竜族への生贄かと思ったら、王子の愛妻になったのですが。

高城

文字の大きさ
8 / 47

(8)夜の灯

しおりを挟む


 あの日を境に、リアの中で何かが少しずつ変わっていくのを感じていた。

 毎日のように屋敷のどこかで顔を合わせるギルフォードは、いつも仏頂面で、何かにつけて不機嫌になるし、口の利き方も粗野だったが、不思議とそれに不快感は残らなかった。むしろ心の奥に染み込むような温度が、ほんのりと安心感を連れてくる。

「今日も手ェ空いてんのか」
「はい。また少し書物を読んでから、何かしらお手伝いに行きたいと思ってます」
「そうかよ。……なら、これ使え」

 言ってギルフォードが差し出したのは、一冊の薄い冊子だった。綴じられた表紙には、見慣れた竜族の文字と、その下に小さく人間の言葉が添えられている。

「え!? これ、対訳ですか?」
「出所は知らねぇが、レオンハルトが持ってきたらしい。俺がいなくても、これがありゃどうにかなんだろ」

 そっけない言い方だったが、気遣いが嬉しかった。彼は、先日のやりとりを気にしていたのだろうか。あるいは、怒鳴ったことへのフォローのつもりかもしれない。

「ありがとうございます。本当に、助かります」

 素直に頭を下げると、ギルフォードは小さく舌を鳴らしたように聞こえたが、それもどこか照れ隠しのように感じられた。

 夜、リアは部屋の机に向かい、冊子を片手に分厚い歴史の書をもう一度開いた。最初は一文字ずつ拾うだけでも精一杯だったが、中庭でギルフォードが指で示してくれた文字たちを思い出しながら、一語一語に意味をつけていく。

「“はじまり”……これは、“炎”……?」

 竜族の歴史は、炎と空の記憶から始まっている。そういう一文が、確かにそこにはあった。――例えその道が遥かであっても、理解したいと願う心がある限り、進めるはずだ――そんな一文を読みながら、昨日のギルフォードの言葉に感じたのは、遠回しで不器用な優しさだった。

 リアの胸の奥に、小さな灯火がともる。いつか、もっと深く話が出来るようになりたい。
 頁を捲る手は止まらない。音のない夜の中で、ただ紙と紙が擦れる音だけが響いていた。



 読み始めた時点で、すでに陽は傾いていた。けれど、静まり返った夜の空気に包まれてページを捲る感覚が心地よくて、リアは気がつけば深夜の帳にすっかり呑まれていた。今さら時計を見て驚いても、時間が戻るわけでもない。小さくあくびを漏らしながら、本を閉じて立ち上がる。

「……お茶でも淹れてから寝ようかな」

 喉を潤したいのと、少し気分を切り替えたい気持ちとが重なって、リアはそっと廊下を歩き出した。屋敷の中はすでに夜の静寂に包まれていて、足音が妙に大きく感じられる。

 キッチンの近くまで来たところで、ふと灯りがついていることに気がついた。

「あれ、消し忘れかな?」

 首を傾げながら扉の前に立つ。中に人の気配を感じて、そっとノックをした。

 ――コン、コン。

 控えめな音が、木の扉を通して部屋に届く。すると、少ししてがたんと椅子を引く音が聞こえ、ばさりと誰かが振り返る気配がした。

「……あ!? お前、何でこんな時間まで起きてんだ」

 目を丸くしてこちらを見ていたのは、ギルフォードだった。普段よりも乱れた髪の隙間から見える目元に疲労の色が浮かんでいて、右手には淹れたばかりのブラックコーヒーのカップが握られている。左手には何かの書類の束。彼は椅子に腰かけていたらしく、今も身体を伸ばすようにして背筋を反らしていた。

