらさぞ……)
ジュリエッタは、じろじろと見つめていたが急に恥ずかしくなって、顔を背けた。
侯爵の相手をしていた男がジュリエッタに気づいた。
「閣下、何かすっげえきれいな人がこっちを見てんだが」
侯爵が振り向けばジュリエッタに気づいて、嬉しそうに笑いかけてきた。
「やあ、ジュリエッタ、来てくれたんだね」
上半身裸のままで、腕で額の汗をぬぐいながら近づいてくる。
(きゃあ、裸のままで近づいてこないでよ。それに何で名前呼び? 図々しいわね!)
「もしかして、剣を習いにきたのかな?」
(んなわけあるかい!)
ジュリエッタは心の中でいきり立った。
(この私のどこをどう見れば、そんなお転婆に見えるのよ。淑女に向かって、失礼な!)
侯爵はジュリエッタの前に立つと、ジュリエッタの手を取ってきた。引っ込めようとするも間に合わず、それは侯爵の手に包まれてしまった。
侯爵はジュリエッタの手をじっと見つめて、つぶやいた。
「この手では剣を握るのは無理だな。そんなこと、させたくはない」
まるで大切なもののように言ってくる侯爵の言葉に胸にうずくものを覚えるが、ジュリエッタはハンナに顔を向けた。
ハンナはいつもジュリエッタに男が近づこうとすれば即座に前に出てきて阻止するはずだったが、あろうことか、うっとりとした目で、侯爵とジュリエッタとを見つめている。
(ちょっとハンナ。何とかしてよ)
(何とかって、何をですの?)
目と目で会話をするも、ハンナにとっては侯爵は阻止対象ではないらしい。夫なのだからそれもそうだ。
ジュリエッタは自分で手を引っこ抜いた。
「侯爵さま、稽古を邪魔して申し訳ありませんでした。また、後で部屋に伺いますわ」
ジュリエッタはあわただしく、侯爵に背中を向けた。
侯爵の部下が侯爵に言ってくる。
「あれが閣下の奥さんっすか。別世界の人っすね」
「俺らと同じ人間とは思えねえっす」
それに侯爵は答える。
「うん。そうだね。別世界の人だ。俺がそばにいてはいけないような人なんだ」
侯爵の声はわずかに沈んだものだったが、ジュリエッタの耳には届いていなかった。
***
(平民だったくせに、わたしの手を握るなんて図々しい)
しかし、侯爵の黒目を思い出せば、ジュリエッタの胸は早鐘を打つ。侯爵の黒目はジュリエッタに優しく笑んでいた。まるで愛おしいものを見るような目をしていた。そして、大切なもののようにジュリエッタの手を包んでいた。
(あの人、わたしを垂らし込むつもりだわ)
しかし、侯爵はこの先シャルロットと出会い、真実の愛に目覚めるのだ。
この先、シャルロットにあの優しい目が向けられる。それを思えば腹立ちが沸き起こる。その腹立ちは、これまで感じた腹立ちより苦しいものだった。
ジュリエッタは自分が侯爵に好意を向け始めているのかもしれないと思った。
しかし、予知夢で無残に捨てられたことを思い出せば、好意は簡単に消え去る。
(あんな不誠実な男に触られただなんてぞっとするわ)
ジュリエッタはハンナに水を持ってきてもらい、握られた手を念入りに拭いた。
間もなくして侯爵はやってきた。わざわざ稽古を中断してやってきたに違いなかった。
髪を整えて、服もきちんと着込んでいる。うっすら伸びていたヒゲも剃っていた。
勧める前にソファにドサッと腰を落とした。
「ジュリエッタ、支度金の返還の目途でもついたのかな」
侯爵は朝食のときと同じように挑戦的な顔を向けてきた。やはり返還できない限り、離婚には応じないつもりのようだ。
「侯爵さま、わたくし、領地に参りますわ」
侯爵は虚を突かれたような顔をした。王都で贅沢に生きている公爵令嬢のジュリエッタが辺境の領地に出向くなど思いもよらなかったらしい。
しかし、ジュリエッタはそもそも領主夫人になるべく心構えで生きてきた。隣国だろうと辺境だろうと夫に付き従う覚悟はもともとあった。
