42 / 53
人質2
しおりを挟む
客間で母親と対峙するジュリエッタは、背後のハンナに向けて言った。夫人にも聞かせる。
「人質にするの。ずいぶんひどい娘よね。でも、どうしてかしら、それを親不孝だとは少しも思えないの」
ジュリエッタは夫人を人としては尊敬できなくなっていた。
王家にも母親にも従来のような信頼も敬愛も消え失せていた。
(侯爵さまを救うためなら何でもやるわ)
悲壮な決意を抱くジュリエッタを、ハンナもまた悲壮な決意を抱いて見守っている。
夫人がジュリエッタを見つめ返して呆れ果てた声を上げた。
「ジュリエッタ、あなた、私を騙したのね」
「お母さま、私は侯爵さまを助けるためには何でもするの。だから申し訳ありませんが」
ジュリエッタは騎士から短剣を受け取った。それを母親に向けて構えた。
「王宮の秘密通路を教えてください」
自分に剣を向けるジュリエッタに夫人は眉をひそめただけだった。
「そんなの知らないわ」
夫人はジュリエッタが本気で母親に剣を向けているとは思っていないようだった。
「お母さまに私の覚悟をお見せしますわ」
ジュリエッタは短剣を振り上げた。そして、打ち下す。
「きゃああっ」
夫人は叫び声をあげて避けた。しかし、その切っ先が向かったのはジュリエッタの左腕だった。ジュリエッタのドレスの上腕に短剣が突き刺さっている。
「ああっ……」
気を失った夫人は、騎士に支えられた。ジュリエッタは短剣を腕に刺したまま、夫人の口に気付けのブランデーを含ませる。
夫人はジュリエッタに頭を抱えられながら目を開けた。
「ああ、なんてこと……。誰ぞ、ジュリエッタの手当てをっ、早うっ」
夫人が言うも、ジュリエッタは短剣を腕に刺したまま首を横に振った。
「お母さま! 王宮の秘密通路を教えてください。今すぐ教えてくださらなければ、次は私の胸を刺します」
ジュリエッタはそう言って、腕から短剣を抜いた。傷口から血が盛り上がり、ドレスの袖を赤く染め始めた。じわじわと赤い染みが広がっていく。
「ああ……、誰ぞ、早くジュリエッタの止血を……」
夫人はジュリエッタの後ろに控えるハンナに言う。
「ハンナ、早うジュリエッタの手当てを」
ハンナは顔面蒼白だが、それでも、動こうとはしなかった。
「早う、ハンナ!」
ハンナは黙って強い目線で夫人を見つめ返すだけだ。
「お母さま、早く、教えてくださいませ」
抜いた短剣をジュリエッタは振りかざす。その切っ先を自分の胸に当てた。ゆっくりと沈めていく。胸に赤い染みができたところで、夫人は叫んだ。
「やめてっ。やめなさいっ、れ、霊廟のフィリップ1世の墓が、玉座の真下とつながっているわぁっ」
「他には」
「………」
「まだ秘密通路はあるでしょう。全部教えて」
ジュリエッタの目には気迫があった。もう一度短剣を胸に当てる。
「大聖堂のオルガンと王妃の寝室のドレスルームっ」
「他には!」
「もうやめて……」
「ほかにはっ!」
ジュリエッタは短剣を振り上げる。
「きゃああっ。ああ、ああっ、に、二重橋の像の土台と地下牢。これで全部よ、本当にこれで全部ぅっ、もうやめてっ」
ジュリエッタはバルベリ騎士を見た。バルベリ騎士はジュリエッタにうなずくと部屋から出て行った。すぐに庭から邸を出ていく蹄の音が聞こえてきた。
ジュリエッタはハンナの胸に倒れこんだ。
「姫さまっ……」
腕から血を流して倒れた娘を夫人は苦しげに眺めていたが、すぐさま、ドレスの裾を裂いて、止血を始めた。
***
「姫さま、起きてくださいませ」
もう窓の外は日が暮れようとしている。ハンナの横には夫人の姿があった。
「ハンナ、ジュリエッタを寝かせたままにして」
しかし、ハンナは夫人に従わずに、ソファに横たわるジュリエッタを起こす。
「姫さま、起きてくださいませ」
ジュリエッタは目が開くと、バネが弾むほどの勢いで飛び起きた。
(倒れている場合じゃないわ)
侯爵を救う計画が進んでいる。ハンナと目が合えば、ハンナは着替え取ってくるために離れた。
夫人は、随分とげっそりしている。
人質は夫人ではなく、ジュリエッタ自身だった。そして、夫人はそれに負けた。
ジュリエッタはドレスを脱ぎ始めた。そして、ハンナの出したズボンに着替える。ハンナに髪をまとめてもらうと、やつれた夫人を横目に部屋を出ていこうとする。
「ジュリエッタ、どこに行くの? じっとしていなさいっ。傷口が開いてしまうわっ。お願い……、お願いよ……、私の可愛いジュリエッタ……」
夫人はヒステリックに言ったかと思えば、最後にはあえぐような声になった。ジュリエッタは夫人を無視して出ていく。そして、最後に夫人に振り向けば、にっこりと笑いかけた。
「お母さま、これまで、本当にありがとうございました。お母さまの幸福を祈っています。では、お元気で」
それだけ言うと、ハンナと騎士たちを引き連れて邸を出て行った。使用人には暇を出したのか、邸の中はがらんとしている。
部屋に一人残されて、夫人は立ち尽くしていた。
「これまで、ありがとう。お元気で……?」
まるでもう二度と会えないような口ぶりだ。
「おお、おおおっ………」
夫人はしゃがみ込み、絨毯に両手をついた。
「おおおっ、ジュリエッタ……、おおおっ………」
(いったい、あの子は何をやろうというの………)
夫人ははじめて自分の足元が崩れるような不安を抱いていた。
(あの子はどこに行くの……? どこに行ってしまうの……?)
