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大公アドルフ
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開いたドアに黒髪が覗いた。姿を現したのは侯爵だった。
「侯爵さまっ」
「ジュリエッタ」
二人は駆け寄り、抱きしめあった。侯爵の後ろにはともに拘束されたヤンスらバルベリ騎士の姿もあった。救出に向かった騎士もみんな無事だ。
(もう、もう大丈夫………)
ジュリエッタは安堵のあまり、涙がこぼれた。侯爵の目にも涙が浮かんでいた。
***
未明、ジュリエッタと侯爵らは王都を出た。翌々日、王都に進軍途中のバルベリ軍に合流した。3万の軍団だ。誰にも気取られないように山野を伝う。
目的は大公領だった。
地下牢から抜け出た侯爵はもう王家を完全に敵に回した。そして、それを裏で指揮したジュリエッタも同じだ。
ジュリエッタに頼れるのは、『杖の叔父さま』こと、大公アドルフのみとなった。
(叔父さまが味方になってくれないなら、どこかに亡命でもするしかないわ。でも、それでもいい。侯爵さまとならどこにだって行ける)
侯爵のそばにいられる幸福をジュリエッタは噛みしめる。
ファビオが軍に大量の差し入れを送ってくれたために、食料の心配もない。まるでピクニックと勘違いしてしまうほどの和やかな進軍だった。
「侯爵さま、あそこを見て」
ジュリエッタは背中の侯爵に向けて言った。ジュリエッタは怪我のために侯爵の馬に乗せてもらっている。
(怪我のせいでくっついていられて嬉しいわ)
「紅い花のこと?」
「ええ」
背中の侯爵は馬の鼻先をそちらに向けて、自ら枝を引き寄せ花を手折る。
「まあ、こんな花、見たことがないわ」
「これは山ツツジだよ。蜜が甘いんだ」
侯爵は額から花びらを取って口につける。ジュリエッタも真似して口をつけた。
「まあ、ほんのりと甘いわ。蜜の味がする」
「でも、赤くて首の長いツツジは花から根っこの先まで毒だから、触ってはいけないんだ」
「侯爵さまって物知りね。もしかしたら花まで食料に見えているのかしら」
「生き延びるためには何でも食べなければならなかったからね」
ジュリエッタは言葉に詰まった。そんな生活があるなど知らなかった。しかし、王都の路地裏にも貧困にあえぐ人々がいた。
パンがなければお菓子を食べればいいと思っていたジュリエッタには貧困など無縁だった。現実には飢え苦しむ人々がいるというのを知りもしなかった。
「怖い経験もした?」
「小さい頃はね。でも、大人になってからは怖いというよりも腹が立つことのほうが多かったかな」
「たとえば?」
「陛下は口先だけで兵士を送ってくれないとか」
「まあ、それは腹が立つわね。もうあんな人を陛下とは呼びたくないわ。名前も呼びたくない」
「今は怖いものが増えた。怖いことだらけだ」
「怖がりになったの?」
「ジュリエッタのせいだよ。ジュリエッタが悲しむのが怖い。痛がるのが怖い。そして、失うのが怖い。だから、今回のような無茶はもうしないでほしい。自分の腕を刺すなど」
侯爵はジュリエッタの腕をそっと撫でた。ジュリエッタは侯爵の手を両手で握った。
「あなたを助けるために必死だったの。私も、あなたを失うのが怖い。あなたを失うくらいなら腕一本どうなってもいいわ。それに私ってすごく回復力が高いの。もう傷口がふさいじゃったわ」
後ろから仲睦まじい二人をそれは幸せそうな目で見つめていたハンナが、ポツリとこぼす。
「さすが姫さま、治癒力、バケモノ……」
その隣でヤンスが言う。
「黒い猛獣と、バケモノのお姫さまか」
ジミー少年が声を上げる。
「頼もしい組み合わせです!」
大公領は目前に迫っていた。
***
大公領は、大陸の西沿岸、バルベリ領の真下に位置する。
大公領に入ってからも山野を西に移動していたバルベリ軍の前方に、銀色の甲冑の騎士らの一団が現れた。先頭を進む騎士から、侯爵のもとへと報告が入った。
報告によると、その騎士らは黄色い旗を掲げていた。
「大公旗だ」
侯爵が言った。
大公にはあらかじめ遣いを出しておいた。「バルベリ将軍、反逆」の一報も、王都から大公の耳に届いていることだろう。
(味方になるか、敵になるか)
大公の出方によっては、ここで一戦を交える可能性もある。勝てば大公領をバルベリと併合したうえで、ブルフェンからの独立を宣言することもできるし、戦わずしてバルベリに戻って、そこで軍を構え直しても良い。
