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パン・プティング
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侯爵がジュリエッタの部屋を訪れたのは、離婚を切り出した翌朝のことだった。侯爵は朝食をジュリエッタの居間にまで運ばせてきた。朝食をホールでともにと誘われたが、断ったために押しかけて来たようだ。
「一緒にどうかな」
ジュリエッタは白々とした目を向けた。
「わたくし、朝はほとんど頂かないのです」
そのとき、ジュリエッタの鼻梁を甘い香りがくすぐってきた。
匂いに釣られて盆の方を見れば、メープルソースをかけたフルーツサラダが目に飛び込んできた。それにチョコをかけたクロワッサンに、カリカリのベーコンに、そして、謎の物体が一つ。
(あれは何?)
ジュリエッタは、嗅覚を集中させた。
(あの物体からは卵とはちみつとミルクとバターの匂いがするわ。カステラでもクッキーでもないし、何かしら。気になる、とっても気になるわ……)
ジュリエッタはニッコリと淑女の笑みをたたえたまま、優雅に椅子に座った。
「せっかく来てくださったんだもの、お相伴しますわ」
結局、食べ物に釣られてしまったジュリエッタだった。
問題の物体を見つめる。
(これは、まさかのバゲット……! もしかして、バゲットを卵液で焼いているの? それも、バターをたっぷり使って焼いているわ。だって表面の焦げ目が何とも言えないほど香ばしいんだもの。どんな味、どんな食感かしら)
一口食べて、ジュリエッタは歓喜に包まれる。
(わあ、バゲットは卵液に浸かってもっちりとしてるわ。なのに表面はカリッカリッ。ところどころで顔を出してくる干しブドウが良いアクセントになってるわ。バゲットとプティングのマリアージュ、何て素敵なの! あとで厨房に行ってハンナの分も作ってもらおっと!)
恍惚となったジュリエッタは、侯爵の目線に気づいた。侯爵がこちらを見て、満足げな笑みを浮かべている。
「気に入ったようで良かった」
(やだわ、はしたない顔つきをしていないかしら)
ジュリエッタは顔を引き締めた。つんと澄ました顔で笑みを浮かべる。
「ええ、おいしいわ。こんなプティング、初めて頂きましたわ」
「そうでしょうね。これは堅くなって食べられなくなったバゲットを無駄にしないために考えられたものだから、公爵令嬢のテーブルには乗らなかったはずです。でも、おいしいでしょう?」
「まあ! バゲットは最後には鈍器になるから夫婦げんかのときに使うものだって婆やが言ってたのは嘘だったのね! 爺やとこうやっておいしく食べてたんだわ!」
侯爵はジュリエッタを見て小さく吹き出した。
「それでは我々も喧嘩のたびに、このプティングを一緒に食べることにしようか」
「わたくしたちに喧嘩する機会があるかしら」
ジュリエッタがそういうと、侯爵は口に挑戦的な笑みを浮かべた。その顔つきにジュリエッタはぎくりとする。
(何を考えているのかしら、この人)
「離婚のことなら受け入れましょう。書類はすぐに用意します」
侯爵の言葉に、ジュリエッタはほっとするも、余りの呆気なさに寂しい気持ちが湧いた。
(財布を失うのは寂しいわね。でも、背に腹は代えられないわ、私もハンナも生きて幸せになるのよ)
「では、支度金の返還が済み次第、手続きを取ることにしましょう」
「ええ、そうですわね、支度金の……、え、何のこと?」
「あなたとの婚姻の際に、バルベリから公爵家へ支度金を送ったのだが」
「ああ、そういうことですの。それなら父が返還しますわ。父が応じてくれなければ、私が応じます。金額を聞いてもよろしいかしら」
(どうせ大した額ではないわ、わたしの指輪一個で片付くでしょうよ)
そう思っていたジュリエッタは次の言葉に腰を抜かしかける。
「一億ゴールドだ」
「え……? なんて……?」
「一億ゴールドだ。公爵家にとってははした金だろうが、バルベリにとっては半年分の予算だ」
侯爵はそう言って、ぱくっとクロワッサンを一口で口に収めた。
「うん、クロワッサンもうまい。あなたが雇い入れた調理人は腕がいい」
侯爵は、ぺろりと舌で唇を舐める。
「それにあなたが整えてくれたカーテンも家具もいいし、メイドたちもとてもいい。ここも随分と住み心地が良くなったようだ。あなたのおかげだ、ありがとう」
それは侯爵の居室には一切手を付けていないことに対する嫌味にも聞こえた。
ジュリエッタはテーブルの下でこぶしを握っていた。
(一億ゴールドですって? それって、公爵家の予算二年分……?)