「……そっくりそのままお返ししますよ……!? もしかして、いつもこんな時間までお仕事されてるんですか?」

 思わずそう尋ねると、ギルフォードはばつの悪そうに眉をひそめた。

「仕事っつーか……まあ、そういうもんだろ。俺がやんなきゃ回んねぇし」
「でも……この時間って、もう夜中の――」
「分かってる。だけど、今くらいしか手が空かねぇからな」

 ギルフォードは面倒くさそうに目をそらし、コーヒーを一口啜った。苦味の強い香りがふわりと鼻を掠める。リアはそっと中に入り、扉を静かに閉じた。

「つーか、ここに何しに来た」
「……私は、ただお茶が飲みたくて……」
「だったら勝手に淹れてけ。お前の分の茶葉はそこの棚。カップはその隣」

 手慣れたように場所を示すギルフォードの横顔を見ながら、リアはゆっくりとキッチンの中を歩いた。立ち位置が自然と彼に近づいていく。カップを選びながら、ふと尋ねる。

「ギルフォード様、いつもこんなに遅くまでお仕事してたんですね。なんて言うか、全然そんなふうには見えませんでした」

 湯を沸かす間、背を向けたままリアが呟くと、ギルフォードは一拍だけ間を置いた。

「別に、お前らに言う必要ねぇだろ。忙しいなんざ、口に出したところで何も変わんねーわ」
「でも……誰かが知ってたら、少しは違いませんか? あの、本当に無理だけは、しない方がいいかなって……」

 真っ直ぐに言葉を向けると、ギルフォードは視線を逸らすようにして、またコーヒーに口をつけた。だが、その仕草にどこか緩みがある。

「うるせぇな。真面目か、お前は」
「……ギルフォード様の方が、ずっと真面目だと思います」

 つい本音をこぼすと、ギルフォードの肩がわずかに揺れた。

 やがて湯が沸き、リアはそっとカップに茶葉を落とし、熱湯を注いだ。静かに香る茶の湯気が、張り詰めた空気をやわらげる。

「これ……飲みますか? おかわり、みたいな……」
「いや、もう十分だ」
「ですよね」

 二人で軽く笑ったその空気が、妙に心地よかった。リアはそのまま、カップを両手で包み込むようにして椅子に腰を下ろす。隣にはギルフォード。コーヒーと書類に向かう姿は、昼間よりも少しだけ影を落としているように見えた。

「……さっき読んでた本、ギルフォード様が教えてくれた単語が出てきて、嬉しかったです」
「へぇ」
「何となく意味も分かってきて……少しずつでも、理解できることが増えてきたのが、すごく楽しいなって思います」

 頷くようにギルフォードはまた一口、コーヒーを口にした。カップを置く音が、夜の静けさに優しく響く。

「覚えた知識を無駄にしねえのはいいことだ。続けろ。できる限りな」
「……はい。ありがとうございます」

 頷きながら、リアはそっとギルフォードの横顔を見つめた。疲れているはずなのに、誰にもそれを悟らせず、黙々とやるべきことをこなしている。何も言わないけれど、きっとずっと、誰かのために動き続けてきた人なのだろう。

「……あの」
「んだよ」
「本当に、無理はしないでくださいね」

 リアがもう一度、静かにそう告げると、ギルフォードは一瞬だけリアを見た。鋭さの裏に隠された柔らかさが、その目の奥にちらりと浮かんだ。

「お前に言われなくても、分かってるつーの」

 呟かれたその声が、まるで本当は誰かにそう言ってほしかったかのように、夜の空気の中に染みていった。

 静かなキッチン。夜の灯に照らされて、ふたつの背中が並んでいた。
 やがてリアは、温かい茶を飲み干すと、静かに立ち上がる。

「じゃあ……私、そろそろ寝ます。おやすみなさい」
「ああ」

 扉を開けて出て行こうとする背に、ギルフォードの低い声が追いかけた。

「ちゃんと寝ろ」

 振り返ったリアは、嬉しそうに微笑んだ。

「もちろんです」

 扉が静かに閉じる。
 残された部屋には、カップの湯気と、ページを捲る音だけが、静かに夜を満たしていた。



 扉が静かに閉まる音がして、キッチンに再び静けさが戻った。

 ギルフォードは持っていたコーヒーカップを一度テーブルに置き、ゆっくりと背もたれに身体を預けた。わずかに首を傾けて、天井を仰ぐ。さっきよりも、ずっと深く息を吐いた。喉の奥で、くぐもったような声が漏れる。