再び、先頭を行く騎士から報告が入った。
「大公閣下自ら、お出迎えです」
どうやら大公は敵に回るつもりではなさそうだ。一行は、ほっと胸を撫でおろした。
ジュリエッタと侯爵は、銀色の甲冑の騎士に誘導されて、大公アドルフの待つ天幕に向かった。
アドルフはジュリエッタに両手を広げた。
「ジュリエッタ」
その姿はジュリエッタの記憶にあるままだった。金髪碧眼の麗しい王子さま。幼いジュリエッタが恋に落ちた相手。
王子さまとは王宮で出会った。若き日の王子さまはゆったりと笑って、甘い声で囁きかけてきた。
『ジュリエッタ、僕の愛らしい姫君、手を降ろして』
そのとき6歳のジュリエッタは、2歳上のエドウィンに意地悪をされている最中だった。赤い髪をからかわれ、そのうえ、手で掴まれて何本かひっこ抜かれた。ジュリエッタはやり返すためにエドウィンの金髪をぎゅっと握ったところだった。
『姫君がいじめられたら、僕がお助けするから、姫君は何もしないで僕を呼べばいいんだよ』
絵本から抜け出たような王子さまの出現に、ジュリエッタは乱暴を働いている自分が恥ずかしくなって、手をそわそわとひっこめた。
『あなたも王子さま?』
エドウィン王子は麗しいが、意地悪で残忍だ。そのエドウィンをそのまま大きくしたような外貌だが、こちらの王子は雰囲気が全く違う。清廉な空気をまとっている。
『そう』
『あなたは本物の王子さまなのね』
(エディはきっと偽物)
『正真正銘の本物だよ』
『王子さま、エディが私の髪を血のようで気持ち悪いと言って、引っこ抜いたの』
そう言うと、アドルフはエドウィンに向いた。先ほどまでの甘やかな笑みは消え失せ、鬼の形相をしている。
『全部見てたよ。エディ、ジュリエッタに謝るんだ』
エドウィンはプイと横を向いて逃げようとした。アドルフは、それをすぐさま抑えつけて、エドウィンが暴れても逃さない。
『エディ、自分の髪を藁のようで気持ち悪いと言われたらどうだ?』
『俺の髪は金色で黄金のようだから、誰もそんなことは言わない』
『では、その歯が茶色くて泥のようだと言われたら?』
当時、エドウィンの乳歯は虫歯だらけだった。
『ぶっころしてやる!』
『自分が言われたら相手を殺すのに、自分が言うのはいいのか?』
『俺は何をしてもいいんだ!』
『どうしてそう思う?』
『俺はえらいから』
『年下の女の子をいじめるのにえらいのか?』
『えらいから何をしてもいいんだ』
『何をしてもいい人などこの世にいない。えらい人ほど立派な行動をしなければならないよ』
『うるさい! はなせ!』
終いにエドウィンが悔し泣きを始めても、アドルフは逃さなかった。
『ジュリエッタに謝って二度とやらない、と誓うんだ』
『いやだ!』
『誓うんだ』
『いやだ!』
結局、エドウィンは根負けし、ジュリエッタに謝ってきた。
『ジュリエッタ、ごめんなさい。もう二度としない』
アドルフに解放してもらった途端に、エドウィンはアドルフに見えない角度で『ふんっ』と嫌な顔をしてきた。
ジュリエッタにとって、何をしても許されるエドウィンに初めて勝ったのがアドルフだった。
その日の夜、ジュリエッタは両親に言った。
「私、王子さまと結婚する!」
ジュリエッタは王子さまの名前を聞いていなかった。
「まあ!」
「なんと!」
公爵と夫人は当然のように、王子さま=エドウィンだと思い込んだ。
夫人から国王に伝わり、国王からエドウィンに伝わり、いつの間にか、ジュリエッタがエドウィンにプロポーズをしたことになったが、ジュリエッタがいくらそれを否定しても、幼い王子と従妹姫の可愛らしい逸話として残ってしまった。
(私、エディなんか大っ嫌いなのに)
ジュリエッタの幼い恋はすぐに破れることになった。ジュリエッタの言う『王子さま』がアドルフを指すと知った夫人は笑い、公爵はいたわしそうな顔をした。アドルフはジュリエッタの叔父で、叔父と姪とは結婚できないことを両親に教えられた。
そして、アドルフはまたすぐに戦場へと戻っていった。数年後、王都に戻ったときには、杖をついていた。
「侯爵さまっ」
「ジュリエッタ」
二人は駆け寄り、抱きしめあった。侯爵の後ろにはともに拘束されたヤンスらバルベリ騎士の姿もあった。救出に向かった騎士もみんな無事だ。
(もう、もう大丈夫………)
ジュリエッタは安堵のあまり、涙がこぼれた。侯爵の目にも涙が浮かんでいた。
***
未明、ジュリエッタと侯爵らは王都を出た。翌々日、王都に進軍途中のバルベリ軍に合流した。3万の軍団だ。誰にも気取られないように山野を伝う。