それがバルベリの半年分の予算ということは、バルベリでは領土の維持に公爵家の4倍かかるということだ。辺境防衛には膨大な費用がかかるのをジュリエッタは知りもしなかった。
巨額の支度金を返せとは、侯爵は離婚を渋るつもりだろうか。
(どうしてかしら)
ジュリエッタに執着しているとも思えない。シャルロットに出会えば、ジュリエッタのことなど視界にも入らなくなるのに。
しかし、今は侯爵はまだシャルロットに出会っていない。
(それにしても国王はどうして、シャルロットを侯爵に与えなかったのよ。最初からそうしておけば、私は巻き込まれずに済んだのに)
国王もまた人の親。我が娘を元平民に嫁がせたくなかったのだろうし、娘に嫌がられれば、なおさらだ。シャルロットも、まさか、侯爵と恋に落ちるとは予想だにしてないだろう。
不穏さを帯びた朝食は、表面上はそれでもつつがなく終えた。
「朝食後、王都を案内してくれたら嬉しいのですが」
「残念ですが、今日は実家に帰る予定ですの」
そう言えば侯爵はすぐに引き下がった。ジュリエッタは公爵邸に戻らなければならなかった。
(お父さまに支度金を用意してもらわなきゃ)
***
「支度金は、ジュリエッタちゃんが全部使っちゃったわよ?」
母である公爵夫人は、さも可愛いと言った目でジュリエッタを眺めつつ言ってのけた。
(はい?)
「でも、お母さま、支度金は公爵家の二年分の予算よ。まさかそれがすべて私のドレスやアクセサリーに消えたなんてことはないでしょう。いくら金遣いの荒いわたくしとはいえ、到底そこまでは」
「あら、あなた、宝石が欲しいと言って、鉱山を買ったじゃない。お父さまもそれに賛成して、あなた名義で鉱山を買ったのよ」
確かに父親とそんな話をした覚えがある。しかし、それが一億ゴールドもの金を使ってのことだとは思いもしなかった。
「で、そこは宝石が取れるのでしょうか」
「調査したけど、結局は掘るだけ損な小さい鉱脈が一個あっただけみたいよ」
「では、それは無駄金になったと?」
「でも、温泉が出るのよ。いつか行ってみましょうね」
(いつか行ってみたい程度の温泉を公爵家の予算二年分を使って買ったってこと?)
「その鉱山はどういう経緯でもたらされた話だったのでしょう」
「確かお父さまが外国で出会った商人の知り合いの商人のそのまた知り合いだったかしら。とってもお買い得で今逃すと次はないって勧められたって言ってたわねえ」
(それ、カモられてるわ完全に……)
ジュリエッタは内心で頭を抱え込んだ。
(でも、公爵家には膨大な資産があるはず)
「お父さまに一億ゴールド貸してもらえるかしら」
「無理よ」
「どうして」
「お父さまはね、その商人と気が合っちゃって、有り金を全部船につぎ込んで、その人と海に出たわ。今は、船主兼キャプテンとして七つの海のどこかにいるわ」
(キ、キャプテン……?)
ジュリエッタの頼りになると思っていた父は、とんでもない冒険家だったようだ。
「では、お兄さまは?」
「もちろん、お兄さまも一緒よ。ホント、仲良し親子ね!」
(はああ……、支度金どころの騒ぎではないわ)
ジュリエッタは淑女らしく美麗な笑みを浮かべてティーカップを持ち上げて口に含んだが、内心では喚いていた。
(支度金をどうすればいいのよ! 何よ、あの侯爵、知ってたんだわ! 私がダメ鉱山につぎ込んだことも、お父さまが船につぎ込んだことも。支度金が返せないのがわかってて、意地悪な顔をしてたんだわ!)
侯爵は意地悪な顔をしたつもりはなかったに違いないが、ジュリエッタは余裕しゃくしゃくの侯爵の態度を思い出して腹を立てた。
(何とかしなくちゃ!)