「侯爵さまは侯爵領の予算が、私の実家の公爵領の四倍の規模であることをご存じでしょうか」
(膨大な軍費を賄うだけの収入があることを侯爵は自覚しているのかしら)
「いや、知らなかった」
「では、年の領地の収入はいくらでしょう」
「およそ、二億ゴールドだ」
「正確には?」
侯爵は答えられなかった。
(やっぱり大雑把に把握しているだけだわ)
「では、剰余金は? 剰余金とは毎年収入から支出を引いたものですわ」
「毎年使い切ると聞いている」
(やはり、侯爵は領地経営に関してはズブの素人、ノータッチなんだわ)
そもそも平民だったのだからそれも当然のことだ。一切合切を家令に任せているのだ。
「わたくし、これでも領地経営を学んできましたの。きっと侯爵さまの領地をもっと素晴らしいものに出来ると自負しておりますわ。わたくしに領地経営をさせても損はしないと思いますわ」
そこまで言ったところで、侯爵は鋭い目でジュリエッタを見てきた。
「なるほど、それで増えた分の収入をジュリエッタのものにしたいってことだね? それを支度金に当てようってわけか」
(ぐっ、この人、頭の回転が速いのね)
「ええ、そうです」
「俺が承諾しなければならない理由は何かな」
「おそらく支度金は数年で貯まりますわ。そのあと、増えた分の収入はすべて侯爵さまのものとなります」
「俺は今のままで十分だけど」
「しかし、北方との和平が成立すれば、侯爵さまの活躍の機会も減ります。報奨金もなくなりましょう。今よりは懐も厳しくなられると思います」
「軍費も減るから、一概にそうとは言えないけど」
ジュリエッタもそれに気づいていたがわざと黙っていたものを、侯爵もまた気付いていたのだ。黙り込んだジュリエッタを侯爵は愉快気な目で見てきた。
「でも、俺はバルベリ軍を今の規模のまま維持するつもりだ。それを考えれば、そうだね、あなたの話に乗るのもいいね」
「では、いいんですのね?」
「ああ、承諾しよう。増えた収入分はあなたの好きにすればいい」
「では、準備出来次第、領地に向かいますわ!」
「それは困る」
侯爵は首を横に振った。
「あなたには当面、俺のそばにいてもらわないと困る」
侯爵はジュリエッタをじっと見つめて言ってきた。その優しげな目つきにジュリエッタの背中がぞくりとした。
公爵夫人は人差し指を立てて言った。
ジュリエッタはそれを聞いて、「はぁ?」と訊き返した。思わず淑女の仮面がはがれかける。さっと取り繕って、優雅な笑みを浮かべる。
「まあ、素敵なアドバイスをありがとうございます」
夫人は、娘が母の言うことを真に受けていないのを感じているはずだったが、ゆったりとほほ笑んでいた。
***
公爵邸から侯爵邸へと帰る馬車の中、ジュリエッタは脱力していた。
簡単に離婚できるつもりだったがそうはいかないらしい。
(こうなったら本当に大金持ってバックレるしかないかも……)
ジュリエッタは自分に自由にできる金目の物を思い浮かべた。
(何てこと、公爵家から持参した宝石類くらいしかないわ)
全部売り払っても、千ゴールドにも満たない。
呆然としているジュリエッタの横で、ハンナはのん気な声を上げていた。
「公爵家のお紅茶、素晴らしくおいしゅうございましたわね。わたしも頂きましたが、たいそう奥深い味わいでしたわ」
ジュリエッタは適当に相槌を打つ。
「ええ、そうね」
「それにカーテンも変わっておりましたわね。相変わらず奥さまはセンスがよくいらしてますわね」
(それに、お母さま、新しい指輪をしてたわ)
そこでジュリエッタは、はたと考えた。
(お父さまが船につぎ込んだっていうのに、お母さまは随分余裕の生活に見えたわね。さすが、お母さまが公爵家の領地経営を握っているだけあるわね)
ジュリエッタはやっと母親の本意がわかった。
(領地経営で稼げばいいのよ!)