「……気張ってても、見られてんじゃ意味ねぇな」

 思わず自嘲するように笑いそうになったが、その声はすぐに喉の奥で消えた。誰もいない空間は、余計に自分の思考を鮮明に浮かび上がらせてくる。
 リアが、ああして気遣いの言葉をかけてくれることが、ありがたくないはずがない。けれど同時に、それをありがたく思っているなどと、表に出す器用さは自分にはない。

 ふと、脇に置いた資料に目を落とす。項目ごとにびっしりと書き込まれた数字、地図、家名、流れゆく氏族の記録。誰がどこに、何を、いつから仕切るか。各所の資源の配分、伝承の扱い、新しく入ってくる異血の管理――。決めるべきことは、数えきれない。
 これが、跡継ぎとして背負うべきものなのだと、誰に言われずとも分かっていた。

「そもそも……あいつと結婚すんだっけか、俺」

 呟いた言葉が、夜の空気に溶けていく。苦笑すら浮かばなかった。ただの事実確認のように、乾いていた。

 家の者たちは、すでに周囲へとそれを伝え、細やかな準備に取りかかっているという。ギルフォードのもとには、式の形式案や披露の順番、古いしきたりを踏襲するかどうかといった細かな文書が次々と回ってきていた。もちろん形式ばかりで、本人の心情など、誰も問うてこない。

「面倒くせぇ」

 だが、その面倒くさいを理由に投げ出せるほど、自分は自由な身ではなかった。この名前を背負ってから、ずっとそうだ。

 幼いころ、まだ外の世界を何も知らなかった頃――
 祖父の広い背中を見上げながら、己もいつか竜たちの中心に立つのだと、周囲は勝手に決めていた。そしてその通りに鍛えられ、学ばされ、周囲を指導する立場として、歩かされてきた。

 文句を言えば、それは甘えだと返された。
 立ち止まれば、誰かが追い越すと脅された。
 笑えば軽いと指摘され、黙れば冷たいと言われた。

 何ひとつ、自由な選択など許されていない。それはわかっていた。

「……今さら、何言ったってしょうがねぇだろ」

 声が掠れる。気の抜けたような語調は、誰にも届かないからこそ、素直に出たものだった。

 現実的に見ても、今の竜族の里の状況は、傍目に安定しているように見えて、その実は綱渡りの連続だった。外との関係、内の対立、次代への橋渡し――。自分がここで手を離せば、その均衡は一気に崩れる。だから、やるしかない。誰にも言わずとも、自分はそれを知っている。

 資料に視線を戻す。眠気は、もうとうに通り過ぎていた。

 リアが言っていた。「誰かが知ってたら、少しは違うかもしれません」――と。そんなこと、あるものか。
 心のどこかで否定しながらも、さっき感じた僅かな安堵の正体を、ギルフォードはまだ上手く言葉にできずにいた。

 コーヒーはすっかり冷めていた。けれど、もう一杯淹れ直すほどの余裕もない。

「今日の分、終わらせっか」

 小さく呟いて、資料を広げる。灯りの下、ペンを握り直す指先に、迷いはなかった。

 それが、王子としての宿命なのだと、彼は、もうとっくに覚悟していた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

【完結】島流しされた役立たず王女ですがサバイバルしている間に最強皇帝に溺愛されてました!

●やきいもほくほく●
恋愛
──目が覚めると海の上だった!? 「メイジー・ド・シールカイズ、あなたを国外に追放するわ!」 長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。 前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。 奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。 そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。 この出会いがメイジーの運命を大きく変える!? 言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。 ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。 ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。 これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...