目的は大公領だった。
地下牢から抜け出た侯爵はもう王家を完全に敵に回した。そして、それを裏で指揮したジュリエッタも同じだ。
ジュリエッタに頼れるのは、『杖の叔父さま』こと、大公アドルフのみとなった。
(叔父さまが味方になってくれないなら、どこかに亡命でもするしかないわ。でも、それでもいい。侯爵さまとならどこにだって行ける)
侯爵のそばにいられる幸福をジュリエッタは噛みしめる。
ファビオが軍に大量の差し入れを送ってくれたために、食料の心配もない。まるでピクニックと勘違いしてしまうほどの和やかな進軍だった。
「侯爵さま、あそこを見て」
ジュリエッタは背中の侯爵に向けて言った。ジュリエッタは怪我のために侯爵の馬に乗せてもらっている。
(怪我のせいでくっついていられて嬉しいわ)
「紅い花のこと?」
「ええ」
背中の侯爵は馬の鼻先をそちらに向けて、自ら枝を引き寄せ花を手折る。
「まあ、こんな花、見たことがないわ」
「これは山ツツジだよ。蜜が甘いんだ」
侯爵は額から花びらを取って口につける。ジュリエッタも真似して口をつけた。
「まあ、ほんのりと甘いわ。蜜の味がする」
「でも、赤くて首の長いツツジは花から根っこの先まで毒だから、触ってはいけないんだ」
「侯爵さまって物知りね。もしかしたら花まで食料に見えているのかしら」
「生き延びるためには何でも食べなければならなかったからね」
ジュリエッタは言葉に詰まった。そんな生活があるなど知らなかった。しかし、王都の路地裏にも貧困にあえぐ人々がいた。
パンがなければお菓子を食べればいいと思っていたジュリエッタには貧困など無縁だった。現実には飢え苦しむ人々がいるというのを知りもしなかった。
「怖い経験もした?」
「小さい頃はね。でも、大人になってからは怖いというよりも腹が立つことのほうが多かったかな」
「たとえば?」
「陛下は口先だけで兵士を送ってくれないとか」
「まあ、それは腹が立つわね。もうあんな人を陛下とは呼びたくないわ。名前も呼びたくない」
「今は怖いものが増えた。怖いことだらけだ」
「怖がりになったの?」
「ジュリエッタのせいだよ。ジュリエッタが悲しむのが怖い。痛がるのが怖い。そして、失うのが怖い。だから、今回のような無茶はもうしないでほしい。自分の腕を刺すなど」
侯爵はジュリエッタの腕をそっと撫でた。ジュリエッタは侯爵の手を両手で握った。
「あなたを助けるために必死だったの。私も、あなたを失うのが怖い。あなたを失うくらいなら腕一本どうなってもいいわ。それに私ってすごく回復力が高いの。もう傷口がふさいじゃったわ」
後ろから仲睦まじい二人をそれは幸せそうな目で見つめていたハンナが、ポツリとこぼす。
「さすが姫さま、治癒力、バケモノ……」
その隣でヤンスが言う。
「黒い猛獣と、バケモノのお姫さまか」
ジミー少年が声を上げる。
「頼もしい組み合わせです!」
大公領は目前に迫っていた。
***
大公領は、大陸の西沿岸、バルベリ領の真下に位置する。
大公領に入ってからも山野を西に移動していたバルベリ軍の前方に、銀色の甲冑の騎士らの一団が現れた。先頭を進む騎士から、侯爵のもとへと報告が入った。
報告によると、その騎士らは黄色い旗を掲げていた。
「大公旗だ」
侯爵が言った。
大公にはあらかじめ遣いを出しておいた。「バルベリ将軍、反逆」の一報も、王都から大公の耳に届いていることだろう。
(味方になるか、敵になるか)
大公の出方によっては、ここで一戦を交える可能性もある。勝てば大公領をバルベリと併合したうえで、ブルフェンからの独立を宣言することもできるし、戦わずしてバルベリに戻って、そこで軍を構え直しても良い。
再び、先頭を行く騎士から報告が入った。
「大公閣下自ら、お出迎えです」
どうやら大公は敵に回るつもりではなさそうだ。一行は、ほっと胸を撫でおろした。
ジュリエッタと侯爵は、銀色の甲冑の騎士に誘導されて、大公アドルフの待つ天幕に向かった。
アドルフはジュリエッタに両手を広げた。
「ジュリエッタ」
その姿はジュリエッタの記憶にあるままだった。金髪碧眼の麗しい王子さま。幼いジュリエッタが恋に落ちた相手。
王子さまとは王宮で出会った。若き日の王子さまはゆったりと笑って、甘い声で囁きかけてきた。
『ジュリエッタ、僕の愛らしい姫君、手を降ろして』