母親は公爵家に嫁いで2年で収入を3倍に増やしたと聞いたことがあった。公爵家の予算の4倍かかる侯爵家。収入もそれを上回るに違いない。
(ちょっと頑張れば、支度金をすぐに稼げそうね!)
***
侯爵邸に戻り、侯爵の居場所を尋ねれば、裏庭にいるとのことだった。行ってみれば、兵士らが剣の稽古に励んでいる。
(戦争を終えたばかりだというのに、少しは休めばいいのに。そういえば、あれだけの軍列はどうしたのかしら?)
侯爵家の庭に野営がないということは軍列は王都にはいない。いつまでも侯爵軍を王都に留めていれば翻意を疑われかねないと思ったのか。
(侯爵は随分と気が回る人なのね。もしかしたら戦場での功績だけではなく、立ち回りのうまさでも今の地位に着いたのかもしれないわね)
黒髪の背中を見つけて、駆け寄った。呼びかけようとして、ジュリエッタの足が止まった。
侯爵の背中にはしなやかな筋肉がついている。上腕はジュリエッタの胴囲よりも太いに違いなく、分厚い体つきをしている。
(まあ、侯爵の体って傷だらけなのね。とても強そう。こんな人に守ってもらえたらさぞ……)
ジュリエッタは、じろじろと見つめていたが急に恥ずかしくなって、顔を背けた。
侯爵の相手をしていた男がジュリエッタに気づいた。
「閣下、何かすっげえきれいな人がこっちを見てんだが」
侯爵が振り向けばジュリエッタに気づいて、嬉しそうに笑いかけてきた。
「やあ、ジュリエッタ、来てくれたんだね」
上半身裸のままで、腕で額の汗をぬぐいながら近づいてくる。
(きゃあ、裸のままで近づいてこないでよ。それに何で名前呼び? 図々しいわね!)
「もしかして、剣を習いにきたのかな?」
(んなわけあるかい!)
ジュリエッタは心の中でいきり立った。
(この私のどこをどう見れば、そんなお転婆に見えるのよ。淑女に向かって、失礼な!)
侯爵はジュリエッタの前に立つと、ジュリエッタの手を取ってきた。引っ込めようとするも間に合わず、それは侯爵の手に包まれてしまった。
侯爵はジュリエッタの手をじっと見つめて、つぶやいた。
「この手では剣を握るのは無理だな。そんなこと、させたくはない」
まるで大切なもののように言ってくる侯爵の言葉に胸にうずくものを覚えるが、ジュリエッタはハンナに顔を向けた。
ハンナはいつもジュリエッタに男が近づこうとすれば即座に前に出てきて阻止するはずだったが、あろうことか、うっとりとした目で、侯爵とジュリエッタとを見つめている。
(ちょっとハンナ。何とかしてよ)
(何とかって、何をですの?)