心配した侍女が部屋に入ってきたのにも気づかず、夫人は嗚咽をあげていた。
***
ジュリエッタは日が暮れた王都の街を走っていた。騎乗では目立つために徒歩で、そして集団では目立つために、数人ずつに分かれて、薄闇の裏通りを走っている。
ときおり、ハンナが気遣ってくる。
「姫さま、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫。それよりもあなたもみんなも巻き込んでごめんなさい」
ハンナは目を真っ赤にして首を横に振る。
「姫さまのおそばにいるのがハンナの喜びです」
向かう先は王都の片隅の空き家だった。秘密通路を使って侯爵らを救い出したバルベリ騎士らとそこで落ち合う約束をしている。
ときおり、ジュリエッタの足がもつれる。
お転婆とはいえ深窓の令嬢で、そのうえ出血もしている。今、ジュリエッタが動けているのは、侯爵を救う、その一心だった。
(侯爵さま、どうぞ、ご無事で)
ジュリエッタは途絶えそうになる意識を保とうとするも、空き家に着く前に足は進めなくなってしまった。
「姫さまっ」
ハンナの叫び声と同時に、騎士の一人がジュリエッタを抱え上げて背中に負った。
空き家には先着のバルベリ騎士がいた。
「侯爵さまは?」
騎士は首を横に振る。騎士から望遠鏡を借りて王宮を眺めると、騒ぎが起きているような気配はない。
順調ならそろそろ侯爵は空き家に現れるはずだ。しかし、待てども待てども、待ち人は来ない。
夜は更けていく。ジュリエッタの手が不安に白くなって、冷たくなってくる。その手をハンナが握ってきた。
「大丈夫ですわ。まさか秘密通路から脱出するなんて誰も思ってもいませんわ」
ジミー少年も励ましてきた。
「閣下は運の強い人です。何度も死線を潜り抜けて生き延びているんですから」
(わかってる。侯爵さまは無事、私のもとに戻ってくる。でも、遅い、遅いわ……)
埃の積もった部屋で長いこと侯爵らを待つ。
二重橋から王宮まで徒歩で四半刻もかからない。地下牢の衛兵の制圧に時間がかかったとしても、もうとっくに空き家に現れてもいい頃だ。
バルベリ騎士は衛兵に適わなかったのかもしれない。それならば、侯爵もハンスら側近らも無事ではいられまい。
(いや、いやよ、侯爵さまに何かあれば………)
これまでこれほど不安だったことはない。王都に戻る旅ではシャルロットのことで不安を抱いていたが、これほど目の前に危険が迫ってはいなかった。
不安が怒りに火をくべる。
無実だと知りながら罪人扱いして拘束し、その上処刑しようとするなど、ジュリエッタは国王への忠誠心は消えて、怒りしかない。
(国王も王太子もシャルロットもみんな許さない)
そうして、長い長い夜は更けていくなか、ジュリエッタはひたすら待ち続け、足音が聞こえてきたのは、日付けを超えたころだった。
「人質にするの。ずいぶんひどい娘よね。でも、どうしてかしら、それを親不孝だとは少しも思えないの」
ジュリエッタは夫人を人としては尊敬できなくなっていた。
王家にも母親にも従来のような信頼も敬愛も消え失せていた。
(侯爵さまを救うためなら何でもやるわ)
悲壮な決意を抱くジュリエッタを、ハンナもまた悲壮な決意を抱いて見守っている。
夫人がジュリエッタを見つめ返して呆れ果てた声を上げた。
「ジュリエッタ、あなた、私を騙したのね」
「お母さま、私は侯爵さまを助けるためには何でもするの。だから申し訳ありませんが」
ジュリエッタは騎士から短剣を受け取った。それを母親に向けて構えた。
「王宮の秘密通路を教えてください」
自分に剣を向けるジュリエッタに夫人は眉をひそめただけだった。
「そんなの知らないわ」
夫人はジュリエッタが本気で母親に剣を向けているとは思っていないようだった。
「お母さまに私の覚悟をお見せしますわ」
ジュリエッタは短剣を振り上げた。そして、打ち下す。
「きゃああっ」
夫人は叫び声をあげて避けた。しかし、その切っ先が向かったのはジュリエッタの左腕だった。ジュリエッタのドレスの上腕に短剣が突き刺さっている。