「ねえ、お母さま、手っ取り早くお金を稼ぐ方法ってあるかしら」
公爵夫人は娘をきょとんと見つめた。
「あらあ、あなたの旦那さまはお金持ちなんだから心配いらないわよ。でもねえ、どうしてもっていうなら、稼ぐ方法はあるわ」
夫人はいたずらっぽい笑みを浮かべた。ジュリエッタは母親に両手を合わせた。
「お願い、お母さま、教えてくださらない?」
「ええ、もちろん」
夫人は、ある方法を教えてきた。
「一緒にどうかな」
ジュリエッタは白々とした目を向けた。
「わたくし、朝はほとんど頂かないのです」
そのとき、ジュリエッタの鼻梁を甘い香りがくすぐってきた。
匂いに釣られて盆の方を見れば、メープルソースをかけたフルーツサラダが目に飛び込んできた。それにチョコをかけたクロワッサンに、カリカリのベーコンに、そして、謎の物体が一つ。
(あれは何?)
ジュリエッタは、嗅覚を集中させた。
(あの物体からは卵とはちみつとミルクとバターの匂いがするわ。カステラでもクッキーでもないし、何かしら。気になる、とっても気になるわ……)
ジュリエッタはニッコリと淑女の笑みをたたえたまま、優雅に椅子に座った。
「せっかく来てくださったんだもの、お相伴しますわ」
結局、食べ物に釣られてしまったジュリエッタだった。
問題の物体を見つめる。
(これは、まさかのバゲット……! もしかして、バゲットを卵液で焼いているの? それも、バターをたっぷり使って焼いているわ。だって表面の焦げ目が何とも言えないほど香ばしいんだもの。どんな味、どんな食感かしら)
一口食べて、ジュリエッタは歓喜に包まれる。
(わあ、バゲットは卵液に浸かってもっちりとしてるわ。なのに表面はカリッカリッ。ところどころで顔を出してくる干しブドウが良いアクセントになってるわ。バゲットとプティングのマリアージュ、何て素敵なの! あとで厨房に行ってハンナの分も作ってもらおっと!)
恍惚となったジュリエッタは、侯爵の目線に気づいた。侯爵がこちらを見て、満足げな笑みを浮かべている。
「気に入ったようで良かった」
(やだわ、はしたない顔つきをしていないかしら)
ジュリエッタは顔を引き締めた。つんと澄ました顔で笑みを浮かべる。
「ええ、おいしいわ。こんなプティング、初めて頂きましたわ」
「そうでしょうね。これは堅くなって食べられなくなったバゲットを無駄にしないために考えられたものだから、公爵令嬢のテーブルには乗らなかったはずです。でも、おいしいでしょう?」
「まあ! バゲットは最後には鈍器になるから夫婦げんかのときに使うものだって婆やが言ってたのは嘘だったのね! 爺やとこうやっておいしく食べてたんだわ!」
侯爵はジュリエッタを見て小さく吹き出した。
「それでは我々も喧嘩のたびに、このプティングを一緒に食べることにしようか」
「わたくしたちに喧嘩する機会があるかしら」
ジュリエッタがそういうと、侯爵は口に挑戦的な笑みを浮かべた。その顔つきにジュリエッタはぎくりとする。
(何を考えているのかしら、この人)
「離婚のことなら受け入れましょう。書類はすぐに用意します」
侯爵の言葉に、ジュリエッタはほっとするも、余りの呆気なさに寂しい気持ちが湧いた。
(財布を失うのは寂しいわね。でも、背に腹は代えられないわ、私もハンナも生きて幸せになるのよ)
「では、支度金の返還が済み次第、手続きを取ることにしましょう」
「ええ、そうですわね、支度金の……、え、何のこと?」
「あなたとの婚姻の際に、バルベリから公爵家へ支度金を送ったのだが」
「ああ、そういうことですの。それなら父が返還しますわ。父が応じてくれなければ、私が応じます。金額を聞いてもよろしいかしら」
(どうせ大した額ではないわ、わたしの指輪一個で片付くでしょうよ)
そう思っていたジュリエッタは次の言葉に腰を抜かしかける。
「一億ゴールドだ」
「え……? なんて……?」
「一億ゴールドだ。公爵家にとってははした金だろうが、バルベリにとっては半年分の予算だ」
侯爵はそう言って、ぱくっとクロワッサンを一口で口に収めた。
「うん、クロワッサンもうまい。あなたが雇い入れた調理人は腕がいい」
侯爵は、ぺろりと舌で唇を舐める。
「それにあなたが整えてくれたカーテンも家具もいいし、メイドたちもとてもいい。ここも随分と住み心地が良くなったようだ。あなたのおかげだ、ありがとう」
それは侯爵の居室には一切手を付けていないことに対する嫌味にも聞こえた。
ジュリエッタはテーブルの下でこぶしを握っていた。
(一億ゴールドですって? それって、公爵家の予算二年分……?)