目と目で会話をするも、ハンナにとっては侯爵は阻止対象ではないらしい。夫なのだからそれもそうだ。
ジュリエッタは自分で手を引っこ抜いた。
「侯爵さま、稽古を邪魔して申し訳ありませんでした。また、後で部屋に伺いますわ」
ジュリエッタはあわただしく、侯爵に背中を向けた。
侯爵の部下が侯爵に言ってくる。
「あれが閣下の奥さんっすか。別世界の人っすね」
「俺らと同じ人間とは思えねえっす」
それに侯爵は答える。
「うん。そうだね。別世界の人だ。俺がそばにいてはいけないような人なんだ」
侯爵の声はわずかに沈んだものだったが、ジュリエッタの耳には届いていなかった。
***
(平民だったくせに、わたしの手を握るなんて図々しい)
しかし、侯爵の黒目を思い出せば、ジュリエッタの胸は早鐘を打つ。侯爵の黒目はジュリエッタに優しく笑んでいた。まるで愛おしいものを見るような目をしていた。そして、大切なもののようにジュリエッタの手を包んでいた。
(あの人、わたしを垂らし込むつもりだわ)
しかし、侯爵はこの先シャルロットと出会い、真実の愛に目覚めるのだ。
この先、シャルロットにあの優しい目が向けられる。それを思えば腹立ちが沸き起こる。その腹立ちは、これまで感じた腹立ちより苦しいものだった。
ジュリエッタは自分が侯爵に好意を向け始めているのかもしれないと思った。
しかし、予知夢で無残に捨てられたことを思い出せば、好意は簡単に消え去る。
(あんな不誠実な男に触られただなんてぞっとするわ)
ジュリエッタはハンナに水を持ってきてもらい、握られた手を念入りに拭いた。
間もなくして侯爵はやってきた。わざわざ稽古を中断してやってきたに違いなかった。
髪を整えて、服もきちんと着込んでいる。うっすら伸びていたヒゲも剃っていた。
勧める前にソファにドサッと腰を落とした。
「ジュリエッタ、支度金の返還の目途でもついたのかな」
侯爵は朝食のときと同じように挑戦的な顔を向けてきた。やはり返還できない限り、離婚には応じないつもりのようだ。
「侯爵さま、わたくし、領地に参りますわ」
侯爵は虚を突かれたような顔をした。王都で贅沢に生きている公爵令嬢のジュリエッタが辺境の領地に出向くなど思いもよらなかったらしい。
しかし、ジュリエッタはそもそも領主夫人になるべく心構えで生きてきた。隣国だろうと辺境だろうと夫に付き従う覚悟はもともとあった。
「侯爵さまは侯爵領の予算が、私の実家の公爵領の四倍の規模であることをご存じでしょうか」
(膨大な軍費を賄うだけの収入があることを侯爵は自覚しているのかしら)
「いや、知らなかった」
「では、年の領地の収入はいくらでしょう」
「およそ、二億ゴールドだ」
「正確には?」
侯爵は答えられなかった。
(やっぱり大雑把に把握しているだけだわ)
「では、剰余金は? 剰余金とは毎年収入から支出を引いたものですわ」
「毎年使い切ると聞いている」
(やはり、侯爵は領地経営に関してはズブの素人、ノータッチなんだわ)
そもそも平民だったのだからそれも当然のことだ。一切合切を家令に任せているのだ。
「わたくし、これでも領地経営を学んできましたの。きっと侯爵さまの領地をもっと素晴らしいものに出来ると自負しておりますわ。わたくしに領地経営をさせても損はしないと思いますわ」
そこまで言ったところで、侯爵は鋭い目でジュリエッタを見てきた。
「なるほど、それで増えた分の収入をジュリエッタのものにしたいってことだね? それを支度金に当てようってわけか」
(ぐっ、この人、頭の回転が速いのね)
「ええ、そうです」
「俺が承諾しなければならない理由は何かな」
「おそらく支度金は数年で貯まりますわ。そのあと、増えた分の収入はすべて侯爵さまのものとなります」
「俺は今のままで十分だけど」
「しかし、北方との和平が成立すれば、侯爵さまの活躍の機会も減ります。報奨金もなくなりましょう。今よりは懐も厳しくなられると思います」
「軍費も減るから、一概にそうとは言えないけど」
ジュリエッタもそれに気づいていたがわざと黙っていたものを、侯爵もまた気付いていたのだ。黙り込んだジュリエッタを侯爵は愉快気な目で見てきた。
「でも、俺はバルベリ軍を今の規模のまま維持するつもりだ。それを考えれば、そうだね、あなたの話に乗るのもいいね」
「では、いいんですのね?」
「ああ、承諾しよう。増えた収入分はあなたの好きにすればいい」
「では、準備出来次第、領地に向かいますわ!」
「それは困る」
侯爵は首を横に振った。
「あなたには当面、俺のそばにいてもらわないと困る」
侯爵はジュリエッタをじっと見つめて言ってきた。その優しげな目つきにジュリエッタの背中がぞくりとした。
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読む前にご確認いただけると助かります。
1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです
2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています
→ただ今『皇太子』を『王太子』へ、さらに文頭一文字下げなど、表記を改訂中です。
そのため一時的に『皇太子』と『王太子』が混在しております。
よろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。
読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。
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