「ああっ……」
気を失った夫人は、騎士に支えられた。ジュリエッタは短剣を腕に刺したまま、夫人の口に気付けのブランデーを含ませる。
夫人はジュリエッタに頭を抱えられながら目を開けた。
「ああ、なんてこと……。誰ぞ、ジュリエッタの手当てをっ、早うっ」
夫人が言うも、ジュリエッタは短剣を腕に刺したまま首を横に振った。
「お母さま! 王宮の秘密通路を教えてください。今すぐ教えてくださらなければ、次は私の胸を刺します」
ジュリエッタはそう言って、腕から短剣を抜いた。傷口から血が盛り上がり、ドレスの袖を赤く染め始めた。じわじわと赤い染みが広がっていく。
「ああ……、誰ぞ、早くジュリエッタの止血を……」
夫人はジュリエッタの後ろに控えるハンナに言う。
「ハンナ、早うジュリエッタの手当てを」
ハンナは顔面蒼白だが、それでも、動こうとはしなかった。
「早う、ハンナ!」
ハンナは黙って強い目線で夫人を見つめ返すだけだ。
「お母さま、早く、教えてくださいませ」
抜いた短剣をジュリエッタは振りかざす。その切っ先を自分の胸に当てた。ゆっくりと沈めていく。胸に赤い染みができたところで、夫人は叫んだ。
「やめてっ。やめなさいっ、れ、霊廟のフィリップ1世の墓が、玉座の真下とつながっているわぁっ」
「他には」
「………」
「まだ秘密通路はあるでしょう。全部教えて」
ジュリエッタの目には気迫があった。もう一度短剣を胸に当てる。
「大聖堂のオルガンと王妃の寝室のドレスルームっ」
「他には!」
「もうやめて……」
「ほかにはっ!」
ジュリエッタは短剣を振り上げる。
「きゃああっ。ああ、ああっ、に、二重橋の像の土台と地下牢。これで全部よ、本当にこれで全部ぅっ、もうやめてっ」
ジュリエッタはバルベリ騎士を見た。バルベリ騎士はジュリエッタにうなずくと部屋から出て行った。すぐに庭から邸を出ていく蹄の音が聞こえてきた。
ジュリエッタはハンナの胸に倒れこんだ。
「姫さまっ……」
腕から血を流して倒れた娘を夫人は苦しげに眺めていたが、すぐさま、ドレスの裾を裂いて、止血を始めた。
***
「姫さま、起きてくださいませ」
もう窓の外は日が暮れようとしている。ハンナの横には夫人の姿があった。
「ハンナ、ジュリエッタを寝かせたままにして」
しかし、ハンナは夫人に従わずに、ソファに横たわるジュリエッタを起こす。
「姫さま、起きてくださいませ」
ジュリエッタは目が開くと、バネが弾むほどの勢いで飛び起きた。
(倒れている場合じゃないわ)
侯爵を救う計画が進んでいる。ハンナと目が合えば、ハンナは着替え取ってくるために離れた。
夫人は、随分とげっそりしている。
人質は夫人ではなく、ジュリエッタ自身だった。そして、夫人はそれに負けた。
ジュリエッタはドレスを脱ぎ始めた。そして、ハンナの出したズボンに着替える。ハンナに髪をまとめてもらうと、やつれた夫人を横目に部屋を出ていこうとする。
「ジュリエッタ、どこに行くの? じっとしていなさいっ。傷口が開いてしまうわっ。お願い……、お願いよ……、私の可愛いジュリエッタ……」
夫人はヒステリックに言ったかと思えば、最後にはあえぐような声になった。ジュリエッタは夫人を無視して出ていく。そして、最後に夫人に振り向けば、にっこりと笑いかけた。
「お母さま、これまで、本当にありがとうございました。お母さまの幸福を祈っています。では、お元気で」
それだけ言うと、ハンナと騎士たちを引き連れて邸を出て行った。使用人には暇を出したのか、邸の中はがらんとしている。
部屋に一人残されて、夫人は立ち尽くしていた。
「これまで、ありがとう。お元気で……?」
まるでもう二度と会えないような口ぶりだ。
「おお、おおおっ………」
夫人はしゃがみ込み、絨毯に両手をついた。
「おおおっ、ジュリエッタ……、おおおっ………」
(いったい、あの子は何をやろうというの………)
夫人ははじめて自分の足元が崩れるような不安を抱いていた。
(あの子はどこに行くの……? どこに行ってしまうの……?)