それがバルベリの半年分の予算ということは、バルベリでは領土の維持に公爵家の4倍かかるということだ。辺境防衛には膨大な費用がかかるのをジュリエッタは知りもしなかった。
巨額の支度金を返せとは、侯爵は離婚を渋るつもりだろうか。
(どうしてかしら)
ジュリエッタに執着しているとも思えない。シャルロットに出会えば、ジュリエッタのことなど視界にも入らなくなるのに。
しかし、今は侯爵はまだシャルロットに出会っていない。
(それにしても国王はどうして、シャルロットを侯爵に与えなかったのよ。最初からそうしておけば、私は巻き込まれずに済んだのに)
国王もまた人の親。我が娘を元平民に嫁がせたくなかったのだろうし、娘に嫌がられれば、なおさらだ。シャルロットも、まさか、侯爵と恋に落ちるとは予想だにしてないだろう。
不穏さを帯びた朝食は、表面上はそれでもつつがなく終えた。
「朝食後、王都を案内してくれたら嬉しいのですが」
「残念ですが、今日は実家に帰る予定ですの」
そう言えば侯爵はすぐに引き下がった。ジュリエッタは公爵邸に戻らなければならなかった。
(お父さまに支度金を用意してもらわなきゃ)
***
「支度金は、ジュリエッタちゃんが全部使っちゃったわよ?」
母である公爵夫人は、さも可愛いと言った目でジュリエッタを眺めつつ言ってのけた。
(はい?)
「でも、お母さま、支度金は公爵家の二年分の予算よ。まさかそれがすべて私のドレスやアクセサリーに消えたなんてことはないでしょう。いくら金遣いの荒いわたくしとはいえ、到底そこまでは」
「あら、あなた、宝石が欲しいと言って、鉱山を買ったじゃない。お父さまもそれに賛成して、あなた名義で鉱山を買ったのよ」
確かに父親とそんな話をした覚えがある。しかし、それが一億ゴールドもの金を使ってのことだとは思いもしなかった。
「で、そこは宝石が取れるのでしょうか」
「調査したけど、結局は掘るだけ損な小さい鉱脈が一個あっただけみたいよ」
「では、それは無駄金になったと?」
「でも、温泉が出るのよ。いつか行ってみましょうね」
(いつか行ってみたい程度の温泉を公爵家の予算二年分を使って買ったってこと?)
「その鉱山はどういう経緯でもたらされた話だったのでしょう」
「確かお父さまが外国で出会った商人の知り合いの商人のそのまた知り合いだったかしら。とってもお買い得で今逃すと次はないって勧められたって言ってたわねえ」
(それ、カモられてるわ完全に……)
ジュリエッタは内心で頭を抱え込んだ。
(でも、公爵家には膨大な資産があるはず)
「お父さまに一億ゴールド貸してもらえるかしら」
「無理よ」
「どうして」
「お父さまはね、その商人と気が合っちゃって、有り金を全部船につぎ込んで、その人と海に出たわ。今は、船主兼キャプテンとして七つの海のどこかにいるわ」
(キ、キャプテン……?)
ジュリエッタの頼りになると思っていた父は、とんでもない冒険家だったようだ。
「では、お兄さまは?」
「もちろん、お兄さまも一緒よ。ホント、仲良し親子ね!」
(はああ……、支度金どころの騒ぎではないわ)
ジュリエッタは淑女らしく美麗な笑みを浮かべてティーカップを持ち上げて口に含んだが、内心では喚いていた。
(支度金をどうすればいいのよ! 何よ、あの侯爵、知ってたんだわ! 私がダメ鉱山につぎ込んだことも、お父さまが船につぎ込んだことも。支度金が返せないのがわかってて、意地悪な顔をしてたんだわ!)
侯爵は意地悪な顔をしたつもりはなかったに違いないが、ジュリエッタは余裕しゃくしゃくの侯爵の態度を思い出して腹を立てた。
(何とかしなくちゃ!)
「ねえ、お母さま、手っ取り早くお金を稼ぐ方法ってあるかしら」
公爵夫人は娘をきょとんと見つめた。
「あらあ、あなたの旦那さまはお金持ちなんだから心配いらないわよ。でもねえ、どうしてもっていうなら、稼ぐ方法はあるわ」
夫人はいたずらっぽい笑みを浮かべた。ジュリエッタは母親に両手を合わせた。
「お願い、お母さま、教えてくださらない?」
「ええ、もちろん」
夫人は、ある方法を教えてきた。
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