そのとき6歳のジュリエッタは、2歳上のエドウィンに意地悪をされている最中だった。赤い髪をからかわれ、そのうえ、手で掴まれて何本かひっこ抜かれた。ジュリエッタはやり返すためにエドウィンの金髪をぎゅっと握ったところだった。
『姫君がいじめられたら、僕がお助けするから、姫君は何もしないで僕を呼べばいいんだよ』
絵本から抜け出たような王子さまの出現に、ジュリエッタは乱暴を働いている自分が恥ずかしくなって、手をそわそわとひっこめた。
『あなたも王子さま?』
エドウィン王子は麗しいが、意地悪で残忍だ。そのエドウィンをそのまま大きくしたような外貌だが、こちらの王子は雰囲気が全く違う。清廉な空気をまとっている。
『そう』
『あなたは本物の王子さまなのね』
(エディはきっと偽物)
『正真正銘の本物だよ』
『王子さま、エディが私の髪を血のようで気持ち悪いと言って、引っこ抜いたの』
そう言うと、アドルフはエドウィンに向いた。先ほどまでの甘やかな笑みは消え失せ、鬼の形相をしている。
『全部見てたよ。エディ、ジュリエッタに謝るんだ』
エドウィンはプイと横を向いて逃げようとした。アドルフは、それをすぐさま抑えつけて、エドウィンが暴れても逃さない。
『エディ、自分の髪を藁のようで気持ち悪いと言われたらどうだ?』
『俺の髪は金色で黄金のようだから、誰もそんなことは言わない』
『では、その歯が茶色くて泥のようだと言われたら?』
当時、エドウィンの乳歯は虫歯だらけだった。
『ぶっころしてやる!』
『自分が言われたら相手を殺すのに、自分が言うのはいいのか?』
『俺は何をしてもいいんだ!』
『どうしてそう思う?』
『俺はえらいから』
『年下の女の子をいじめるのにえらいのか?』
『えらいから何をしてもいいんだ』
『何をしてもいい人などこの世にいない。えらい人ほど立派な行動をしなければならないよ』
『うるさい! はなせ!』
終いにエドウィンが悔し泣きを始めても、アドルフは逃さなかった。
『ジュリエッタに謝って二度とやらない、と誓うんだ』
『いやだ!』
『誓うんだ』
『いやだ!』
結局、エドウィンは根負けし、ジュリエッタに謝ってきた。
『ジュリエッタ、ごめんなさい。もう二度としない』
アドルフに解放してもらった途端に、エドウィンはアドルフに見えない角度で『ふんっ』と嫌な顔をしてきた。
ジュリエッタにとって、何をしても許されるエドウィンに初めて勝ったのがアドルフだった。
その日の夜、ジュリエッタは両親に言った。
「私、王子さまと結婚する!」
ジュリエッタは王子さまの名前を聞いていなかった。
「まあ!」
「なんと!」
公爵と夫人は当然のように、王子さま=エドウィンだと思い込んだ。
夫人から国王に伝わり、国王からエドウィンに伝わり、いつの間にか、ジュリエッタがエドウィンにプロポーズをしたことになったが、ジュリエッタがいくらそれを否定しても、幼い王子と従妹姫の可愛らしい逸話として残ってしまった。
(私、エディなんか大っ嫌いなのに)
ジュリエッタの幼い恋はすぐに破れることになった。ジュリエッタの言う『王子さま』がアドルフを指すと知った夫人は笑い、公爵はいたわしそうな顔をした。アドルフはジュリエッタの叔父で、叔父と姪とは結婚できないことを両親に教えられた。
そして、アドルフはまたすぐに戦場へと戻っていった。数年後、王都に戻ったときには、杖をついていた。
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読む前にご確認いただけると助かります。
1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです
2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています
→ただ今『皇太子』を『王太子』へ、さらに文頭一文字下げなど、表記を改訂中です。
そのため一時的に『皇太子』と『王太子』が混在しております。
よろしくお願いいたします。
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誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。
読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。
アルファポリス第18回恋愛小説大賞 奨励賞受賞
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