心配した侍女が部屋に入ってきたのにも気づかず、夫人は嗚咽をあげていた。
***
ジュリエッタは日が暮れた王都の街を走っていた。騎乗では目立つために徒歩で、そして集団では目立つために、数人ずつに分かれて、薄闇の裏通りを走っている。
ときおり、ハンナが気遣ってくる。
「姫さま、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫。それよりもあなたもみんなも巻き込んでごめんなさい」
ハンナは目を真っ赤にして首を横に振る。
「姫さまのおそばにいるのがハンナの喜びです」
向かう先は王都の片隅の空き家だった。秘密通路を使って侯爵らを救い出したバルベリ騎士らとそこで落ち合う約束をしている。
ときおり、ジュリエッタの足がもつれる。
お転婆とはいえ深窓の令嬢で、そのうえ出血もしている。今、ジュリエッタが動けているのは、侯爵を救う、その一心だった。
(侯爵さま、どうぞ、ご無事で)
ジュリエッタは途絶えそうになる意識を保とうとするも、空き家に着く前に足は進めなくなってしまった。
「姫さまっ」
ハンナの叫び声と同時に、騎士の一人がジュリエッタを抱え上げて背中に負った。
空き家には先着のバルベリ騎士がいた。
「侯爵さまは?」
騎士は首を横に振る。騎士から望遠鏡を借りて王宮を眺めると、騒ぎが起きているような気配はない。
順調ならそろそろ侯爵は空き家に現れるはずだ。しかし、待てども待てども、待ち人は来ない。
夜は更けていく。ジュリエッタの手が不安に白くなって、冷たくなってくる。その手をハンナが握ってきた。
「大丈夫ですわ。まさか秘密通路から脱出するなんて誰も思ってもいませんわ」
ジミー少年も励ましてきた。
「閣下は運の強い人です。何度も死線を潜り抜けて生き延びているんですから」
(わかってる。侯爵さまは無事、私のもとに戻ってくる。でも、遅い、遅いわ……)
埃の積もった部屋で長いこと侯爵らを待つ。
二重橋から王宮まで徒歩で四半刻もかからない。地下牢の衛兵の制圧に時間がかかったとしても、もうとっくに空き家に現れてもいい頃だ。
バルベリ騎士は衛兵に適わなかったのかもしれない。それならば、侯爵もハンスら側近らも無事ではいられまい。
(いや、いやよ、侯爵さまに何かあれば………)
これまでこれほど不安だったことはない。王都に戻る旅ではシャルロットのことで不安を抱いていたが、これほど目の前に危険が迫ってはいなかった。
不安が怒りに火をくべる。
無実だと知りながら罪人扱いして拘束し、その上処刑しようとするなど、ジュリエッタは国王への忠誠心は消えて、怒りしかない。
(国王も王太子もシャルロットもみんな許さない)
そうして、長い長い夜は更けていくなか、ジュリエッタはひたすら待ち続け、足音が聞こえてきたのは、日付けを超えたころだった。
293
あなたにおすすめの小説
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
【受賞&本編完結】たとえあなたに選ばれなくても【改訂中】
神宮寺 あおい
恋愛
人を踏みつけた者には相応の報いを。
伯爵令嬢のアリシアは半年後に結婚する予定だった。
公爵家次男の婚約者、ルーカスと両思いで一緒になれるのを楽しみにしていたのに。
ルーカスにとって腹違いの兄、ニコラオスの突然の死が全てを狂わせていく。
義母の願う血筋の継承。
ニコラオスの婚約者、フォティアからの横槍。
公爵家を継ぐ義務に縛られるルーカス。
フォティアのお腹にはニコラオスの子供が宿っており、正統なる後継者を望む義母はルーカスとアリシアの婚約を破棄させ、フォティアと婚約させようとする。
そんな中アリシアのお腹にもまた小さな命が。
アリシアとルーカスの思いとは裏腹に2人は周りの思惑に振り回されていく。
何があってもこの子を守らなければ。
大切なあなたとの未来を夢見たいのに許されない。
ならば私は去りましょう。
たとえあなたに選ばれなくても。
私は私の人生を歩んでいく。
これは普通の伯爵令嬢と訳あり公爵令息の、想いが報われるまでの物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読む前にご確認いただけると助かります。
1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです
2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています
→ただ今『皇太子』を『王太子』へ、さらに文頭一文字下げなど、表記を改訂中です。
そのため一時的に『皇太子』と『王太子』が混在しております。
よろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。
読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。
アルファポリス第18回恋愛小説大賞 奨励賞受賞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる